9話

機動戦艦ナデシコ


未来の為に


第9話「戸惑い」




ルリがアキトの元に来て、早10ヶ月。
この頃には、この町にも慣れてきた様で、最近は一人で出掛ける事も多くなった。
少し前までは、町の地形が良くわからず迷っていたが、今では一人で買い物に行ったりもしていた。
今日は、アキトもルリも非番で、アキトはラピスと二人で留守番をしていた。


「ラピス、ルリちゃんはどこに行くか言っていたか?」

「・・・ううん・・・・ちょっと出掛けてくるって、言っただけだよ」


アキトは、玄関に向かいながら何となく、ラピスに聞いてみた。
ラピスはラピスで、アキトの方を向く事無く、質問に答えていた。
普段なら、アキトが話し掛けたりしたら必ず、アキトの顔を見て話すものだが、料理の本を見ている時は
決して、視線を外す事は無かった。

近ごろは、アキトにべったりする事が少なくなってきたラピスではあるが、逆にルリに
懐いているようにも見えた。
アキトとしては、ラピスが徐々に成長している事は確かに嬉しいのだが、徐々に自分からも
離れていってしまうような気分にもなっていた。

何とも言えない、この複雑な気持ちは父親が感じるものなのだろうか?
アキトはそう思うと、小さく笑ってしまった。


「それじゃ、俺は今から病院に言ってくるよ」

「・・・・早く帰ってきてね、アキト


「・・・・ああ・・・・・」

いつの間にか、アキトの側に走り寄っていたラピスを見て、先程思った事を
心の中で、撤回したアキトであった。






「・・・やっぱり・・」


暗い面持ちで、誰に言うのでもなく、ルリは町の中を歩きながら一人呟いていた。
近ごろのルリにしては、かなり暗い表情であった。
先程立ち寄った建物の中での事を思い出すと、ルリの顔はさらに暗くなり足取りは、錘をつけたように重かった。



先程、ルリが立ち寄った建物の中で何があったのであろうか?



「ホシノ・ルリさん、検査結果ですが・・・・」

「どうでしたか?」

「おめでとうございます、二ヶ月ですよ」

「そうですか・・・・」


嬉しそうに、ルリに話し掛ける医者とは逆に、顔を下に向け視線は定まらないルリ。
だが、医者はルリの心境を知ってか、安心させるように優しく話し掛けてきた。


「大丈夫、お腹の赤ちゃんは何も異常はありませんよ」

「ですが・・・」


ルリの心配事は、別の事であるのだろうか?医者の言葉を聞いても
表情が明るくなる事は無かった。


「もしかして・・・・貴方とテンカワさんの体質のせいで、まともな子供が生まれてこないと思っているの?」

「それも・・・ありますけど・・」


ルリの言葉に、医者の顔は何かに納得したような表情になっていった。


「ホシノさんが、考えている事は大体予想が付きましたけど
 お腹の赤ちゃんには特に異常はありませんから、その事は心配しないで下さいね?」

「はい、ありがとうございます・・・」





ルリが立ち寄った建物、病院ではこのような経緯があった。
もちろん、ルリはアキトの子供を身ごもった事を後悔している訳ではない。
だが、自分の体質と今のアキトの体の状態では、まともに子供が生まれてくる事が出来るのか?
その事も心配の種ではあったが、医者の話ではどうやらそれほど気にする事はないようだ。

それでも、もう一つルリには気がかりな事があった。
それはアキトの事だ。
アキトと、男と女の関係になっても、どうしてもぬぐいきれない不安があった。


ミスマル・ユリカ




彼女の存在が、アキトの心を大きく占めているのはルリには充分にわかっている。
今でこそ、冗談を言う時には彼女の名前がたまには出てくるが、この町に来た頃には決して話題にも出さなかった。
お互いに、気を使っての事ではあるが、ルリは少し違う見方をしていた。

アキトが、自分を恋人として扱ってくれているのは、確かに嬉しかった。
それでも気になる事がある・・・・・
今、アキトはユリカの事をどう思っているのか?もしかして、自分と付き合っているのは同情からではないか?
そう思う事が、度々あった。

もちろん、アキトから告白は受けた。
では、今のこの状況では?自分が妊娠した事をアキトが知ったなら、アキトはどう反応するのか?
その事が怖かった。

あの優しいアキトの事だから、決して子供を拒む事は無いだろう。
しかし、本当に心の底から喜んでくれるか?もしも、喜んでくれなかったら?
同情心や自分に責任を感じて、責任を取ると言い出したのなら?

その事が、怖かった・・・自分は、アキトに本当に愛されているのだろうか?その思いがルリを苦しめていた。
この為、ルリは家に帰ることが出来ずに、宛も無く町をさ迷いつづけていた。


「アキトさんは、どう思うんだろう・・・」








ルリが一人思い悩む一方、この町に二人の来訪者が現れていた。


「ねぇ〜、ジュンちゃん。お腹すいたから、そろそろご飯にしようよ〜〜」

「わかったから、運転中にくっ付かないで〜〜」


小さな軽自動車の中で、アオイ・ジュンと白鳥・ユキナが中が良さそうに?
話し合っていた。
いつもなら、この二人の他にミナトがいたりもするが、今回はユキナに気を使って
二人だけのデートになるように、ミナトがセッティングしたのである。

ジュンは、最初は顔を赤らめて二人だけは不味いと必死にユキナを説得していたのだが、ユキナお得意の
泣き落としにあっさりと撃沈してしまい、ユキナ主導の元、デートをする事になり現在に至っている。


「近くに、食事する所は無いかな?」

「ジュンちゃん・・・・せっかく二人っきりなんだから、オシャレな所で食べようね?」


優しい口調とは裏腹に、ユキナの目はジュンを睨みつけていた。
そんなユキナに、ジュンは諦めとも言えるようなため息をして、うっすらと目に涙をためていたりした。
本来は、年上である自分がユキナをリードしたいのだが、押しと言う物とはまったく無縁の
ジュンにとっては、ユキナのような気の強い女性に勝てる訳が無いだろう。
いや、ジュンであればどんな女性であろうとも、決して頭は上がらない筈だ。

そんな、どちらが年上ともつかない会話は店に着いて、再び店を出るまで続いた。


「ふぅ〜、お腹いっぱい。美味しかったね?ジュンちゃん♪」

「うぅ・・・・あんなに食べなくたって・・・・・」


満足げな表情を浮かべるユキナと対照的に、肩を落としうなだれるジュンの姿は
まさしく、天国と地獄であろう・・・・
食事で機嫌を良くしたユキナは、軽やかな足取りで車に向かっていくが
ジュンの足取りは、何か重い物を引きずっているような感じであった。
そして、車に乗り込もうとした時、ジュンの顔は驚きに引きつらせ目は大きく見開いていた。


「どうしたの?ジュンちゃん。変な顔しちゃって?」

「あれって・・・・」


未だ、驚きから抜け出せないのか、ジュンは言葉少なめに指を反対側の道路に向けた。
ユキナは、不思議そうに指を向けた方向を見ると、ジュンと同じ様に
驚きで、体が一瞬硬直してしまった。


「え・・・・・ルリ?・・・・・」

「ルリちゃん・・・だよね?・・・」


二人の視線の先には、10ヶ月前に行方不明になったホシノ・ルリが歩いていた・・・・






一方、アキトは病院で身体検査を受けていた。
現在、アキトの体の状態は、ルリが仕事のサポートをしてくれているお陰で
徐々にではあるが、回復の方向に向かっていた。
もっとも、残す所は火星の後継者に注入されたナノマシンを除去するのみではある。
そのナノマシンも、残り僅かでアキトの身体に大きな後遺症を起こすほど、残ってはいなかった。

しかし、失われた感覚が戻る事は無かった。



「テンカワさん、最近は顔にナノマシンが出る事はありますか?」

「いや、最近は無いな」


言葉短めに返事を返すアキトを見て、医者はため息の安堵を洩らした。
元々、この医者はナノマシンを研究していた会社に勤務していたが、この町の市長からの強い要望で
この町で、ナノマシンの研究と共に医者として移り住んできた。

彼自身、昔は医学生だった為、簡単な診察は出来るが、本格的な医療は出来なかった。
しかし、アキトの身体に注入されたナノマシンの種類と量を見ると、彼は市長が自分を
熱心に此処に来るように、説得にきたか理解した。

アキトの体の中には、彼が知らないナノマシンもあったが、そこは元研究員。
未知なる物に挑戦する意味でも、アキトの治療に文字通り死力を尽くした。

その甲斐もあって、アキトの身体は回復に向かっていった。


「あんたには、苦労をかけたな」

「いえ、私のほうこそ・・・結局テンカワさんの感覚を戻す事は出来ませんでしたから
 申し訳ありません。」

「別に気にする事は無い。失った物は取り戻せないもんさ・・・・
 せめて、ナノマシンが除去できただけでも良しとしないとな」


アキトの言葉に再度、安心したようにため息を洩らす医者。
彼の中では、大きな不安があったのだろう。
だが、アキトとしてもこれ以上望んでも、無意味と感じていた為の返事であった。


「じゃあ、俺はこれで失礼するよ」

「はい、ですが定期的に診察にはきてくださいよ?」

「ああ、家族からもきつく言われているから、ちゃんと来るよ」


そう言いつつ、苦笑しながらアキトは診察室を出て行った。
そんなアキトを見て、医者も笑いながら見送った。


「以前のテンカワさんとは違いすぎますねぇ・・・此処まで人は変われるものかな?」



自分の回復していく身体を確かめるように、アキトは病院の出入り口を目指す。
出入り口前に差し掛かるとき、後ろからアキトを呼ぶ声がした。


「テンカワさん!良かった、まだ病院にいたんですね」

「ん?何かようか?」


アキトに話し掛けた女性は、先程ルリを診断した医者であった。
この町は、決して大きくないのであらゆる病気を一つの施設で治療できるようにしていた。
その為、産婦人科などもアキトが通っているこの病院にあった。
もっとも、ルリがここにきている事などアキトは知る由も無かったが、この女性とは挨拶程度の面識は会った。









「ルリちゃんが、妊娠?」

「・・・・やっぱり、ご存知ではなかったんですね?」


病院の屋上まで、アキトは強引に女性に引っ張られ、先程ルリに何があったか知らされた。
その顔は、驚きを見せていたがやがて冷静さを取り戻すと、女性に静かに話し掛けた。


「子供は・・・・大丈夫なのか?」

「ええ、思っていたより影響は無いと思います。テンカワさんが、ナノマシンの除去に協力してくれたお陰で
 胎児には、ナノマシンの反応はそれ程ありませんでした」


女性は、冷たいと言えるような口調でアキトの質問に答えを返した。
その瞳は先程から、厳しい目つきでアキトを睨みつけていた。


「で、ホシノさんの事はどうするんですか?」

「どうするも・・・・俺はルリちゃんと付き合っているから、別に何かが変わるわけではないが?」

「ではなくて・・貴方の本当の気持ちですよ。
 彼女はその事で苦しんでいるみたいですよ?あんなに思いつめた表情を見せて・・・」

「俺の気持ち・・・・」


そう言うと、アキトはしばらく黙っていた。
彼自身、ルリに告白してからはユリカの事を思い出す事は少なくなっていた。
ルリとラピス・・・・二人と新しい生活を始めてからは、段々と昔に戻りたいとは思わなくなっていた。

しかし、今、話を聞いた限りではルリはまだ以前の生活・・・・ユリカ達の事を
忘れる事は出来ていない事を察すると、アキトの表情からは何か決意が伺えた。


「ルリちゃんは、何時ごろ来たんだ?」

「二時間ぐらい前ですよ」


言葉短めに、女性からルリの事を聞きだすとアキトは屋上から駆け下りていった。
そんなアキトの姿を、半ば呆れたような表情で見送っていた。










「ルリ!!あんた、今まで何していたの!?私たちに黙って・・・
 ユリカさんがどれだけ心配しているか、あんたわかっているの!?」


ジュンとユキナに、見つかったルリは先程から近くの公園でユキナから厳しく問い詰められていた。
それでも、ルリはユキナ達とは視線を合わそうとせずに只黙ってうつむいていた。


「さっきから、黙ってばっかりいないで答えなさいよ!!」

「ユキナちゃん!!いい加減にしないか!!」


先程から、黙ってユキナとルリを見つめていたジュンがユキナを、大きな声で止めに入った。


「ジュンちゃん!?どうして、ルリを庇うの?皆がどれだけ心配したか知っているでしょう!?」

「それは、僕も探していたから理解しているよ。でも、そんなに言ったら逆に
 答えづらくなるだろう?。此処は僕に任せて・・・・ね?」


普段の気の弱そうな雰囲気は、今のジュンからは感じられず普段手玉に取られている
ユキナを、逆に諭すような口調で話し掛けた。
普段見られないジュンの姿に、不謹慎ながらも頬を赤く染めたユキナであった。


「ルリちゃん、どうして僕達の前から・・・・いや・・どうして、ユリカの前から
 何も言わずに去っていったんだい?何か理由があるの?」

「・・・・・・すいません・・・・訳をお話するわけには行きません・・・」


優しく、話し掛けたジュンではあったが、ルリは決して話す事は無かった。
そんなルリに、軽くため息をついて、しょうがないなといった表情を見せるジュンではあったが
ユキナの顔は、湯気が出そうなほど紅潮していた。


「あんた・・・・まだそんな事いってんの?」

ルリの拒否とも取れる態度に、ユキナは思わず腕をルリめがけて振り上げてしまった。
しかし、ルリは逃げようともせずに目を閉じて、ユキナの思いのままにさせようとした。
自分には、それぐらいしか、今は思いつかなかったからだ・・・・

だが、何も起こる事は無かった。不思議に思ったルリが目を開けてみると、
そこには、ユキナの振り上げた腕を掴んだアキトの姿があった。


「そこまでにしてもらえないか?」

「アキトさん・・」


ジュンは、アキトが此処にいるとは思わずユキナに近づくまで、唖然とした表情で見ていたが
アキトを見るやいな、ルリの安心した表情を見て、ある事に気づいた。


「アキト・・・まさか君がルリちゃんを連れ去ったのか?」

「もし、そうだとしたらどうするんだ?ジュン」

「え?・・・アキトがルリを?・・・・・なんで?」


ジュンの言葉に、ユキナは理解できなかったのか間抜けな顔をアキトに向けていた。
アキトは、驚いて動かないユキナの腕を離してやると、ルリを守るようにジュン達の前に立ちはだかった。


「アキト・・・何故君がルリちゃんを?・・・・ユリカはどうするつもりだ!!」

「・・・・・ふん、まだ何も知らないのか?お前の中佐という階級は
 どうやら、只の飾りらしいな・・・・・」

「貴様っ!!」


先程の冷静な姿とは、まるで逆にアキトに殴りかかっていくジュン。
だが、アキトは避けようとせずにまともに右頬にジュンの拳を食らった。


「アキトさん!!」

「ジュンちゃん!!」


二人の声がほぼ同時に重なり合った。
しかし、アキトはジュンの拳をまともに食らっても、微動だにしなかった。


「ジュン・・・・何故、俺がルリちゃんだけをここに連れてきたか知りたいのなら、軍を調べろ」
 

「何?どういう意味だ?」

「奴らが、何を計画していたのか良くわかるさ。ルリちゃんを使ってな・・・・」

「ちょっと、それってどういう意味?」


アキトの言葉に、二人は何がなんだかわからないといった様子だった。


「後、俺達が此処にいることは誰にも喋らないで欲しい。例え、ユリカにでも・・・だ。
 もし、誰かに喋ったら・・・ジュン・・・例え貴様でも容赦はしないぞ?」


ジュンとユキナは、アキトと再会するのはこれが始めてであった。
火星の後継者の事件の際は、ミナトからアキトの様子を聞いていたが、まさか此処まで
アキトが変わってしまっているとは、想像していなかった。
その恐ろしいといった表現が似合うようなアキトの表情に、二人は一瞬恐怖を感じた。


「そこまで言うという事は、何かよっぽどの事があったんだな?
 わかった・・・・この事は誰にも言わない、ユリカにも・・・」

「ちょ、ちょっと、ジュンちゃん正気?」

「ユキナちゃん、すまないがこの件は誰にも喋らないで欲しいんだ。
 アキト、君の口から本来は聞きたいけどね・・・・・でも、僕が自分で調べた方が良さそうだね」

「俺の口から言うより、自分の目で確かめた方が信用できるだろ?」」

「二人とも!勝手に話を進めないでよ〜〜」

「さっ、帰るよ。ユキナちゃん」

「何で〜〜〜?ど〜〜して〜〜〜?」


来た時とは、逆にジュンがユキナを車のある方向まで、引っ張って行った。
まだ、抵抗するユキナを強引に車に乗せるとジュンは、二人に軽く挨拶をしてその場から去っていった。


「ジュンちゃん!!本当にこれでいいの!?ユリカさんにはなんて説明するの?」

「さっきも言っただろう?ユリカにも誰にも言わない・・・
 アキトのあの表情を見てたらね、もしかしたら僕らの知らないところで何かとんでもない事が
 起こっていたのかも知れないしね?」

「とんでもない事?」

「ああ、だから全てがわかるまで・・・・・もしかしたら、全てがわかっても誰にも
 言えないかもしれないけど、協力してくれるかな?」

「わかった・・・・ジュンちゃんがそこまで言うなら・・・・」


重苦しい空気の中、二人を乗せた車は町を去っていった。



「ルリちゃん、大丈夫かい?」

「はい、大丈夫です。でも、まさか見つかってしまうなんて・・・この町といえど
 あまりにぎやかな所には行かない方が良いですね」


ジュン達に見せていた、厳しい表情は今のアキトの顔からは消え、ルリを安心させるように
優しげな表情で、話し掛けた。
そんなアキトの気遣いが嬉しかったが、今の自分の状況を思うと素直に喜べないルリであった。
アキトは、未だ落ち込んでいるルリを後ろから優しく抱きしめると、話し始めた。


「大丈夫、ジュン達の事はアカツキが上手くやってくれるさ」
 
「でも・・・私」

「それとも、赤ちゃんの事で悩んでいるの?」

「!?」


まだ、アキトに知られたくないことをアキトが知っていた事に、激しく動揺してしまい
自分を抱きしめていた、アキトの腕を握っていた手に力が入り、爪がアキトの腕に食い込むが
アキトは気にせずに話を進めた。


「別に悩む事無いだろう?」

「でも、アキトさんはまだユリカさんの事が・・・」

そう言うと、ルリの体が震えだしていくのがアキトには感じられた。



「そっか・・・まだ言ってなかったね。俺さ、ルリちゃんと付き合いだしてから
 ユリカの事を思い出すことが少なくなったんだよ」

「え?」

「思い出したとしても、もう会いたいとか思わなくなったんだ・・・・・・・・今の俺には・・・・・・
 ルリちゃん・・・君がいるからね・・・・・」

「ア、アキトさん・・・・・」

ルリの瞳からは、大粒の涙があふれていた。
しかし、その涙は決して悲しいからではなかった。アキトが本当に自分のことを愛している・・・
その事がわかったのが嬉しかったのだ。


「ルリちゃんは、赤ちゃんは嫌い?」

「いえ・・・嫌いというか、よくわかりません」

「じゃあ、これからはきっと大好きになるかもね?」

「そうですね・・・・」

「じゃあ、帰ろうか?何時までも外にいるのも、お腹の赤ちゃんにも悪いだろうしね」

「ハイ、アキトさん」


二人は手を硬く握り、家路についた。
ルリは少し照れ笑いを浮かべながら、握り合っていた手を離すとアキトの腕に抱きついた。
初めて、ルリが自分から抱きついた事にアキトは驚いていたが
ルリの幸せそうな表情に、何も言わずに只黙って微笑んだ。

そして、家に着くまでお互いに無言で歩いていた。
今の二人には、言葉にしなくてもお互いの気持ちはハッキリしていたからだった。


幸せ・・・・・・二人には決して縁がなかったような事ではあったが、再び手に入れる事が出来た。
新しい命と共に・・・・・


第9話「戸惑い」完

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どうも、KANKOです。今回も、後書きは真面目に逝きます(笑)

さて、今回のお話は如何でしたでしょうか?
残す所、後1話。
皆さんの、期待通りの展開に・・・・・・って・・・・
知っている人は知っていましたね。前の後書きでも書いていたのに(笑)

では、感想お待ちしています。


しかし・・・・大人気ですね・・・・『お塩』(笑)


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