ラピス・ラズリの怪説ナデシコ
  第四章 ホシノ・ルリ

  火星に向って進んでいるナデシコ。
 新しく加わったパイロットたちも期待どおりの「バカ・ばっか」。
 おまけになんだか身勝手に盛り上がっている人たちもいるんだけど、
 みーんな本当にやる気あるんだか、ないんだかぁ〜

 「ホシノ・ルリです。」
 珍しい事に、ホウメイさんに呼ばれました。
 どういう事でしょうか? ホウメイさんが私に用事? 何で呼ばれたか想像もつきません。
 食堂に着きました、ホウメイさんが手を振っています。
 ホウメイさんに用事をきくと、桃色の髪の少女を紹介されました。

 「ラピス・ラズリさんですか、私に何の用事ですか?」
 「貴方がナデシコ艦長のホシノ少佐ですか?」
 「?・・・・・・私はオペレータのホシノ・ルリです。」
 「・・・ホシノ・ルリ・・・さん、本人ですね?」
 「えぇ、そうです。」
 「テンカワアキトを知っていますか?」
 「!・・・テンカワアキト、テンカワさんなら知っています。
 食堂でコックとして働いています。今も働いていて、此処からも見えます。
 食堂で唯一の男性だから、一目で分かるはずです。」
 「ええ、分かります。残念ながら、私の捜している人ではありません。」
 「? ? ?」

 「私の捜しているテンカワアキトは、この艦に乗っていますがあの人ではありません。」
 「貴方の言っている事は理解出来ません。
 何故貴方の捜しているテンカワアキトさんがこの艦に乗っていると分かるのです?」
 「それは・・・」
 「その前に、場所を移動しましょうか。」
 私は、食堂で私達が注目を集めているのに気がつきました。
 その原因が、私達の外見等だということも見当がつきました。
 大人の中に少女が二人、その他にも注目の的になりそうな事柄があるのに気がつきました。
 二人とも、身振り手振りも交えず、互いに向かい合ったまま、無表情で話し合っていました。
 二人の声にも感情が現れておらず、話の内容も変な事柄なのです。
 そして、二人の話し言葉が几帳面に文法に則っているのです。
 此処までで、私達の場所が奇妙な雰囲気で覆われていると、皆さんが判断したようです。

  その事に加えて二人とも金色の瞳を持っていることから、ある推測をしました。
 その推測とは、ラピスさんは私と同じ境遇の人であると・・・
 同じ境遇とは、遺伝子操作及びIFS強化処理をされ、英才教育を受けていると。
 この過程で、遊び仲間も無く、コンピュータと共に育ってしまうと、幼児言葉やスラング、
 方言、男と女の違いによる差別用語も殆ど覚えず、使わなくなる。
 そのくせ、話し言葉の文法は正確といった子供が誕生する。

  ラピス・ラズリ、もしかして、彼女もオペレータ?
 という所まで同じでしょうか?
 「私の部屋に行きましょうか?」
 「私は、この艦の通路を覚えていません。」
 「・・・密航者ですか?」
 「無断侵入者です。」
 「似たようなものです。では、何処で話しましょうか?」
 「私が居た場所で話しましょう。」
 ・・・

  ラピスさんの案内で、彼女が案内する場所に着きました。
 驚きました、ナデシコ艦内にこんな所が存在しているとは。
 私達が、少女なので此処まで簡単に来ることが出来ましたが、
 大人では、体の大きさが邪魔になって此処に来るのは難しいでしょう。
 そして、オモイカネも此処は監視していないようです。
 そして、二人で話し合った結果次のことが分かりました。
 ラピスさんは、未来から来られたようです。
 もう一人テンカワアキトさんも一緒に来られたようですが、
 何処に居られるか分からないそうです。

  ラピスさんとアキトさんは、お互いの精神が繋がっているそうなので、
 相手の見たもの聞いたものが分かるそうです。
 でも、今はアキトさんの見るもの聞こえるものが分からないそうです。
 この艦に居る事だけは何故か分かるそうです。
 そして、この艦に来た方法はボソンジャンプで来たそうです。
 同じ方法で帰ろうとしたが、ボソンジャンプ出来なくなっていたそうです。
 私に逢ったのは、ボソンジャンプが出来なくなった原因が私に有ると思ったからだそうです。

  ラピスさんの存在、未来からの来訪者、ボソンジャンプ。
 良く理解出来ない事柄が沢山ありすぎて、混迷状態です。
 今日は一端話し合いを終わらせて、明日また、再開する事にしました。
 その時には、此処にIFS端末を持ってきて、オモイカネにアクセス出来るようにしましょう。
 ・・・

  今日は、IFS端末を持ってきたので、ラピスさんをどうするか決められると思います。
 未来から来られたのなら、未来に帰ってもらうのが一番良い解決法だと思われます。
 私も、密航者の通報をしなくて良いですから。
 「ラピスさん、貴方はIFS端末が使えるオペレータですか?」
 「はい。」
 「今からラピスさんの仮のIDを作成します。
 このIDは状況入力のみ出来るようにしますので、他の処理はしないようにして下さい。」
 「分かりました。」
 ・・・・・・

 「・・・出来ました。では、始めてください。」
 IFS端末をラピスさんに渡しました。
 ラピスさんがオモイカネにアクセスします。
 私以外の人間がオモイカネにアクセスするのを見るのは初めてです。
 私もオモイカネにアクセスしている時は、こんな顔をしているんでしょうか?
 目を見開いて、驚いているような感じで・・・
 ? 本当に驚いているようです。
 「・・・本当に・・・アクセス・・・制限・・・されてるの?」
 ? オモイカネの暴走? オモイカネからのフィードバックイメージ異常増大?
 それとも、意識がオモイカネに取り込まれた?
 「ラピスさん、ラピスさん!・・・」
 返事がありません。
 意識が取り込まれた場合は、IFS端末から無理矢理放さないよう気をつけて
 原因を取り除く必要が有ります。

  出来るだけIFS端末を動かさないように、ラピスさんの反対側から
 IFS端末に手を伸ばし、IFS端末に手を載せる。
 「オモイカネにアクセス。」
 ・・・ラピスさんの意識が見つかりません。
 ・・・オモイカネ内を隅々まで捜さないといけないようです。
 まず、何処から捜しましょうか?
 思案している私の肩に、誰かの手を感じました。
 無意識の内に、オモイカネ内に姿を投影していたようです。
 ラピスさんに文句を言おうと、振り返りましたが、
 その姿を見て、何を言っていいか分からず、静止してしまいました。
 其処には女の人が立っていました、歳は16歳位、ツインテールにした髪、金色の瞳。
 一瞬、奇麗な人と思いましたが、直ぐにその姿は未来の私の姿だと思い当たりました。
 投影した姿の顔が紅潮している事でしょう。
 少し間を置いて話しかけました。

 「ラピスさんですか?」
 「俺・・・テンカワアキト。」
 未来のテンカワさん?
 そう思っている間に、未来の私の姿が、次第に変化していきます。
 未来の私の姿から、今のテンカワさんの姿へと、
 その後、コック姿を経て黒ずくめの姿に変わっていきました。
 結構変わった服装みたいですが・・・・他人の服装の趣味は気にしないことにしましょう。
 「俺・・・追いかけ廻されてたから、お返しのつもりで・・・」
 「えっ、テンカワさんを、私が追いかけていたんですか?」
 「オモイカネに不整合データが有るとか、オモイカネのデータの再整理等で、
 様々なデータを消去しようとしてたけど、あれは俺の一部だったんだ。」
 「・・・データがですか?
 ? あのデータは無くなったと思いますが?」
 「無くなる前に、複製を取って使えるようにした。
 何回もそういう事があったんで、今ではその処理は意識しないで出来るようになったけど。」

  混乱してきましたので整理しましょう。
 「貴方は、未来のテンカワさんですね?」
 「そうだ。」
 「貴方は、今迄オモイカネの中に居たんですか?」
 「少し違う、オモイカネの中に俺の記憶が入ってしまったらしい。」
 「何時からですか?」
 「ナデシコが出航する前から・・・ラピスも同じ時期にこの艦に来たはずだ。」
 「・・・あっ、ラピスさんを捜さなければいけません。」
 「ラピスなら、此処に居る。」
 テンカワさんがそう言うと、テンカワさんのマントの中から、小さな人形のような物が出てきて
 大きさ姿が、次第にラピスさんになりました。
 その恰好で、少女の人形ですか・・・未来ではそういうのが流行っているのでしょうか。
 「ラピスさん、意識が取り込まれた訳では無いですね?」
 「・・・・・・」

 「・・・大丈夫・・・らしい。」
 「何故、テンカワさんが返事をするんです?」
 「ラピスは少し前まで、誰の言う事でも言われた通りに行動していたんだ、
 それも、善悪どころか、自分に都合の悪い事でもなんでも、
 それで、自分で判断して対処させようとしているんだが、
 未だよく分からない時があるんだ。その時は、俺が代わりに答えるようにしているんだけど。」
 「?・・・そうですか。」
 「・・・・・・」
 「・・・ところで、貴方の本体は何処ですか?」
 「それを知ってどうする?」
 「艦長に知らせます。そして、二人の処分を決めてもらいます。」
 「残念だけど、俺も本体が何処に居るか知らないんだ。」
 「どういうことですか?」
 「俺にも良く分からないんだけど、ボソンジャンプして、
 ここに来たのは、ラピスと、俺の精神だけらしい。」
 「・・・精神だけですか・・・」
 「精神だけでも艦長に処分してもらう?」
 「・・・それなら、二人とも未来に帰ってください。」
 「う〜ん、その方法を捜しているんだけどね。」

 「見つからないんですか?」
 「俺だと効率的に捜すのが難しいんだ。協力してくれない?」
 「仕方ありません、協力します。」
 「じゃぁ、俺がデータを用意するから、ラピスと協力して原因と帰る方法を調査してくれる。」
 無理矢理、ラピスさんと協力して調査する事になりました。
 「私はブリッジに戻り、そこからIFS端末を通じて調査します。
 此処に持ってきたIFS端末はラピスさんが使えるように残していきます。」

 ・
 ・
 ・

 「アキト。思い出した。ユーチャリスで、ホシノルリと話た時のこと・・・」
 「で、どんな事・・・」
 「私が話した後で、ホシノルリが、『ラピスラズリ! どうして?』
 と言ったきり何も言って来なかったので、私の方で通信を切断し、通信にプロテクトをかけ直した。
 その後でアキトを乗せボソンジャンプした。
 ホシノルリがあの時、冷静だったら、ユーチャリスもスムーズにジャンプ出来なかった。」
 「あぁ、そうかもしれない。」

第五章 へ進む 

異味さんの部屋// 投稿作品の部屋// トップ2


b83yrの感想

ふむ、TVでのサツキミドリ2号から火星へ向かう辺りの時間への逆行だったんですね

精神だけがオモイカネの中ですか

アキト達が元の世界に戻るにしろ戻らないにしろ、未来を知ってしまったルリの行動は変わってくるだろうし、そうなればやっぱり、逆行先の歴史も変わって行くのでしょうか

 

感想というより、一寸した小話

逆行モノ読んでて良く思う事

二次創作って、元ネタがあるから一寸した会話文とか入れるだけで、ある程度の状況が解かるから便利

でも、それに頼りすぎると今度は、表現力が上手くならないって欠点も

と言って、解り切っている部分をくどくどと説明されても、読者も飽きちゃうかもしれないから、その辺りのバランス感覚は難しいかも

私もSS書いてる時、よくその辺りの事で悩みます

 

では、異味 重政さん投稿ありがとうございました

第五章 へ進む 

異味さんの部屋// 投稿作品の部屋// トップ2



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送