月面を奪還して、少しだけど火星航路の安全も確保されたので、次は火星の奪還。
ナデシコももちろん参加するんだけど。
アスカ、ネルガル、クリムゾンの水面下での駆け引きはますます激しくなっています。
少しでも連合政府とお近づきになって、遺跡研究の主導権握ろうってことで。
さすがにネルガル時代みたいにいい加減な扱いはされないけど、取り敢えず協力できる限りは政府や軍に協力しようってことですね。

まあ、その前にナデシコの修理やミルトニアのデータ回収なんかも兼ねて、ウィテロ基地のドッグへ。
その間も、ナデシコは暇にはなりません。
木星蜥蜴が人間だった、それを事実として突きつけられて、少しは動揺があるかなと思ったんだけど、どうやら2年前のナデシコではなかったみたいです。

「少なくとも人間である以上は、話し合いの余地もあるってことだろ」

「永遠に続く戦争じゃないってわかっただけでも、少しはマシだよな」

「ここで降りるくらいなら、アスカと再契約したりしないもんね」

などなど。
皆さん、変わってきているみたいです。

パイロットの皆さんも、ブリッジでボソンジャンプのパターン解析に余念がありません。
「ふーん、パターンさえつかめば、大したこたねーな」
「グラビティブラストも正面に出なければ絶対あたらないしね」
「これならいけるかなあ〜?」
ゲキガンタイプの最大の脅威は、ボソンジャンプです。
あの巨大な体躯は、小型の相転移エンジンを積んで、生体ボソンジャンプに必要なディストーションフィールドとジャンプフィールドの発生を可能にするためです。
相転移エンジンがあるわけですから、当然小型のグラビティブラストも搭載していますが、イズミさんが言ったように胸部についているため、回り込んでしまえば掠りもしません。
3人とも、いつになく真剣ですね。



かく言う私は。
オモイカネと艦内のチェックしながら、少し思い返したりしてみて。

ホシノ・ルリ。
そういう名前になる前。
生まれてから4歳くらいまで、記憶はない。
同じくらいの子供たちと一緒に、施設みたいなところで暮らしてた。
本当の親なんて知らないけど、取り敢えず『ちち』や『はは』と言った存在はいたようだ。
でも、そんな人たちより沢山の時間を過ごしたのは『先生』。
1人じゃない。何人かの『先生』たちに、色々な知識を詰め込まれた。
遺伝子改造も、そこでされたみたい。
おかげで、5歳でネルガルに買い取られた時には、その年ではありえないほどの知識をもっていた。

ネルガルに買われてからは、実験の毎日。
そこでホシノ・ルリと言う名前になった。
火星でアキトさんの両親、テンカワ夫妻のもとで研究をしていたホシノ研究員が養父になったから。
それだけ。
最初にされたのはオペレーター用のナノマシンを注入すること。
アキトさんと同じナノマシンを受け、その時は何に使用するのかわからなかったチューリップ・クリスタル、C.C.の実験を行って。
そのC.C.がジャンプフィールドを形成したおかげで、私は遺跡の仮想空間へジャンプ。
そこでアキトさんと出会って。

その時の記憶が忘れられなかった私は、いつか解明しようと思ってオモイカネに再現させた。
でも、いつかそれが私の安定剤みたいになった。
その頃は邪魔にしか思っていなかった。
素性の知れない人が私の夢に度々現れることが、鬱陶しいだけで。
オモイカネとのリンク率に役立つことがなければ、あの頃の私だったら速攻記憶から削除しようと努力したでしょうね。

ネルガルで高度学習型AIのオペレーターとしての訓練を受けた私は、それからナデシコに乗って。
2196年の6月のこと。
戦艦のオペレーターとして、戦争にでることがどういうことか、考えることもなく。
ただ与えられた任務をこなすだけで、クルーと打ち解けようなんて、思いもしなかった。
皆は、私が特別なんだっていう意識をもっていると思ってたみたいだけど、逆に劣等感ばかりだったと思う。
劣等感、がおかしければ、単なるひがみ根性。
周りが楽しんだり愚痴ったり、それなりにナデシコの生活に慣れて現実を消化していく姿を見て、自分にはできないことだと決め付けた。
自分にできないことを認めるのが嫌だったから、優越感で誤魔化そうとして。
輪の中に入っていかないことが、選ばれた人間の証だって、訳のわからない屁理屈で。



それが変化していったのは、ナデシコに乗ってから1年になろうとしていた2197年。
だらけきったクルーを引き締めるかのようなタイミングで、スキャパレリ・プロジェクトが発表された時。

補充クルーとして乗艦したアキトさん。

再会は最悪。
しかも、疑惑つき。
それでアキトさんを監視したりして、今考えればストーカーよね。

疑いが晴れないまま到着した火星で。
イネス・フレサンジュ、通称説明『おばさん』登場。



何か、殺気を感じたような気がするんですけど。
・・・気のせいでしょうね。

ま、とにかくイネスさんと会ったおかげで、アキトさんの目的がわかって。
『家族』がどんなものなのか、知ったのもその時でした。
それでも、その時はまだ何となく、でしたけど。

それから、ナデシコはイネスさんを乗せて、地球へとんずら。
サセボドッグで、少しの休息。
あの時でしたね、アキトさんがチキンライスを作ってくれたのは。
主食で好きなものができた瞬間でした。



・・・・・・あと、アキトさんに『可愛い』って言われたこと。



こ、こほん。



あの休みの間に、私は少しずつ変わって行ったんですね。
私に色々なことを、それは研究所なんかじゃ教えられないことを、教えてくれたアキトさんが気になり始めたのも、あの時からでした。
でも、それが悪い形で出ちゃって。
危うくアキトさんの命を奪いそうになった、北極海での戦闘。
イネスさんの沈黙は恐かったですけど、アキトさんはその分優しかった。
自分の誕生日を忘れてたくらい、気が動転していた私にくれたプレゼント。
アキトさんとイネスさん、ミナトさんで揃えてくれたお出かけ用の一式。
アスカのパーティなんかで何度か着ただけですけど、着る度にミナトさんが冷やかすのは困りものです。

イネスさんの、『あら、まだ着られるってことは・・・』がむかつきますけど。



テニシアン島で。
ゲキガンガータイプが出現した初めての戦闘。
アキトさんが、昔会っていたことを覚えていてくれたことも教えてくれました。
私に黙っていたのは、私にもジャンパーの可能性があったから。
アキトさん、って呼ぶようになったのは、この時のどさくさまぎれにでしたね。

私が、自分の気持ちに気が付き始めたのも、このすぐ後。
でも、それが本当の恋なのかはまだわからなかったけど。
最近は私、もうわかってるんです。
これが俗に言う、初恋ってやつだってことくらい。



そして、2197年10月22日。
アキトさんが皆の前でボソンジャンプして、全てを明かした日。
カキツバタはジャンプアウトしてくるし。
ちょっと嬉しかったのは、ナデシコのクルーがアキトさんを信じてくれたこと。

それでも、その後は大変でしたけど。
チューリップがジャンプのためのゲートだってことや、生体ジャンプに遺跡の干渉を受けたナノマシンが絡んでいること、何だか色んなことが複雑に絡みあって、クルーも混乱してました。
クルーの混乱どころじゃなかったのが、連合軍とネルガル。

艦長の発案で全部公表しちゃったもんだから、それはもう、急転直下の驚天動地、旭日昇天が気息奄奄、危急存亡になっちゃって。

あ、全部『き』で言えるのね。

とにかく大変。
株価急落、役員更迭、減俸必至・・・って、もういいわよね。
重工部門も存続が困難な状態で、やむなくナデシコと傘下のネルガルCUIをアスカに売却。
シャクヤクもカトレアも維持できなくなって。
意地でカキツバタだけを残したけど。

そのどさくさで、1ヶ月の長期休暇。
初めてヒラヤマさんに会ったけど、いい人。
私を子供扱いしたのにはむっとしましたけど、その時こっそり言った、
『今度、アスカの機動兵器に”愛の訪れ”って花言葉の名前つけようと思ってるんだよ。ドクターから君たちのこと聞いてね』
って約束、守ってくれましたし。

この休暇では色々ありましたね。

アキトさんとカマクラへ行ったり。
料理で大事なこと教わったり。
イネスさんに敗北を認めさせたり。
それから、チョコレート作ったり。

チョコレートと言えば。
アキトさん、私のチョコレートをおいしいって言ってくれましたしね。
まだ、思い出すと照れてしまいますけど。
それにしても、わざわざ出航日をバレンタインに合わせさせるあたり、整備班の底力を感じました。
ヒラヤマさんを危うく三途の川の向こうに飛ばしそうになった、イネスさんの薬物も、ですけど。

それにしても。
ミナトさんが次の日に、いろいろくれたのはどうしてなんでしょうかね。

試験航海の毎日にだらけ始めた頃、第5次月面奪還作戦。
マキビ・ハリ、カキツバタのオペレーターの子とも会いました。
弟、ってどんな感じなんでしょう。
悪くはない気分ですけど。

まあ、取り敢えず月面を取り返して、いよいよ士気の上がる連合軍。
次は火星です。
私としては、アキトさんやイネスさん、ナデシコのクルーたちと一緒にいられるだけで満足なんですけどね。
戦争もいつまで続くのやら。
アキトさんは、戦争が続く限り、私やイネスさんを守るって言ってくれてます。
できたら、私を一生守ってくれると嬉しかったり。
こんな気持ちにさせた責任は取って欲しいですから。
アキトさん、プログラムの書き換えは大変なことなんですよ。

そんなこんなで、ナデシコはナデシコです。
艦長の言う通り、皆が自分らしくありたいために戦う戦艦。
何となく結束しながら、目の前の幸せを守るために。
これからも戦い続けるんです。










ああ、そうそう。
大事なこと忘れてました。

木連の軍人さん、逃げちゃいました。

ミナトさんとメグミさんがヤマダさんに頼んでるとこ、私とオモイカネはちゃんと見てましたけど、艦長が許しちゃったので。
「白鳥さんも私たちのことを知ってくれた。だから、お互いに何も知らないままよりは、進んだと思うから」
そんなものなんでしょうか。
「それに、やっぱり軍やアスカにそのまま突き出すってのも、ナデシコには似合わない気がして」
笑いながら言う艦長ですが。










機動戦艦ナデシコ
another side

Monochrome




35 Interchange missions

それが引金の1つになるとは、誰も思わなかった。





次話へ進む

Mono〜の部屋// らいるさんの部屋// 投稿作品の部屋// トップ2


《あとがき》

「何ですか、これは」
え・・・いや、TV版でもまとめってあったし・・・
「逃げ、ですね」
・・・・・まあ、そういう言い方もあるかと・・・
「感想下さる方や、こんなのにまで感想書かなきゃならない管理人さんに申し開きができるんですか」
あ、いえ・・・それは・・だから今回は感想なくても仕方ないよな〜、なんて思ってますが・・・
「反省の色が全く見られませんね。・・・オモイカネ」
はっ!

うぐはあっ!や、やめてくれ!ルリさんが巨乳化したとこなんて・・・ぎいやああああっ!!!

「第36話はきちんと書くそうです。すみません、もうちょっとお待ちくださいね」

b83yrの感想
ピクピク<反転表示で後書きの中に何かをみつけて倒れて痙攣しているらしい・・・・・

次話へ進む

Mono〜の部屋// らいるさんの部屋// 投稿作品の部屋// トップ2



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送