ラピス・ラズリの怪説ナデシコ  

   第七章 コック

  元の世界に戻ったユーチャリス。
 私とアキトは、ユーチャリスを其処から月のドッグにボソンジャンプさせました。
 私はラピス・ラズリ、少し前までテンカワ・アキトと過去の世界に行っていました。
 過去に行っていた時は、ジャンプ出来なかったが、今回はジャンプに成功しました。
 成功したら成功したで、いろいろな事が謎のまま残っている。
 過去に行っていた時にジャンプ出来なかった。
 アキトがオモイカネに精神だけ取り込まれた。
 遺跡での攻防、演算ユニットが行ったと思われる事柄。
 その他にもあるけど、あとは纏めて、その他説明出来ない事柄。

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  アキトは、アカツキとエリナに連絡し、事のあらましを伝える。
 それから・・・
 「エリナ・・・」
 「アキト君・・・よかった、帰って来てくれて・・・」
 「おいおい、泣くほどのことでも無いと思うが・・・」
 「えっ、泣いている?・・・・・・そんなことより食事にしましょうよ。」
 「? エリナ! 俺達の食事のことは知っているのだろう?」

  最初は食事の話・・・それもエリナから見た。

  アキト君が助け出されてから・・・
 最初は病院で点滴を受けていた・・・
 多少動けるようになると病院食に・・・
 その後に脱走劇・・・火星の後継者達を倒しに行きたかったのかしら?
 病院を抜け出して、どうするつもりなのか、その後も何回か、
 外でふらついていた所を保護されたわ。

  そして、何故か会長がアキト君をエステバリスに乗せようと計画した。
 アキト君が、これ以上脱走するのを防ぐ為? アキト君の回復が待ちきれない?
 で、会長が用意したエステバリスが、ボソンジャンプ可能な試作機。
 会長がアキト君のボソンジャンプを期待したのかも?
 それにしたって、アキト君は言葉を交わすことも、目で見ることも出来ない、
 その上、聞くことも出来ないらしいじゃない。
 どうやって、アキト君に何かを伝える訳?

  アキト君が乗るエステバリスを見守るようにゴートと月臣が警戒態勢をとる。
 そして、そのエステバリス、に何かが起こるのを待っている面々。
 ・・・・・・かなりの時間がたった、が、何も起きない。
 無駄だったかと皆が思い始めた頃、その何かが起きた。
 アキト君がウインドウ通信を送ってきた。
 『火星の後継者は何処だ!』
 エステバリスは動いてはいないし、ウインドウ通信は声では無く文字での通信。
 ・・・・

 「テンカワ君!」
 一番最初に声が出たのは、会長。
 『テンカワ? 俺の名前か?』
 「アキト君、声が聞こえるのね?」
 次に声をかけたのは、私。
 『アキト?・・・・・・そうか、テンカワ・アキト、俺の名前だ!』
 「名前が分かった所で、僕達の声が聞こえるかい?」
 『聞こえるが、お前は誰だ?』

  会長、私、ゴート、月臣と次々に自分を覚えているかと聞く、でも、誰も覚えていないと言う。
 ナデシコA時代の、ミスマル・ユリカ、ホシノ・ルリ、イネス・フレサンジュ、ダイゴウジ・ガイ等
 も覚えているかと聞く、が、誰一人として覚えているとの言葉は聞けなかった。
 重苦しい沈黙。
 「じゃぁ、貴方、何を覚えているの?」
 私が堪り兼ねて叫び声をあげる。
 『・・・・・・』
 ウインドウに書いてだされると、何だか、からかわれているような文字が並ぶ。
 「「「「・・・・・・」」」」
 怒って良いのか、真面目に受け答えしていいのか、判断が出来ずに皆声が出ない。
 「俺は・・・・・・火星の後継者を倒す!」
 「ええいっ、鬱陶しい、ウインドウに・・・を出して答えるのを止めろ!」
 会長もいらいらして、声を荒らげた。
 残念ながら、その言葉はアキト君には届かなかったみたい。
 アキト君はエステバリスを歩かせる事に成功して・・・
 ズシーーーン
 そして、十数歩歩いて力尽きたのか、そのまま倒れてしまった。

  その後、アキト君はエステバリスから降ろされた。
 「テンカワ君をエステバリスに乗せていれば会話が出来るみたいだね。」
 なにやら不思議な笑みを浮かべてゴートと月臣を見ている会長。
 その笑みを見て私はいやな予感がしたので、少し姿を丸めて見えにくいようにする。
 ゴートと月臣は、汗を浮かべてあらぬ方向を見ている。
 「テンカワ君のリハビリは二人にまかすよ・・・一ヶ月で普通に動けるようにしてくれ。」
 「ムリだ!」
 「無理です!」
 ゴートと月臣が揃って答える。
 「じゃぁ、三ヶ月にしよう。あっエリナ君も生活方面のサポートね。」
 「えっ、か、会長・・・」
 恐れていたことが私に襲いかかってきてしまった。

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 ・

 その後、アキト君とラピスちゃんが逢う迄、アキト君の病院食が続く。

  此処からは、ラピス・ラズリ、私からの話。
 私は、アキトが自分で料理しているところしか見ていない。
 私と逢った直後からアキトは、料理し始めたことになる。

  アキトには、嗅覚脱失と味覚消失の症状がある。
 嗅覚脱失と違って、味覚消失の場合には、一般的な治療法が有る。
 その治療法・・・亜鉛を多量に含む食事をする食事療法。
 カップラーメン、ファストフード、コンビニ弁当、加工食品等を避け、
 毎食亜鉛を多量に含む食べ物を食べる事。
 結局、ちゃんとした料理を作り、毎食きちんと食べろ、と言うことになるらしい。

 で、解決法として、自分で料理し始めた・・・・・・

 「ユーチャリスの厨房よね・・・」
 エリナは勝手にユーチャリスの厨房に歩いてゆく。
 「・・・・・・」
 (・・・・・・)
 「やっぱり、あったわね。」
 エリナの言うとおり、其処には数十人分の料理が置いてある。捨てられるのを待っている料理。
 「これをいただくわね。」
 「・・・・・・」
 (・・・・・・)
 「貴方達は食べないの?」

  何故大量の料理が置いてあったかというと、
 アキトがそこに作っておいたから。今まで、アキトは、料理を沢山作っていた。
 食べる為に作るのだけど、二人で、食べられる量の何倍もの料理を作る。
 ユーチャリスには、私とアキトの二人だけど、アキトが大量に料理を作る。
 そんなに作って食べるのかというと、二人が食べた後の残りは捨ててしまう。
 戦闘とかがある場合は、二人分だけになる。
 これは、時間がないかららしい。
 逆に、戦闘も訓練も無い時は、朝から晩まで料理している。
 そういう時は、残る料理の数も多い。で、残った料理は全て捨ててしまう。
 これは出来た料理に満足出来ていない事と、
 私が、アキトの料理が美味しいか不味いか分からないと言った為。

 「ラピスちゃん、アキト君の料理、美味しい?」
 「分からない。」
 「ら、ラピスちゃん貴方も味覚異常? 無味症かしら、それとも悪味症? 異味症?」
 「ラピス、お前も火星の後継者達の犠牲に・・・・・・」
 (アキト、違うと思う、美味い、不味いと感じるのは子供の頃食べたものの影響が大きいから・・・)
 アキトは其処に居なかった。
 「アキト君、何? その本?」
 少しして・・・アキトがボソンジャンプして現れた。その手に4〜5冊の本を抱えて。
 エリナが、それらの本を見て・・・
 「アキト君! 勝手に私の部屋に入らないで! 言ってくれれば持ってきてあげるから。」
 「あっ、ごめん、つい、ジャンプで行きなれているものだから。」
 「・・・部屋を引っ越そうかしら・・・」

  アキトが持ってきたのは味覚異常の治療法の本。
 これらの本を読んで、アキトが料理する事は、変えようが無くなった。
 私は知らなかったのだけど、アキトに逢った頃は火星の後継者達の食生活のせいで、
 亜鉛不足、味覚減退の兆候が見られたらしい。
 結局、アキトの料理のせいで味覚も正常に戻り、時期的には少し後になるけど、
 アキトの料理も美味しい、不味いが分かるようになった。

 「アキト君、この料理まずいわ、ごはんは水気が多すぎるし、
 こっちは辛すぎ、全体的に味が濃すぎるわ。」
 エリナが料理を食べた感想を言った。
 「で、俺にどうしろと・・・」
 「ラピスちゃん・・・アキト君の料理を美味しいって、言ったことある。」
 「・・・確か、美味しいとは聞いていない。」
 「そう、ラピスちゃんが、美味しいって言えないなら、私が美味しいって言う迄料理の腕を上げてね。」
 「? 何だ? どうしてそうなる?」
 「それじゃ、又食事の時に来るから。」
 エリナは慌ただしく去って行った。

  それから、エリナは食事の度に現れて、アキトの料理を食べ感想を言って行くようになった。
 エリナの指摘の賜物か、アキトの料理の味が変わってきた。
 私はアキトの料理が美味しくなった、と思うんだけど。
 そんな中でも、料理を止めていた期間も有った。 ホシノ・ルリにラーメンのレシピを渡したのもこの時期。
 そして、料理を再開・・・・・・作られる料理の中にラーメンは無かった。

 「よしっ、これなら。」
 エリナが料理を食べ終えるとつぶやいた。
 私とアキトは、次にどんな言葉を喋るのかエリナを見つめていると、
 「ごちそうさま。」
 と、エリナが言った。
 何か違う種類の言葉を期待していた私達は、その言葉に反応出来なかった。
 「ちょっと待っててね、今連れて来るから。」
 私達は、黙って、ユーチャリスの外に飛び出して行くエリナを見送った。

  ここからは、アキトからの話、作者の技術不足で、この章はこんな形になったらしい。

  俺とラピスは、エリナの最後の言葉の意味を考えていた。
 アカツキを連れて来るのでないことは分かる。そうすると誰だ?
 エリナがここに連れて来るとしたらネルガルのSSか、俺達の事情を知っている人物か?
 そんな事を考えていると、エリナが子供を二人連れて戻ってきた。
 「アキト君、ルリちゃんが二人助け出したって。」
 エリナが俺に向かって話す。

 「助け出したって、誰を?」
 「この子達よ。」
 「この子達よって、何故俺に言う?」
 「この子達はねえ・・・・」
 要約すると、この子達は、ホシノルリが助け出した、遺伝子操作をされ、英才教育を受け、
 火星の後継者達に攫われていた子供達という事らしい。
 そして、ホシノルリがエリナの元に送りつけたので、エリナが困って、 俺に泣きついてきたという訳らしい。
 「私が、アキトに泣きついた? そうじゃなくて、
 アキト君にお願い出来ないかな〜って尋ねているだけよ。アキト君?」
 「・・・・・・」
 俺にどうしろと・・・

 「・・・返事がないわね〜。」
 「・・・・・・」
 「じゃぁ、二人を預けていくから、都合が悪ければ言ってね。」
 と言い残して、さっさと帰ってしまった。
 取り残された四人の中で、大人は俺だけ。
 ・・・と、とにかく、二人分のユーチャリスの空き部屋を用意してと、
 食事も必要だな・・・味覚障害があるといけないから・・・俺が料理して・・・
 これじゃ・・・エリナのお願いを全て聞いたことになるな・・・・・・

  何日か経って、エリナが又一人連れてきた。
 「エリナ、又ルリちゃんが助け出した子?」
 「そうなのよ・・・でも、ルリちゃんも大変よね。」
 「・・・軍の狙いか?
 火星の後継者の残党討伐で、ルリちゃんが逆にやられて死んでくれる。
 それとも、残党討伐で疲れている所に何か事故でも起こって死ぬとかかな。」
 「まぁ、戦っている間は簡単にはやられないでしょうね。」
 「そうだな、問題は休暇の時かな?」
 「まったくだわ。」
 そんな会話があったが、ユーチャリスでは5人での生活になった。
 ・・・

 「どうして、女の子なんだ。」
 「あら、アキト君の周りには女の子と決められているのよ。」
 「うっ! そ、そうなのか! それでガイは殺されたのか?」
 「そんな事で殺される訳ないでしょう!
 まぁ、決められているかどうかは知らないけれど、
 遺伝子の提供者が、火星のミスコンテストの優勝者とか、健康面を考えて選んだ人間。
 皆、そんな感じの人達らしいから殆どが女の子らしいわ。」
 そうなのか・・・俺はコンテストうんぬんで男性の話は聞いたことが無いが・・・
 そんな会話がある毎に一人づつ増えていった。
 ・・・

  助け出された子が5人になった後、
 「なんだこりゃ?」
 エリナに向かって言った。
 俺の目の前には、ブラックサレナが立っている。
 この日は、エリナが助け出された子を連れてきた訳では無かった。
 エリナが頼みがあると言ってブラックサレナの所に連れてきたのだ。
 そのブラックサレナにエリナが取り付けさせたのだろう高機動ユニット
 が取り付けられている。

  問題の発言は、高機動ユニットが取り付けられているからではなく
 高機動ユニットに取り付けてある物が問題なのである。
 高機動ユニットで進行方向先頭に当たる部分に巨大なドリルが
 取り付けられている。
 「これで、穴を掘ってもらいたいよの。」
 「穴?」
 「とにかく、日本の近くの太平洋で、ボソンジャンプ出来る場所を教えて。」
 俺が、地図上でボソンジャンプ出来る場所を教える。
 「じゃぁ、此処にこのブラックサレナでジャンプして、後はジャンプした後で指示するわ。」
 俺は、訳が分からないままブラックサレナでジャンプ。
 エリナがウインドウで指示をだし、俺はブラックサレナでその指示に従う。

  そして着いたのが、日本の南にある無人島。
 「其処の地下に・・・そうね、ユーチャリスが隠せる位の穴を掘ってくれる。」
 「ああ、ユーチャリスを隠す場所か。」
 「えっ、ちょ、ちょっと違うかな、いや似たようなもんかな。」
 「? どっちなんだ?」
 「あっ、と、とにかく穴を掘りましょう。」
 「? 気になるが、後にするか。やるぞ。」
 ・・・

 「エリナ、穴の中に水が出てきたぞ。」
 「あら、どうしましょう? ちょっと状況をみせて。」
 「こうなっているが・・・」
 「しかたないわね、じゃあ、此処にはユーチャリスを隠して・・・」
 「なんだ! 元々はユーチャリスじゃ無かったのか?」
 「其処には急遽造ったブリッジ部分を置く予定だったのよ。」
 「? そのブリッジ部分は何処に置くきだ?」
 「・・・そうだ、地上に岩が突き出ていて、その下にブリッジ部分を置けば
 上から見られても分からない部分があるじゃない?」
 「ああ、あそこか、あそこなら少し偽装するだけで
 簡単には人が居るとは分からなく出来るだろう。」
 ・・・

 「エリナ! これはブリッジ部分だけじゃないぞ。」
 「・・・そう。」
 「食堂から格納庫まであるじゃないか?」
 「グラビティブラストとか、相転移砲はないわよ。」
 「ま、まさか、ディストーションフィールドに相転移エンジンがついてるとか?」
 「やっぱり、防衛は必要よね。」
 「だ、大丈夫なのか?」
 「大丈夫よ、ステルス機能に、光学迷彩、静止衛星による
 スパイ機能と太陽エネルギー誘導装置までつけたから安心よ。」
 「・・・逆に見つかり易くなるだろう?」
 「大丈夫、今では使われていない静止衛星等を改修して使えるようにしただけだから。」
 「・・・呆れて、文句も言えん」
 ・・・

  南海の無人島の地下にユーチャリスをボソンジャンプで移動。
 助け出された子達は、ユーチャリスから、ブリッジ部分に移動済。
 俺だけでユーチャリスをボソンジャンプさせ、また、ブリッジ部分にジャンプ。
 そして、ブリッジ部分プラスαをボソンジャンプで移動。
 この時には、ブリッジ部分に助け出された子を乗せ、
 ディストーションフィールドを展開させ、飛行出来るようにしてからボソンジャンプした。
 ユーチャリスは、そのまま待機状態で維持される。
 ・・・

 「ひさしぶりね。」
 「イネスさん! 火星の後継者の残党に捕まってたのか?」
 「失礼ね、秘密任務よ。」
 「秘密任務?」
 「ここで、教育的な説明が必要。っという事で。
 それと、ここへ、この子を連れて来るにはA級ジャンパーが必要だったから。
 ついでに貴方達の報告の調査も含まれているわ。」
 「ついでか・・・」
 大人が二人に、子供がラピスをいれて7人になった。
 ・・・
 ホシノルリが来るまでに子供は、11人になっていた。
 「サッカーが出来るわね?」

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 b83yrの感想

なんだかんだと、アキトの為に苦労してるエリナがなんとも言えず良い味ですね

そろそろ、ルリ達との再会もあるのでしょうか? 

では、異味 重政さん投稿ありがとうございました



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