第3話

機動戦艦ナデシコ



未来の為に



第3話「想い」




『ルリちゃん、今度の味付けはどう?』

『はい、凄く美味しいですよ、アキトさん』

『あ〜!アキト、ずるい!私も味見した〜い』

『だ〜〜!分かったから、抱きつくなよ、ユリカ』



あの頃は、楽しかった・・・いろんな事があったけど、それでも楽しかった・・・・






『ルリちゃん・・・あのさ・・・』

『どうしたんですか?アキトさん』

『俺さ・・・その・・さ・・ユリカに・・』

『?』

『結婚を・・・申し込むつもりなんだけど・・・』

『・・・大丈夫ですよ、アキトさんをユリカさんが拒むわけないじゃないですか』

『そうかな?』

『普段のユリカさんを、見てたら分かりますよ』

『そんなもんかなぁ・・・・』

『そんなものです』




アキトさんが、ユリカさんに結婚を申し込むと言った時、少し悲しかった・・・
でも・・・二人の事はとても大好きだったから、心の底から祝福できた。
なのに、これからも一緒にいようって、言ってくれたのに・・・・・



『何だ!あの爆発は!?』

『おい!ありゃ、アキト達が乗ったシャトルじゃねぇか!』

『早く、管制塔に確認を取るんだ!』

『無理だ・・・あの爆発では、誰も生きているわけが無いじゃないか・・」

『アカツキ君なんて事言うの!!』

『ちょ・・・ルリルリ!しっかりして!ルリルリ!』




なにも、考えたくなかった・・・何も感じたくなかった・・・
昔の、マシンチャイルドの何も感じない頃の、自分に戻りたかった・・・
でも・・・あの人は生きていた
生きていてくれた!
だけど・・・・・あの人は変わってしまった・・・・



『君が知っている、テンカワ・アキトは死んだ・・・』



アキトさん・・・貴方は・・・これからどうするんですか?
ユリカさんは、どうするんですか?ずっといてくれるって、言ってくれたのに
全てを捨てるのですか?・・・そんなの・・・・・





「いやぁぁ!!」


ルリは叫び声上げつつ、手を宙に向け、何かを掴むようにばたつかせながら、目覚めた。
なぜかルリは、ベットの上に寝かされていたが、ルリをさらったと思われる
男の姿は、無かった。
ルリは、自分の身体を見回したが、何かをされたような形勢も無く
ホッと、胸をなでおろした。


「ここは?どうして私は、ベットなんかに・・・」


その時、ルリが寝ていたベットの反対側にあるドアが開いた。
ルリは素早く、周りに武器になりそうなものが無いか、部屋を見回したが
入ってきた人物を見て、その必要は無いと、確信した。
なぜなら、入ってきた人物は、ルリが今一番会いたい人物だったからだ。



「目が覚めたみたいだね、ルリちゃん」

「暗殺部隊から、私を助けてくれたのはアキトさんだったんですね・・」

「ん?・・・まあ、ルリちゃんに銃を突きつけた奴は、俺がやったんだけどね」

「どういう事ですか?」



ルリ自身は、火星の後継者の暗殺部隊の事を、言っていたのだが
アキトは、無言でルリを隣の部屋に連れていった。
そこには、色々な服が掛けてあった。
統合軍や宇宙軍の服、火星の後継者の服。
だが、ルリの目に留まったのは、暗殺部隊の服もあった事だった。


「もしかして・・・・私をさらったのは、アキトさんだったんですか?」

「そういう事だ」

「私は、まだアキトさんの所に行くとは言ってませんよ?」

「それは知っている、俺がこんな事をしたのは、軍を騙す為だ」

「え?」

「奴らに、火星の後継者はまだ健在だと、欺く為にやった事なんだ」

「どうして、そんな手の込んだ事を?」



アキトは、部屋にあった机の中から一束の書類をルリに手渡した。
そこには、ジャンプに関する資料や、IFSに関する細かいデータが載っていた。
そして、最後の方には火星の後継者の研究者、ヤマサキ・ヨシオの行方を
軍が現在も捜索している事が、書かれていた。



「ヤマサキ・ヨシオの事なら、知っています。軍上層部から、最重要指名手配されて
 いましたから、でもそれとアキトさんの今回の行動に
 何が関係有るんですか?」

「もしも、火星の後継者がまだ健在だとしたら、軍の奴らはヤマサキを探すのに
 火星の後継者をマークするだろ?軍にとっては、必要な人間だしね。

 それに、軍が火星の後継者に気を取られている間は、ルリちゃんや他の火星出身者の
 ジャンパーに危害が及ぶ可能性は、少なくなると思ってね。
 だから、俺は火星の後継者や、軍のふりをして情報を錯綜させていたんだ。
 まあ・・・ヤマサキはこの世にはいないけどね。」


「・・それって・・・」

「ヤマサキは、俺がこの手で殺した」

「!?」

 

ルリの手から、書類の束が落ちてしまったが、アキトは気に止めること無く
話を続けた。
その姿は、ルリが知っているテンカワ・アキトとは似ても似つかなかった。
あの頃の・・・コックを目指していた、優柔不断だが人を思いやる心が
人一倍強いアキトの姿は、ルリの目の前にいるアキトからは
微塵も感じられなかった。



「私を助けたのは、偶然だったんですね?」

「ああ、だがこんなに早く軍が動き出しているとは、俺も思わなかったけどね」

「アキトさんは、ずっとこんな事をしていたんですか?」

「そうだ、だから皆の所には戻るつもりも無い。こんな人殺しが側にいたら
 皆に迷惑が掛かるからな・・・・それに、今の俺にはこういう生き方しか出来ないからね」

「なら・・・・・・どうして、ユリカさんに会ったんですか?」



ルリは、ユリカの口からアキトに会ったと言った時、信じられなかった。
アキトが、ルリに会いに来た時、昔の生活には戻るつもりは無いと
はっきり言ったからだ。
何故、会いに行ったのか?まだアキトは昔の生活に・・・・
ユリカと一緒に暮らしたいのでは?
そう思っていた。



「そうだな、ユリカには、一目会いたかったからね」

昔の頃のように、慌てふためく事無くアキトは答えた。

「どうして・・・どうして、ユリカさんも連れて行かないんですか?
 ユリカさんのあの明るさは、アキトさんが何時か側に帰って来てくれるって
 信じているからなんですよ!?」

「俺が側にいたら、ユリカは幸せになれないよ」

「じゃあ、私はどうなってもいいんですか!?
 今までの話を聞いたら
 アキトさんの側の方が、危険な様にしか聞こえないんですが?」


ルリは、アキトがユリカの事を大事にしている事は理解できた。
しかし、ユリカの安全の為に連れて行かない・・・その言葉は
ルリには、自分はどうなってもいいと、言っているように聞こえた。
その為、ルリには珍しく声を荒げてしまった。



「違うんだよ、ユリカはルリちゃんと違って、軍には狙われていないんだよ」

「でも・・・ユリカさんも、アキトさんと同じA級ジャンパーですよ?」

「いや、ユリカは遺跡と結合する為に、頭を俺と同じように
 いじられたんだが、その後遺症のせいでジャンパーとしての
 能力は、低下してしまったんだ」

「それって・・・・」

「幸か不幸か、そのお陰で軍はユリカには、興味が薄いんだが
 ユリカには監視はついているんだ、・・・・監視役はミスマル提督だけどね」

「なぜですか?」

「俺がユリカの元に帰ってくるって、軍は睨んでいるんだ
 だから・・・俺は、ユリカの元には帰る事は出来ないんだ・・・・
 俺が側にいたら・・・・不幸にしかならないんだよ・・・」

アキトはルリと再会した時に、ユリカの事を話した時と同じく
言葉を選ぶように、ゆっくりと話した。
だが、その顔には苦渋に満ちた表情であった。


ルリは、そこまで聞くとアキトの顔を、正視する事が出来なくなってしまった。
アキトは、アキトなりにユリカの事を考えていた。
だが、ルリはその事に気づかなかった自分が恥ずかしかった、くやしかった。
その為に、ルリはアキトの顔をまともに見れなくなってしまった。
そんなルリに、アキトは慰めるように、優しく話し掛けた。


「すまない、最初に会った時に、説明すればよかったね」

「いいえ、私の方こそ、アキトさんの考えも知らずに・・・」

「気にすることは無いさ、ルリちゃんが悪いわけじゃないよ
 説明しなかった俺が悪いんだから」

ついさっきまでの、ルリに見せた暗くて冷たい表情は
消えてアキトは昔の優しい顔に戻っていた。
何故、こうも同じ人間の顔が変わってしまうのか?ここまで、一人の人間を
変えてしまった実験とは、なんだったのだろうか?
ルリの頭の中に、小さな疑問が生まれつつあった・・・



「あの、アキトさん」

「何?ルリちゃん」

「こんな事・・・聞いてはいけないかも知れませんが、アキトさんは
 誘拐された時・・・・どんな目に会ったんですか?
 あんなに優しかったアキトさんを、変えてしまった事は・・・」


「知らない方がいいよ」

アキトにとって、実験台にされた事はまだ、思い出すのも辛いのだろう。
ルリから目をそらし、憎しげに天井を見つめた。その顔には、ナノパターン
が浮かび上がってきていた。
ルリは、そんなアキトを見て、自分が触れてはいけない話題を
持ち出した事を、大きく後悔した。


「御免なさい、嫌な事を思い出させてしまって・・・」


「・・・・さあ、もう帰った方がいい。ユリカも心配しているはずだからね」


ルリの謝りに答える事無く、アキトはルリを玄関まで送っていった。


「あの、ユリカさんにはこの事は?」

「ネルガルのシークレットサービスに、助けてもらったと言えばいいだろう」

「じゃあ、アキトさんには此処に来れば、また会えますか?」



密かにルリは、此処にユリカを連れてこようと思っていたのだが、
その事に気がついたのか、アキトは先手を打つように、ルリに答えた。


「いや、この部屋は結構長く使っていたからね、そろそろ引き払うよ」

「・・・そうですか」

「ルリちゃん」

「はい?」

「嫌なら、来なくてもいいんだからね?」

「分かっています・・・じゃあ、帰ります・・・・」

そう言い残し、ルリは寂しそうに部屋から出て行った。
そして、アキトはルリが出て行ったドアの方を、しばらく見つめていた・・・



「すまない、ルリちゃん・・・辛い選択をさせてしまって・・・・
 もし来なくても・・・・・・・必ず君の事は俺が守るよ」







ルリが外に出てみると、既に日は落ちており、町には明かりがついていた。
ルリは近くにきた、タクシーに乗り込み、急いで帰路についた。
タクシーの中で、ルリは先程会ったアキトの言葉を思い浮かべていた。




アキトさんは、本当に変わってしまった・・・・・・
昔の頃とは、別人みたい・・・でも、強くもなっていた・・・
冷酷とも言えるぐらいに強く・・・
そこまで強くならないと、いけなかったんですか?
私やアキトさんが、持っている力を狙っている組織から、身を守る為には・・・・





「ただいま帰りました」

「ルリちゃん!!無事だったのね!?」


ルリが家のドアを開けると、ユリカが携帯電話を片手にもの凄い勢いで、
玄関にやってきた。
その姿は、いつものユリカからは想像も出来ないほど、取り乱していた。
ルリはそんなユリカに、唖然とした表情を見せていた。



「何を、そんなに慌てているんですか?ユリカさん」

「だって、ルリちゃんが急にいなくなったんだもん!誰かにさらわれたと思って
 皆にも探してもらったんだよ?」

「はあ・・確かにさらわれましたけど、ネルガルの方に助けていただいたので
 大丈夫ですよ」

「本当?良かった〜〜〜、あっ、ミナトさん?ルリちゃん無事でしたよ
 はい、ネルガルの人に助けてもらったって、ええ、分かっています
 私の責任です、御免なさい」


少し離れた、ルリの所からでも携帯電話を通じて、ミナトがユリカを
叱る声が届いていた。
その声に対して、謝りながら喋るユリカの姿は何故か
うだつの上がらないサラリーマンを思い浮かべるルリであった・・・


「はい、以後気をつけますぅ・・・それじゃあ、お休みなさい」

「御免なさい、私のせいで」

「ううん、私が自分の事ばかり考えて行動していたんだから
 私のせいだよ。ルリちゃんは気にしないで」


ユリカの、真っ直ぐな気持ちと優しさにアキトの事で、嘘をついているルリは
心が締め付けるようだった・・・


「ユリカさん」

「何?ルリちゃん」

「ユリカさんは、アキトさんの事をどう思っているんですか?」

「どうって、アキトは私の王子様で旦那様だよ♪」

「でも!アキトさんは帰ってきませんよ・・・・」


消え入りそうな声で、ユリカに話すルリに対して
ユリカは、ルリの瞳を真っ直ぐに見つめて、話し掛ける。


「うん、アキトは帰ってこないよ・・・もしかしたら、一生帰ってこないかもしれない
 でも、私はアキトを信じたいの」

「もし・・・・・アキトさんが帰ってこなかったら・・・
 どうするんですか?」

「その時は・・・・その時は、私も違う生き方を、しなくちゃいけないかもしれないね」


ユリカも消え入りそうな声で、ルリに答えた。
ユリカ自身、この答えは先程出したばかりだった。その前までは、アキトは
必ず自分の元に返ってくると信じていた・・・

しかし、アキトと再会して・・・変わってしまったアキトを見て
その自信は揺らいでしまっていた・・・・
自分を助ける為にとは言え、アキトは自分の手を血で染めてしまった・・・

その事は、いつも明るいユリカにとっても、辛い事だった・・・
ナデシコに乗っていたとき、火星でナデシコを守る為とは言え、
一般人を見捨てた事のあるユリカにとって、人を殺してしまう事は
トラウマになっていた。
たとえ、どんな理由があろうとも・・・・・


ユリカは、今のアキトと昔と同じ様に、暮らしていけるか自信がなくなっていた。
その為に、ルリに対して先程の答えを出していた・・・


「それで、いいんですか?ユリカさんは、アキトさんの事を愛していないんですか?」

「愛しているよ、でもね・・・・・最近は・・・エリナさんやイネスさんから
 アキトの事を聞いているとね・・・それだけじゃ・・・今のアキトを見たら
 愛しているだけじゃ、アキトを苦しめるだけだと思うんだ」


「ユリカさん・・・」

「だけど、しばらく待つわ。だって、アキトは私の旦那様だもん♪」

「そうですよね・・・・・その方がユリカさんらしいですよ」

「そうだよ♪明るく迎えないと、アキトは何時までもあのまんまだもんね♪」


そんなユリカを見て、ルリはアキトの側には、ユリカがいるべきだと
改めて感じていた・・・
しかし、アキトとユリカの心は徐々にだが、離れている事も感じられずには
いられなかった・・・


皆、変わって行く・・・・・私は?・・・・・
私は変わったの?・・・・・変わらなければいけない?
・・・・・分からない・・・・私は・・アキトさんの事を・・・・でも・・・
ユリカさんは?・・・・・・・



・・・・・・・私・・・・・・どうしたらいいの・・・・・・・・





第3話「想い」完

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kanko「はい、第3話をお届けいたしました〜、如何でした?」

アカツキ「ふ〜ん、ユリカ君のことは、これで決着がついたのかな?」

K「ハア?(゚Д゚)yー~~ 誰がそんな事いったの?」

ア「違うのかい?」

k「まだ先にはなるけど、ユリカの事はまだ決着してないよ」

○○「ほほぉ・・・・その辺りの話し、詳しく聞かせていただけますか?」

k「・・・・((((((;゚Д゚)))))・・・あ・・・・・○○ちゃん・・」

「じゃっ!、そー言う事で!!」
ダダダダダダダダ・・・・

ア「お〜〜い、KANKOくぅ〜〜ん・・・・・・・・逃げちゃった・・・」

○○「アカツキさんは・・・・・どう思いますか?(ニヤリ)」

ア「え?・・・・(汗)・・・いや、君とテンカワ君なら・・・
  お似合いだよ・・・うん!(滝汗)」

○○「本当ですか?・・・・・・・(じ〜〜〜〜〜〜)・・・・・」

ア「・・・・・・・・・・・」

「じゃあ、僕も忙しいから!!」
ダダダダダダダダ・・・・


○○「アカツキさんも、は〜り〜ダッシュを極めていましたか・・・」
   
○○「まあ・・・アキトさんとラブラブですから、良しとしましょう」

○○「すぐに貴方の側に行きますからね、アキトさ〜〜ん♪」

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