「此処は何処だ?・・・それよりも俺の身体は?」
俺は、まず自分の身体を確かめた。
ふう〜っ、一番心配していた、精神のみが何処かに入った状態ではないらしい。
? どうして俺一人の視界なんだ?
いつもは、俺とラピスの二重の視界が見えるはずなんだが?
少し調べて原因がわかった、ラピスは未だ眠っているのか、目を閉じた状態なので、
俺一人の視界しか無かった訳だ。
俺が起きていて、ラピスが眠っている状態。
この状態は、俺達には不都合な状態だ。
反対に、ラピスが起きていて、俺が眠っている状態も俺達には不都合だ。
一番都合がいいのは、起きる時も寝る時も二人同時にというのが一番都合がいい。
理由は、眠れないから。
その訳は、どちらか一人が起きていた場合、もう一人の精神に刺激を与える為。
直接精神を刺激される為、大抵起きてしまう。
失神しているか、起きる事が出来ないほど弱っていれば起きないとは思うが・・・
今迄のように、俺がラピスに合わせる方が良いだろう。
子供の方が睡眠時間が多く必要なので、俺の方で睡眠時間を合わせていたのだ。
この、睡眠時間を合わせるといっても、寝た振りをすれば良いって訳ではなく、
相手の精神に影響を与えるような事を考えるな、ということになる。
何も考えないで起きていられれば良いのだが、普通人間は何か考えてしまう。
その時、相手の精神に大きな影響を与えれば、心臓に悪影響を及ぼしてしまう。
そこまで考えていると、ラピスが目を覚ましそうな気配を感じた。
起きそうな気配とは、ラピスの目や耳からの情報が断片的に入ってくるのである。
俺達は、精神が繋がっているのであって、目や耳が繋がっているのではない。
だから、相手が無意識でも、見たもの聞いたものを脳が処理すれば、相手にも伝わる。
反対に、目の前にあって見つめていても、近くで音がしていても、脳が処理していなければ、
相手に伝わらない。
熟睡している時に声が届かないといった現象である。
そして、起きる前に脳が働きだすので、その気配を感じる。
(アキト、身体はある?)
「あぁ、身体も精神も一緒だ。」
(此処は・・・)
「ユーチャリスの中だと思う。」
(間違いないけど・・・)「ユーチャリスは火星に向かって落下中。」
ユーチャリスのオペレート中は、声を出しているので、両方ともラピスのせりふ。
この表現だと、分かり辛いので、以後ラピスが声を出している場合でも( )を使用。
「火星? 何故?」
(ユーチャリスの記録によると、木星の公転軌道上から、時間をかけて此処まで落下してきて、
この近辺で火星の重力につかまっている。)
「ラピス、地上までは・・・」
(アキト、急いでユーチャリスを避難させる必要がある。)
「避難? 何故?」
(相転移砲を使っている。)
「相転移砲? そんなもの使われたら、ユーチャリスでも耐えられないぞ。」
(火星極冠遺跡の上空で相転移砲を使って戦闘中、ユーチャリスは気づかれていません。)
「そうか、気づかれていないのなら、このまま傍観、
戦闘に巻き込まれない場所を捜して着陸してくれ。」
ユーチャリスは無事着陸。
「ラピス、通信を傍受出来るか?」
(・・・・・・通信傍受開始。)
・・・
『アイちゃん待ってろ・・・』
『お兄ちゃん・・・』
・・・
「! 俺とアイちゃん?」
・・・ナデシコAで遺跡を飛ばす前の時間に戻ってきた?
俺達はそのまま傍受していたが、あの時を思い出しているのだが、
こんな場面? あったかな?
遺跡内部でアイちゃんと俺が会っている?
俺は間に合わなかったはずだが・・・
「ラピス、この場面の5分前から、もう一度映像を再生してみてくれ。」
俺はもう一度映像を見てみた。
「こ、これは、過去へのボソンジャンプ!」
テンカワアキトは、遺跡内部で過去へのボソンジャンプをして、アイちゃんと会っている?
? 頼まれ物、プレートを持っているはずだが、アイちゃんは何も言おうとしていない。
・・・・・・
アイちゃんはプレートを持っていないのか?
それにしても、アイちゃんがなかなか過去へボソンジャンプしないな?
テンカワアキトとアイちゃんが抱き合ったまま、動きが無くなっている。
通信もしなくなった?
「ラピス、通信の傍受が出来なくなったのか?」
(通信の傍受不可、原因はわかりません。それより、ユーチャリスが遺跡に吸いよせられている。)
「まずいな、見つかってしまう。」
(他の艦は見当たりません。)
「? 何処へ行ったんだ? とにかく、ディストーションフィールド展開。」
(ディストーションフィールド展開中、いぜん遺跡に接近中。)
ユーチャリスの前方に遺跡?
何故遺跡の下部が見える?
それに俺達の他に居た艦は何処に消えた?
そして火星? 火星の大地は何処に行った?
此処には遺跡とユーチャリス以外何も無かった。
そして、遺跡の下部−演算ユニットが在るあたりから、強烈な光が漏れだしている。
その光の奔流が俺達を包み込んでゆく。その中をユーチャリスは遺跡へと向かっていく。
見えるのはまばゆい光の乱舞のみ。
「ラピス、逃げられないか?」
(ダメ、力が違いすぎる。向きを変える事も出来ない。)
「・・・ディストーションフィールドを展開させたまま、様子を見よう。」
遺跡からの光が漸く薄れてきた。
そして、その後の光景を見て俺達は唖然として声も出せなかった。
俺達と遺跡の間にはユーチャリスが通れるだけのスペースがあったが、
その空間以外は、演算ユニット−ミスマル・ユリカが演算ユニットに取り込まれていた
状態の時の演算ユニット−で埋めつくされていた。
「遺跡がこの世界を食った?」
(ユーチャリス遺跡に接近中。もうすぐ遺跡に入ります。)
「・・・ラピス、驚かないのか?」
(・・・驚いている。けど、驚いて操艦を止めたら生き残れない。)
「・・・・・・」
(遺跡に到着、遺跡に入ります。ディストーションフィールドは展開したまま。)
「俺達はどうなるんだ?」
(・・・ボソンジャンプします。じゃんぷ。)
って、俺達がジャンプした訳ではなく、勝手にジャンプさせられた。
・
・
・
「此処は何処だ?」
(火星極冠遺跡の近く。)
「今のは夢だったのかな?」
(夢ではなく現実。ユーチャリスで録画しているので再生出来る。)
「・・・まいったな。エリナの元に戻って、アカツキにさっきの事を話すか・・・」
(アキト、北辰を倒して一ヶ月以上後の時間に戻ってきている。)
「それは都合が良いな・・・やっぱり、月ドックへ直接ジャンプかな?」
(私もその方が良い。)
「そうだよな〜、長期戦になったら、トイレも行けないし、眠れもしない。」
(・・・・・・)
「ラピス、月ドックの様子を調べられるか?」
・・・・・・
(月ドック一ヶ月以上前と変わらず。今ユーチャリスで直接ジャンプ可能。)
「ジャンプ出来るかな?」
(・・・ジャンプすれば分かる。)
「それはそうなんだけど・・・ラピスは良いのか? 死ぬかもしれないんだぞ。」
(今までと変わりない。それに、何時かは試す事だと思う。)
「分かった・・・・・・それじゃ、ジャンプ!」
第七章へ進む
b83yrの感想
どうやら元の世界に戻れたようですが、なにやら色々とややこしい事になりそうで
では、異味 重政さん投稿ありがとうございました
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