ナデシコがヨコハマ・ドックに停泊しての三日間の休暇の最後の日。


果たして此は運命か必然か・・・何にせよ、アキトとルリ。

この二人の想いの行方は、当人達も予期せぬ方向へと転がりだしていく。





周囲の者達を巻き込みながら・・・・・。















機動戦艦ナデシコ騒動記  〜気が付けば〜










●第三日目・前編







三日目の朝、ここはナデシコ艦内のハルカ・ミナトの自室。


ミナトは既に起きて鏡の前で身支度を整えていた。

・・・女性としての手入れを怠らないミナト。

そのミナトは唇にルージュを引くと、時計の時間を確認して少し気合いを入れる。

「よし!それじゃ行きますかぁ」

気合いを入れ、足取りも軽く自分の部屋から出ていくミナト。


此から向かう先は、ミナトが妹の様に思っているホシノ・ルリの部屋。

昨日、アキトと約束したようにルリと話す為にである。


・・・ミナトのもう一つの本当の目的は、ルリの気持ちを確かめる為でもあったが。





やがて、ミナトはルリの部屋の前までやって来た。

ミナトはルリの部屋の前まで来ると、部屋の呼び鈴を押す。


・・・ルリはコミュニケを切ってしまっていた為、ミナトは部屋まで来たのだ。


ミナトは呼び鈴を押しても反応が返ってこないので扉に向かって声をかけた。

「ルリルリ!私よぉ、ミナトよぉ・・・ねぇ、居るんでしょう。

  ちょっと、お話があるのぉ。中に入れて頂戴」

ミナトが扉に向かって声をかけて、ちょっとの間、待っていると・・・。

〔カッチッ〕という音と共に部屋の扉のロックが外れ、閉ざされていた扉が開いた。

開いた扉から中を覗くと部屋の中は薄暗く、人の気配が感じられない。

ミナトは部屋の中に入り、ルリを探す。

だが、部屋の中は薄暗くて全容が良く分からない。

それで、壁に設置されている照明のスイッチを操作した。

急に明るくなった部屋の中で目を細めて部屋の中を見回すミナト。


部屋の中を見回したミナトは、奥の壁際のベットの上にパジャマ姿のルリを見付けた。

ルリはベットの上に両膝を抱えて座り込んでいる。

ミナトはベットの傍まで行くと、ベットの脇の床に両膝を突いてルリの顔を覗き込むようして見た。

「・・・ルリルリ」

ルリに声をかけても反応が返ってこない。

ルリはただ、顔を伏せて俯いているだけだ。


・・・ルリは一晩中起きていて寝ていなかったようだ。


そんなルリの様子にミナトは少し後悔していた。


(これは・・・・・明日と言わず昨日の内に話しをしておくべきだったかも・・・)


ミナトは更に少し考える。


(ここは遠回しで無く、ハッキリ聞いた方がよさそうねぇ・・・)


そう思ったミナトは、自分がこの部屋に来た本題でもある事をルリに聞く。

「ルリルリ・・・あなた、アキト君の事が好きなんでしょう?」

突然のミナトの言葉にルリは驚いて顔を上げた。

「なっ!?・・・・・何を・・・」

ルリの驚いた顔を見てミナトは『やっぱり』と、自分の考えが間違ってない事を確信した。

そこで、狼狽しているルリにミナトは少し笑って答える。

「お姉さんを甘く見てはダメよぉルリルリ。私の方が女として先輩なんだからぁ。

  ルリルリがアキト君の事を、好きになっちゃたのは分かってるわよぉ」

そう言ったミナトの顔を愕然しながら見るルリ。

そのルリの顔がみるみる赤くなっていく。

「そ、そんなことは・・・・・・そんな・・・こ・とは・・・」

ルリの声は終わりの方では小さくなってしまう。

それと共に赤くなった顔で俯いてしまった。



ミナトは、赤くなったルリの顔を見て少し顔を綻ばせる。

(何時の間にか、ルリルリも恋する女の子になってたのねぇ。

  まあ、相手がアキト君というのが・・・ちょっと、アレだけど・・・・・)

・・・ルリが好きになった相手が、アキトという事に若干の不安があるミナト。

それでも、ミナトは自分が妹の様に思っているルリの力になれればと思った。


更にミナトは、ルリのこれまでの様子から考える。


(この子は誰かが後押ししないと、無理して自分の想いを心の奥に押さえ込むわねぇ。)


そう考えたミナトはルリに優しく言葉をかける。

「ねえ、ルリルリ・・・自分の気持ちを抑えつけないで。

  素直になって、思い切ってアキト君に告白しちゃいなさい。」

ミナトの言葉に目を見開いて驚くルリ。

「な、なにを!?言うんですかミナトさん!・・・そんな事・・・出来る分け・・・・・ないです・・・」

ルリの終わりの方では力を無くす言葉に、ミナトは聞き返す。

「あら?どうして出来ないのルリルリ」

ミナトの『どうして?』と言う言葉に答えを返すルリ。

「そんなこと・・・テンカワさんの迷惑になるし・・・艦長達も・・います・・・

  それに、私は・・・世間一般から見たらまだ・・・・・子供です・・」

ルリの消極的とも言える言葉にミナトは優しく諭すように・・・。

「ルリルリ・・・アキト君は迷惑とは思わないかもよぉ。

  それと、艦長達の事は気にすることはないわぁ。

  だって、アキト君はまだ今のところ、ハッキリとは誰も選んでないのよぉ」

ここでミナトは、ルリの様子を窺いながら、その目を真っ直ぐに見て言った。

「確かにルリルリは世間からみたら、まだ子供かもしれない・・・

  それでもルリルリはアキト君の事、好きなんでしょう?」

少しの間の後に、小さく返事を返すルリ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」

ミナトはルリの小さな返事を聞き、優しく目を細める。

「だったら、今告白しないと後で絶対に後悔するわよぉ」

ルリは、ミナトの『後悔する』と言う言葉に心が揺れる。

それでもルリには迷いがある。

・・・心の奥にある、コンプレックスとなっているものが。

「・・・・・私は・・・遺伝操作で作られた・・・そんな私が・・・・・」

そこまでルリが言った時、ミナトは怒ったように声をあげた。

「ルリルリ!あなたは人間なの!人間の女の子なんだから!

  だからアキト君の事を好きになり、悩み、苦しんでいるのよ!」

ここで言葉を切り、ミナトは優しくルリに言う。

「あなたはね・・・人を好きになり、恋もする、普通の女の子なのよ」

ルリはミナトの言葉に呆然と呟き返す。

「・・・・・・私が・・・普通の・・・・・女の子?・・・」

そのルリの呟き、ミナトは慈愛の籠もった瞳で見詰める。

呆然とするルリを優しく見詰めながらミナトは内心考える。

(やっぱりルリルリには強い後押しが必要ね。少々、強引になるけど・・・)



ミナトはルリが呆然としている内に話しを進めていく。

「心配しないでルリルリ、恋愛の先輩である、このお姉さんに全て任せなさい。

  もちろんアキト君との段取りとかも、このお姉さんがしてあげるわぁ」

更に、だめ押しの為か、ミナトは自分の顔をルリの顔に付くぐらい近づけて聞く。

「ルリルリ、お姉さんに任せてくれるわよねぇ」

ミナトの目が異様な光を灯しているのを感じて、ルリは思わず返事を返した。

「は、はい・・・」

ルリの返事を聞くと、ミナトは素早くベットの脇から離れて部屋の扉の方に向かった。

「そうと決まったら早速、準備しないとねぇ。

  ルリルリ早く着替えを済ませて、綺麗にお洒落しとくのよぉ

  それじゃお姉さんは色々と準備があるから・・・」

扉に向かいながらも後ろのルリの方に顔を振り向けて、矢継ぎ早に言うミナト。

ルリは口を出す間も無い、ただ呆然としている。

「あっ、それとコミュニケのスイッチは入れておきなさい。

  準備が出来たら、後から連絡を入れるからねぇ。」

そう言ったミナトは既に部屋の扉から出ていくところだった。

それに漸く我に返ったルリがミナトを呼び止めようとするが・・・。

「ち、ちょっと待ってくだ・・・・・さい・・・」

呼び止めるルリの言葉も虚しく、既にミナトは部屋から去った後だった。

後に残されたルリは、事態の進展に狼狽し混乱している。

「て、テンカワさんに・・・私が・・・・・こ、告白!?」

『アキトに告白する』、その事を考えたルリは首まで真っ赤になって更に狼狽する。

「わ、私・・・ど、どうしょう・・・・・

  そ、そうだ!・・・き、着替えなくちゃ・・・」

ベットから降りて、あたふたし出すルリ。


・・・既に、あれこれ悩んでいる余裕など無くなっている。


ここまで狼狽しているルリは初めてであった。












ミナトは、ルリの部屋から出て自分の部屋に戻る途中であった。

通路を歩いていると、前から来る一人の女性と出会う。

その女性はメグミであった。


ミナトはメグミに声をかける。

「あら?メグミちゃん、朝から何処に行くのぉ。」

メグミは私服を着て外出する様子であった。

「あっ、ミナトさん・・・あの、ちょっと外に出ようかなっと。」

「ふ〜ん、そうなのぉ」

ミナトはメグミを上から下まで見て、(ただ外出するだけにしては、良い洋服を着てるわねぇ)と、思った。

「そ、それじゃ私は急いでますから・・・」

メグミは急いでいるようで、ミナトに断りをいれてその場を去る。


急ぎ去るメグミの後ろ姿にミナトは思案した。

(まさか・・・いえ、間違いないわねぇ。)

そう思ったミナトは急いでコミュニケを操作する。

そうしてミナトが連絡を入れた先は、アキトであった。


(昨日は艦長が他の二人を出し抜いて朝からアキト君の部屋に来たのよねぇ

  メグちゃんも、それは知ってるから・・・

  今日は自分が抜け駆けするつもりみたいねぇ)


ミナトが、そう考えてる間にコミュニケがアキトへと繋がる。

【あっ・・・ミナトさん、おはようございます】

現れたウインドウからは、少し疲れたような声でアキトが朝の挨拶をしてきた。

ミナトはアキトの挨拶を聞くなり急いでアキトに指示する。

「挨拶はいいからアキト君、急いでその部屋から出るのよぉ!」

ミナトの言葉に意味が分からず聞き返すアキト。

【はぁ!・・・一体どうしたんスか?】

ミナトは、そんなアキトに理由を告げた。

「今、メグちゃんがあなたの部屋に向かってるわ。

  このままだとアキト君、彼女に捕まるわよぉ。

  直に艦長達も動き出すはずだから、そのまま部屋に居るのは危険よぉ」

ミナトはワザと睨み付ける様な目をしてアキトに言う。

「アキト君、彼女達に捕まったら・・・。

  今日一日中、アッチコッチに引っ張り廻されるわねぇ。

  そうなれば、ルリルリに会って謝る機会を逃す事になるわよぉ。」

アキトはミナトのその言葉に、顔をちょっと強張らせて急いで返事を返す。

【わ、分かりました!急いで部屋を出ます。

  でも・・・その後、何処に?・・・】

アキトの困惑した様な言葉に、ミナトは更にアキトに指示した。

「アキト君、部屋を出た後に誰にも見付からないようにして、私の部屋に来なさい。

  まさか艦長達もアキト君が私の部屋に居るとは思わないでしょう。」

アキトはミナトの指示に頷いた後、コミュニケを切ろうとするが。

ミナトは、言葉を付け足して続けた。

「アキト君!コミュニケのスイッチは切っておくのよ。

  艦長達から通信が入るかも知れないからね。

  それじゃ、私は部屋で待ってるわぁ」

そう言ってミナトの方からコミュニケは切れた。

アキトはコミュニケが切れた後、自分のコミュニケのスイッチを切る。

手早く身支度を整えた後、急いで部屋を出る為に扉に向かうアキト。

扉を開けて通路の左右を確認して誰もいない事を確かめ、アキトはミナトの部屋に向かった。




ミナトはアキトにコミュニケで連絡を入れた後、メグミが去った方向を向いて呟く。

「ごめんねぇメグちゃん・・・私はルリルリの味方なのよぉ。」

そう呟くミナトの顔は・・・・・すまなそうには見えなかったが。

取りあえず、ミナトは自分の部屋に戻る為に再び通路を歩き出す。

歩きながらミナトは心の中で呟いた。

(艦長達のことをうっかり忘れてたわねぇ。アキト君、艦長達に捕まるんじゃないわよぉ・・・)

少し心配しながらもミナトは自分の部屋へと帰っていった。










自室から出たアキトは周囲を警戒しながら通路を進む。

人の気配がすると素早く身を隠したりして、その姿は傍からみれば怪しいことこの上ない。

メグミだけでなく、既にユリカ達も行動を開始していたので、アキトは見付からない様に苦労していた。

一度は、ユリカ達に見付かりそうになりながらも何とかやり過ごしながら進み。

遠回りしながらも、それでもどうにか女性クルーの居住区まで来たアキト。

ここまで、誰にも見付からずに来れたのは運が良かったと言わざるをえない。

その所為でかなりの時間を食ってしまったアキトは、焦りながらもミナトの部屋を目指す。




やがてアキトはミナトの部屋の前まできて、呼び鈴を押して来訪を告げた。

呼び鈴を押してすぐに、ミナトからの返事が返ってきて扉が開いていく。

アキトは周囲を見回し、誰も居ない事を確認してすぐさま部屋の中に入った。

部屋に入ると、ミナトがアキトに挨拶を言ってくる。

「いらっしゃい、アキト君。

  遅いから艦長達に捕まってるんじゃないかと心配してたわよぉ。」

ミナトの挨拶を聞き、乾いた笑いと共にアキトは挨拶を返した。

「は・はは・・・ミ・ミナトさん、お邪魔します。」

ミナトに挨拶をした後、アキトは部屋に入ってから、どうしていいか分からず突っ立ったままである。

ミナトは突っ立ったままのアキトに適当に座る様に勧めると、飲み物はどうするか聞いた。

「アキト君、何か飲む?」

アキトは喉が渇いていたので、遠慮しながらも飲み物を貰う事にする。

「・・・あ、いただきます。」

アキトは此処に来るまで、ユリカ達に見付からない様に細心の注意を払っていた。

その所為か緊張の連続で、喉がカラカラに乾いていたのだ。


ミナトは、冷蔵庫の中を覗き込みながらアキトに聞く。

「コーヒー、紅茶、冷たいのならオレンジ・ジュースとかあるけど・・・どれにする?」

アキトは喉の渇きを癒す為に、冷たいジュースを貰う事にした。

「それじゃ、すみません・・・オレンジ・ジュースをお願いします。」

少しして、ミナトはペットボトルとコップを持ってアキトのところに戻ってきた。

コップにオレンジ・ジュースを注ぐと、アキトに差し出すミナト。

「はい、どうぞアキト君。」

アキトは差し出されたコップを受け取りミナトに礼を言う。

「あ、すみません・・・。」

受け取ったコップの中身の、オレンジ・ジュースを一気に飲み干すアキト。

ミナトはそんなアキトを、少し笑いながら見ていた。




アキトがジュースを飲み干して、一息ついたのを見てミナトは真面目な顔になり話をきりだす。

「ねぇアキト君・・・私、あなたには前もって言っておきたい事があるのよぉ。」

ミナトの真剣な表情に、こちらも顔を引き締めるアキト。

この場合、話の内容はルリの事しかないと、アキトは予想をしていたが。

それでも、一応はミナトに聞き返す。

「何ですか?」

真剣な表情のまま、ミナトは口を開いた。

「ルリルリの事よ。」

ミナトの口から出た言葉は、アキトの予想通りではあったが。

それでも半分呟くように声に出すアキト。

「ルリちゃんの事・・・」

アキトの呟きに答える様にミナトは話を続ける。

「そう、ルリルリの事・・・アキト君、あなた、あの子の気持ちに気付いてる?」

「・・・ルリちゃんの気持ち?」

少し困惑した様な顔で、アキトはミナトに聞き返した。


アキトが困惑したのは、ミナトの口から出た言葉が予想していたものとは違っていた為だ。

アキトはミナトから『どれだけルリが傷ついているか』、その事を言われると思っていた。

まさか『ルリの気持ち』について気付いているかなどと、聞かれるとはアキトは思っても見なかった。


ミナトはアキトの困惑した顔を見て、溜息と共にアキトに言う。

「ふぅ、その様子だと、やっぱりまだ気付いてないわねぇ。」

「あのぉ・・・それって、一体どういう・・・・・」

アキトはどういう事かとミナトに聞き返したが、ミナトはそれには答えない。

「アキト君、それはあの娘本人から聞きなさい・・・

  私が言えるのは、ルリルリはアキト君の事を嫌ってはいないって事よぉ。

  むしろ、その逆なのよねぇ・・・」

ミナトは、直接ルリに告白させる気でいたから詳しくは言わない。

こういう事は出来るだけ本人の口から直接、というミナトの拘りみたいなものである。

ただ、アキトには、『ルリルリはあなたの事が好きなのよ』と、遠回りに言った訳ではあるが・・・。


当のアキトは更に困惑顔をしていた。

それを見てミナトは心の中で溜息を吐く。

(はぁ、アキト君って、やっぱり鈍感よねぇ・・・)

その事を、アキトに察しろと言うのは無理があったか。

それと同時にかなりの不安が募る。


ミナトは、アキトが『今すぐ』にはルリの事を恋愛の対象として見る事は難しいと考えていた。

ルリの年齢を考えれば、それも仕方がないとはいえ。

それでもアキトにはルリの気持ちを察して、それなりの対応をして貰わなければ困る。

このままだと、鈍感故に下手な対応でもされたらルリの心を深く傷付けかねない。


(・・・これは、アキト君にもう少し言っておく必要があるわねぇ。)


今だ分かっていないアキトに、ミナトはこめかみを押さえたい衝動を抑えて、続けて言う。

「アキト君・・・あなた、ルリルリの事をまだまだ子供だと思ってるでしょう。

  確かに、周りからみればあの子はまだ子供かも知れないわ・・・

  でもね、ルリルリだって何時までも子供じゃないのよ。

  こうしている間にも一歩一歩、大人に近づいていってるの・・・。

  (初めて人を好きに・・・アキト君、あなたに恋することにもよってね・・・・・。)」

最後の言葉はもちろん声には出さず、ミナトはアキトに諭す様に言った。




アキトは、ミナトに言われた事を頭の中で整理して反芻するように考えていた。

(ルリちゃんの気持ち・・・・・俺があの子の気持ちに気付いてない?

  何時までも子供じゃないって・・・・・ミナトさん、一体何を?)

考え込んでいるアキトにミナトは更に言葉を続ける。

「アキト君、あの子の事を一人の女の子として見てあげて・・・・・お願いよぉ。」

アキトは驚いた様な顔をしてミナトを見返す。

『一人の女の子』、その言葉は最近、いや昨日聞いた言葉であった。

アキトの料理の師であるホウメイが昨日の別れ際に言った言葉が脳裏に甦る。

  『テンカワ、あんたはルリ坊の事を、まだ子供だと思ってるかも知れないけどねぇ。

    あの子だってね、一人の女の子なんだよ。それだけは、おぼえておきな。』

その時のホウメイの言葉と、ミナトの言った言葉から、その意味を探り出そうするアキト。

(子供じゃない・・・一人の女の子・・・ルリちゃんの気持ち・・・俺の事を嫌ってない・・・その逆って・・・・・

  ・・・・・・・まっ・・・まさか!?・・・そ・そんな・・・・・)

鈍感なアキトも流石に何かに気付いたようで、思わずミナトに問い掛ける。

「ミ・ミナトさん・・・そ・それって!?」

アキトの狼狽えた様子に、ミナトは漸く気付いたのかと思い、少しばかり安堵した。

そして、アキトの問い掛けに答える。

「アキト君、その事は私からでなく、ルリルリ本人から直接聞きなさい。」

更にミナトは、狼狽えているアキトに追い打ちを掛けるかの如く告げた。

「今から、この部屋にルリルリを呼ぶから・・・・・てっ、逃げたりしないわよねぇ、ア・キ・ト・君♪」

ルリを、この部屋に呼ぶと言ったあたりで、扉に向かいかけたアキト。

そのアキトの後ろ襟を掴み、ミナトはにこやかに笑いかけた。


・・・この時のアキトの目には、ミナトの背に黒い羽と尻尾の幻が見えたという。










アキトがミナトの部屋で捕まっ・・・話をしている頃。

艦内の、もう一つの部屋ではルリが何やらオモイカネを使い情報を収集していた。


そのルリが今着ている服は、淡いピンク色をした。前にピースランドに行った時に着ていたものである。

髪はいつもの髪留めで無く、赤いリボンで留めていた。

あの時、ミナトに言われて慌ててクローゼットの中を見たルリではあったが・・・。


(・・・私、私服はそんなに持ってませんでした・・・・・)


自分のクローゼットの中身を見たときには心から落胆したルリである。


(こんな事なら、ミナトさんが勧めた様にもう少し服に気を遣うべきだったかも・・・・・)


ルリは、そんな事を考えてみたものの無い物ねだりは出来ず。

仕方なく、前に一度ピースランドで着た服を引っ張り出した次第である。

それでも、ルリなりに精一杯お洒落をしたつもりだ。


情報を収集していたルリは、知りたい情報は全て見たのかウィンドウを閉じた。


(これで準備は完璧・・・・・あっ、あれを忘れてた・・・)


何かを思いだしたルリは急いで鏡の前に行く。そして、何やらごそごそと探しだすルリ。

目的の物が見付かったのか、右手には何かが握られていた。

それは、小さく短い棒状の物。


(・・・・・前にミナトさんから貰ったもの・・・私には必要無いと思ってた。)


その棒状の物の蓋を引っ張り開けるルリ。

棒状の物とはリップだった。

ルリはそれを鏡を見ながら恐る恐ると唇に塗っていく。


・・・その色は薄い桜色。


おそらくは、ミナトがルリの年齢を考慮して選んだものだろう。

鏡に映った自分の顔、特に唇を凝視するルリ。

初めてにしては上手く塗れた様である。

気恥ずかしさからか、その頬は薄く赤くなっていた。




ルリが鏡の前で顔を赤くしていた時、コミュニケが鳴った。

一瞬、身体をビクつかせたルリは、二・三回深呼吸をして気持ちを落ち着かせてからコミュニケに出た。


ミナトがこの部屋から出ていった後に、ルリはもう色々と考えるのはやめた。

『アキトに告白する』その事に自分の気持ちを定めたのだ。


コミュニケにルリが出るとウインドウが開き、ミナトが前振り無く言ってくる。

【ルリルリ♪準備が出来たわよぉ】

ルリはミナトの前振りのない言葉に普段の表情で答える。

「分かりましたミナトさん・・・こちらも今、準備が整いました」

ミナトはルリの、準備は整ったと、言う言葉に・・・。

【ん〜、ルリルリ・・・確かに準備は万端のようねぇ】

そう言いながらも、ミナトはウィンドウの向こうから、ルリの姿を観察する。


チェックするかのように眺めていたミナトの視線は、ルリの顔で止まり、一点をジッと見て・・・。

【あら?ルリルリ・・・私が贈ったリップを使ってくれたんだ・・・お姉さん、嬉しいわぁ♪】

ミナトの言葉に、ルリは少し心臓の鼓動が早まり、顔が赤くなるのを感じながらも、平静を装い言葉を返す。

「こ・こうゆう時でないと・・・その・・・使う事がありませんから・・・。

  ミナトさん・・・それで、私は何処に行けばいいんですか?」

心の動揺を誤魔化すように言ったルリの問いにミナトは・・・。

【私の部屋よぉ・・・】

「ミナトさんの部屋ですか・・・では、直ぐに窺います」

ミナトに返事を返してルリは立ち上がる。

【じゃ、待てるわねぇルリルリ♪】

ミナトはルリにそう言うと、コミュニケのウィンドウを閉じた。

ルリは、一回思いっきり深呼吸をすると扉に向かって歩き出す。

だが、一・二歩歩いた所で立ち止まり、振り向いて鏡を見た。

鏡に映る自分の姿を観察してルリは心の中で呟く。


(・・・・・何処も、おかしなところはないよね・・・)


ルリは鏡に映る自分の姿に満足したのか、再び扉に向かって歩き出した。

不安と期待とが混ざった不思議な高揚感を胸に、ルリはミナトの部屋に向かった。




ルリはミナトの部屋に向かい、艦内通路を歩く。

ミナトの部屋に近づくにつれ、胸の内で高鳴る心臓。

ミナトの部屋の前まで来た時には、ルリは無意識に両手で小さな胸を押さえていた。

少しでも心を落ち着かせようと、部屋の前で大きく深呼吸をするルリ。

やがて心が落ち着いたのか、ルリは意を決して部屋の呼び鈴を押した。

ルリが呼び鈴を押して少し待つと、部屋の中からミナトの返事があり扉が開く。

ルリは、その開いた扉を抜け、部屋の中へと入っていった。





ここで、ルリがミナトの部屋に入っていった時、遠くからそれ見ていた者がいた。

ホウメイガールズの一人『ウエムラ・エリ』である。

普段見たことの無いルリの私服姿に驚き、何とは無しにルリの姿を遠くから見ていたのだ。

「エリ、どうしたの?早く行かないと皆待ってるよ。」

エリが後ろから掛けられた声に振り向くと、そこには同僚の『サトウ・ミカコ』がいた。

「ううん、何でもないわ。」

エリはミカコにそう返事を返し、皆が待つゲートに早足で向かう。

今日はホウメイガールズの皆で街に買い物に出掛ける約束をしていたのだ。

「もう、待ってよ!エリ!」

後ろから聞こえるミカコの声を聞きながら二人はゲートへと急いだ。


もし、あの部屋にアキトが居る事を知っていたら、彼女達は興味津々になっていただろう。

そんな事を知る訳も無いエリは、この時は珍しいものを見たと思っただけだった。





エリ達が去った頃、ミナトの部屋の中では・・・。


ルリがミナトの部屋に来てからアキトはソワソワとして落ち着きが無い。

アキトとルリはお互い緊張して向かい合い、その姿はまるでお見合い状態である。

アキトが落ち着きなく視線を周りに彷徨わせていると、ミナトから肘でせつかれ小声で注意される。

『アキト君、ルリルリを見て何か言うことがあるでしょう』

『え!?な、なんですか?』

『・・・もう、ルリルリはアキト君の為にお洒落してきたのよ。分かるでしょう』

『・・・・・あっ』

などというやり取りが、アキトとミナトの間で交わされた。

その間、ルリはアキトの顔をまともに見れないのか、ずっと俯いたままだった。

アキトは意を決してルリに話かける。

「る、ルリちゃん!」

緊張の為かアキトの声は必要以上に大きくなってしまっていた。

ルリはアキトが大きな声で急に自分の名前を呼ぶので驚いて顔を上げる。

「な、何ですか。」

ルリの顔を直接見て意識し過ぎたのか、アキトは声が上擦ってしまう。

「る、る、ルリちゃん。そ、その・・・」

少し間を空けた後、アキトは唾をごくりとひと飲みして言う。

「今日の・・・その・・・服とか可愛くて、に、似合ってるよ・・・。

  あっ、いや、も、もちろん!服だけじゃなくてルリちゃん自身も可愛いから・・・なん・・だけど・・・」

アキトは喋っている途中で段々と顔が真っ赤になって、最後は言葉が小さくなっていく。

ルリはアキトの言葉を聞いて、こちらも顔が真っ赤になる。

再び俯いたルリは首筋まで真っ赤になって上目遣いでアキトを見ながら小さく呟いた。

「・・・・・ばかぁ(赤)」

ルリの、顔を赤くして上目遣いで見るそんな姿がアキトの心の琴線に触れたのか。

アキトは心の中で呆然と呟く。


(ルリちゃん・・か、かわいい・・・・・)


もはや、お互い顔が真っ赤になって見つめ合い、その場に独特の雰囲気を作り出す二人。

このときの二人は、本人達が否定したとしても間違いなく”らぶらぶ”であった。 



そんな状況であるミナトの部屋は、周りにいる者には何とも居づらい雰囲気である。

そして、この場合周りに居るのは唯一人、ミナトだけである。


(ち、ちょっとアキト君、あなた・・・まさか?(汗))


ミナトは二人の様子に心の中で慌てる。

ミナトの中の当初の計画では、ルリがアキトに告白して・・・。

それに、アキトがルリを傷付けないように『友達から始めましょう』と、いうような方向にいくはずだった。

・・・アキトと打ち合わせなどしたわけではないが。

(それでルリルリが私に色々と相談してきて、手取り足取り・・・”色んなこと”を教えて上げる計画。

  私の『ルリルリ”女の子育成”計画』が・・・・・。)

・・・ミナト、何やら怪しげな計画を画策していたようである。

アキトの予想外の反応に少し愕然としていたミナト。

それでも初々しくもラブラブな雰囲気を周りに放射する二人を眺めて。


(でも・・・これはこれでいいかも♪それと、この様子だとルリルリに告白させる必要は無いわねぇ。)


ミナトは素早く気持ちを切り替えて立ち直って考える。


(結局、ルリルリが今後も私に相談するのは間違いないだろうし・・・。

  後は、当人たちの気持ち次第かしら。)


今だ真っ赤な顔で自分という存在を忘れて向かい合う二人にミナトは微笑む。


(それにしても・・・私、お邪魔虫かしらねぇ?)


そんな事を考えていたミナトは、それならと思い、二人に告げる。

「二人とも、私はちょっと用事があるから出掛けるわねぇ」

黙ったまま見つめ合うアキトとルリはミナトの声に我に返った。

「ミ・ミナトさん。で、出掛けるって・・・」

アキトはミナトに慌てて顔を向けて言った。

ルリの方は心細そうにミナトの顔を見ている。

「・・・・・ミナトさん・・・」

ミナトはルリの傍にいき、耳元で囁く。

『・・・ルリルリ、アキト君と二人きりにしてあげるわぁ。頑張るのよぉ♪』

「み、ミナトさん・・・そんな(赤)」

そして、今度はアキトの元に行き耳元で囁く。

『・・・アキト君、ルリルリが可愛いからって襲っちゃだめよぉ♪』

「なっ!?何を言うんですか!ミナトさん!!!」

アキトの方は更に顔を真っ赤にしてミナトに声を上げて抗議する。

ミナトはアキトの抗議を軽く受け流して部屋の出口に向かった。

「それじゃ、私は暫く帰って来ないからねぇ。」

ミナトはそう言って扉から、手の平をひらひらさせながら出ていく。

後に残されたアキトとルリは、現在部屋の中に二人っきりという事に思い至り。

お互い向かい合いながら、相手を意識して顔を赤くしたまま固まっていた。





通路に出たミナトは部屋の中に居た時とは違い真剣な表情をして呟いた。

「・・・あの子は幸せにならなきゃだめよ。」

それはミナトの中にある本音。

ルリと初めて出会った時から思っていた事。


だが、真剣な表情も束の間、直ぐにニヤリと笑いを浮かべるミナト。

(それにしても、あんなに真っ赤になってる初々しいルリルリを見るのは良いわねぇ・・・。

  恋は人を変えると言うけれど・・・ルリルリたらぁ普通の女の子してたわぁ♪)

ミナトは含み笑いを漏らしながら歩く。

「フフフ・・・これは、これから先が楽しみねぇ♪」

人が見ていたら一歩引く程、この時のミナトは怪しげであった。





ミナトが怪しさを振りまきながら廊下を歩き去った後、部屋の中のアキト達はというと・・・。

最初は二人共に固まっていたが、やがて落ち着きなくお互い相手をチラチラと見る。

目が合うとお互い顔を赤くして俯くといった事を繰り返していた。


そんな事を繰り返していたが、やがてルリの方が意を決してアキトに話しかける。

「あ、あのテンカワさん・・・」

ルリの方から話しかけられたアキトは緊張して答えた。

「な、なんだい・・・ルリちゃん」

アキトが自分の顔を見ているのを確かめるとルリは真剣な表情で姿勢を正す。

そんな真剣なルリの表情を見てアキトの方も姿勢を正した。


お互い姿勢を正した中、やがてルリは真っ直ぐにアキトの顔を見詰め話始める。

「テンカワさんに聞いて欲しい事があります。

  ・・・私は・・・・・私はテンカワさんの事が好きです!」

ルリのこの突然とも言える告白に表面上はアキトに驚いた様子は無かった。

だが、辛うじて表情には出なかったもののアキトの心臓は早鐘を打ち跳ね上がる。


そんなアキトの様子を恐る恐る窺いながらルリは話を続けた。

「・・・私はテンカワさんから見れば・・・・・まだ子供です。

  例え・・テンカワさんが私の事をそう言う風に見てくれなくても私は・・・・・。

  こんな事、テンカワさんにとっては・・迷惑かも知れないけど・・・・・でも・・・。

  私のこの気持ちだけは・・・このテンカワさんへの想いだけは・・・・・知っていてほしい。

  だから・・・。」

「ルリちゃん!ちょっと待って!」

ルリがそこまで喋った時、アキトはそれを遮る。

話の途中で遮られてルリは不安そうにアキトの顔を見詰めた。


アキトは考えていた。


  ルリちゃんの気持ちは、この部屋に来た時にミナトさんから遠回しに示唆された。

  そして今、ルリちゃん自身からその想いを聞かされた。

  では、自分のルリちゃんに対する気持ちはどうなのだろうか。

  この二日間、自分はルリちゃんの事ばかり考えて頭から離れなかった。

  あの時感じた温もり、寂しさ、嫌われたと思った時の苦しい程の心の痛み。

  ルリちゃんに好きだと言われた時の震えそうな程の胸の高鳴り・・・。


答えは既に出ていた。


アキトは自分の気持ちを確かめる。


(守りたい・・・愛おしい・・・俺はルリちゃんにずっと傍にいてほしい。)


最早、誤魔化すことの出来ない・・・それがアキトの中の答え。


アキトは優しくルリを見詰めながら口を開く。

「ルリちゃん、俺もルリちゃんの事が好きだよ」

「・・・・・えっ!?」

ルリは一瞬アキトが何を言ったのか良く分からなかった。

それでもアキトの言った言葉の意味が少しづつ意識に浸透していくルリ。

時が経つに従って、その顔が驚きから次第に泣きそうな顔へと変わっていった。

「テンカワ・さん・・・今言った事・・ほんとう・・・・・ですか?」

「本当だよ。ルリちゃん」

ルリはアキトの傍ににじり寄り、その胸元を手に掴みもう一度聞いた。

「私のことを・・・ひとりの・・女の子として?・・・・・」

ルリは泣きそうになりながら震える声で聞く。

「そうだよ。俺はルリちゃんの事を、一人の女の子として好きだ・・・」

ルリの問い掛けに、アキトは顔を赤くして答えた。

アキトの言葉を聞いたルリは、そのままアキトの胸に顔を埋める。

ルリは泣いているのか、その小さな身体は震えていた。

アキトはそんなルリの小さく震える身体を、優しく愛おしそうに抱き締める。


暫くの間、二人はお互いの温もりを感じながら静かに抱き合っていた。











やがてルリは、身体の震えが収まって、恐る恐るといった感じで顔を上げる。

アキトの顔を下から見上げて、ルリはアキトに声をかけた。

「テンカワさ「ルリちゃん」」

ルリの言葉をアキトは遮り、顔を赤くして続けて言う。

「ルリちゃん、テンカワさん何て他人行儀な呼び方じゃなくてさ。

  俺のことはアキトって・・・その・・出来れば、そう呼んでほしいなぁ。」

アキトの申し出にルリは、自分の頬が熱く上気していくのを感じながらアキトの名を呼んだ。

「あ・・・アキト・・さん(赤)」

「・・・ルリちゃん」

お互いの名を呼び合い見つめ合う二人に、静かで温かい時間が訪れる。


アキトは優しい目でルリ見詰め、ルリは潤んだ瞳でアキトを見詰める。

この一時の時間の中で、高鳴る自分の心臓の鼓動感じながらルリはある事を考えていた。


(・・・私が調べた処、その・・・告白して・・お互いの気持ちを確かめ合った・・こ、恋人同士は・・・。

  たしか・・その場で・・・き、キスを・・するという・・・・・(真っ赤)。)


ミナトの部屋に来る前にルリは何やら情報収集していた。

どうやら恋愛ドラマかそれに近い何かで情報を収集したようだ。

ルリはそれを実行に移す為、静かに目を瞑り、頬が赤く染まった顔を上向きにしてアキトへと向ける。

しかし、この時ルリは自分の年齢をまったく考慮していなかった。



ルリが目を瞑り顔を向ける当のお相手のアキトは、心の中で叫んでいた。


(ぬぅおおおおお!こ、これは・・・この体勢わぁぁぁ!!!

  ヤバイ!ヤバイぞぉ!アキトォォォォォォ!!!!!!)


流石に、いくらなんでも相手のルリの年齢が年齢だ。


(る、ルリちゃんはまだ1●歳だぞっ!・・・・・いや、だが女の子に恥を掻かせるわけには・・・。

  据え膳食わねば・・とも・・・・・・・・・・てっ!ち、違う!そうじゃないィィィィィィ!!!!!!)


このままいけば何か人として取り返しの付かない・・・、そんな危機感に襲われ苦悩するアキト。



何時までもアキトが動かないので、不安になったルリは目を瞑ったまま小さくアキトの名を呼んだ。

「・・・・・アキト・・さん・・・」

アキトはその声に我に返りルリを見た。

ルリの身体は不安と恥ずかしさの所為か小さく震えている。

それを見てアキトは最早余計なことは考えない事にした。


・・・・・逃避したとも言う。


今、目の前で小さく震えているルリ。

どれだけの勇気を振り絞ったか・・・。


アキトは両手でそっと優しくルリの震える小さな肩を掴む。


「ルリちゃん・・・・・」


ルリの名を呼んだ後、アキトの顔がゆっくりとルリの顔に近づいていく。





やがて、部屋の中で二人の影が一つに重なっていった。




















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●あとがき


この話で、アキト君とルリちゃんが急接近(笑)。

しかし、それを黙っていられない人達も・・・。

次回は、いよいよあの方達の暴走が始まります。


果たして、アキト君とルリちゃんの運命は?





次は、第三日目・中編です。




b83yrの感想

ミナトさんには黒い羽と尻尾が似合う(にやり)

今回は、ある意味アキトも暴走してるな、私的にはOKだが(笑)

 

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