5話

機動戦艦ナデシコ


未来の為に


第5話「新たな生活」




「ん・・・此処は?」

アキトとのボソンジャンプした場所は、どこかの町の端に来ていた。
不思議そうに町を見渡すルリに、アキトはルリの荷物が入ったバッグを
左手に持ちつつ、右手でルリの手を握りながら答えた。


「ようこそ、ルリちゃん此処が俺が住んでいる町だよ」


「詳しい話は後でするから、とり合えず俺の家に行こうか」

そう言うと、アキトはいまだ現在の状況が掴みかねていない
ルリの手を引っ張りながら、街に向かっていった。


アキトの家に向かう途中、町の住人がアキトに気軽に声を掛ける光景に
ルリは大きな違和感を覚えていた。


(どうしてアキトさんに、こんなに気軽に声を掛ける人がいるの?
 まるでアキトさんに指名手配が掛かっているのを知らないみたい・・・)

そんな事を考えながらも、ルリはアキトについていくしかなかった






「着いたよ、此処が俺の家だよ、ルリちゃん」

ルリとアキトの目の前には、何処にでもありそうな二階建ての一軒家が建っていた。
その家からは、明かりが灯っていたがアキトはそれに気にする事無く
家に入っていった。
アキトに続くようにルリも続くが、玄関のドアを開ける前に先に開かれた。


「おや、テンカワさんやっとで帰ってきたんだね」

中から出てきたのは、体格の良い中年女性であった。

「ああ、今帰ったばかりだ」

明るく話し掛ける女性に対して、アキトは短い返事で返していた。
ルリに話し掛ける雰囲気とは違う話し方に、ルリは少し不思議そうにアキトを見つめていたが
女性は気にする事無く、アキトの後ろにいるルリに目をやった。


「テンカワさん、その子は?」

「ホシノ・ルリ・・ルリちゃんだ、今日から一緒に生活する事になった」

「へ〜、どこかで見た事あると思ったら、あの最年少の艦長さんじゃないか」

そんな事を言いながら、ルリを見つめる女性の視線から隠れるように
ルリはアキトの後ろに立った。


「まあ、此処に来るからには訳がありそうだけど・・テンカワさんの側にいるなら
 安心して此処での生活を楽しみなさいな」

「はあ・・・有り難うございます」

ルリにも変わらぬ笑顔を向けながら、話し掛ける女性にルリは
一人の女性を思い出した。


(ホウメイさんに似てる・・・でも、どうしてこの人は
 アキトさんの家にいるんだろう?)


「じゃあ、私はもう帰るから・・・ラピスちゃんも待ちくたびれているよ」

そう言い残し、女性は足早に家から去っていった。
そこに、家の奥から足早にアキトに向かってくる少女の姿があった。

少女は、アキトに飛びつくとアキトの腰の辺りに顔をうずめ
何時までも、アキトから離れようとしなかった。
そんな、少女にアキトは苦笑しつつも優しい口調で、少女に語りかけた。


「ただいま、ラピス遅くなって悪かったね」

「アキト・・・」

「ん?」

アキトに会えて嬉しいのか、ラピスは瞳を潤ませながら
アキトを見つめ返していた。



「・・・お塩は?・・・・」





「お塩?」

ラピスの突然の『お塩』と言う発言に目を丸くするルリに対して
アキトはラピスと同じ目線になるように屈んだ。

「すまないな、用事が忙しくて買いに行けなかったんだ。
 スーパーには入ってなかったのか?」

「・・・まだ、入ってなかった・・・」

「じゃあ、明日見てみような?」

「・・・・うん・・・・」

二人の会話を見つめるルリの脳裏に、今のアキトの姿が
自分に話し掛けてくれた昔のアキトの姿とダブってしまった。

(彼女は・・・ラピスは幸せにアキトさんと暮らしていたんですね・・・)

アキトに抱きついていたラピスは、アキトの後ろにいる
ルリの姿を確認すると、不思議そうに見つめていた。


「・・・誰?・・この人・・・」

「ああ、まだ紹介してなかったな。ホシノ・ルリちゃんだ
 今日から一緒に生活することになったんだ。仲良くするんだぞ?」


アキトが言い終わると同時に、ラピスはアキトに強く抱きつき
ルリに敵意の眼差しを向けてきた。


「貴方が・・・ルリ・・・
 アキトは・・・・何処にも行かない・・・行かせない・・・」

そう言いながら、さらに強く抱きつくラピスにアキトは苦笑するしかなかったが
ルリはラピスの正面に屈むと、優しげな表情を浮かべた。


「大丈夫ですよ、ラピス。私はアキトさんを連れ戻しに来たわけじゃありません。
 貴方と同じ様にアキトさんに引き取ってもらったんですよ」

「・・私と・・・同じ?・・・」

「そうです、これからは私もアキトさんのお世話になりますから。
 よろしくお願いしますね、ラピス」

そう言って、ルリはラピスに握手を求めた。
最初は、差し出された手をまじまじと見つめていたラピスだが
ルリの、自分に向ける優しげな表情に安心したのか
おずおずと、ルリの手を握り締めた。


「・・・・よろしく・・・ルリ・・・・」


そんな二人を見て、本当の姉妹のように見えたアキトの顔は
昔のような優しげな表情に戻っていた。

「ははっ、だけどラピス、ルリちゃんの事を呼び捨てにはするんじゃないぞ?
 ルリちゃんは年上なんだから、せめてお姉ちゃんをつけなきゃ」


「別に構いませんよ、ラピスも呼びにくいと思いますし・・・
 それに、私もお姉ちゃんとか恥かしいですから・・」

すこし、顔を赤らめながらアキトに答えるルリの手は、先程から
ラピスが握りっぱなしだったりした。


「・・・・・・?・・・・・ルリじゃ駄目なの?・・・・・」

少し不安げに、瞳をうるませた表情になったラピスを見て、
二人は慌てて慰めた。


「大丈夫だよ、ルリちゃんも気にしていないから
 ルリ・・・・・って呼んでもいいんだよ、ねっ?ルリちゃん(汗)」

「ええ、もちろんですよ。だから気にしないで下さいね?」


その後しばらく、ラピスの機嫌取りに追われた二人だった・・・・








「ふう・・・・ラピスはまだ人間関係に慣れていないからね。
 冗談でも、すぐに落ち込むんだよ」

「でも、アキトさんが最初に注意したんですよ?」


先程ラピスを寝かしつけ、二人は居間でお茶を飲んでいた。
アキトのぼやきに、ルリの突っ込みが入り、アキトは苦笑するしかなった。
だが、ルリの表情はいつもの無表情になっているのを見て
アキトの顔も、真剣な顔つきになった。


「アキトさん・・・・お聞きしたい事があります」

「・・・この町の事かな?」

「はい、何故この町の住人はアキトさんと普通に接するんですか?
 まるで、アキトさんが指名手配されている事を
 知らないようですが?」

「いや、皆知っているよ」


アキトの意外な答えに、ルリは只黙ってアキトの話を聞く事しかできなかった。


「ルリちゃん・・・・・この町の住人の殆どは火星に住んでいた人なんだよ」

「それって、どういう事です?」

「俺が誘拐された頃から、他の火星出身者も火星の後継者に
 狙われていたのは知っているよね?」

「はい」

アキトはルリから視線を外し、宙を見つめ話を続けた。


「昔、軍人の中に火星出身者がいたんだ・・・その人は自分たちの体が
 普通の人間とは違う・・・A級ジャンパーである事を知っていたみたいなんだ・・・
 そして、自分たちの身体を狙っている奴らもいる事に、気づいていたみたいなんだ。

 自分たちの体の秘密を狙っている奴らから、身を隠す為にこの田舎の町に住み着いたんだ。
 最初は何もせずに、静かに生活していたみたいだけど・・・
 二年前、火星出身者が次々に行方不明になっているのを知って
 彼はこの町に密かに、火星出身を集め始めたんだ・・」


「でも・・すぐにばれなかったんですか?」

ルリ自身、納得いかなかっただろう。そんな事は調べればすぐに
わかってしまうような事の筈だからだ。


「そこが、面白い所なんだよ。最初に保護した人間が役所関係の仕事をしていた
 人間だったらしいんだよ。その人の協力によってここの住人の戸籍は
 まったく違う物に変えていったんだよ」


「でも・・・・これだけの人間が移動したら、気づく筈ですが?」


「何も一度に、これだけの人間を連れてきたわけじゃないよ。
 一家族単位で、連れてきたらしいからね。お陰で火星の後継者には
 随分さらわれてしまったけどね・・・・」


「アキトさんも、そうでしたね・・・」

「ああ、けどこれだけの人が助かったのなら彼の努力は
 無駄じゃないよ・・・」


「でも・・・・・よくこれだけの人を保護できましたね」


「まあ・・・ここに住んでいる人の割合は、火星出身者より
 その親戚達の方が多いんだけどね。その人達も協力して他の火星出身者の人達を
 保護してくれたお陰でもあるからね」


「はあ・・・私たちの知らない所で凄い事があったんですね」

「そうだね、ついでに言うとアカツキも協力していたようだね」

「アカツキさんがですか?・・・・いい人か悪い人かわかりませんね」


「それは言わない約束だよ、ルリちゃん」


アカツキの話題に変わった途端に、二人の間にあった重苦しい
雰囲気は消えていた。


「後・・・もう一つ聞きたい事があるんですけど」

「何?」

「ラピスが言っていた、『お塩』ってどういう意味ですか?」

先程話していた内容から、あまりにかけ離れた質問にアキトはつい
吹き出して笑ってしまった。


「はははははっ・・それか。言葉どおり只の塩だよ。今ラピスは料理に凝っているんだ」

「料理ですか?」

「ラピスは、最高のオペレーターとして教育されたお陰で
 年相応の趣味とかがまったく無いんだ。
 だから、少しでも普通の生活に慣れるように俺が料理を教えているんだ」


「ちょっと待ってください。アキトさんは料理が出来なかったんじゃないですか?」


アキトはここにルリを連れて行く前に、確かに料理は出来ないと言った。
アキトはさりげなく言ったつもりであろうが、ルリにとって
アキトの料理が味わえないのは、少なからずショックであった為
よく覚えていた。


「今の俺でも、料理に使う材料の切り方とか、火の扱い方ぐらいは
 教えられるよ。ただし・・・味覚の方はあまり戻っていないから、味付けは
 ラピスに任せているんだよ」


「そうでしたか・・・」

「じゃあ、もう遅いから寝ようか?」

アキトの言葉に、ルリが時計に目をやると既に午前3時を過ぎていた。


「もうこんな時間になっていたんですね」

「ラピスは、自立を促す為に一人で寝かしているから、俺の部屋に来る?」


その言葉を聞くと、ルリの顔は遠くからでも分かるぐらいに真っ赤になってしまった。
例えて言うならば、ゆでだこ状態であった。


「で、でも、それってアキトさんと・・・・一緒に・・・(真っ赤)


「別に気にすること無いよ、それともルリちゃんは俺と一緒じゃ嫌?」

「そんな事無いですけど・・いきなりは・・・」

「ルリちゃん・・・・・・・・いくら俺が変わったからって
 ルリちゃんが考えているような事はしないよ・・・・」

「あっ・・・御免なさい・・・・・つい・・・・(真っ赤っ赤)」


「あ、後、起きたらでいいんだけど、ラピスと一緒に買い物に
 行ってくれないかな?」

「アキトさんも行くんじゃないんですか?」

「ちょっと会っておかないといけない人がいるから
 明日は無理だね・・・」

「わかりました・・・・明日はラピスと一緒に行ってきます」

「有り難う、俺の部屋は隣だよ」



ルリの新しい生活・・・・・アキトとの生活が今始まった。












翌朝・・・・

ルリとラピスは、近くの大型スーパーに来ていた。
最初は、アキトが一緒に来てくれない事に落ち込んでいたラピスであったが
ルリとのお喋りで、少しは気が紛らわせたようであった。

もっとも、ルリとラピスは元々口数が少ない為、端から見れば
楽しそうな会話だとは思わないだろう。



「ラピス、お塩はこれでいいんですか?」

そう言って、ルリは塩が入ったビンを手にとって見せたが
ラピスは、それに目を向ける事無く調味料が並んでいる棚の奥に
走っていくと、袋を持って戻ってきた。


「その袋入りのほうがいいんですか?」

ラピスは、その袋・・・・塩の入った袋をルリの目線に届くように
高く掲げた。




「ルリ・・・お塩は天然・・・」




その言葉に、ルリは呆然と見つめるしかなかった・・・・

(アキトさん・・・ラピスに本格的に料理を教えているんですか・・・・)



第5話「新たな生活」完

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KNAKO「はい、どうもKANKOです。いよいよここから、
      ラブラブな展開になっていきますよ〜」

エリナ「確認するけど・・・、アキト×ルリで、と言う事よね?」

k「むっ!?出たな!エリナ・キンジョン・ウー!

エ「誰がじゃ!!

k「と・・・・・冗談はさておき、アカツキンちゃんはどないした?」

エ「知っているくせに・・・・・・完治するまでに半年らしいわ」

k「へ〜〜、生きておったか・・・」

エ「何で、よりによって私が・・・・あいつの代わりなのよ・・・(涙)」

k「そんなに嫌かね?」

エ「光栄に決まっているでしょう!!(汗)」

k「ここでは、口を滑らさないようにね?」

エ「わかっているわよ・・・・(滝涙)」

エ「そーいえば、彼女は?」

k「さあ?忙しいとか何とか、逝っていたなぁ〜〜(遠い目)」

エ「逝っていたって・・・・・・・・・・・・(大汗)」









○○「さっ♪○○○さん、もう一ラウンド逝きましょう♪」

○○○「○○ちゃん・・・・・・タフだね・・・・・」



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