「あれ?ヤマダ君?」
ヒカルが気づく。
搬入が一段落つき、整備班の姿もなくなった格納庫。
ヒカルが中破した自機のIFS端末リンクを確認しようとやってきたところ、さほど損害を受けなかった青いエステバリスを前に、ヤマダ・ジロウが佇んでいた。
「よ!ヤマダ君」
背後から近づき、突然声をかける。
「ん?おう、ヒカルか・・・」
ヤマダはさほど驚いた様子も見せず、振り返ると返事をした。
そのまま何を話すでもなく、再び自分のエステに目を移すと、そのまま黙って見上げ続ける。
ヒカルもいつもと違うヤマダの様子に戸惑いながらも、3番の整備ドッグへ向かわず、そのままヤマダの左に並んで、同じようにエステを見上げた。
アスカでは月面用フレームを作っていないため、ヤマダのエステも0G戦フレームで立っている。
慣性を相殺するため、スラスターが全方向に取り付けられた機体。
激戦であったにも関わらず、ヤマダの機体に傷はほとんどついていない。
そのことに改めて、彼のパイロットとしての腕に感嘆するヒカル。

地球時間で午後11時を過ぎ、外のドッグからの整備音も止んだ。
ナデシコ自体が発する駆動音の他に音はなく、凛とした空気が流れる。

「なあ、ヒカル」
ヤマダの声は、張り詰めた空気に乗ってエステの装甲に反響する。
ヒカルは返事をせずに、頭だけをヤマダへ向けた。

ヤマダもヒカルの方を見ず、正面を向いたまま話し出す。
「ゲキガンガーってなあ、俺の夢だったんだ。俺はゲキガンガー、そう信じれば正義の味方になれると信じていた」
話の先を促すように、ヒカルは沈黙を保つ。

「別にな、アニメそのものに憧れたわけじゃないけどよ。・・・そうだな、正義を貫ける男に憧れたのかも知れねーな。それとも、正義そのものか・・・。正しいことを正しいと言える軍人になりたかった。それだけで連合軍に入隊したんだ。だが、そこは黒いものを白いと言わなきゃならないところだった・・・」

軍隊がどういう組織なのか。
従軍経験のないヒカルには、正確にはわからなかった。
だから、黙っていた。
「誰かを守る、何かを守る、そんな気持ちは正直言って、ねーんだよな、俺。強いて言やあ、俺自身の信じた正義を守る、ってとこだな。だがよ」
腰に手を当て、言葉を捜すように頭を下げて、考え込む。

「近頃のアニメは皆小難しい御託ばっか並べやがってよ。俺には何だかわかんねえんだよ。アニメってのはよ、もっとこう、夢のあるっつーか単純に魂を揺さぶるっつーか、こう、燃えるものでなきゃいけねえと思うんだ。その点、ゲキガンガーはわかりやすいしよ」
初めて顔を向ける。
その表情に、ヒカルの予期した悲哀や憂愁はなかった。

「だから、俺はゲキガンガーになりたかった。見てるだけじゃねえ、俺はゲキガンガーのようになれると信じていた。俺が、俺の生き方を変えない限り、俺は正義の味方でいられると思っていた」
「ヤマダ君・・・」
いつもゲキガンガーだ何だと騒いでばかりのヤマダが、こんなに考えているとは思わなかったヒカル。
「じゃあ、いいじゃない。ヤマダ君はそう信じていれば。戦うのに、ナデシコを守るとか、地球を守るとかそんな大層な理由がいるのかなあ。正義の味方になりたいから、それだけでもいいと思うよ」
ヤマダはいつものようにおちょくられるかと思っていたのに、ヒカルが真面目に返してきたことに驚いていた。
バカにされたくて話した訳では、むろんないが、誰かに聞いて欲しかった、それだけだったのだ。
目を開いて見つめるヤマダを見て、ヒカルも少し恥ずかしくなったのか、肩を竦めておどけたように、
「相手は人間だけどね」
「お前は人間と戦うのは嫌なのか?」
「う〜ん、正体不明の蜥蜴くんの方がよかった、かな。機動兵器を倒すって言ったって、そりゃ実感は湧かないけど中の人間も死んじゃうんだよ?気分良くはないなあ」
「そうか・・・」
「ヤマダ君は?どうなの?」
「別に、そのことは何とも思っちゃいないぜ」
あっさりと返すヤマダに、少し拍子抜けするヒカル。
「木星蜥蜴が木連人になったってことはどーだっていいんだ。俺にとっては」
木連にも正義が存在した、そのことだけが問題である。

「ただな、あいつらもゲキガンガーだったんだと思うとよ・・・」
普段はやかましいヤマダの俯いた横顔に、影が走る。

「あいつらにはあいつらの正義がある。だが、俺たちもただやられる訳にはいかねえ。どうしたらいいのかわからなくなっちまってよ・・・正義の味方になりたいから戦う、本当にそれでいいのか?当たり前だが、俺たちが誰かを守ると、あいつらの誰かが死ぬんだぜ?あいつらだって守りたいもの守るために戦ってる。・・・正義は俺たちにあるのか?」
言い募るヤマダに、ヒカルは驚きを隠せなかった。
地球が攻められている。
戦える自分が戦わなくては、誰かが死んでしまう。
それは嫌だ。
だから戦う。

それに、面白そうだし。

そう思ってナデシコのスカウトを受けたのだが、ヤマダの言う通り、木連人たちもまたそういう思いで戦っているのかもしれない。

「何が正しいかなんて後にならなきゃわかんないよ。・・・・それに」
「それに?」
「前にアキト君が言ってたよね。自分と自分の大切な人を守るために戦う、って。理由は人によって違っていいんだ、って。私もそう思う。ヤマダ君だってそう思ったから署名したんじゃないの?」
「だが・・・・・・守るべき正義がこれじゃあな・・・」
沈み込むヤマダに、思案するヒカル。

「じゃ、こうしようよ」
何かを思いついて、ヤマダの正面に回り込む。
そのまま俯くヤマダの顔を覗き込んで、笑顔を見せる。
「ヤマダ君は〜、私を守ってよ」
「あ?」
「だ、か、らあ。守るものが信じられなくて悩んでるんでしょ?正義なんて曖昧なものだからそうなるんだよ。だったらさ、フォーメーションのパートナーを守ればいいじゃない」
「・・・どっちかっつーと、お前がフォローアップだけどな」
「ぶう。だからさ、私のフォローを無駄にしないように、必ず戦闘から生きて帰ること。それが私を守ってくれることだよ。それじゃ駄目?」
塞ぎ込んでいたヤマダの目に、明るい光がともる。

(そうだな・・・うじうじ悩んでたって何も解決しねえか・・・)

「よっしゃ、わかったぜ!ヒカル。俺はお前を守る。必ず生きて帰る!」
「うんうん、それでこそヤマダ君だよ〜」
嬉しそうに笑うヒカルから、鼻の頭を掻きつつ目を逸らす。
悩み、沈んでいた自分を見られた照れが、今更感じられる。
「おかげで吹っ切れたぜ。・・・うっし!」
びっと親指を立てて、
「ま、お互い頑張ろうや」
「うん」
ヒカルを残して、ヤマダはゲキガンガー3のテーマソングを歌いながら軽やかな足取りで出て行った。

「ははは・・・結局ゲキガンガーなんだ。さて、私もエステちゃんとリンクチェックしなきゃ」
くるりと向きを変えると、隣りの整備ドッグへ向かう。



「正義、か。暑苦しいけど、嫌いじゃないよ。ヤマダ」
5番の整備ドッグに格納されているミルトニアで、転寝をしてしまったアキトが、2人の会話を機体の集音センサーで聞いて呟く。
そのままセンサー類を切ると、真っ暗になったコックピットで再び目を閉じる。
「・・・・・・なんてかっこつけてる場合じゃないんだよな。どうしよう。今出てったら盗み聞きしてたみたいだし、ヒカルさんはチェックかかりそうだし・・・はあ」

アキトは困っていた。










「アキトさん、知りませんか?」
火星へ出航する前に、月周辺の哨戒を行っているナデシコで、ルリがイネスに尋ねる。
「さあ?今日は見てないけど。コミュニケで呼び出したらいいじゃない」
「それが、コミュニケを外してるみたいなんです」
あからさまにがっかりした表情で、ルリが抑揚なく答える。
そんな姿を頬をほころばせて見ていたイネスが、ふと思いついたように、ルリに頼みごとをする。
「あ、そうそう、アキトを探してるんなら、見つけたら医務室に来るように言ってちょうだい。あの子最近ナノマシンチェック、さぼってるのよ」
「はあ。それはイネスさんが余計な実験をするからでは?」
「余計な実験て何よ。この間みたいに捕虜が逃げちゃ困るから、新型の筋弛緩剤を試してみただけじゃない」
(・・・それが余計じゃなくて何だと言うつもりなんでしょうか・・・)
そう思うが、それこそ余計な『説明』を聞かされそうなので、ルリは黙っていた。
「まあ、コミュニケを外してるんなら、厨房じゃないの?」
「そうですね、行ってみます。どうも」
踵を返すと、ルリの足は厨房へ向かった。





「あ、ルリちゃん」
通路の向こうから、鼻歌を歌いながら近寄ってきたのは、ユリカだった。
「艦長、ブリッジを離れていいんですか。今の当直は艦長じゃないですか」
「うん、それは大丈夫。ジュン君が引き受けてくれたから」
明るく言い放つユリカだが。
「副長に押し付けた、が正しいんじゃないんですか?」
「うっ・・・ルリちゃん、私、そんなにひどくないよお」
「副長以外には、ですよね」
「・・・・・・そっかなあ」
「それで、何か用ですか?」
ルリが先を急ぐ。

「あ、そうそう、ルリちゃんにも是非参加してもらいたいと思って」
胸中を嫌な予感がよぎる。
戦術以外でユリカが提案するものに、ろくなものはない。
「何にですか」
それでも一応は聞いてみる。
ユリカは、こころもち胸を逸らして答える。
「へへへ、お茶会しようと思って」
「はあ。お茶会、ですか。誰か茶道の心得でもあるんですか?」
ユリカは更に胸を張る。
傍から見れば、ミナトに次ぐスタイルの持ち主が、ナデシコ一貧相なスタイルの少女相手に胸を見せ付けている、としか見えない。
もちろん、ルリ視点でもそう見える。
(・・・むかつきますね・・・私だって、あと2年もしたら・・・)
少女らしくない意地の張り合いをするルリだが、そんなルリの胸中も知らず、ユリカは続ける。

「ユリカは茶道の心得もあるんだよ」
「え?艦長が、ですか・・・」
不安は大きくなる。
ユリカがお嬢様であることは知っているが、戦闘以外では全く落ち着きのないユリカに、茶道などできるのだろうか。
「うん。木星の人って、純和風だって白鳥さんも言ってたでしょ?だから、また木連の人に会うことがあったらお茶でも点てて歩み寄りの姿勢を見せようかと・・・」
「それで戦争がなくなるなら、楽でいいですけどね」
「ひどいなあ、ルリちゃん・・・ユリカは純粋に仲良くなれるチャンスがあるならって考えてるのにい・・・」
拗ねるユリカを眺めながら、これが本当に月面奪還作戦で毅然とした指揮をとっていた人物と同じなのだろうかという疑問が湧く。
「まあ、わかりました。用意ができたら声を掛けてください。では、私急ぎますので」
「あ、誰かに会ったら言っておいてね。非番の人には集まってもらいたいから」
(艦長自身が非番じゃないんですけどね)





「テンカワ、どうだい?」
厨房でホウメイが声をかける。
「あ、ホウメイさん。はあ、お菓子って難しいっスね」
「でもお前、学校で習ったんだろう?」
「そうですけど・・・実習でちょっとやっただけでそれから作ったことなんてないスから・・・」
アキトは厨房でホウメイの指示のもと、くずざくらと格闘していた。
生地と餡の甘さのバランスが上手くとれないのだ。
「甘いものって女の子の方がよくわかるんじゃないっスかね」
「和菓子職人はほとんどが男だけどねえ」
「う〜ん、それもそうっスね」
「それじゃあ、ルリ坊に味見してもらうかい?」
「いや、それは。俺、どうも口が軽いっスから。うっかり喋っちゃったら元も子もないんで」
アキトは苦笑いを浮かべる。
諜報部員で口が軽いのもどうかと思うが。
「あんたは諜報部員だろう」
ホウメイもそう思ったのか、アキトをからかうように言う。
「そりゃそうなんですけど・・・ナデシコにいると、自分が諜報部員だったことも忘れちゃいますよ。それに今はインダストリーに出向中でですから、諜報部員じゃありませんよ」
アキトも笑う。

(ナデシコ、というよりはルリ坊かね。お互い、相手を少しずつ変えてることには気が付いてないみたいだね・・・)
ホウメイは口には出さず、生地を作り直すアキトを見守っている。
初めてナデシコに乗艦した頃は、戦闘班(と、いうより諜報部員だったからだが)らしい緊張感が相手にも伝わってくるほどだった。
くだけた態度でいても、どこか緊張を解かない鋭さを感じさせた。
それが、火星、アスカへの編入を経て、なくなってきている。
ミルトニアのパイロットである以上、戦場では戻っているのだろうが、パイロットという立場を離れると完全に消え去ってしまっている。

(『家族』の存在なのかねえ・・・)
何処か飢えたような目つきをしていたあの頃とは、表情が違う。
全てを知った今なら、イネスを探すという焦りであったのだろうと推測もできる。
少し腑抜けた感のあった時も、それがイネスと再会できたから、ともわかる。
それが変わって来たのは、ホウメイが思い出せる限りではテニシアン島の頃からだ。
守るべき対象ができたこと、そしてそれを自覚したことが、アキトを変えたのだろう。

それなら、やはりナデシコが変えたのではなく、ルリの存在がアキトを変えたのではないだろうか。

そんなことを思っていると、昼食の時間も過ぎた食堂にルリがやってきた。

「何してるんですか?アキトさん」
「あ、いやね、艦長がお茶会したいから和菓子作ってくれって言うもんでね」
何故か口調が怪しいアキト。
ルリは不思議そうに見つめている。
知る限り、アキトが和菓子はおろか、食後の簡単なデザート以外のお菓子を作っているのを見たことがない。
じっとアキトの手元を見つめていたが、素人目にもたどたどしさがわかったらしく、ホウメイに向き直って尋ねる。
「どうしてホウメイさんが作らないんですか?」
取りようによっては、料理人たるアキトに失礼な内容なのだが、この場合はそう思ってくれた方が助かる。
「このあたしの弟子である以上、作れないものがあるなんてのは許せないからね。テンカワはデザート類が苦手みたいだし、いい機会だと思ってね」
(ナイスです・・・ホウメイさん)
アキト、魂の呟き。
ルリは納得したようだ。
アキトを探していた本題を切り出す。
「アキトさん。忙しい時になんですけど、ミルトニアの攻撃サポートプログラムをシミュレーターでチェックしてもらえませんか?」
「あ、いいよ。もうちょっとで終わるから、待っていられる?」
「はい、わかりました。今日は非番ですから大丈夫ですよ」
素直に頷くと、食堂の席に座る。

頬杖をつき、アキトの作業をぼんやりと見守る。
ただ、それだけなのだが。
人形のように愛らしい外見が、どんな背景でどんな仕草でも、ルリの魅力を引き出してしまっている。

「あんたの両親も、さぞきれいな人たちなんだろうねえ」
ホウメイがホットミルクをルリの前に置きながら、言う。
ルリの本当の両親がわからないことは、ナデシコクルーの全員が知っている。
中には、家族の話題に触れないようにするクルーもいるが。
自分が全く気にしていないことについて、必要以上に気を遣われるのはルリにとって不快でしかなかった。
ホウメイはその辺りを心得ていて、変に気を回したりしない。
「どうしてですか?」
「いや、別に・・・ちょっと、ね」

珍しく語尾を濁したホウメイに、ルリは訝しげな表情をしたがそれ以上気にせず、出されたミルクに手を伸ばした。
「ルリ坊、あんたは本当の親について知りたいとは思わないのかい?」
失言を取り繕うかのように、沈黙を破るホウメイ。
ルリは、どうしてそんなことを聞くのかわからない、という表情でホウメイを見ている。
(ありゃ・・・失言かねえ・・・あたしとしたことが)
「私にはアキトさんとイネスさんがいます。現状で充分幸せですから」
ルリは面白くもなさそうに答える。
実際、ホウメイが何でそんなことを聞くのか、全くわからなかったのだ。
だから、事実をそのまま述べただけだ。
「そうだね。・・・詰まらないこと聞いちまったね。忘れとくれ」
「はい。別に気にしてませんが」











「木連最高評議会は?」
「万事滞りなく。過半数は抑えてあります」
木連優人部隊本部。
その総司令官でもある草壁中将が、報告に満足げな笑みを浮かべる。
「ふむ。火星の様子はどうか」
白い学生服風の制服に身を包んだ下士官は、緊張した面持ちで答えた。
「はっ。現在、優人部隊2個大隊が向かっております。火星到着後、遺跡奪還作戦の準備に入ります」
「到着予定は?」
「10日後になります」
「遅いな」
「申し訳ございません。テツジンの実戦テストを行いながらですので」
「ふむ。次元跳躍門は使えんか」
草壁は納得して頷く。
内憂外患の内、和平派が力を持ち始めた評議会を抑えたことで内憂が片付き、余裕ができたらしい。

開戦当時、早期決着がつくと思われていた戦争は、地球側の、コードネーム『杜若』投入により、大きな齟齬を生じた。
最初に脅威と感じられた『撫子』は、どういうわけかなかなか地球圏を出なかったが、その分地球圏の制圧が遅れた。
ようやく火星へ向かったと思えば、すぐに地球へ戻るという不可解な行動を取るだけの戦艦だったので、さほど重要視されなかったが、その後大艦隊と共にやってきた『杜若』は厄介だった。
明白に遺跡を狙っており、またその火力・機動力ともに『撫子』を上回っていたのだ。
遺跡の調査も遅々として進まず、地球侵攻も無人兵器だけでは困難であることがはっきりしてきた時期に、『杜若』に遺跡を奪還されたことは痛かった。
とにかく食料生産工場を作れる土地があれば良い、とする穏健派が、和平派となって評議会が紛糾し始めたのだ。
地球圏が過去の過ちを認めて、木連にその賠償として火星の半分を割譲し、遺跡の所有権は第三者機関を設けて共同研究する。
過去の歴史に拘るタカ派にとってみれば、到底認められない提案だった。

力でねじ伏せることができなければ、その場しのぎの和平などいつ崩壊するかわからない。
本当の意味での平和とは、誰もが納得せざるを得ない実力が背景にあって初めて実現するものだ。
そして、納得させるのは、正義である木連でなければならない。
それ故地球側が力を盛り返し始めた今となっては、和平交渉など進められるものではないのだ。

「和平は我らが有利となった後の話だ。そのためには、火星の遺跡を早急に奪回せねばならん。あれの有用性が認められれば、甘い考えも吹き飛ぶだろう」
腕を組み、独り言のように言う。どう答えるべきか、迷う下士官を気にした風もなく、
「正義は木連にある。今度の侵攻作戦で、火星制圧はなされるだろう」
自信なのか、不安を打消すためのものか。
抑揚からは読み取れず、下士官は草壁の背後、額縁に飾られたゲキガンガーを見上げた。
「は。我らはゲキガンガーのお導きのままに戦うのみです」
木連軍人としての無難な答えを返す部下に、草壁は心中密かに苦笑する。
(ゲキガンカー、か。我らをどこに導くというのか・・・)
無言で退室を促し、生真面目な敬礼を返す部下を見ながら、草壁は独りごつ。

「理想だけでは木連を導けんよ・・・」
閉まる扉の向こうに、その言葉は聞こえなかった。










機動戦艦ナデシコ
another side

Monochrome




36 Those who desire peace, those who fight.

理想、現実、決意、目標。
それぞれがそれぞれの意思を持って、日々は過ぎていく。








次話へ進む

Mono〜の部屋// らいるさんの部屋// 投稿作品の部屋// トップ2


《あとがき》

アキトの台詞、ヤマダに取られちゃいましたね。
ナデシコで熱血してるのがヤマダ独りである以上仕方ないのですが。

アキト、少し冷静すぎたかな。

b83yrの感想
熱血で暑苦しいだけじゃないヤマダも、普段はふざけてるけどそれだけじゃないヒカルもいいですね
アキトの場合もルリを守らなきゃならないって気持ちと、TVの時とは違う安らぎも有るだろうし、このぐらいの冷静さなら違和感はは感じなかったです
木連の方では、なにやらきな臭い動きが、ユキナとかもそろそろ登場かな

ちょんちょん
「はい?、あっ、ユキナちゃん」
「で、あなたのSSでのあたしの出番は?」
「いっ、いや、それは(汗)」
「ユリカさんとジュンちゃんをくっ付けても良いかなとかいってるし」
そっ、そっ、そっ、それはその、だってほら、劇ナデでのユキナちゃんって、ジュンの事からかってるだけにも見えて、どのくらい本気なのか解からないし(汗っ)・・・
はっ、もしや!!
「なによ?」
いや、良く考えてみれば・・・ブツブツ・・・
「だから、なんだってゆ〜のよ?」
いや、更衣室でジュンが着替えてる時、まったく動じていないのって・・・
最初は、ジュンの事男と思っていないのかなぐらいに思ったんだけど・・
実は、ユキナちゃんとジュンちゃんはあの時点で既に御互いの裸を見せ合ってもOKなぐらい、深い関係にっ!!
ぱしっ<平手撃ちされる音
「馬鹿っ(赤)!!」
あっ、あの痛いんですけど(涙)
って、ユキナちゃん怒って行っちゃったよ・・真相はどうだったんだろ?
まあ、相手かジュンだからなあ(苦笑)
・・・・・はっ、また感想になっていない(汗)

次話へ進む

Mono〜の部屋// らいるさんの部屋// 投稿作品の部屋// トップ2



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送