第1話

機動戦艦ナデシコ


変わりゆく過去


第1話「未来の姿」




「ふう・・・・・ルリルリ・・・・結局艦長に連れていっちゃたなぁ・・・」

ルリを誰が引き取るかで、結局ユリカに負けてしまったミナトが、寂しそうに呟いた。
 
「ミナトさん、元気出してよ!私がいるじゃない!!」

 ミナトの背後から、元気な声でユキナが声をかける。
  
 そんなユキナの姿を見て、少し元気になったミナトは、ユキナにも負けないほど元気な声で返答した。
 

 「大丈夫!!ルリルリにはいつだって会えるしね?それに、ユキナもいる事だし」
  
 「そっ!ミナトさんは元気な姿が一番だよ!!」
 
 そう言うと、二人は笑い出していた。何故か二人は、ユリカを思い出してしまった。
 
どんな時にでも、笑顔を忘れない前向きなユリカの事を・・・

 
ミナトが不意に時計を見ると、その顔は徐々に青ざめていった。
 
「ユキナ!!合宿のバスに遅れるわよ!!」
 
「へ!?・・・・・・ああ〜〜〜!!不味い、遅刻しちゃう〜〜」
 
時計を見るやいな、ユキナは準備してあった大きなバッグを担いで、玄関に向けて走り出した。
 
ミナトも、玄関に向かいユキナの見送りをしようとした時、ユキナはミナトのほうを振り返った。
  
「ミナトさん!私がいないからって、いじけちゃ駄目だよ?」
 
 
「ふふっ、大丈夫。さっ、早く行ってらっしゃい」

  
ミナトの言葉を聞き終わらないうちに、ユキナは学校に向かって走り出した。
  
彼女の足の速さなら、なんと間に合うだろうと思いながら、部屋に戻ろうとした時
  
玄関の前に、大きな光が現れた。
  
「 ちょ、ちょっと、何!?」 
 
そのまばゆいまでの光に、ミナトの視界は一瞬何も見えなくなってしまった。
  
徐々に明るさが消え、ミナトの目も見えるようになってきたとき、光が出現した所に一人の男性が倒れていた。
 
その姿は、全身黒尽くめで、マントのような物を羽織り、顔には大きなサングラスをつけていたが、その髪型から、ミナトは誰か察しがついた。
  

「アキト・・・君・・・・だよね?」 
 


 今、ミナトの目の前にはアキトと思われる人物が布団の中で、眠りについていた。
 
  
しかし、ミナトはユリカ達に連絡を取ろうとはしなかった。
  
目の前で眠りについているアキトは、本当にアキトなのか? 
他人の空にではないか?そう思っていた。
 
だが、先程の光は考えてみれば、ボソンジャンプの時の光のようにも思えた。
 
その為、アキトに似た男が目を覚ますまで、誰にも連絡しない事にした。
  
「・・・・・う・・・・ここは?・・・・」


「あっ、気がついたみたいね?大丈夫?」
  
「・・・・・・ミナト・・・・・さん・・・・なのか?」
 
男の声と、目を覚ますなり自分の名前を口に出した事により、やはりこの男がアキトだと確信した、ミナトであった。 
 
それから、アキトはミナトに此処はどこなのか?今年は何年か?簡単の事を質問していった。
  
ボソンジャンプに詳しくないミナトといえど、この内容の質問をされれば、今目の前にいるアキトが未来からやってきた事は容易に想像がついた。
  
しかし、ミナトにはどうしても婦に落ちない点があった。
  
今、目の前にいるアキトは、本当に自分が知っているアキトなのだろうか?どうしてもそう考えてしまった。
  
なぜなら、アキトの顔からはミナトが知っている、優しそうな表情は消え去り体つきもたくましくなっていた。
  
その雰囲気は、今ミナトが知っているアキトとは、まったく正反対であった。
  

「アキト君・・・・なんだよね?」
  
「ああ・・・・だが、ミナトさんが知っているアキトではない」
  
 アキトの短めの返答に、安堵を洩らした。だが、どうしても確認したい事があった。
  
「ねえ・・アキト君は何時ごろの時代から来たの?」
  
「別に、気にする事は無いだろう?俺はあんたが知っているアキトではないのだから・・・」
  
それでも、ミナトは内心、嫌な予感を感じていた。
  
一回、大きく深呼吸をしたミナトは、意を決したように話し掛けた。
  
「じゃあ、確認するけど、私が知っているアキト君はナデシコを降りた直後に、艦長とルリルリと三人で遊園地に行ったけど貴方はどうなの?」
 
その質問に、アキトは動揺したのか、顔にナノマシンのパターンが現れてしまった。
  
アキトの顔に、ナノマシンのパターン出てきたことに一瞬驚いたミナトであったが、その様子にミナトは目の前にいるアキトが自分の知っているアキトの未来の姿である事を確信した。 

「やっぱり・・・・私が知っているアキト君みたいね・・・」
  
内心、あたって欲しくなかった事が当たってしまった事に落ち込むミナトであったが、アキトは気にする事無く話し掛けた。 

「仮に、俺がミナトさんの知っているアキトだとして、どうかなる事か?・・・・・」


突き放すようなアキトの発言に、未来のアキトは此処まで変わってしまうものか?そう思わずに入られないミナトは、ためらいながらも問い掛けた。


「一体何があったの?・・・・ううん、アキト君にこれから何があるの?・・・・どうして、そこまで変わってしまったの?」 
ミナトの質問に、アキトは答える事無く只黙っていた
 
 そのアキトらしからぬ表情に、顔を引きつらせながらもミナトは何とか聞き出そうとした。
  
 だが、同時に嫌な予感が脳裏を掠めた。
  
 もし、アキトからこれから彼の身に何が起こるか聞き出せば、それを回避できるかもしれない。
 
 では、回避できた場合、目の前にいるアキトはどうなるのか?未来緒が変わってしまうと言う事は、今目の前にいるアキトも存在しない事になる。 
 そう思うと、どうしても言いよどんでしまうミナトであった。 
 その事に気が付いたのか、先程から黙っていたアキトは口を開いた。 

「そうだな・・・・・俺に、今後何が起こるか知っていれば、あの事件は回避できるはずだな・・・・」 

「でも・・・私がそれを知ったら、アキト君は・・・貴方はどうなるの?」

「もし、俺の存在が消える事になったとしても、気にする事は無いだろう?俺は、ミナトさんが知っているテンカワ・アキトではないんだからな」


ミナトは、アキトの言葉を聞き終わるや否、頬を力いっぱいひっぱたいてしまった。 

「ふざけないで!!私がそんな事になるのをわかっていて聞くと思っているの!?」 

叩かれて、赤くなった頬に気にする事無く、アキトはミナトの言葉を聞いていたが、不意に笑い出した。

「別に良いんじゃないか?今後起こる事件では、たくさんの人間が犠牲になるんだ。俺一人の命で、それが回避できれば安いもんさ」



笑いながら答えるアキトに、ミナトは先程から抱いていた哀れみの感情よりも、怒りが吹き出してきた。
  
今度は、反対側の頬を力いっぱいひっぱたいてやった。
  
アキトは、ミナトにひっぱたかれても効きはしないのか、平然と受けきる。しかし、ミナトの顔を見た瞬間、驚きの表情を浮かべた。
  
ミナトの顔には、涙があふれていたからだ。
 

「自分の知らない人が死んでも、人間は意外と気にならないわ・・・・でもね!!よく知っている人が死ぬってわかっているのに、気にならないわけ無いじゃない!!」
  
「どうして、そんな事言うの!あんなに優しかったアキト君はどこに言ったの!!」
  

ミナトの意外とも思える、激しい怒りを目の当たりにしてアキトは只驚くだけであった。
 
だが、次の瞬間、アキトは何故ミナトがこんなも激しく怒るのか理解した。

ミナトは、以前・・・・いや、今のミナトにはつい最近の事ではあるが、目の前で最愛の男性・・・白鳥九十九が死んでしまったのだ。
  
その時の落ち込み様は、普段のミナトからは考えられないほどだった。
  
アキトは、この事を思い出すと申し訳無さそうに、ミナトに話し掛けた。
  

「すまない、ミナトさん。あんたにとっては最近の事だったな・・・・よく知っている人が死んでしまったのは・・・」
  
「あ・・・・・ごめんね、アキト君。事情も良く知らない私なんかが怒鳴ったりして・・・・」
  
アキトの冷静な口調に、今自分がどんな姿を見せてしまったかと思うと、恥かしくなってしまったミナトであった。
  
見た事の無いミナトの姿に、つい笑いだ出てしまいそうになったアキトだが、次の瞬間その眼差しは、鋭い視線をミナトに向けた。
  
「ミナトさん・・・・今後、俺に・・・テンカワ・アキトに何が起こるか知って欲しいんだ」
  
「でも・・・・・アキト君が・・・・」
  

それでも、アキトはミナトに構わず話を続けた・・・・・
  
会話の内容は、ミナトの想像を遥かに超えた物であった。
  
アキトとユリカが事故死に見せかけ、さらわれて人体実験をされてしまう。
  
アキト達だけでなく、他の火星出身者も同様に実験台にされ、多くの命が失われていく・・・・
  
そして、運良く救出されたアキトは、五感に障害が特に、料理人としての命の味覚が失われる事。
 
その後、復讐の為に自分の手を血で染めた事・・・・ミナトはアキトの口から次々に出る話に、めまいを覚えた。
  

「御免・・・アキト君、ちょっと良い・・・?」
  
「何だ?」
  
「ちょっと・・・信じられないんだけど・・・・本当にアキト君にこれからおきる事なの?」
  

ミナトの質問に、アキトは納得といった表情をみせた。
  
「だろうな、俺も最初は何がなんだか、わからなかったがすべて事実だ」
  

そう言うと、アキトは立ち上がり玄関に向かって歩き出した。
  
「どこに行くの!?アキト君!」
  

無言で外に向かおうとするアキトに、ミナトは目の前で大きく腕を広げて、歩みを阻止した。
 
「俺は、この世界の・・・・・草壁達を始末する」
  
「本当・・・・・・に良いのね・・・・?」
  
「ああ・・・・後悔はしない、いや望む所さ」
  

その表情からは、固い決意が垣間見えたミナトは、アキトを止めるのは無理であろうと判断した。
  

だが先程から、ミナトはアキトの行動に不審な思いを抱いていた。
 
生への執着心・・・・それがまったく感じられなかった。
  
いずれ死ぬにしても、今のアキトの状態では早死にするだけ・・・・・そう思えてならなかった。
  
そしても、ミナトもアキトに負けじと真面目な表情で、問い掛けた。
 

「アキト君、約束して。必ず生きて帰ってくるって・・・・もし守れないなら、此処は通さないわ。いえ、すぐにでもこの事を艦長に報告するわよ?
  
「出来れば黙っていて欲しいんだが・・・・・・・わかった、約束する」
  

アキトを睨みつけるミナトの気迫に負けたわけではないのだろうが、アキトは観念したように答えた。
  
「もし、辛かったら、何時でも此処に休みに来ても良いわよ?ユキナと二人だけじゃ広すぎるから」
  

ミナトは、アキトの返答に満足したのか、明るい笑顔を見せながら話し掛けてきた
 。 
先ほどの表情とはまったく反対のミナトの表情を見て、アキトはやられたと思った・・・が、別に怒りが出てくるわけでもなかった。
  

「じゃあ、気が向いたらまた来るよ・・」
  
「行ってらっしゃい、アキト君♪」
  

ミナトの言葉を聞くとアキトは、光に包まれどこかにジャンプして行ってしまった
  
「アキト君・・・・・必ず生きて帰ってきてよ・・・」
  

既にいない、アキトに届くはずも無く独り言のように呟くミナトだけが部屋に残されていた。
  
この後、未来から来たアキトによって、歴史は大きく変わってい事になる・・・・・・
  



どうも、KANKOです。今回のお話は、チャットにて即興で書いた物をHTML化した物です。

見ていただいた皆さんから、続きが気になると言う事なので公開しました。
もし、こちらで読んで気に入っていただけた方がおりましたらメールなどで、ご連絡ください。


もし、感想が多くいただければ早く連載可能になりますので・・・・
そうです・・・・これも連載ネタです(笑)

では、此処まで読んで頂き有り難うございます。

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