「この作戦の目的は敵研究施設の破壊と研究データの回収にある」

ブリーフィングルーム。特大スクリーンの前に立って、数々の映像を指し示しながら説明を行う大男。

「この為部隊を2種に分け、連動しつつも初動段階では別行動をとる必要がある。

概要はこの一覧の通りだ。まず、A集団、研究データ回収を主任務とする先行部隊が4ヶ所より侵入。

スナイピングや通信回線切断を駆使し、敵を混乱させつつA1〜4のポイントに潜伏する。

しかる後、B集団、主攻部隊は施設表裏より同時に攻撃をかける。その際にステルス化された攻撃ヘリ4機により

D1〜8までの敵施設、銃座を破壊し、B集団がB1・2ポイントまでそれぞれ前進する事を容易たらしめる事になる。

B集団がB1・2ポイント付近に展開次第、その火力援護を受けながらA集団はC1〜4のポイントより

敵研究施設と思われるビルに侵入。各チームの細かい展開はマップM11を参照にしてくれ。

A集団が抑えるべきなのはE1、ビル4階の研究室と思われる場所と、E2、ビル1階の警備室、この2つが最緊要だ。

場合に応じてE3〜14までの目標を抑えるか、ないし破壊する事となる。

E1でデータを回収。この任にはホシノ・ルリにあたってもらう。高度な電子防壁が張られている可能性が大だからだ」

100名以上の男達の視線が、最前列に座る蒼銀色の髪の少女に集中する。だが、少女の方は身じろぎ一つしなかった。

「はい」

「データを回収次第A集団は撤収、確認後B3〜6ポイントまで展開したB集団が研究施設を完全破壊する。

輸送ヘリとのコンタクトはそれより3分以内に施設群外H3・4で行い、予備点としてH5・6を指定しておく。

乗り遅れるなよ。尚A集団は基本的にH3に向かえ。退路はB1方面で主に確保を努力せよ」

空中を踊るフライウインドウの数々。個人のコミュニケにもそれぞれデータが転送される。

この作戦はそれほど難度の高いものとは考えられていなかった。敵戦力よりこちらの方が火力で上だからである。

これ以上に遥かに困難な任務を果たしてきた大部分のシークレットサービス隊員にとっては、

あまり気負いもなければ、緊張のあまりがくがく震えると言う事もない。平常心に近い状態だ。

「A1チームはホシノ・ルリの護衛にあたれ。尚私はB集団に所属し、全体の指揮を執る。以上だ」



























Bride of darkness



第11話 『Death Squad』











エリナには最近気になっている事があった。

彼女に悩みというのはあまり相応しく無い。それは例えば会長が道楽好きだとか、書類がたまりがちだとかはあるが、

一般の彼女に対する評価というのは常に前向きで、対人関係で悩んだりするはずが無い人間だとされている。

何しろ大戦以後起きた社長派の没落以来ネルガルの事実上のNo.2として、落ち目になった会長に代わって

一日一件はマスコミのインタビューを受けるような人物である。表に表れる顔が本人の評価に直結するのは当然の事だった。





だが、現に彼女には悩みというほどには深刻では無いものの、気になっている事があった。

仕事の事では無い。彼女の統括するのは現在基本的に「表」の仕事。「裏」ではアキトのサポートしかしていない。

だから、仕事の二面性に悩む事は無い。表では広告塔を務めつつ、実務をこれまで通り処理すればいいだけだ。

そもそもこういう生活を既に1年以上も送っており、大して彼女の負担になりうるはずがなかった。





彼女が気になっているのは、一人の少女に関する事である。

ラピス・ラズリ。彼女の名目上養女となった少女である。この少女の近日の様子に、彼女は頭を抱えつつあった。

まず、挨拶をしようとしない。最初会った時もそうだったが、人に会ったらなるべく挨拶か、

軽く目礼するぐらいはするように教えていた。そして、ラピスもそれを忠実に守っていたのだが、急にしなくなった。

次になかなか眠ろうとしない。昨日も眠ったのは午前3時過ぎ、働いているエリナより遅いぐらいだった。

そして、何か声を掛けないと何もしなくなった。食事さえせずに、ラピスはずっと椅子に座ってぼうっとしている。





勿論心当たりはあった。アキトが負傷して中々目覚めようとしないからだ。

既に3日。エリナも非常に心を痛めている。何故なら、彼とは少なからぬ関わりがあるからだ。

実際の戦闘や心の支えという意味においては、ホシノ・ルリに一歩譲るかもしれない。だが、実際に彼を生活レベルで

サポートしているのはエリナだった(公式に死んだ身であり、かつ戦争に特化した所があるルリにそれを求める事は出来ない)。

だが何よりも、ラピスが一番彼を気にかけているようだった。何しろ彼女を救ったのが彼だったのだから仕方が無い。

いつもお互いの時間さえ許せば彼女は彼にべったりしていた。その彼が生死の線を彷徨っているとあれば彼女も辛いのだろう。

だが、それはあまりに常軌を逸しているといえる。食事すらこちらが強制しない限りしようとしないとは―――





あるいはそれがラピスの負ってきた心の傷かもしれないと、エリナはやっと気付き始めていた。

普段表にはあまり現れない彼女の心の傷。いつも従順で言いつけは守るし、常識も最低限理解しているから、目立たないのだ。

だがそれらは所詮理性のつかさどる部分に過ぎない。心の中に関しては、彼女はあまりに未成熟だった。

子供なのだ。一応データ上は13歳だが、幼児にさえ思える。誰かを文字通り頼らないと生きていけないのだ。

だから、彼女は今落ち込んでいる。そして、エリナは彼女をどうにかしてあげないといけないと思っていた。

けれど、どうすればいいのかわからない。このままアキトが起きるまで放置すればいいのだろうか?

いや、そうするわけにはいかない。そうすれば、尚更ラピスはアキトに依存してしまう。

それはこれからの進路が事実上決まっているラピスにとって、あまりに残酷な結果となってしまう―――





「・・・・・・溜息だけついていて、それで物事が進むのかしら」

顔をあげる。エリナの座る長椅子の前、白衣の女性がコーヒーカップを両手に立っていた。

「ラピス・ラズリの件ね。私が思うに、そろそろ親離れをすべき時なのじゃないかしら?」

隣に腰掛け、エリナに左手のコーヒーを差し出すイネス。受け取って一口含んでから、呟く彼女。

「言うは安し、行うは難し。貴女なら何か手段でもあるというのかしら?」

「アキト君に死んでもらうわ」

彼女の手が止まる。今、恐るべき事をイネスが呟いたような気がしたのだが―――

「・・・・・・勿論本当に死んでもらう必要なんて無いわ。ただ、ラピスにはそう思わせてしまう、そうすれば親離れするかもしれないわね」

「駄目よ!そんな事したら、したら・・・・・・」

「したら?」

顔を伏せるエリナ。一方イネスはカップの中身を半分ほど一息に飲み干していた。

「ラピスが可哀想よ。彼女、あまりにアキト君に依存してるから・・・・・・彼女こそ死んじゃうかもしれない」

それはエリナの実感だった。ラピスはアキトがいなくなったと知ったら、本気で自殺を図る恐れすらある。

ラピスにとってアキトは言わば太陽。太陽無き惑星は冷え切る他無いのだ。

「そうね、彼女にとってアキト君は生命そのものみたいなもの。だからこそ、アキト君に何か起これば、変わるはずね」

なるほど―――エリナは思う。イネスは流石にこの手段をとれと言っているのでは無いのだ。

だがしかし、アキトを上手く利用すれば、アキトの言いなりのラピスを変える事は無理な相談ではない。

("殺す"のではなくて、"置き手紙"を残して消えてもらおうかしらね・・・・・・)

エリナの頭は先の先を計算し、動き出していた。






























隙が無い―――第一の印象だった。

まさしく、隙が無かった。あらゆる敵が連携し、一人だけ秘かに"消す"などと言う事は無理だった。

それに、上手く遮蔽物を利用して、巧みにスナイピングのポイントを無くすような陣取り。難しかった。

(狙撃が出来ないとなると、私の戦力価値はほとんどありませんね・・・・・・)

かすかに自嘲。実際、彼女に出来そうな事は無かった。今までのように緩い警戒の敵を殺す、などとはいかなかったのだ。

彼女が今まで容易く敵拠点を破壊できたわけ。それは全て相手の意表を突いたからである。

相手の意表をつけなければ、ただ人より体力のあって銃が使える少女一人にしか過ぎない。

『こちら"トレンチ"、B集団は準備完了。各ポイント状況知らせ』

骨髄振動式の無線。トレンチは溝や堀の事、ホーリー(堀井)とかけているわけだ。

『こちらA2、異常無し』

『A3、配置についた』

『A4、総員問題無し』

自分の番だ。彼女は小さな声で呟く。

「こちらフェアリー、異常ありません」

だが、今日はチームプレイだ。スタンドプレーなどは期待されていない。自分もただ、数合わせの為だけにいるのだ。

―――そう自分に言い聞かせてみると、気が楽になる。そうだ、今日はこちらが圧倒的に有利なのだから。

とりあえずチームの人々がいる。6人彼女の護衛についているから、多くを彼女がする必要は無い。

『こちら"ムーンドック"、全火力部隊の配置を確認』

『了解した。攻撃を開始する』

20秒後、上空から何かが飛来する音。姿は見えない、ステルス化されたマルチローター機だからだ。

途端凄まじい、笛の高い音にも似た、空を切り裂く音響。次の瞬間、周囲は炎に包まれた。

圧倒的な火力支援の下、主力が表門および裏門からなだれ込む。敵2個小隊との交戦に入った。





「ルリさん、そろそろ行きますよ」

小声で囁かれる。彼女の側についている、若い隊員だ。いつもはゴートの直属で隊長を務めているらしい。

「はい」

立ち上がる。周囲を警戒する隊員達。彼女は右手に小銃を構える。

少し歩いて、施設の入口。数名の敵兵が周囲を警戒しつつ、建物の外を防御していた。

いずれも全面防弾レベル3A、胸面にはプレートが入っていてレベル4までの銃弾に耐えられる防弾制服を着用している。

レベル3Aでほぼ全ての拳銃弾、レベル3で旧式軍用小銃弾、レベル4でルリの使用する7.62mm新式弾に耐えられるから、

彼女の狙いもいつもの胸、心臓部では無く、硬質プラスチックヘルメットしか被っていない頭となる。

自動小銃を構えて、射撃。狙った一名の頭が吹き飛ぶ。同時に敵とこちらの銃撃戦となった。

コンクリートの物置き場を盾に使い応戦。ここで火力の差がやはり物を言った。

彼女以外の全員は9mm新型突撃弾を利用する、彼女の自動小銃より強力なアサルトライフルを装備している。

一方敵の制式突撃銃とでは火力に3倍の差は生まれてしまうのだ。その上、隊員達はやはり歴戦で巧かった。

敵が投げつけてきた手榴弾。それをどういう技か蹴り返す壮年の隊員。ルリの視線を受けて、照れくさそうに言った。

「投げるのが早いんですよ」

凄まじい爆煙に包まれる敵に対して、一気にライフルをぶっ放す。呻き声、煙が晴れた時、立っている敵は既にいなかった。

「さあ、行きましょう」





建物内、彼女の前に2人の隊員が展開し、残り2人ずつが周囲の部屋を次々と制圧してゆく。

『E12、クリア』

『Fポイント、敵影無し』

路は拓かれている。既にA2チームが警備室を制圧した。後は自分が研究フロアに乗り込むだけ―――

「この先ですね」

階段を上って研究フロアへと足を踏み入れる。4名ぐらいが最後の抵抗を試みてくるが、大した事は無い。

手早く彼女は2人を撃ち斃し、前衛の2人が制圧射撃で残りの2名も片付ける。

任務の完遂は近い。彼女の出番だ、内部に足を踏み入れる。そして―――






























「・・・・・・はぁ」

今日80回目の溜息。自分でもいやになるほど溜息をついている事を、彼女は自覚していた。

何もする気になれない。もっともずっとそうだった。ずっとずっと、彼が現れるまで彼女は自分の意志で動いた事が無かった。

はじめて、彼女が決めた事。それは、彼を信じてみる事だった。そうする事で、何か変わる気がしたから―――

苦しみばかりの半生。今こういう生活を送ると改めて思う。あれは、地獄だった。

だからこそ、彼がいないと自分がまたあの場所に戻る気がして―――だから、彼女は今、不安定なのだ。

「アキト・・・・・・私、どうすればいいの?何も出来ない・・・・・・」

弱々しく呟く。そう、何も出来なかった。彼の為に何も出来ない、だから、他に何もする気になれなかった。

彼が苦しんでいるのに、自分だけぬくぬくと生きてはいけなかった。そうするには、あまりに彼女はやさしすぎたのだ。

はじめて自分というものが生まれた時に触れたものは、彼のやさしさ。だから、彼女もまた、優しい人間なのだ。

人間は優しくなければならないとさえ思っている。研究者達は―――いわば、人外の存在だ。

あの場にいたものは全員。勿論、あの時の自分でさえも。あの場所は、人のいるべき場所では無かった。





「ラピス、早く来なさい」

弱々しい足取りで立ち上がり、向こうの部屋に向かう彼女。

正直何も食べたくなかった。だが、エリナは彼女を放っておこうとしない。だから、言われれば食べにいく他無かった。

エリナを必要以上に心配させるのも彼女にとっては気の重い事でもあった。





食卓、だがそこには何一つ並んでいなかった。

いや、ただ一つ、封筒が置いてある。首をちょこんと傾げてそれを手に取る彼女。

「読みなさい、ラピス」

言われるままに封筒を開き、中の手紙を取り出して―――






























「やっぱりラピス君には悪い事をしたかもしれないねぇ」

同時刻、ネルガル会長室。モニターで様子を眺めながら、アカツキは呟いた。

"アキトからの手紙"。勿論尚昏睡状態の彼が手紙を書けるはずが無いから、全てアカツキによる"代筆"である。

やがてラピスが力無く手紙をテーブルに置き、そのまま床に倒れたのを見て、やれやれと首を振る。

「こういう役割、僕に相応しいと思うかい、プロス君?」

傍らに立つ赤ベストの男に問いかけてみる。金縁眼鏡の位置を軽く直してから応える男。

「さて。ですが誰かがやらねばならない役割には違いありませんな」

「そうだろう?それで。ラピス君の乗るナデシコBの状態はどこまで進んだのかな?」

いくつか示されるフライウインドウ。大分形が整ってきた船体がそこには映し出されている。

「全工程の67%を終了。あとは第2船体の取り付けと主砲の艤装、各種セットアップが中心となるでしょうか」

「うん、結構。同時に人選も進めておいてくれたまえ。ネルガルの広告塔だからねぇ、いくら金を使っても構わないから」

「はい」

アカツキの大きなところである。もっとも少しく彼は太っ腹すぎて、エリナなどは他から資金を引っ張ってくるのに苦労したりする。

エリナやプロスペクターという無駄を省ける人間が近くにいるからこそ出来る、彼一流の大博打なのだ。

「それと、そろそろ"敵"の全体像を知りたい。今まではこちらの想定に基づいて敵が動くと仮定してこちらも動いてきたけど、

そろそろ敵の本質と戦力を見極めて、計画に修正を加えるべき時期に来ているからね。

場合によってはユーチャリスやナデシコCの形も変わってくる、大きな変更になるだろうから。よろしく頼むよ」

「その件に関しましてはゴート君と月臣君が戻ってきてから細かく協議、敵組織への諜報計画を纏めたいと思っています。

それよりも、そろそろテンカワ君とルリさんの為に新しい機動兵器を用意しなければならないかと。その為の予算をお願いします」

「わかってるよ。エリナ君とも相談して、機密費と会長警備室費より新しい試作機に関する予算を取る事にしておこう。

ただし、一機分だけだ。無駄遣いは良くないからね、この機体をルリ君に供与する事にするよ」

一際大きく映し出されたフライウインドウとその中の紅い機体。プロスペクターが頷く。

「なるほど、無駄遣いはよくありませんな」































踏み入れた片足。もう片方を上げようとして―――宙に止まる。

そこは異様な空間だった。人気がしない、そして微妙な異臭。彼女の脳裡に、何かが囁く。

「こ、これは・・・・・・!」

先行する隊員が声をあげる。その彼の目に入った光景は、想像を絶するものであった。

だが、それを言葉にする事は叶わなかった。次の瞬間、その隊員の首が飛び、彼女のところまで転がってくる。

「え?」

「危ない、ルリさん!」

傍らにいたベテランの、先程手榴弾を蹴飛ばした隊員が彼女の身体を突き飛ばす。

更に次の瞬間、彼女の脇を掠める光。脇腹に奔る激痛、そして銃などをぶら下げたベルトが切れて地面に落ちる。

壁に叩きつけられた彼女。そこに何かが迫ってくる。人の形をしている事に気付いた時には、彼女の目の前に光があった。

その光が短刀という形となって彼女に襲い掛かる。辛うじて身を捩って、同時に敵を蹴り飛ばす。

今度は左腕に奔る痛み。苦痛に身を捩りながら、壁に背中をつけて体重を支える彼女―――





「味方がいる事が仇となったな、妖精よ」

彼女の目の前にいる、紅い義眼の男―――北辰。それだけで無く、何人かの部下が彼女を囲むように立っている。

手には短刀。そしてそのうちの一人が、血塗れの壮年のシークレットサービス隊員の首筋に、ぴたりと得物を突きつけている。

「北辰・・・・・・」

喘ぐように呟く彼女。ぼたぼたと毀れる血、脇腹と左腕の傷は深くは無いが浅くも無い。体力が傷口から逃げていくようだった。

「動くなよ、妖精。この隊員を助けたくば、な」

「ルリさん、俺の事は放ってにげ、うぐっ!」

北辰と同じように純和風の格好をした部下の一人が、脇腹に短刀を突き刺す。あまりの痛みに口が切れて血が流れている。

彼女の代わりに敵の刃を受け、重傷を被っている隊員。放置して逃げられるほど、彼女は冷血でも無い。

そもそも、彼女は逃げようが無かった。先程切れたベルトにCCが組み込まれており、それが無ければジャンプも出来ないのだ。

入口の方は重傷を被っている隊員と、2人の北辰の部下が封じている。真正面には、北辰。

武器も無い。自動小銃などこんな近距離では何の役も立たないのだ。





全ては彼女をここに誘い込む為の罠だった。もともとある施設をその為に利用したに過ぎない。

北辰達は先にこの施設に入り、研究者達をあらかじめ皆殺しにしていた。機密保持の為でもある。

同時に罠をいくつも張っていた。大部隊の侵攻を食い止める事は出来ない、だが、大部分がここに近づけないように。

こうしてルリを含め3人だけをここに誘い込んだ。爆殺という方法もあるが、こういった襲撃による形式をとったのは、

全て彼女の死に様を確認したい、北辰の趣味に過ぎない―――

そして今、彼女は罠に引っかかった。追い込まれれば何一つ出来ない、ただの小娘として。





「・・・・・・何が望みなんです、北辰?」

「お主の生命だ。この隊員を助けたくば、今すぐ自害せよ。5秒だけ時間を与える」

短刀が投げつけられる。それは彼女の頬を掠めて飛び、壁に突き刺さった。軽く血が滲む頬・・・・・・

北辰は明らかに彼女を試していた。戦えるかどうか、である。いずれにせよ、隊員の生命を救うはずも無い。

だがしかし、彼女の理性は同時に訴えていた―――勝ち目が無いと。刃を向けた瞬間、彼女は殺される、と。

そして、彼女はまた、隊員を間接的に殺す事は出来なかった。自分が死ななければ、彼は彼女の目の前で殺される事だろう。

(これまで散々冷血な手段で敵を殺してきたのに・・・・・・味方の生命だけは、私には無理。甘いのね、心無い道具のはずなのに)

ともかく、短刀に手をかけて壁より引き抜く。あと4秒。

しばらく刃を眺める。どうするべきか、彼女には決められなかった。あと3秒。

結局自分一人では何一つ出来なかった、味方一人救う事も、自分が生き続ける事ですら出来ない

―――そう自嘲した時、2秒前。一斉に北辰の部下達が4人、彼女に向けて刃を差し向ける。







1秒前。何も考えずに、彼女は北辰の方に切っ先を向けた。

ゼロ。白刃を煌かせ、4人が一斉に彼女に突っ込んでくる―――
































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あとがき(手抜き仕様)




第11話、今までに無いほど短いお話でした。

恐らく多くの皆様の予想どおり、ルリルリは北辰の罠に引っかかってしまいました。

今まで超人的な能力を発揮してきた彼女も、一旦相手の意表をつくスタイルが崩れて、

追い詰められるとただの少女に過ぎません。さて、どうやって彼女はこの危機から脱出するのでしょうか?

また、ついに倒れてしまったラピス。彼女の身を襲った衝撃、そして手紙の内容とは!?

次回、乞うご期待!!





・・・・・・と書いてみても、あまり盛り上がらないような気がするのはなんでだろう(おいおい)。

実際今回はかなり手抜きです。めちゃくちゃ手抜きです。次回に問題解決を持ってくるあたり、手抜きです(言いすぎ)。

その代わり、次回は一気に話が動きます。今回は前振りなので、さっさとあとがきも読み飛ばして次行きましょう。






それでは。次回もアキト×ルリで行こう!




今回短いのは、3日間で必ず1話出そうという作者の姿勢の結果です。

最近イベントが異常に多くて。実質3日間のインターバルのうち1日は確実に夜もつぶれてます。はぁ・・・・・・

でも、読者は待たせない主義なので(本当か?という突っ込みはなしで)、とりあえず一区切り置いて出してみました。

結構今回もアニメではよくあるところで切ったつもりですが―――アニメでいう半話分ぐらいですね、内容は。

この後イメージ的にはアイキャッチが入って、後半に続く。そんな感じで読んでいただけると、次が気持ちよく読めるかもしれません。

・・・・・・結局本編は短いにも関わらず、無駄にぐだぐだと言い訳をつき続けるりべれーたーだったとさ(老人風)。



b83yrの感想

ルリがピンチです

今回は、折角良い所で終わっているのだから、感想はあえて書かずに次回に回しましょう

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