第6話

機動戦艦ナデシコ


未来の為に


第6話「告白」



「そうか・・・予想以上に手が早かったようだな」

「ええ、やはり彼女は軍にとっては大事なサンプルのようですね」



アキトは朝早くから、ルリ達を家に残し目の前の人物に会いに来ていた。
目の前の人物は、極普通の初老の男性といった感じだ。
ただ、見掛けが実年齢よりも若い為、40代半ばに見えるだろう。
にこやかな顔に刻まれているしわも、同年代の男性よりも少なく体つきもがっしりとしていた。

その男性は、比較的広めの部屋の中央にある机に腰掛け、目の前に立っている
アキトと先程から、二人きりで話をしていた。
話題の中心は、昨日アキトが連れてきた彼女・・・・すなわちルリについて、話していた。




「で、市長はどういう考えだ?」

「私としては、テンカワさんが面倒を見るということであれば
 何も問題ないと思いますけど、貴方はどうなんですか?」

「俺もそのつもりだが?」


アキト自身、ルリの面倒は自分が見ると言う事を当たり前のように考えていた。
その為、市長の先程の言葉はアキトには何が言いたいのかよく分からなかった。


「なら、問題ありませんね。テンカワさんの側がこの町では一番安全なのですから。
 でも・・・・・・まさかこんなにも早く、ホシノさんの捜索依頼が来るとは
 思いませんでしたよ、どうやら、各町の市長にも連絡は行っているようですし」


「ふん・・・所詮、軍も火星の後継者と変わらないと言う事だろう」

「ですね。まあ、だから私もこの町に移り住んだのですけどね」

「あんたには感謝している。あんたがいるからこそ、隠し通せるのだから」

「ははっ、そんな事言われると照れますね。では、今回の仕事を機に
 テンカワさんもしばらく休んでいた方がいいのでは有りませんか?」


照れ隠しのつもりか、市長は鼻の頭をかいて見せるしぐさを見せた。


「何故だ?」

「今までテンカワさんが、後継者の残党の振りをしてくれたお陰で、軍は
 ホシノさんをさらった犯人は、後継者と睨んでますから
 今、下手に動くよりはそのままにしておいた方がいいでしょう?」


「なるほど・・・・その方がいいかもしれんな」


今の今まで、アキトは休む事無く軍に偽装工作を仕掛けていた。それこそ、いつ倒れてしまうかわからない程の
働き振りであった。しかし、アキトはそんな事を回りに言う事が無いと見抜いていた市長は
今回の一件を機に、アキトには休んでもらいたかった。
アキトは、市長の提案の裏にはこのような思惑があるとは思いもせずに、素直に申し出を受けた。


「それに、ホシノさんはここに来たばっかりですし、ラピスちゃんと二人っきりより
 彼氏が側にいた方が落ち着くでしょう?」


市長の意外な言葉に、アキトの顔は一瞬ナノマシンの影響で光ってしまった。
市長は、そんなアキトの姿を先程変わらない、にこやかな顔で見つめていた。


・・・・アカツキと同じ事を・・・何で市長まで・・・


と、思いつつなるべく顔に出さないように、いつもの冷たい調子で
アキトは、市長に反論する。

「俺は・・・俺にはルリちゃんの彼氏なんて、ふさわしくない・・・・」

「まあ・・・私も詳しくは知りませんから、これ以上は言いませんけど
 話を聞く限りでは、ホシノさんは貴方の事を嫌っている様ではないみたいですし
 今の貴方でも、幸せになる権利・・・・・家族を持つ権利ぐらいはありますよ?」


市長は、アキトがルリを保護したと言う報告を受けた時、アキトも普通の生活を
望み始めたと思ったのだが、目の前にいるアキトと話していると
どうやらそのつもりが無い事に察しがつくと、深いため息をついた。



「市長、俺はこれで失礼する・・・」

市長の言葉に答えようともせずに、アキトは逃げるような形で
部屋を出て行ってしまった。
市長は苦笑しつつ、現在ではこの町必死になって守ってくれているアキトの姿を
何も言う事無く、見送っていた。


「やはり彼には、誰かが側にいなければいけない・・・
 一度、ホシノさんに会っておいた方がいいかねぇ?・・・」

部屋に一人取り残された、市長は誰に言う事無く呟いていた。














そして・・・・・・・ルリがこの町に来てから、1ヶ月ほどたったある日。
家には、ルリが一人留守番をしていた。本来は、アキトとラピスと一緒に
買い物に行きたかったのだが、ラピスが予想以上に料理が上手かったので
密かにルリは料理の練習をしていた。
一人ルリが留守番をしていた時に、一人の人物が訪れていた。




「貴方が、この町の市長さんですか・・・初めまして」


突然の訪問者、市長が訪れた時ルリは少なからず驚いていた。
この町の、最大の功労者でもある市長は、まだ他の町にいる火星出身者の身分の偽装の指示や保護などで
他の町の普通の市長よりも忙しい事は、アキトからも聞いていたからだ。



「いえいえ、そんなに畏まらなくても結構ですよ、ホシノさん
 それに、本来はもっと早くご挨拶をと思っていたのですが、なにぶん私も
 忙しくて・・・申し訳ありませんね」


ルリよりも、年上ではある筈だが社交儀礼とでも言うのか、丁寧な口調でルリに話し掛ける。


「いえ、それで今日はわざわざ家まで、どんなご用件ですか?
 アキトさんは、ラピスと買い物に行っていますけど?」

「いえ、今日はテンカワさんにではなく、ホシノさんに御用が合ったので」

「私にですか?」


アキトに用事があるのか?そう思っていたルリ自身、市長の言葉に少し唖然とした表情を見せた。


「はい、失礼な事をお聞きしますがテンカワさんとは・・・・・
 男女の関係になりましたか?」

「はっ?な、何でそんなことを!?」


市長のいきなりの質問に、顔を赤くするよりも先にルリは
間の前いにいる市長に、怒りが込み上げてきた。
ルリは、何時も以上の冷たい表情と声で即答した。


「お帰りください。貴方に答える必要があるご質問とは思えませんし
 初対面の女性に聞く質問でもありません」


怒りの感情を顔に見せないルリではあるが、その冷たい口調と表情は初対面の人間にも
十分に怒っている事をわからせるには充分であった。
その氷のように冷たい怒りを見せるルリに、顔をひきつらせながらも
市長は弁解した。


「あっ・・・いや、別に変な意味でお聞きしたわけではなく
 テンカワさんが貴方を女性として見ていたかと・・・失礼しました。」 

「どういう意味ですか?」


男女の関係と、アキトが自分の事を女性として見ているか?それがどうしたのか?
市長が何を聞きたいのか、ルリには真意が掴めなかった。


「いや・・・彼には誰かがそばについていないと、危険だと思いまして・・・」

「よくおっしょっている意味がわかりませんが?
 アキトさんの側には、私とラピスがいますし・・・・」


益々、市長の言いたい事が分からなくなったルリではあるが、いつもの冷静なルリであったなら
相手の話が終るまで、大人しく聞いているはずではあるが、アキトに関する事の為であろうか?
いつにもまして喋りが多くなっていた。


「いや、家族と言う意味ではなく、恋人と言う事ですよ」


市長自身、ルリとは初対面の為、ルリがいつもの冷静なルリではない事に気づく事は無かった。
もしアキトがこの場にいたのなら、市長の話を止めようとしたかもしれない。


「どうして、アキトさんの側に恋人がいないと危険なんですか?
 先程からおっしゃっている意味がわかりかねますが・・・・」

「まあ・・・話せば長くなりますが、テンカワさんはこの町に移り住んできてからは
 我々、火星出身者の為に一生懸命、頑張ってもらっています。
 見てるこちらが、不安に成る程・・・・」


そう言うと、市長はルリから視線を外し、手にしていたカバンから
書類を取り出し、ルリに手渡した。
ルリがその書類を読んで見ると、その書類はアキトの身体に関する
診断書であった。
その内容は、アキトの身体はかなりの傷を追っていることが詳しく書かれていた。


「これって・・・・本当は入院してないといけないじゃないですか!?
 どうして、こんなになるまでアキトさんを使いつづけるんですか!?」


ルリ自身アキトが無茶をしていたのは、なんとなくだが予想はしていた。しかし、その診断書の中身は
ルリの予想を大きく上回っていた。そのせいで珍しく大きな声を張り上げてしまった。
そんなルリの声を聞いて、市長は少し驚きながらも話を続けた。


「私共も、止めはしたんですよ。しかし、テンカワさんは聞く耳を持たずといった
 感じで、多々黙々と仕事をなさっていたんですよ」


止められなかった・・・・・・今のルリには、その事は理解できた。
アキトは、自分の事よりも他人の事を優先してしまうからだ。
だが、それと同時にやるせない気持ちになっていた。


「仕事をしている時の、テンカワさんは死に急いでいるように見えました。
 ・・・・・・これは、今は亡き私の友人の言葉ですが・・・・・・・・
 死を受け入れる事と、死を恐れない事はまったく違う、死を恐れなければ自分の身に迫る
 死の危険に、気づくのが遅くなってしまう・・・・しかし、死を受け入れれば
 死と言う恐怖と、真正面から向き合えば・・・・自分の身の回りに潜む
 
 死の誘いから抜け出せると言っていました。まあ、ようするに開き直り
 ですがね。しかし、今のテンカワさんは、死を恐れていない・・
 むしろ、死を望んでいる様に私には見えるんですよ」



死を望んでいる。その言葉はルリの身体に例え様の無い恐怖を与えてしまった。
その為、顔は青ざめ身体には震えがしてしまった。


「死を・・・望んでいる・・・」

「ホシノさん、今のテンカワさんは全てをやり遂げてしまったら・・・・・
 復讐をやり遂げてしまったら、どうなると思いますか?」

「そ、そんなの・・・考えたくありません!!」


しかし、ルリの頭の中で一瞬、死んでいるアキトの姿を想像してしまった為か
市長の言葉から逃げ出すように、目を背けてしまうルリ。
しかし、そんなルリに構う事無く市長は話を続けた。


「今の彼の生き甲斐は、おそらく復讐でしょう。ですが、彼に違う生き甲斐を
 与えてやればいいんですよ」

「違う生き甲斐?」


そんな事が出来るのか?つい市長の顔を睨みつけてしまうルリではあるが
もし違う生き甲斐を見つけてやれば、アキトは昔のように戻ってくれるのか?
そう思うと、姿勢を正し市長に目を向けるルリ。


「そう・・・違う生き甲斐です。先程お話した、死を受け入れる事にも含まれますが、
 生きる事への執念ですよ。人間は時には、死を覚悟して行動する事もあるでしょう
 しかし、それよりもずっと難しいのは、生きて帰る事です。」

「じゃあ、生への執念を私がアキトさんに?」

「そういう事ですよ。生きる事への執念・・・・普通に生きていれば
 そう難しい事ではないでしょう。だが、テンカワさんのように
 死と直面する機会が多い人間には、必要な事です」


市長自身、ルリがアキトにとって大切な存在な事は、今回の一件で容易に想像できた。
しかし、アキトにとって未だルリは妹のような存在ではあった事は、先程の会話から市長は推測していた。
だが、ルリのアキトに対する想いは、一人の男性としてみてる事も確認していた。


「私・・・・」


市長が、自分にアキトの事を任せている事を理解していたルリではあったが
アキトの心の中には、未だユリカが大きく存在している事はわかっていた。
そのアキトの心に、自分が入り込めるだろうか?・・・・以前ここに来る時、ルリはアキトに
ユリカと同じぐらい特別な存在になると、告白はしていた。
だが、ルリがアキトと同じ部屋で寝起きをするようになっても、アキトはルリにモーションを掛けることなく
普通に接していた。
アキトの性格からして、それは当然の事ではあるが自分が拒否されているようにも感じていた。
そう、未だ自分の事を妹のようにしか見ていなかった事に、ルリは落胆していた。



「・・・・無責任かもしれませんが、其処から先はあなた自身で考えて
 決めてください。私にしても、テンカワさんには死んで欲しくないですよ。
 大事な仲間ですから。ですが、我々では無理なんですよ。
 彼を救えるのは・・・・」


そんなルリの心を知ってか、表情を暗くしながらも市長はルリに申し出ていた。



「出来るんでしょうか?私に・・・」


今のアキトの事を、よく知っていると思われる市長達でさえ、無理と言う事にルリは驚きを隠せなかった。
昔のアキトであったなら、ルリにも何とかする事は出来ただろうが今のアキトでは
ルリには、自身が無かった。その為、つい市長に問い掛けてしまった。


「それは、分かりません・・・でも、我々は貴方を応援しています。
 貴方なら、テンカワさんを救えると願っていますから」


そう言うと市長は、におやかな笑顔をルリに見せると、ルリに見せた診断書を
カバンにしまうと席を立った。
ルリは、今話していた会話の内容が頭の中で上手くまとまっていないのか、
市長の行動に気づかなかった。


「では、私はこれで失礼します」

「あ、・・・・・・市長さん、有り難うございます」

「いえ、逆に干ホシノさんを苦しめる事になったかも知れませんね。
 申し訳ない」


深深と、ルリに頭を下げる市長の姿に、ルリはアキトがこの町にとって・・・・・この町に住んでいる住人にとって
大切な存在である事を改めて理解した。
そう思うと、ルリはアキトを絶対に立ち直らせようと硬く決心した。
その顔には、先程のような暗い表情は無かった。


「そんなことありません、私がんばって見ます。応援してくれている
 皆さんの気持ちに答える為にも」


そういうルリに、市長は厳しい口調でルリをたしなめた。


「ホシノさん、確かに私達は貴方を応援しています。
 ですが、応援しているから頑張るのではなく、出来れば貴方の気持ちに
 正直に行動してもらいたいと思ってもいます。
 例え、それが良い結果ではなくとも」


そう言いつつも、今のルリの顔を確認すると、市長は今のルリならば
アキトを救えるのでは?そう思うと自然に笑みがこぼれた。


「はい、よく覚えておきます、すいませんでした」

「では・・・」


市長は外で待っていた、迎え用の車に乗り込み去っていった。
そして、ルリはその車が見えなくなるまで見送っていた。




できるの?・・・・私がアキトさんの心を救える事を?
でも、戻って欲しい、昔のあの頃のアキトさんに・・・・・
けど・・・ユリカさんの代わりを私が出来るのかな?
違う・・・・私は私、ホシノ・ルリ・・・・アキトさんには
今の私を見てもらおう・・・・・・・
















それから、30分ほどしてアキトとラピスが帰宅してきた。
帰宅したアキトの両手にはたくさんの買い物袋がぶら下がっていたが
ラピスの両手には、申し訳なさそうに小さな袋がぶら下がっていた。
出迎えたルリは、そんなアキトの姿を苦笑しつつ見つめ、
この料理は、今週分かな?と思っていたりしていた。


「ラピス、今日の料理は何ですか?何時も以上に多い気がしますけど」


この大量の買い物の原因である筈の、小さな妹のような存在に
少し冷たい声で問い掛けた。


「・・・・おでん・・・・」


少し頬を赤らめながら、ルリの問いに恥かしそうに答えるラピス。


「おでんですか?またどうして」

「いや、昨日のテレビでおでんの特集をしていただろう?
 その時に俺がおいしそうって言ったのをラピスが覚えていたんだ。
 それで、今日はおでんにしようってね・・・・・」


ルリの問いに、ラピスではなくアキトがすまなそうに答えた。
今のアキトはネルガルにいた頃に5感の治療を受けたとは言え
あまり味が分かる事は無かった。せいぜい、塩と砂糖の違いが分かる程度ぐらいでしかなかった。
その事を知っていたラピスは、味よりも風味を優先していた頃があった。
だが、アキトの指導により味にもこだわりだした。
そのお陰か、ラピスの料理は現在のアキトの味覚でもが味わえるように
工夫を凝らしたものになった。


「別に構いませんけど、作り過ぎないようにお願いしますね、ラピス?」


ラピスは、料理にこだわりすぎるあまりに何時も料理を人数分以上
作ってしまう悪いくせがあった。
三人で生活を始めた今でさえ、料理が残る事は度々合った。。
その事を知っているルリは、釘を刺すように言った。

ルリは、この悪い癖を直すようにアキトからも言ってくれと申し出ていたが
アキトは、ラピスの好きなようにさせてあげたいと言って
注意する事は無かった。
そんな訳で、今はルリが注意するようにしていた。


「うん・・・・努力する・・・」



しかし、その晩のおでんの量は三人で食べれるレベルではなかった。
しばらくは、おでんが食卓に並びそうになる事を考えると
少し気が滅入るルリであった。






「アキトさん、まだ眠れないんですか?」

「ん?ルリちゃん、まだ眠っていなかったの?」


食後、何をする事無くテレビの前で只なんとなく過ごし、部屋で眠る。
ルリが来てからの夜は、何時もそうだった。
しかし、アキトは部屋の布団に入ってからもしばらくは眠らずに只、天井を見つめている事が多かった。
ルリ自身、アキトがすぐに眠らない事に気づいたのは
最近の事ではあるが。


「今は、お仕事はお休みなんですから、しっかり休まないとお体に触りますよ?
 只でさえ、アキトさんの身体は傷ついているんですから・・・・」

「・・・・・・ルリちゃん、俺の体の事を何処で知ったんだ?」

「今日、市長さんが来ていただいた時に、教えてもらいました」


アキト自身、自分の体の事は誰にも洩らさないようにと、担当の医者には強く言っていた。
もちろん、理由としてはルリやラピスに余計な心配を掛けたくないからではあるが
それ以上に、今の自分には同情はいらないと思っているからである。


「どうして、俺の周りにはおせっかいが多いんだろうね?」


アキトは、自分に対しての皮肉交じりの言葉を言ったつもりであったが
ルリはその言葉に過敏に反応した。


「それは、アキトさんが大切な人だからに決まっています!!アキトさんが思っているよりも
 皆さんは、アキトさんの事を心配しているんですよ!」

「だから、それが余計なお世話なんだよ・・・」


普段は見せないルリの激しい感情に驚きながらも、アキトは今思っている事を
口に出す。


「なら、どうして私を連れてきたんですか!?今のアキトさんの状態を知ったら
 私だって同じ気持ちになります!!私を連れてきたのは只の同情ですか!?もしそうなら
 最初から連れてきて欲しくなかった!!・・・・・同情だけでアキトさんが
 側にいるなんて・・・・・そんなの・・・嫌です・・・」


ルリの瞳には、大粒の涙が流れていた・・・・アキトの前では初めて涙を流した。
その事に驚きながらも、アキトはルリを安心させるように抱きしめた。


「違うよ、ルリちゃん。同情なんかで連れて来たわけじゃないよ。」

「なら、私の事・・・・女性として見てくれていますか?」


ルリの質問に、一瞬ルリから視線をそらしたアキトだが、ルリの真剣な眼差しに
意を決したように話し始めた。


「昔は・・・妹のように見ていたよ。でも今は、女性として見る事が
 多くなったのは確かだよ。ルリちゃんは綺麗になったからね」


アキトの告白に、頬を赤らめてしまうルリであった。
なによりも、アキトが自分の事を女性として見てくれていた事に、嬉しさがこみ上げた。


「でも、もし今ルリちゃんを求めてしまったら・・・・ルリちゃんを傷つけるかもしれないと
 思っていたんだよ。」

「どうしてですか?」

「・・・・・俺の心の中には、まだユリカがいるんだ。なのに、ルリちゃんを求めてしまったら
 まるで、ユリカの代わりみたいだからさ・・・それが嫌だったんだよ。
 せめて、ルリちゃんと一緒にいれば、新しい生活を送れば・・・
 ユリカの事を忘れると思ったんだけどね、御免、ルリちゃん」

アキトの、告白を全て聞いたルリは納得した。何故、アキトが自分を同じ部屋で寝起きしようと
言い出したのか?アキトはルリに対して・・・<昔の生活には戻るつもりは無い>・・・確かにそう言った。

しかし、心の片隅では昔の生活を羨ましく思っていたのだろう。
そう思うと、ルリの顔は自然と笑みに変わった。


「アキトさんにとって、ユリカさんが特別な人なのは知っているって言ったはずですよ?
 まだ時間は掛かるかも知れませんけど、私はアキトさんの特別な人になりたいんです。
 今の、ラピスと三人で暮らしているこの生活の中で・・・・」


ルリに、拒否されるとばかり思っていたアキトはルリの意外な発言に、只唖然としていた。


「だから、せめて私と二人っきりの時ぐらいは、ユリカさんの事を忘れてもらえませんか?
 私だって、皆の事を忘れるなんてなかなか出来ませんけど・・・・・アキトさんが側に
 いてくれるなら、少しは忘れる事は出来るかもしれませんから」


「ルリちゃん・・・・本当に俺でいいのか?」

「女性に、何度も同じ事を言わせるのって失礼ですよ、アキトさん」


そう言いながらも、笑うルリの顔にアキトは改めてルリの中に『女性』を感じた。


「御免、ルリちゃん。これからはずっと一緒だよ」

「それだけですか?」

「えっ?・・・・・やっぱ、言わなきゃ駄目かな?」
 
「はい、言ってもらった方が安心できます。特にアキトさんの場合は」

「そっか・・・。
 じゃあ、改めて・・・・・・
 ルリちゃん、俺は君の事を愛している。これは同情でもなんでもない、俺の本心だよ」


アキトの告白を聞くと、ルリは思わずアキトの胸に飛びつき
その胸の中で、小さく泣いてしまった。


「私も・・・・私も愛しています。アキトさん・・・・」



アキトは、そんな愛しい存在になったルリの手を取って、自分の布団の中に招き寄せた。


「あっ、あのアキトさん・・・」

「せめて、二人きりの時ぐらいは忘れさせてくれるんだよね?」

「はい・・・・」


ルリの心の中では、今までに感じた事の無い幸福感に包まれていた。
そう、愛するアキトの腕の中で抱かれる事によって・・・・・



「アキトさん・・・もう一つお願いがあるんですけど」

「何?ルリちゃん」

「ラピスのあの悪い癖、直せないんですか?」

「料理を作りすぎる事か、う〜ん、俺は別に構わないんだけどなぁ」

「もう・・・アキトさんが言わないと、ラピスはなかなか言う事聞かないんですから
 しっかり言ってください」

「・・・・・わかったよ、今度ね?」

「約束ですよ?」

「ああ・・・」


そんな二人のやり取りを、扉の隙間から除いている小さな影がいた。
先程の、ルリの大きな声で目を覚ましたラピスであった。



「・・・・・・何でルリはアキトの布団に入っているのかな?・・・・・・あっ、動いた・・・・」


第6話「告白」完

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KANKO「はい!今回は予定を変更して、アキト君の告白を早めてみました〜〜
      如何でしたでしょうか?」


エリナ「何故?もう少し先になるんじゃなかったの?」

k「ん〜〜〜、理由としてはこの辺りでアキト君のルリちゃんに対する気持ちを、はっきりさせとかんと
  この後の展開が苦しくなると言うか、話の流れが悪くなるから」

エ「まあ・・・・素人だからしょうがないけど、本当に終らせる事が出来るの?」

k「信じられない?」

エ「ええ、アカツキ君と同じぐらい・・・・」

k「ひでぇ・・・・・・酷すぎる・・・・」

エ「連載物のSSってなかなか完結しない物だから(ふっ・・・前回のお返しよ)」

k「あう・・・・今回の後書きはここまで〜〜〜、本編が長くなっちゃったから〜〜」

エ「ちょっと、あの二人はどうしたの?」

k「電話して聞いてみぃ・・・(携帯を手渡す)」

エ「?・・・・もしもし?」

○○○「・・・・・KANKOか?・・・・・今は・・・6回の表・・・・
    ルリちゃんの攻撃・・・・・だ・・・・・・(プッツン)・・・・・」


エ「何よ・・・・6回の表って・・・・・・・(滝汗)」

k「その通りの意味じゃない・・・・・(遠い目)」


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