前編

未来の為に


そして新しき未来へ…




前編



「アキト、ここは私が食い止めますから、早く研究所に向かって下さい」

『だが…大丈夫か? あのナデシコと戦うんだぞ? 』

「大丈夫です…ナデシコの事は良く理解してますから…ムツミの事をお願いします」

『分かった・・・」


アキトとの会話が終わるや否、ルリは全神経を船の操縦へと注ぐ。

モニターに映る、ナデシコCの存在を少しでも忘れるように・・・・・





「よっしゃあ、サブロウタ、おめーに俺の部隊は任せる。 俺はあの黒い機体をしとめる! 」

『へいへい、でも、あの機体は火星の戦いで見た機体と同型っぽいから、お気をつけて〜 』

「へっ・・・・おめーも油断すんなよ」


そう言うと、リョーコはエステの戦列から離れ、アキトの乗る夜天光へと向かう。

そして、残されたサブロウタとライオンシックルズは、バッタの方へと向かって行く。




「艦長、リョーコ中尉は研究所に向かっている黒い機体を追っています。 援護しますか? 」


ハーリーが、リョーコ達の行動をユリカへと報告する。 それを見ていた、ユリカは少し考えながら答える。


「いえ、リョーコさんなら大丈夫でしょう。 それよりも、バッタの殲滅を急いでください。 

 ナデシコは、アララギ大佐の護衛をすると同時に、エステバリス隊への援護をお願いします」


「艦長、油断しない方が良いよ。あの駆逐艦、只の駆逐艦ではなさそうだ。 この短時間で、大佐の船とエステバリス隊を

 全滅に追いこんでいるからね」


艦内のクルーに指示を出すユリカの横から、ジュンが不安そうに話しかけた。

丁度その時、アララギ大佐から通信が入った。


『すまない、我々がふがいないばかりに』

「いえ、気にしないで下さい。 本来は、私達の仕事だったんですから。それで、そちらの被害状況は?」
 
『ああ、ごらんの通り、船自体は大きなダメージを受けているが、乗員には大きな怪我は無い。 
 
 エステ隊も、奇跡的に死亡者はいない様だ』


アララギ大佐の言葉通り、船の外観は酷い損傷があるのだが、モニターに映る艦内では乗員が誰一人かける事無く

仕事を行なっていた。 もっとも、アララギ大佐の頭部には包帯がまかれていたが。


「良かった…でも、船は動けないんですよね? ハーリー君、ナデシコを着陸させて。

 アララギ大佐の乗員をナデシコに移動させます」

「わかりました、艦長」

『気をつけてくれ。 奴らは、船を集中的に狙ってくるぞ』


ナデシコ内で、このような会話が繰り広げられている頃、外では激しい戦いが繰り広げていた。






「さすがに、サブロウタさんですね。 バッタだけでは時間を稼ぐ事は出来そうに無いですね」


ルリは、撃墜されていくバッタを見ながら、徐々に近づいてくるエステバリス隊を恨めしそうに見つめていた。


「脱出の時に使うつもりでしたけど…仕方ありませんね」


ルリが呟くと同時に、艦内の格納庫に待機してあったステルンクーゲルが静かに動きだした。



「よーし、どうやらバッタだけみてーだな。 このまま、敵艦を落とすぞ! 」

『あ、大尉。 敵艦から機動兵器が出てきます! 』


ライオンシックルズの一員の声に、サブロウタが駆逐艦に目を向けると、数機のステルンクーゲルが

サブロウタ達に向かってきていた。


「へ〜、面白くなってきたじゃないの」


サブロウタは、そう言うとステルンクーゲルの方へとエステを進ませた。







「このやろっ! 逃げてばっかいねーで、勝負しやがれ!」


この時、研究所付近ではリョーコとアキトの戦いが繰り広げ照られていた。

しかし、アキトはリョーコとまともに遣り合おうとせずに、ひたすら攻撃をかわす事に徹していた。


「くそっ! やはり振り切る事は出来ないか・・・・ならば…」


研究所に近づきながらも、その進路に遮るように攻撃を仕掛けてくるリョーコのお陰で、先ほどから

全く研究所に近づく事が出来ないアキトは、口惜しそうに呟いた。

そして、攻撃を避けるだけだった夜天光が、一転してリョーコのエステバリスに向かっていった。


「やっとで、やる気になったかぁ? だが、研究所には絶対に行かせねぇからな! 」

「ステルンクーゲルを出したか・・・・このままでは時間の問題だな…手加減はしないぞ、リョーコちゃん! 」




この時、研究所に近づく集団を気付く事は、研究所付近で戦っているアキト達はおろか、ユリカやルリも気付かなかった。


「混乱に乗じてか・・・・・ここまで上手く行くとは思わなかったが」

「研究所の奴らも、この騒動に気を取られているんだろうな」











「あの、艦長。 僕がハッキングで敵艦を抑えた方が良いんじゃないんですか? 」


戦況としては、ナデシコの方が優勢ではあるが、敵艦の予想以上の抵抗により決して楽とは言えない。

その為、ハーリーは申し出ていた。 何より、このままでは研究所に被害が出る可能性があるからだ。


「そうしたいけど、ハッキングは私の独断だけじゃ許可できないから」


ハーリーの言いたい事は分かっているユリカは、少し視線を下に落として答えた。

この頃のハーリーは、ルリが火星で行なった大規模なハッキングとは言えないまでにも、複数の艦隊ぐらいなら

掌握する事は出きるようになっていた。

しかし、ルリが見せた火星での大規模なハッキングのお陰で、この行為は核兵器にも匹敵する行為だと言う世論が

高まった為、ハッキングはそう簡単には許可できなかった。 また、その権限もユリカには無く

軍上層部の許可があって、初めて出切る事に、なっていた。


「すいません、別に艦長を責めているわけでは…」


慌てふためくハーリーの行動を見て、ユリカは顔をハーリーに向けた。 その顔は、ハーリーの慌てふためいた

行動が可笑しかったのか、笑みがこぼれていた。


「大丈夫、別に気にしてないよ。 それに、ハーリー君の力を借りなくても、リョーコさんたちに任せておけば大丈夫だよ」


その笑みに、ハーリーはユリカが気にしてない事に安堵した。 彼は、ハッキングの事でルリ達の事を

思い出せてしまったかと思ったのだが、どうやらその心配は無いようだ。


「いや…大規模なハッキングはともかく、バッタとかのコントロールを奪うぐらいなら大丈夫じゃないかな?

 それに、大規模なハッキングは出来ないようにオモイカネにはプロテクトをかけているんだろう? 」


「そっか、そう言えばそうだったね。 ジュン君、ありがと。 ハーリー君、とりあえず準備だけはしておいてくれる? 」

「はい、バッタと言わず敵艦も掌握して見せますよ! 」

「程々にね? 後で、お父様が苦労するんだから」


ユリカに窘められつつも、ハーリーは元気良く、オモイカネとハッキングの準備に取りかかった。









「所詮、無人機。 俺達には、歯ごたえが無さ過ぎってね! 」


サブロウタは、駆逐艦から出てきたステルンクーゲルを、一人で撃破して行く。

たとえ、ルリがコントロールをしているとは言えども、機動兵器での実戦を経験していないルリには

サブロウタの相手は無理があった。 何より、多数のバッタと同時に操る事は、ルリには初めてであったのもある。



「これじゃ…ムツミを助け出すまで持たない・・・・」


次々と落とされるステルンクーゲルを、目の当たりにするルリの顔からは、既に余裕の表情は消えうせていた。

また、サブロウタの後方で戦うライオンシックルズの面々も、誰一人欠ける事無くバッタを撃墜している。

そして、徐々にサブロウタは、ルリの乗る駆逐艦の近くまで接近していた。



「仕方ないですね…手荒な事はしたくなかったんですが・・・・」


ルリの呟きと同時に、ライオンシックルズと戦っていたバッタ達が、一斉にナデシコの方へと向かってゆく。


「何!?」

『大尉、バッタが…』

「ここは、俺に任せろ! おめーらは、ナデシコを守れ! 」

『了解! 』


バッタの突然の行動に、サブロウタは素早くライオンシックルズの隊員達に、追撃を命ずる。

そして、残されたサブロウタの周りを、ステルンクーゲルと駆逐艦から出てきた小数のバッタが取り囲んだ。


「いいね、いいね〜〜。そう簡単に勝たせてくれないってやつ? ま、良いけどね! 」


サブロウタは、余裕の笑みを顔に浮かべると、ステルンクーゲルとバッタの群れに一人で向かっていった。




「対空ミサイルは全弾討ち尽くしても良いから、発射!! バッタをこれ以上近づけないで! 

 ライオンシックルズは、アララギ大佐の船に近づくバッタを倒すように指示を出して! ハーリー君、ハッキングはまだ!? 」


「今、やってます。 もう少し時間を下さい! 」


ユリカの大きな声に、ハーリーもつい声を荒げて答えてしまった。 

何故なら、バッタ達はミサイルを全弾発射すると、そのまま艦に体当たりをしかけてくる為、ナデシコのミサイルだけでは

対処しきれなかった。 

本来は、グラブティブラストで殲滅したいのだが、ナデシコの正面を避けるようにバッタは体当たりをしかけてくる。

その対応にも追われているハーリーは、今、艦内でもっとも忙しく働いていた。


「敵も必死だな。 だが、バッタの数もこれ以上増えようがないようだし、ここが踏ん張りどころだな」


ジュンの指摘通り、バッタの攻撃は見ようによっては、最後の悪あがきとも見れる。

だが、バッタの正確の動きによって決して楽な状態ではないが。





「急いで、バッタの動きだけでも止めないと…オモイカネ、早く終わらせような! 」 


ハーリーの言葉に反応するように、ウインドウに『ハーリーがいなくでも、大丈夫♪』と言う文字が映し出された。

徐々に、緊迫感に包まれるナデシコ内でオモイカネの行動に、笑いに包まれるブリッジ。


「オモイカネ・・・・そんな事してる場合じゃないよ・・・・」


呆れながらも、ハーリーは何とかハッキングの作業に集中する。

昔のハーリーならば、泣き出しかねなかったのだが、ルリがいない今、ナデシコのオペレーターは

自分しかいないと言う事からか、仕事中には泣かなくなった。 もっとも、昔よりはましになったと言うレベルだが。








「…バッタの動きがおかしい…まさか!? 」


先程から、ナデシコに攻撃をかけているバッタ達の動きが遅くなったのを、ライオン・シックルズとの

戦いでのダメージで遅くなっていたと感じていたルリだが、唐突にある事を思い出した。


「オモイカネと上手く行ってるようですね。 ハーリー君…」


バッタの動きが遅くなったのが、自分が昔、弟のように接していた少年の事を思い出すと、ルリの顔には

自然と笑みがこぼれた。


「もう、電子の妖精では無いんですよね。 私は…でも、負ける訳に行きません! 」 


先程、浮かべた笑みはルリの顔から消え失せ、その表情は厳しいものへと変わって行く。

分の悪い戦いとは言え、ルリとアキトは決して引く事は出来ないのだから…
















「ツキオミ。 誘拐された人物とは誰なんだ? そろそろ、教えてくれても良いのではないか? 」

「じきに、分かるさ」


研究所に潜入した人物達は、ツキオミとゴート率いる、ネルガルのシークレットサービスだった。

既に、部下は他の所を捜索中で、ツキオミとゴートの二人だけだった。

だが、ゴートを含め部下達は、今回の作戦内容だけしか知らされずにいた。

唯一、今回の件を知っているであろうツキオミも、ゴートが問い詰めても決して口を割ろうとしなかった。

しかし、ゴートの脳裏にはある人物の名が思い浮かんでいた。




「この研究所は、ボソンジャンプの研究をしていたな…と言う事は、テンカワか? あるいは、ルリ君か…」


救出すれば、分かるだろうと判断したゴートはそれ以上何も言う事無く、ツキオミについて行った。





「ニシマ博士、あの二人だけでも非難させておいた方がよろしいのでは? 」


ニシマに付き従う、ラピス達を連れ去った男性が提案する。 まだ、研究所には被害は無いものの

アキト達が黙って引き下がる事は無いと確信しているからだが、ニシマは全く聞き入れようとしなかった。


「何を言ってるんだい。 こんなに良い戦いはめったに見れるもんではないぞ? 我々の研究にも

 この戦いは、とても重要なものなんだ。 データを取らないでどうする? 」


男性の方を向かずに答えるニシマに、男性は諦めたように研究室から出てゆこうとする。

その時、相棒の女性が、研究室を出てゆく男性に話しかけてきた。


「ねえ、ニシマ博士は? 」

「駄目だ…非難する気はさらさら無いようだ」


男性の答えに、女性は分かっていたのか、さほど落ち込む様子は無い。


「やっぱりね…じゃあ、私は赤ん坊の方を監視しておくけど、あんたはどうする? 」

「そうだな、俺はラピスの方を監視しておくよ。 まあ、テンカワが来たら逃げるけどな」

「そうね。 只では済まないでしょうね。 見つかったら…じゃあ、気をつけてね」


そういうと、二人はラピスとムツミの所へと向かっていった。





「しかし、本当に静かだな。 警備が手薄過ぎる」


ゴートが小さく呟く。 既に、ゴートとツキオミは研究所の地下3階まで進入していたが、それまで警備員

らしき人物は確かにいたのだが、応援を呼ばれる事も無く、警報も鳴らなかった。


「確かに、少なすぎるな…話では聞いていたが、ここまでとはな」

「どう言う事だ? ツキオミ」

「何でも、ここの責任者の一人のニシマと言う男は、昔、警備員に自分の研究を盗まれたらしい。

 まあ、それが原因とは言え、この警備の手薄さは逆効果ではあるな。 我々の進入に気付かないからな…」


「確かに…」



呆れたように話す、ツキオミにゴートも同意見といったようにうなずいた。


そして、二人は近くにあった、研究室と思われる部屋へと侵入する。

しかし、その部屋は余り使われていないのか、埃がかぶっていた。 だが、二人にとってはそれが都合が良いとばかりに

ツキオミは、素早く研究室のPCにアクセスを試み、ゴートは置いてあった研究に関する書類を調べ始めた。 



「どうだ? 何か、わかったか? 」


ゴートが調べていた書類には、特に重要な事は書かれてなく、ボソンジャンプを研究している者ならば

当然、知っている内容ばかりだった。 もうこの部屋に用は無いと言ったばかりに、PCに向かっているツキオミに

尋ねた。



「ああ、どうやら二人は別々の部屋に監視されているようだな」

「二人? やはり、あの二人か? 」

「会えば分かる。 一人は、この階にいるな。 後一人は、部下に任せるとして、ゴート、連絡を頼む。 

 地下4階にいるようだ」


「分かった…」


こちらの質問には、全く答えようとしないツキオミに、いつも無表情のゴートの顔にも、不機嫌といった

表情へと変化する。 しかし、その怒りをツキオミにぶつける事無く、胸に秘め部下にコミュニケで連絡した。






「ムツミは何処? 」

「またか? どうせ、しばらくはあえんよ。 諦めろ」 



ニシマの研究室前で別れた男性は、ラピスがいる監視部屋にいた。 

その男性に、ラピスは先程からずっとムツミの居場所ばかり聞くばかりで、男性もいい加減うんざりしていた。

交代した監視の者が、疲れたような顔をしていたのは、この事かと思うと、男性はムツミのほうに行けば良かったと

少しばかり後悔していた。



「はあ・・・・やっぱするんじゃなかったな、監視…」


そう呟きながら部屋を出ていく男性に、ラピスはその姿が見えなくなるまで抗議していた。



「ムツミ、大丈夫かな…アキト、ルリ…早く来て。 お料理の腕も鈍くなっちゃうよ…」


ムツミの心配もしているのだろうが、何かよけいな事も心配しているラピスだった。





「やれやれ、あの小娘をどうするつもりだろうな…ニシマ博士は…」


そう言いながら、自販機でジュースを買う男性。 


「何もできんさ・・・・二度とな…」

「何!? 」

 
驚き、振り返ろうとした男性だが、後ろから声をかけてきた男の手によって、二度と声を出す事は無かった。



「相変わらず、手際が良いな。 ツキオミ」

「私をネルガルのシークレットサービスに誘ったのは、こういう時の為だろう? 」



今ここで、起きた事は、まるで無かったかのように、二人はラピスのいる部屋へと向かっていった。

そして、その場所には眠るように倒れている、男性だけが残された。




「あ…」

「久し振りだな、ラピス・ラズリ」

「ラピスがここに? と言う事は残りの人間はテンカワか? 」


ゴートは、予想していた人物とは違う事に驚いていたが、何よりラピスの顔に表情が出ている事に

もっとも驚いていたが。


「ツキオミ…ゴート…ムツミは? ムツミもここにいるの! 助けてあげて! 」

「そうか…ムツミという名か…良い名前だ。 安心しろ、部下が救出に向かっている」


二人の会話に、一人取り残されたゴートはムツミという名の人間が、ネルガルにいたのかどうか 

何とか思い出そうとしていた。 



その時、ゴートのコミュニケに部下からの通信が入ってきた。

『ゴート隊長、無事に保護は出来ました。 しかし…この部屋で間違い無いんですか? 赤ん坊しか保護できませんでしたが」

「赤ん坊? どういう事だ? 」


報告を受けた、ゴートには何がなんだか分からないといった表情を、ラピスとツキオミに向ける。

だが、赤ん坊という単語を聞いたラピスの顔からは、笑みが浮かんだ。



「良かった…無事だったんだ…」

「ゴート、それで間違い無い。 もうここには用は無い。 さっさと脱出するぞ」


そう言うと、ツキオミはラピスを抱えて走り出した。


「だが、外は戦闘中だぞ? 我々だけならともかく、ラピスや赤ん坊がいるとなると」

「ナデシコに拾ってもらえばいいだろう? 」


ゴートの問いかけに、軽く笑みを浮かべながらツキオミは駆け出していく。

まるで、その笑みは全て計算通りといった表情のように見えたゴートは、ナデシコに着いたら

全て問いただしてやろうと考えながら、無言でツキオミの後に続いた。














「よし、ハッキング完了」


ハーリーの声と同時に、ルリの乗る駆逐艦、アキトの夜天光やバッタとステルンクーゲル達の動きが止まった。



「くそっ! こんな時に、ハッキングされるとはな! 」


憎々しげにナデシコを見つめるアキト。 過去に、自分が集めたデータによって完成されたハッキングが

このような時に、発揮される事を何よりも悔やんだ。


「ここまでなの…ムツミ…」


ルリは、何の反応もないオペレーター席で、小さくなるように膝を抱えてしまう。

オペレーター席の周りでは、オモイカネが送信してきた無数のモニターに『おやすみなさい♪』と書かれた文字と一緒に

デフォルメされたハーリーの顔が一緒に映し出されていた。




「良くやった、ハーリー! 後は、この艦のエンジンを止めるだけだな」



動きが止まった、バッタ達の間をすり抜けるようにサブロウタのエステは進み、ルリの乗る駆逐艦へ

レールガンの銃身を向ける。



「まだ、何か隠しているかもしれないからね。 ま、死にはしないから」

「アキト…ここまでなんですね…」


艦に向けられる、銃口を虚ろに見つめるルリ。 既に、全てを諦めたように体は脱力しきっていた。





「ルリ!? させるか! 」


駆逐艦に近づく、サブロウタのエステが何をしようとしたか瞬時に察したアキトはCCをポケットから取り出す。

そして、夜天光は光に包まれてゆく。 


「んだぁ!? こいつ、ボソンジャンプ出来たのかぁ? 」


目の前で、アキトの乗る夜天光を警戒していたリョーコが驚きを上げる。

リョーコと戦っている時にも、アキトは全くボソンジャンプをしようとする気配は見られなかったからだ。






「嘘!? ハーリー君、ハッキングはどうしたの? 」

「あの機体も、掌握済みです! 何で、動くんだよ。 オモイカネ、どうしたんだ? 」


ユリカ達も、目の前で起こっている事が信じられ無いと言った様子で見ている。





そして、アキトの夜天光は駆逐艦の前にジャンプした。 サブロウタの攻撃から、ルリを守るように…



「アキト!? 」


ルリの眼の前のモニターには、黒煙に包まれる夜天光の姿があった。ルリには、その姿がゆっくりと下降していくように感じられる。




「ルリ…ごめん…」


落下して行く夜天光の中で、己の不甲斐なさを呪いながら、ルリに詫びをいれるアキト。

だが、彼の声がルリに届く事は無い。



「いやぁぁぁぁぁぁ!! アキト!! 駄目ぇぇぇぇぇぇぇ!!!! 」



普段のルリからは、想像できない程の悲鳴を上げながら、モニターに映る夜天光に向かって手の伸ばす。

しかし、その手はアキトに届く事は決して無かった・・・


前編・完


どうも、KANKOです。 やっぱり長くなるので、分割してしまいました。

後、区切るのに丁度良い場面ですので。 後編も同時掲載なので、ちゃんとした後書きは後編で。

では、続きが気になった方のみ、後編へどうぞ。 ブラウザの戻るでお願いします(笑)

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