ラピス・ラズリの怪説ナデシコ
  第二章 エリナ・キンジョウ・ウォン

  今日は、テンカワ・アキトとラピス・ラズリの調査の日。
 ラピスちゃんは泊まる所がないので私が預かる事になった。
 ラピスちゃんを起こそうとして私は・・・
 「アキト・・・くん。」
 ラピスちゃんは、私の寝室ではなく、別室に布団を敷いて寝かしてある。
 その布団の中に、ラピスちゃんとアキト君が仲良く一緒に寝ている・・・

 「あれっ。エリナ・・・どうして此処へ?」
 「此処が何処だか分かってるんでしょうね!」
 「そんなに大声をあげなくても・・・って、此処、何処?」
 「分からないの! 私の部屋よ!」
 「・・・・・・エリナ! ところで、この子、誰?」
 やっと、隣で寝ているラピスちゃんに気づいたみたい。
 「呆れたわね・・・ラピス・ラズリ・・・貴方が連れてきた子でしょ!」
 「そうか、ラピス・ラズリ、思い出した・・・で、なんでこの子が居る?」
 「わからないの? 此処は、アキト君の部屋じゃなく私の部屋よ。」

 「・・・何で? 何で此処にいるんだ?」
 「何でって・・・ボソンジャンプよ! ボソンジャンプ!」
 「・・・・・・」
 「この前から、何度となく私の部屋に現れているでしょう?」
 「もしかして?」
 「そうよ! 今度は寝ている間にジャンプしてきたのよ!」
 「・・・・・・」
 「もう、こうなるとボソンジャンプも、うっとーしいわね。」
 「ごめん。」
 「でも、貴方もラピスも何でCC無しでボソンジャンプ出来るのよ。」
 「エリナには分からないのか。」
 「私に分かる訳ないでしょう!」
 「・・・・・・」
 ・・・・・・

  その日は、アキト君とラピスちゃんの身体を調査して終わった。
 もう二三日調査が必要らしい。
 翌日、ラピスちゃんが居なくなっていた。
 「今度は、ラピスちゃんって訳。」
 「そうなんだ・・・」
 「はぁ、全くこの二人ときたら・・・頭が痛くなってきた。
 CCが無くてもジャンプするのなら、CCが在ればジャンプしないのでは?」
 「残念! CCが在ってもジャンプ出来るゾっ! CCを持ってジャンプしてもCCを消費しない。」
 「はいはい。そのおかげで私は会社にも行けないんだから!」
 「会社には行かないとまずいだろう?」
 この鳥頭め!

 「誰の所為だと思っているの! ラピスちゃんを一人に出来ないでしょうが?」
 「・・・そうなのか?」
 「アキト君! 検査が終わったら、ラピスちゃんと一緒に暮らしなさい。」
 「それは不味いだろう。ラピスは女性なんだし・・・」
 「あ、貴方ねえ〜、その女性が二人して風呂に入っている所にボソンジャンプしてくる人は誰よ?」
 「えっ、お、俺ですか?」
 「よく考えると、ボソンジャンプのシステム自体が悪いのかもしれないわね。
 ジャンプ先のイメージだけでボソンジャンプが出来るなんて、そのおかげでアキト君とラピスちゃんは
 互いに相手の事を考えただけで相手の所にジャンプするなんて。
 アキト君もミスマル・ユリカとホシノ・ルリの所には帰れないわね。」
 「そうか、二人とも昔は一緒に暮らしていたと言っていたな〜。」
 「あ、未だ、思い出していないの。もしかしたら当人の顔をみないと思い出さないのかな?」
 「・・・・・・」
 「そうだとすると、皆に逢わせる手筈が必要ね。」
 「ナデシコに乗っていたという人達か。」
 「ええ、アキト君ナデシコに乗っていた人達で思い出したのは私と会長よね?」
 「あぁ、エリナとアカツキは思い出したが、ナデシコや、そこに乗っていた人達は思い出せない。」

 「アキト君、貴方、思い出さない方が良いかも知れないわね。」
 「・・・何故?」
 「ミスマル・ユリカとかホシノ・ルリを思い出したとすると、
 そのどちらかを思い浮かべただけで、ミスマル・ユリカかホシノ・ルリの所にジャンプ!
 まずいんじゃないの?」
 「それがどうしてまずいんだ?」
 「・・・それは、ミスマル・ユリカの所だと火星の後継者達に再び捕まるわね。
 そして、ホシノ・ルリの所だと軍に捕まる事になるでしょう。」
 「そうか・・・何だかまずそうだな。」

  「その上、知らない女の子がアキト君の所に何時の間にか現れる・・・
 知らない女の子って、ラピスちゃんだけど、二人は知っている訳ないわよね!」
 「・・・聞いていると、すごくまずい感じがする。」
 「ラピスちゃんを隠し子と間違われたりして・・・」
 「お、おぃ、俺はミスマル・ユリカ以外には結婚していないと言っていたじゃないか。」
 「でも、2〜3年消息不明でしょう。信じてくれるかしら?」
 「・・・二人は、そんなに疑り深いのか?」
 「さあ、どうかな? 貴方は二人の元に帰りたいの?」
 「ん? 二人の元に帰る? どうなのかな・・・よく分からん。」

 ・
 ・
 ・

 「それにしても、どうしてこう、頻繁にジャンプして来るの?」
 「うっ、そ、それは・・・」
 「それは・・・」
 「い、言わないといけないか?」
 「? 是非知りたいわ!」
 「・・・・・・」
 「・・・教えてよ!」
 何で、こんなにしぶっているのよ。
 「聞かない方がいいと思うが・・・」
 「言いなさいよ!」
 いい加減に吐きなさいよ!

 「・・・俺とラピスは、互いに相手が見た物が見えてしまう。」
 「・・・・・・」
 「そういう訳で、エリナの着替えや、化粧、息抜きしている所とか・・・
 見えるじゃないか、その後・・・」
 「あっ、そ、そうなんだ・・・・・・で、その後は、」
 「よく分からない状態になっているので、思い出したら、ジャンプ。」
 「お、思い出すんじゃない!」
 「・・・・・・」

 「それにしても、あんた達、余所にはジャンプしないの?」
 「ああ、俺は殆ど記憶が無いみたいだし、ラピスは、ネルガルの研究所と火星の後継者の所
 だけみたいで、思い出したくもないんだと思う。」
 「アキト君、貴方、火星の後継者達を倒したら、その後どうするつもり?」
 「・・・・・・」
 「どうせなら、ラピスちゃんと一緒に私の所に来る?
 二人には貴方と私の間にラピスちゃんが出来たからっていい訳しておくわよ。」
 「ち、ちょっと待て! 記憶が戻った時にややこしい話になるだろうが?」
 「ん〜ッ、それもそうね。」
 「・・・・・・」

 「その話は置いといて、俺とラピスのバイザーを買おうと思うんだが。」
 「バイザー? 何故?」
 「俺とラピスが二人分の景色を見ているのは知っているな。」
 「ええ。」
 「自分の視界でない方は、多少暗めなので、それをバイザーで暗くしてやると
 自分でない方の視界が大分暗くなって、見易いと思う。まぁ、自分の視界も多少暗くなってしまうが・・・」
 「それで、バイザー?」
 「あぁ、見易くなると思う。」
 「そう、だけど貴方達二人にはバイザーは似合わないと思うけど・・・」
 「心配ない、バイザーに合わせて服も買ってくる。」
 「あ、ラピスちゃんの服は貴方では分からないでしょうから、私が選ぶわ。」

 ・
 ・
 ・

  し、失敗だった。色々な機能が入るといってもね〜 その格好じゃ外を歩けないじゃない。
 それとも、この男、恥も外聞もなさそうだから平気で外を歩けるとか・・・まさかね。
 ラピスちゃんの服は私が選ぶって言ったから、最悪にはならなかったようだけど。
 「アキト君がその格好をするのは我慢するとして、ラピスちゃんに恥ずかしい思いはさせないでね!」
 「? ああ、まかしとけ、ラピスは俺が守ってやる。」
 本当に分かっているのかな? この男、超が付くほど鈍感なんだから?
 まったく、戦闘ばかり上達して、誰が教えているのか・・・
 あっ、月臣にゴートか、あの二人に男と女の行儀作法ね〜、まぁ期待出来そうにないか。
 「・・・考えるのやめ、
 ラピスちゃんの服とか、日常品を揃えとくから、検査が終わったら、二人でユーチャリスに行くのよ。」
 はぁ〜、まったく、これじゃー二人の母親じゃないの!
 未だ結婚もしてないのに〜
 きっと、こんな事をしているから、ネルガル乗っ取り計画が3年で出来なかったのね。

  私の指示通り、ラピスちゃんとアキト君はユーチャリスに引っ越した。
 二人の身体の調査結果は、ナノマシンに原因が有るが詳しくは分からないらしい。
 テンカワ・アキトのナノマシンの状態が以前と変わっている事は確認された。
 ラピス・ラズリもナノマシンをかなり多量に投与されている事も確認された。
 二人のナノマシンがお互いに干渉しあっているらしいが、どういうカラクリかは不明。
 その干渉のせいで、テンカワ・アキトの目と耳の機能が戻っているらしいが、
 これも詳細は不明。
 味覚と嗅覚も戻っていれば良かったんだけど。

  そして、現在の医学では、ナノマシンの除去も不可能。
 出来れば、パイロット用ナノマシンが、取り外し自由になるので、ずいぶんと儲かると思うんだけど。
 結局は何らかの関係はあるだろうが、何も分からないって事みたい。
 ハぁ〜、あの二人どうなるんだろう・・・考えていてもしょうがないか。
 休んで遅れた分を取り返さないと・・・

 

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b83yrの感想

異味 重政さん投稿ありがとうございました

しかし、ボソンジャンプって上手く使えれば便利だけど『便利であるが故に不便』ですね(苦笑)

 



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