ラピス・ラズリの怪説ナデシコ
  第八章 イネス・フレサンジュ

  こんな離れ小島の閉鎖空間で、あのような事件が起きるとは・・・
 その事件は、私もアキト君達も、最初は単純な事と考えていた・・・
 でも、その事件はどんどん複雑さを増していった。
 そして、その事件は、アキト君達にとっては、パンドラの箱に相当するかもしれない。
 私はイネス・フレサンジュ、その事件の発端は私から始まる・・・
 それは、この離れ小島に来て、少し経った頃・・・

  その時、私はアキト君とラピスちゃんの関係も忘れて、アキト君の所に向かって急いでいた。
 何故こうなったのかしら・・・
 私は、ただ、あの子達に見せただけなのに・・・
 皆に見せただけなのに・・・

  私が急いでいる方向から・・・
 「あら、アキト君、丁度良かった。」
 「ラピスに何か有ったんですか?」
 「よく分かるわね、って、貴方達精神が繋がっているから、不思議ではないか・・・」
 「何納得しているんですか? ラピスはどういう状態なんですか?」
 「貴方にも分からないの?」
 「分からないから聞いているんじゃないか。」
 「ラピスちゃんから何か情報は来ないの?」
 「来ない! ラピスと逢ってからこれほどラピスの存在が感じられなくなったのは初めてだ。」

 「で、どういう事だ。」
 アキト君が、医務室に寝かされているラピスちゃんを見て問いかける。
 「私もこんな事になるとは思わなかったのよ。事の起こりは・・・
 貴方、あの子達がコンピュータの天才だって知っている?」
 「知っている、遺伝子操作、IFS強化、英才教育の結果だろう。
 それが、ラピスの状態と関係あるのか?」
 「ラピスちゃんもその一人。
 で、私が調べているプレートだけど、なかなか進展しないのよ!」
 「イネスさん! グチなら・・・」
 「それで、あの子達にコンピュータでのサポートを頼もうかと・・・
 それで、皆にプレートを見せたのだけど・・・」
 「・・・・・・」

 「プレートを見せる為に回覧していた・・・
 そして、ラピスちゃんがプレートの上で指を走らせて・・・何かつぶやいて、
 それから気を失い、意識が戻ら無くなった。」
 「何かって・・・」
 「・・・他の子に聞いたら、『誰かいる・・・』って聞こえたらしいわ。」
 「誰かいる? ? ?」

 「それで、ラピス一人だけなんだな。」
 「そう、私や、他の子が、プレートに触っても何も起こらないのよ。」
 「・・・プレートに原因があるのか?」
 「分からないわ。でも、タイミング的には一番可能性が高いわね。
 それより、アキト君にラピスちゃんの様子が分かるかどうか聞こうと思って。」
 「なるほど、それで俺を捜していたのか・・・ところで、そのプレートは何処にある?」

 「アキト君、まさか・・・」
 「イネスさんや、他の子も試したんだろ?」
 「でも・・・・・・」
 「言いたい事は分かる、イネスさんや他の子と違って、俺はラピスと関係が有り・・・
 と言うより、俺とラピスは二人で一人、だから、俺がラピスと同じ様になる確率が一番高い訳だ。」
 「・・・・・・」
 アキト君もラピスちゃんと同じ様になるのかしら?
 「・・・プレートを渡してくれないのか?」
 でも、他に方法はなさそうだし、仕方がないわね・・・

  アキト君にプレートを渡す。
 アキト君がプレートの上で指を走らす、
 そして私に向かって
 「確かに誰か居る様な感じがする、ちょっと行って連れ戻して来る。」
 「ちょ、ちょと待ってよ! 連れ戻して来るって!? どういう事?」
 「・・・何て言っていいか分からないんだが、簡単に行って、帰って来れそうな気がする。」
 「じゃあ、ラピスちゃんは、何で帰って来ないの?」
 「? ? 何でだろう? でも俺が行けば原因も分かるんじゃないか?」
 「・・・・・・・」

 ・
 ・
 ・

 「此処で待っていても解決しないんだろう? ラピス達にも仕事があるんだろう?」
 「・・・まぁ、仕事と言えば仕事、授業と言えば授業なんだけど・・・」
 「確か・・・電車の運行のシミュレーション・・・」
 「・・・・・・」
 「艦隊同士の闘いをシミュレーションゲームにする・・・
 ネルガルの株取引のシミュレーション・・・
 エステバリスが巨人の着ぐるみを着て映画を撮ればヒットするか・・・
 ワンマンオペレーションの戦艦で宅配をして成功するか・・・
 エステバリスで土木作業をすれば儲かるか・・・
 エステバリスでナスカの地上絵が書けるか・・・」
 「良く覚えているわね・・・最初の2〜3以外はダメね。」
 「でも・・・・・・遅らせない方が良いんだろう?」

 「分かったわ。とにかく、私が見ている前で、それから、此処のコンピュータに録画してもらうわ。」
 「それだけで良いのか?」
 「今のところ、これしか思いつかないのよ。」
 「此処で良いのか?」
 「ちょっと待ってね。」
 録画の準備をして・・・
 「・・・良いわよ。」

  アキト君は、まるでプレートの上で何かを捜す様に指を走らせ、その数瞬後。
 アキト君の身体に不思議な紋章が浮き上がり、その後気を失った。
 これは、ボソンジャンプする時に現れる紋章、でもジャンプしていない。
 これは、アキト君が過去に行った時、経験したという精神だけのジャンプ?
 だとしたら、二人は何処に行ったのかしら?

 ・
 ・
 ・

  その頃アキトは・・・
 「やったー、これでゲームが出来るね!」
 アキトの前には丸いテーブル、
 そのテーブルには、アキトの他に3人が座っている。
 一人は少女、ラピス・ラズリである。
 一人は妙齢の女性、アキトはこの女性に驚いていた。
 だが、もう一人の男性の方を見て、驚きに声が出て来なかったのである。

  アキトの服装は、白いコック服にバイザーという変わった姿である。
 これは、黒いマントだと、料理の時に邪魔になるのと。
 エリナの「黒いマントだと不衛生に見える。」の一言と、エリナがコック服を用意していた為。
 もう一人の男性は、黒いマントとバイザー、体型も顔形も髪型もアキトにそっくりである。

  アキトは、当初の目的を思い出し、女性と青年の事は頭から締め出し
 「ラピス! 此処から帰ろう。」
 「・・・ダメ、ユリカさんが私達とゲームをしたいと望んでいるから。」
 「・・・望んでいるから、俺達は帰れないのか?」
 アキトとラピスは精神が繋がっているが、此処ではその機能は一切停止しているようである。
 「そう・・・」

 「仕方がない、さっさとゲームを終わらせて帰ろう。」
 「アキト・・・どんなゲームをするの? アキトは知っているの?」
 「ああ、ラピスは麻雀を知っているか?」
 「麻雀・・・・・・遊び方と役は知っている。」
 「そうか、知識はあるが、麻雀をした事は無いのか・・・
 この場合は、更に牌の種類も違うんだ・・・
 俺も一度しかした事はないんだ・・・記憶マージャン。」

 「えっ、あなた記憶マージャンをした事があるの?
 という事は・・・ナデシコに乗っていて、更に・・・でも・・・」
 「しまった・・・」
 「? 何? どうかしたの・・・・・・
 あっ、それより、記憶マージャンでも、他の場所でも、貴方達のような双子には
 逢っていないけど・・・。」

 「えっ、双子? 違う! 俺は双子じゃない!」
 「でも、そっくり・・・・・・ちょっとバイザーを外してよ、そうすれば・・・」
 アキトは仕方がないと、渋々、バイザーを外す。
 黒いマント姿の青年もバイザーを外す。
 バイザーの下から現れた顔は、双子の様にそっくりな顔だった。
 「本当に双子じゃないの?」ユリカが疑い深そうに問いかける。
 アキトは、ミスマル・ユリカのその言葉より、自分の顔を見ても、
 『テンカワ・アキトだ!』と、言い出さないユリカの態度の方が気になった。
 そして、もっと気になるのが、一言も話さない黒いマント姿の青年である。

 「とにかく、記憶マージャンをやれば、いやでも他人の記憶が分かってしまう。
 ユリカの事も・・・俺とソックリなこの男の事も・・・分かるだろう。
 さっさと終わらして元の世界に帰ろう。」

  その帰りを待っているイネス・フレサンジュ。
 「遅い! 簡単に行って帰って来れるって言っていたのに・・・」
 医務室に寝かされているラピスとアキトの前で、何回目かのグチをこぼしていた。

 

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b83yrの感想

ふむ、プレートの事といい、ユリカの事といい気になる謎が増えてきましたね



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