ルリとアキトが、それまでの兄妹のような関係から「微妙な」関係に変化して・・・・・・
物語の時間はまず一気に1年間進む。
2199年8月、地球と木連との間に和平交渉が行われる。
その席にナデシコも地球側代表団の護衛として何故か呼ばれ、どういう訳か木連側の名誉親善大使なるお偉いさんがこれから来艦するという。
なんでもその名誉大使自らの希望らしく、失礼の無いようにとナデシコはこのところ掃除とお色直しに明け暮れた。
もっとも2ヶ月前、極秘裏に木連から地球へ和平の打診があった前後から戦闘行為が激減しており、だからこそ出来たことでもあるのだが。
なんにせよ、緊張の面もちで親善大使を待つナデシコクルーの前にシャトルは降り立ち、そして白い軍服姿の士官の後から名誉親善大使がその姿を現した。
木連側の大勝利に終わった戦闘。
地球軍の逃げ帰った後の戦場を、なおも木連軍は探索した。
「 | あの機体には微弱ながら反応があります。 回収しましょう!」 |
オペレーターの言葉に月臣は命令を下す。
「 | 「 回収せよ!」 |
その命令で回収された1機のエステバリス。
格納庫に運び込まれ、慎重に調査を開始した。
部下に命令を下した。
まもなくコックピットハッチの開閉レバーが発見される。
ゴカ!
鈍い音とともにコックピットが開けられたとき、そこから流れ出した音に木連兵士達は驚いた。
「 | 「これは・・・・・・!」 |
「 | なぜ悪逆非道な地球人が?」 |
動揺する兵士達。
なぜなら流れてきたのは『飛翔け ゲキガンガー3』だったからだ。
「 | お、おい! この男、まだ息があるぞ!」 |
コックピットの中で倒れている男を確認し叫ぶ兵士。
とりあえずそのパイロットを医務室に運び、更に探索は続く。
優人部隊にはネコババするような性根の者は居ない。
しかしその機動兵器のコックピットは、その彼らをして己の沸き上がる欲望を必死に押さえなければならないほどの宝の山だった。
全てが『幻の』と言われてきたレアアイテムの宝庫。
超合金ゲキガンガー3は、後日ロケットパンチが完全オリジナルの物であることが判明した。
ゲキガンシールの束は、コレクターが天井知らずの価格を付けるという代物だ。
何気に座席に敷いてあるゲキガン座布団は放映当時の人気商品。
コンソールに張り付けてあるナナコさんラミネートカードは、木連ではそれを狙った殺人事件が起きたという曰く付きの物。
初版のロマンアルバムは博物館でしか見たことがない。
そして数枚の記録ディスク。
そこには木連では失われた幻のエピソードすら完全に収録されていた。
しかも、見たこともないような高画質・高音質で。
後日草壁中将をして、
「 | 先の戦いにおいての最高の知らせはこれであった。」 |
と言わしめた発見であった。
医務室に担ぎ込まれた男は3日間目を覚まさなかった。
集中治療室での完全看護が続く。
もともと先の戦闘での勇猛な戦いぶりである種の敬意をもたれていたこの男だが、コックピット内の宝の山の一件で全兵士が興味を持った。
どんな男なのか話を聞いてみたい。
そう思わない者はいなかった。
月臣の艦隊が木連本部に帰還した翌日、その男は目を覚ました。
人手不足の木連は看護もバッタ任せだったが、その男は目を覚ましバッタを見るなりこういった。
「 | ・・・・・・よお、カール・・・・・・」 |
「 | 『傷による一時的な記憶の混乱』か?」 |
駆けつけた月臣は呆れたと言う。
男の快復状況に応じ、徐々に尋問が行われた。
しかし、ここで奇妙な事が起こる。
男を尋問に行った者は、全員がその後、その男の「心の友」となってしまうのである。
まず尋問専門の兵士が、男と肩を組み『勝利のVだ! ゲキガンガーV』を熱唱している姿で発見された。
次に派遣されたその上役は、3日後にホワイトボードを使ってまでゲキガンガー3の必殺技について楽しく話し合っている姿を目撃された。
興味を持った月臣、白鳥両名が自ら尋問を引き受けたのだが、2週間後に白鳥の自宅でナナコさん談義で盛り上がり、抱き合って涙している姿をユキナに非難された。
結果、地球人への感情が兵士達の間で大幅に改善されていく。
地球人にも凄く良いやつが居る、この認識が確実に広がっていく。
事態を重く見た草壁は、己の懐刀「北辰」をその男に張り付けた。
冷酷無比な戦いの狂犬、北辰。
最強の掃除屋、北辰。
彼の6人の部下とともにその名前は同じ木連兵士にも禁忌であった。
その男が邪魔、さらには有害とさえ考えた草壁は、その男を北辰の家に同居させる。
北辰には何か些細な理由を見つけたら殺しても良いと言い含めた。
北辰はにやりと笑い、それを引き受けた。
しかし草壁はその男を甘く見ていた。
そして木連人にとってのゲキガンガーという物を過小評価していた。
その男はあっさりと、北辰とさえ心を通じ合わせた。
自分と同じ強烈な美学をお互いに感じ、親友どころか『真友』になってしまった。
かつてその男は、自分の趣味のことで周りからバカにされ続けてきた。
自分の愛するゲキガンガーの良さを知らず、またろくに見もしないで悪く言う周りの人間に対し、その男はやりきれない思いを常に感じた。
しかし、自分の気持ち、ゲキガンガーを愛する自分の気持ちをごまかしてまで他人に合わせたくはなかった。
そんなことをしたら自分が自分でなくなってしまう。
だから男は、自分が孤独になることを覚悟で自分の生き様を貫いた。
そんな自分を受け入れてくれたのは一人だけだった。
北辰は自分たちが忌み嫌われていることを知っている。
しかし、自分たちの様な存在も必要悪なのだと考えている。
木連人である北辰達にとって悪という自覚は耐えられるものではない。
だから北辰達は偽悪的な態度をとり、自分たちを唯一解ってくれる草壁にのみ忠誠を誓い、そして独自の美学を磨くことで自分を立たせた。
決して他人に解って貰え無いという悲しき思いを抱えた男達の出会い。
それが友情に発展するのも当然の成り行きだった。
草壁が北辰に任せたことでその男の事を終わりとしたのが幸いし、以降その男は木連ライフを満喫する。
そして年が明け、春になる頃に。
地球との和平は、木連を2分する話題となった。
「 | あいつの言うことは解る。 だが、今更納得できるか! それを認めたら俺達は何のために戦ってきたんだ?」 |
月臣が逆上して怒鳴る。
月臣にとって地球人は滅ぼすべき敵だった。
自分の生まれへの呪い、見てきた生活苦への恨み、それらのはけ口が地球だったから。
しかしあの男と話し、親交を深める中でその気持ちに揺らぎが出てきたのも事実。
そのことが月臣をいらだたせ、逆上させる。
だが相手である白鳥は至って冷静であった。
「 | なら最後の1人が死ぬまで殺し合いをするのか?」 |
「 | お前に解るか! 俺達最下層の人間の気持ちが!」 |
そう言って九十九をぶん殴る月臣。
殴り返す九十九。
殴り合う九十九と月臣。
どうすることも出来ず泣きそうなユキナがそれをおろおろと見ていた。
ユキナもかつては地球人を憎むだけであった。
しかし、兄たちが連れてきたあの男・・・・・・
兄とよく似たあの男と会い、話す内に解らなくなった。
確かに地球は酷いことをした。
でも、だからといって・・・・・・
その疑問が生まれる。
だから、今兄たちを止めることも出来ずに、・・・・・・ただ泣きそうにしていた。
そこに現れた一人の男。
「 | だったら俺を殺せ! その後今の地球の人間を全員殺せ! 火星の人間みたいにな!」 |
あの男だった。
その男は月臣と九十九を引き離すと真ん中にどかっと座り、話し始めた。
「 | 俺のダチは火星に住んでた。 お前らのバッタやジョロに知り合いをほとんど皆殺しにされたそうだよ。 お前達のやってることは100年前の地球と同じ、ただの人殺しだ。 ゲキガンガーだってアクアマリン達と解り合えたじゃねぇか!」 |
そう言って月臣達を睨む。
「 | お前達はもう100年前の地球と同じ事をしたんだ。 それでも許せないと言うなら、まず俺を殺し、その後地球人を皆殺しにしろ! だがもし生き延びた人間が居たら、今度はそいつらがお前達に復讐するぞ! 100年後か、200年後に!」 |
「 | やかましい!」 |
月臣がその男を殴る。
男は避けもせず拳を受ける。
何発も何発も。
ただ、月臣を睨んだまま、視線は決して外さなかった。
しばらくすると、殴っていたはずの月臣がうなだれ、さんざん殴られたその男が毅然と月臣を見ていた。
和平論の広がりは草壁を焦らせた。
そして草壁は非常の手段を取ることとする。
和平派との会談で、和平派中核の白鳥を暗殺する。
そしてクーデターを持って全権を掌握する。
「 | 北辰!」 |
北辰は黙って頷いた。
和平派中核の白鳥は、会談でも熱弁を振るった。
すでに大勢は和平論に流れているようだ。
白鳥の熱い主張が最高潮に達したとき。
ダーン!!
一発の銃弾で男が眉間を打ち抜かた。
撃ったのは北辰。
撃たれたのは草壁。
全員が驚愕する中、警備兵があわてて動く。
無抵抗で取り押さえられた北辰は、白鳥に皮肉に笑って言う。
「 | 我が受けた使命は貴様の暗殺。 されど今更貴様を殺したとて何も変わらぬ。 閣下とともに狂気の道を歩むのも一興と思ったが・・・・・・」 |
「 | あの男に伝えてくれ。・・・・・・貴様と語り明かした日々、楽しかったぞ、と。」 |
その後かなりの混乱が起こったが、なんとか収拾され。
翌月、地球連合政府に対し木連より和平交渉の打診が為された。
ここで話は冒頭に戻る
休戦交渉の場には何故かナデシコも呼ばれた。
「 | なんでなんです?」 |
ユリカの疑問にプロスもハンカチで汗を拭いながら、
「 | いや、私どもも上から指示があっただけですのでなんとも・・・・・・」 |
と答えるしか無い。
そこに現れたのが「木連名誉大使」という称号を持った・・・・・・
「 | 「「「やまだ!」」」」
|
「 | ダイゴウジ・ガイだ!!」 |
そう、「あの男」、ヤマダジロウ(魂の名前はダイゴウジガイ)だった。
アキトが思わず飛び出す。
「 | ガイ!どうして・・・・・」 |
「 | そこの源一郎に助けられたんだ。 ま、いろいろ有ったけど木連の奴らも良いやつばかりさ。 解り合えないはずはないってな。」 |
その後ガイの紹介で月臣・白鳥・秋山らと親睦を深めるナデシコクルー達。
特に白鳥制作のゲキガンガー傑作選は、
ヤマダが絡むと必ずこのアニメか・・・・・・
とげんなりしていたクルー達のほとんどをゲキガンオタクに導いたという。
交渉は円滑に進んだ。
木連側の提示した条件は大きく分けて2つ。
過去の隠された歴史の公開と対等な和平条約。
地球側の出した条件も大きく分けて2つ。
火星をはじめとする地球圏攻撃への謝罪と対等な和平条約。
これからお互いのすりあわせは行われるにせよ、予定通り1ヶ月後の休戦条約調印は確実と思われる。
あと1話でこの物語も終わります。
長いなぁ・・・・・・
今回は「もしガイが生きていて、木連に行ったら?」というのを書いてみました(笑)
いやあ、別にギャグを狙った訳じゃないんですが、こうなってしまったという・・・・・・・
でも、ガイならあり得ると思いません?
せっかくDDでは生きてるんだし、こういう役回りも良いんじゃ?と結構前から思ってたんですよねぇ。
さあ、やっとラスト1だ!!!
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