ホシノ・ルリがナデシコCへボソンジャンプした後。
アキトはルリと精神が繋がったことに、驚いていた。
ラピスは、アキトとの精神の繋がりが無くなった事に、呆然としていた。
先程までは、アキトとラピスの精神が繋がっていたが、
その繋がりが、アキトとルリに鞍替えしてしまったのである。
イネスは、ルリに、彼女達が使用しているコミュニケを持って行くのを
提案しようとしたのだが、その前にルリは、ボソンジャンプしてしまった。
アキトは、ルリと精神が繋がっていると気づくと同時に、目を閉じ、
「ラピス、イネスさん、俺とルリちゃんは、今、精神が繋がっている。」
二人は、その言葉を聞くと同時に、アキトを見つめる。
「で、ルリちゃんは無事なの?」
イネスがアキトに聞く。
ボソボソとアキトがつぶやく。
イネスがアキトの顔に近づく。
アキトが小さな声で
「大きな声を出すな、ナデシコCはもうすぐ爆発する。」
イネスとラピスはそれを聞いて驚くが、声は出さない。
続いて、二人に、ルリの状況を説明する。
「ルリちゃんがやろうとしているのは、オモイカネをナデシコCから切り離し、
安全な所に避難させる事ね。」
イネスは確認の為に、アキトに聞く。
「そうだ、何か手はあるのか?」
「アキト君とルリちゃんの精神が繋がっているのなら、
アキト君は、ルリちゃんの、見ているものが見えるのよね。
それなら、アキト君が、ルリちゃんの所にボソンジャンプして、
ルリちゃんを連れてくれば良いんじゃない?」
「そうか、・・・ルリちゃんが見ている所にボソンジャンプすれば良いのか。」
「あっ、オモイカネも助けるのよね・・・、エステバリスを持っていった方が良いわね!」
「エステバリスか・・・それなら、エステバリスを用意しなくては・・・」
「用意が出来たら、ルリちゃん所に急いで、手遅れになると、ルリちゃんを失う事になるかも・・・
それから、ラピスちゃんはコンピュータでナデシコCの追跡調査、
連絡がつけば、コミュニケで私達に教えて。」
ラピスは、心此処に有らずといった様子だったが、なんとかコンピュータの操作をやり始める。
アキトは、手さぐりでエステバリスの準備をする。
そして、エステバリスの準備が出来ると、ナデシコCにジャンプした。
・
・
・
ナデシコCから、ルリとアキトが乗ったエステバリスが帰ってきた。
その知らせを聞いて、ラピスは、コンピュータでの調査を中止した。
そして、ラピスは考え事に集中する。
いくら精神を集中しても、アキトとの精神的繋がりが感じられない。
少し前までは、アキトとの精神的繋がりが確かに存在していた。
その繋がりが、アキトとルリが、遺跡から帰って来たあたりから無くなったのである。
ラピスは、アキトと精神的に繋がっている状態が、ずっと続くのを願っていた。
その願いが、いきなり断たれてしまったのである。
心の準備も出来ていないのに、精神的な繋がりが無くなった為、
頭の中が真っ白な状態のまま、コンピュータで作業していた。
そして、その状態が、ルリが流した消去プログラムを見る迄続いたのである。
その後は、コンピュータの操作に集中し、それ以外の事を考えないようにしていた。
そのコンピュータの操作も終わらせたので、アキトとの精神的繋がりが無くなった事、
こらからどうするか等を、考える時間が出来てしまったのである。
ラピスは、なんとか元の状態に戻せないか考えてみる。
アキトとの精神的繋がりを元に戻す、又は、アキトとラピスの精神を繋ぎなおす、
その為には・・・
ホシノ・ルリがオモイカネに見せてもらっていた使用上の注意には、
『男と女の関係になれば、二人はペアになり、互いの精神が結ばれます。』
と表示されていた事を思い出す。
ラピスは、アキトとルリがそれを利用して、互いの精神を結んだものと考えた。
そして、再び、互いの精神を結ぶ為に、
ラピスは、アキトと男と女の関係になる決意をする。
決意といっても、ラピスには、障害は、ルリのみ。
アキトに話せば、アキトが協力してくれ、簡単に実現出来るものと考えていた。
アキトが、それを断る可能性があるとは、思いもしなかった。
ラピスが、アキトの居場所を聞く為に、コミュニケを使用すると、ウインドウが二つ開いた。
「!?・・・・・・」
そして、そのウインドウには、
『調整中です。』鐘のシンボルの表示有り。
『暫くお待ちください。』こちらには鐘のシンボルの表示は無し。
今まで、こんな事は無かった。
ラピスは、その二つの表示を暫く見つめた後、ウインドウをオフにし、
自力でアキトを捜し始めた。
同じ頃、アキト、ルリ、イネスも二つのウインドウ見つめていた。
こちらも同じ様に、
『調整中です。』鐘のシンボルの表示有り。
『暫くお待ちください。』鐘のシンボルの表示無し。
二つのウインドウが並んで表示されている。
ルリとアキトは、エステバリスで帰ってきた後、イネスの指示に従って、
オモイカネの設置をしていた。
漸く、その作業が終わり、ルリがオモイカネと話そうとしたら、
二つのウインドウが出て、オモイカネと話せないのである。
従来の此処のA.Iとオモイカネの二系列が同時に駆使出来るようになるはずが、
この状態になり、どうしたものかと、考えていたのである。
アキトとイネスは、ルリの疲労を考え、又、夜も遅くなっている為、
此処の作業は、このままの状態にして、一旦睡眠をとって、翌日、続きをやる事になった。
多分、その頃には、『暫くお待ちください。』との表示が消えている事を期待して。
それに、ルリは、朝早くから今までの間に、食事もとっておらず、
お腹も空いている筈なのである。
ルリが、今後の身の振り方を決めるまでは、寝泊まり、食事の世話などをアキト達がする。
そして、その他の諸々の事は、翌日決める事にして、
アキトとルリは、エステバリスに乗って、格納庫に向かった。
エステバリスが格納庫に現れ、エステバリスから、ルリとアキトが降りてくる。
降りてくるルリの頭の中では、一つの想いで占められていた。
その想いとは、あの事をアキトに知られてはならない。
しかし、ルリとアキトの精神が繋がっている今、あの事をアキトが知るのは時間の問題である。
ルリにしても、長期間、あの事を考えないでいる事など出来そうに無かった。
それは、アキトと一緒にいるだけで、考えてしまいそうな問題なのである。
それでも、ルリは、あの事をアキトが知るのを先延ばしにしたかった。
先程までは、オモイカネの事で、頭が一杯だった所為で、あの事を考える暇が無かったのである。
だが、今は、頭の中にそれが浮かび上がろうとするのを、何とか防ごうとしているのだが、
妙案がないと、その努力も無駄に終わってしまいそうである。
ルリは、オモイカネの件では、アキトと精神が繋がっていても、それが頭に浮かんでくる事は無かった。
そのオモイカネの件の事柄のように、一心に考える事が出来る、他の事柄が無いか考えた。
そして、見つけた件を、ルリは考えなければ良かったと、後悔した。
ルリの見つけた件とは・・・
ルリの見つけた件は、急いで済ませなければならなかった。
ルリが、見つけた時点で、もう後戻りが出来なくなっていたのである。
此処はナデシコと同じ構造なので、細部は違っていても、何処に何があるか、ルリには想像出来る。
目的の場所も、何処にあるか想像出来る。
急いで行かなくては、ルリは歩き出す、途中から、駆け足になる。
アキトは、ルリがいきなり駆け出し、姿が見えなくなったので、少し混乱したが、
アキトの二重になった視界の一方 −ルリの視界である− が見える為、そんなに慌てない。
一方ルリは、駆けていく途中、視界が二重になっているのに、気づく。
ルリの頭で、視界が二重、アキトさんにも同じものが見えている、という単語が駆けめぐる。
脚が自然に遅くなる、ルリはかなり動揺している。
いや、すごく慌てている。
「アキトさん! 席を外して下さい」
言われたアキトは、声は聞こえるはずがないが、精神が繋がっているので、
ルリが何と言ったかは分かる、分かるが、意味が分からない。
(席を外す?)
ルリは、言い間違いに気づいたのか、
「出て行って下さい。」
(?・・?・・)
やはり、アキトには、何がなんだか分からない。
アキトは、ルリがよく分からない事をつぶやいているので、
こんな時は、ラピスとの経験から、イメージによる、話し合いに切り換えようとした。
ルリは、アキトが、イメージによる、話し合いに切り換えようとしているのを知ると、ますます、慌てる。
「なッ、何を、アキトさん!、アキトさんの馬鹿っ!!」
アキトは、ますます、分からなくなる。
「・・・・・・」
アキトの頭に、なにか閃く。
(・・・トイレ!)
(気にするな!)
「気になります!」
アキトは、同じ様な場面でラピスに用いた言葉を言ったが、上手く対応出来なかったようだ。
(・・・・・・)
「目を閉じて下さい!」
アキトが目を閉じると・・・ルリの視界のみになる。
・・・
「私が目を閉じます。」
ルリが目を閉じると、ルリが行動出来なくなる。
・・・
「・・・・・・」
(俺も一緒にしようか?)
ルリが想像しようとして・・・
「えっ! そんなッ!! ダメです!!!」
・・・・・・
アキトとルリは一大イベントを終えて、何故か顔を紅くして、食堂に急いだ。
ルリは、今日の昼食を食べていないので空腹である、やはり、寝る前に食べておきたい。
食堂に着くと、アキトは厨房に入り、作り置きしていた料理を温める始める。
ルリは、アキトのそんな様子を見ながらテーブルに座る。
そして、ルリの後ろから、ルリの横を通ってラピスが、アキトに近づく。
ラピスが、アキトに向かって言葉をぶつける。
「アキト! 私と、男と女の関係になって!」
アキトもルリも聞いた言葉を理解出来なかった。
理解したくなかったのかもしれない。
ラピスが、もう一度言葉を発する。
「アキト! 男と女の関係になる為に、私を抱いて!」
今度は、アキトとルリも言葉を聞いたのだが・・・
ガラガラ、ガシャン、ドンドンドン
ルリの頭に衝撃が走る。
アキトが、厨房でずっこけた拍子に頭を打ったのだ。
ルリとアキトは精神が繋がっている為に、アキトへの衝撃がルリにも伝わってきたのである。
そんな騒動の中に、イネスが入ってくる。
やはり、イネスも食事に来た、のだが、食堂の惨状を見ると、
「医務室に運んだ方がいいわね、気絶しているみたいだから。」
アキトを調べながらルリに命令する。
「ルリちゃん、医務室に運ぶから手伝って!」
防災用の保管庫から担架を持ち出し、二人でアキトを担架に乗せ、医務室に運ぶ。
食堂には、ラピスが取り残されていた。
暫く、アキトが居たあたりを見つめていた。
その時、電子音が鳴った。アキトの料理を温め終わったのである。それを知らせる電子音である。
ラピスはもう一度、周囲を見渡して、おもむろに掃除を始める。
アキトが散らかした、いや、ずっこけた時に散乱した鍋や陶器が、そのままであった。
掃除を終えたラピスは、料理を見て、アキトの事を思い出す。
その料理 −おにぎりである− を、アキトは、朝早く起き出して、作っていた。
『今日、忙しくなると作る時間が無くなるかもしれない、
おにぎりなら、こうしてあらかじめ作っておけば、時間を気にしないでもいいから。』
アキトが、そんな事を言いながら、作っていた事を思い出した。
ラピスは、温められたおにぎりを一つ手にとり、ゆっくりと食べ始めた。
アキトが握ったおにぎりを、丁寧に食べ終え、残ったおにぎりを見つめる。
そのおにぎりを暫く見つめた後、ラピスは、そのおにぎりを全部岡持に入れる。
そして、岡持を持って、ラピスは食堂を出ていった。
・・・・・・
イネスは、アキトの身体を調べた後、医務室のベッドに寝かせた。
「特に問題はないわ、暫くしたら気がつくでしょう。」
イネスがルリに説明する。
ルリは、アキトの意識がない今の内に、あの事について考える。
イネスには、あの事を話しても良いかな? と、考える、
イネスにならば、その事で何らかの助言をもらえる可能性もある。
ルリは、あの事を話す決心をすると、イネスに向かい、
「イネスさん、話したい事があるんですが・・・」
「何?」
「艦長・・・ミスマル・ユリカさんについてです。」
「・・・アキト君も一緒に聞いた方が良いんじゃないの?」
「いえ、アキトさんに話して良いか分からないんです。
どうしてあんな状態になっているかも分からないし、どうすれば良いかも分からないんです。
イネスさんなら、説明出来るんじゃないかと・・・。」
「説明! 説明ね! 分かった、話して頂戴。」
此処でルリがイネスに話した内容は、秘密のルートを通してルリが得た情報である。
もちろん秘密のルートの事は、話から除外してある。
情報自体は、何処かの海洋上の戦艦に軟禁されているユリカを撮影したもの、
多分、監視カメラに撮られたものから推定したものである。
ミスマル・ユリカは、その戦艦の上で、個室を与えられ、毎日適度な運動と、
色々な医学上の検査をする毎日を送っていた。
目的は、遺跡に捕らわれていた後遺症の治療とリハビリである。
そして、それを補佐する、一人の青年。
ユリカは、彼の事をアキトと呼んでいる。
毎日暇な時間が有り、その暇な時間に、青年相手に、ゲームをしたり、
将来の生活を想像、及び計画したりして過ごしていた。
そして、毎日が、ユリカは楽しそうなのであるが、相手の青年は何故か怯えているようである。
が、当のゆりかは、その事には気づいていなさそうである。
よく分からないが、その青年は、ユリカに服従しているような感じなのである。
「どう思われますか? イネスさん。」
「不明だわ・・・悪いけど、その件では、私は力になれないわ。」
ルリは、イネスを凝視した。
「本気でいっているんですか?」
「本気よ! これ以上アキト君の問題を増やしたくないの!」
ルリの頭に疑問が浮かぶ。
「これ以上? アキトさんの問題? どういう事です?」
イネスが何か思い出すかのように、頭をかしげて考え込む。
「貴方、アキト君と精神が繋がっているのよね!
それなら協力してくれないかしら?」
ルリはイネスの言っている事が分からなかった。
「・・・・・・」
「アキト君の精神の調査、問題があれば治療・・・それを頼みたいのよ。」
「それは、イネスさんの仕事です。」
「分かっているわよ、でも、両方とも私には出来そうもないのよ。」
「何故?」
「これから説明するわ。」
「ルリちゃん、貴方、マインドコントロールって知っている?」
「たしか・・・洗脳に似た技術で、相手の思想、考え方を変える技術。」
「そう、その相手の考え方を変える時に、洗脳は、相手が気づくけど、
マインドコントロールの場合は、その相手がマインドコントロールされているとは気づかない。」
「・・・・・・」
「ミスマル・ユリカを護る、身体的にも精神的にも・・・」
「・・・どういう事ですか?」
ルリはそう言ったが、次のイネスの言葉は予想出来てしまった。
「テンカワ・アキトは、ミスマル・ユリカを護る、身体的にも精神的にも、
そう、マインドコントロールされていると考えると、
テンカワ・アキト、ミスマル・ユリカの行動が、無理なく納得出来てしまうのよ!」
「本当なんですか?」
「分からないから、貴方に頼むのよ。」
「・・・・・・」
「・・・アキト君に、昔の事を思い出してもらうのは危険なのよ。
しかし、思い出してもらわないと、確認も治療も出来ないの!
ついでに言うと、ミスマル・ユリカの方も、マインドコントロールの事は知らないと思うわ。」
「? 何故ですか? そうすると・・・」
「・・・ミスマル・ユリカが、勝手に色々言ったり、やったりしてきた事を、
テンカワ・アキトが、勝手に解釈して、自分を縛りつける重荷にしてしまった。
こう解釈すれば良いのかしら、でも、これもマインドコントロールになるんじゃないかしら。」
ルリは思い出していた、アキトが昔の事を思い出して、ナデシコAにボソンジャンプした事を。
そして、何故イネスが、ミスマル・ユリカの件で協力してくれないのか理解した。
テンカワ・アキトがミスマル・ユリカにマインドコントロールされていると想定すると、
アキトにミスマル・ユリカの事を知られたら、状況が複雑になってしまう。
アキトが、今の状況で、身体的にも精神的にもユリカを護ろうと行動すると、矛盾が生じる事になる。
アキトから結婚を解消されると、精神的にユリカが傷つく。
アキトがユリカの元に帰り、結婚生活を続けると、アキトが逮捕され、精神的にユリカが傷つく。
それに、ユリカの所為で、アキトが傷ついたと知れば、これも、精神的にユリカが傷つく。
これでは、ミスマル・ユリカが、遺跡から開放された時、アキトはユリカに会える訳がない。
それに、マインドコントロールの事を、知らされて、アキトとユリカの過去を振り返れば、
様々な、その事を強調する出来事が思い出される。
そうなると、ルリもアキトかユリカかを、選ばなければならない。
ルリは、ユリカが無意識にした行為を、恨めしく思いながら、アキトの所に留まる決心をする。
本当は、未だユリカがアキトをマインドコントロールした、と決まった訳ではないのだが、
「イネスさん! 私は何をすれば良いんですか?」
「そうね、やる事は、此処での暮らしに慣れてから、考えましょう。」
「・・・・・・」
何故か、ルリは、イネスに肩すかしをくらった気分になった。
アキトが、未だ気づかないので、何処で寝ればいいか尋ねようとしたら、
そこに、岡持を持ったラピスが医務室に入ってきた。
ラピスは、岡持を開けておにぎりを出す。
ルリもイネスもラピスを見つめる。
ラピスもルリとイネスを順番に見つめて、
「食べて!」
「あ、ありがとう!」
「私も、食べて良い?」
三人は、暫く無言で食べていたが、最初にラピスが、話し始めた。
「ホシノ少佐。」
「あっ、私はもう少佐ではありません。今となっては、軍人も今日限りです。
私の事は、ルリで良いです。」
「それでは、私の事はラピスと呼んで下さい。
ルリは、何故アキトとペアになったのですか?」
ルリには、ラピスが何の事を言っているのか分からなかった。
「ペア? ですか?」
「アキトとルリは精神が繋がっている、その状態の二人を、ペアと表現するのでは?」
「そういえば、書いてありました。」
「男と女の関係になれば、二人はペアになり、互いの精神が結ばれる、
だから、アキトとルリは、男と女の関係になった。」
ルリは唖然としてしまった。
「ちょ、ちょっと待って下さい、私とアキトさんはそんな関係にはなっていません!」
今度は、ラピスがきょとんとする番だった。
「えっ、違うの!」
「違います! 遺跡で、ナノマシンの投与を受け、此処にボソンジャンプして帰って来たら、
もう、アキトさんと精神が繋がっていたんです。」
今度は、三人とも納得がいかない、不思議そうな顔をしていた。
「ルリは、望んでアキトと精神を繋いだ、のではないの?」
「違います。」
「分かった、ルリは、私と違って一人で生きて行けるから、
アキトと精神を繋ぐ必要がないんだ!」
又、話の要点が見えなくなったルリである。
「何の話です?」
「私は、アキトと、精神が繋がるまでは、自分で判断して決める事が無かった。
アキトと会う前は、いろんな判断を全部他の人がやって、私はその人が、
判断した通りに実行するだけだった。」
「つまり、操り人形と同じで、その人に服従していたと・・・」
「だから、・・・今の私は自分で判断する事が難しい、
その為、一人で生きる事が出来そうにありません。」
「それで、アキトさんとの精神の繋がりを復活させようと・・・」
複雑な思いが、渦巻いていた。
「ラピス! もしも、アキトさんに会わなかったら、どうなっていたの?」
「分からない? 私以外の子も、同じ様に、自分で判断して決める事は、無かったみたい。」
何の為に? との疑問が、皆の頭にあった。
その疑問に答えたのは・・・
「火星の後継者達のペアにする為。
精神が繋がる為に、自分では判断しないで、
相手の言う事を無条件で実行してくれる相手と、ペアになると都合がいい。
少女にしたのは、火星の後継者達は男が多いので、相手は女性、
そして、無条件で言う事をきかせるには、幼い頃から教育した方が効率がいいから。」
医務室の入り口に、その人物は立っていた。
テンカワ・アキトとソックリな顔、バイザーに黒づくめの服を着て。
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b83yrの感想
トイレですか、リンクっていうのも不便(笑)
しかし、ラピスの扱いを考えると、火星の後継者っていうのは、つくづくろくでも無い組織ですな
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