第3章

機動戦艦ナデシコ


一人時の中




第三章





「いけませんね…」


プロスがブリッジに映し出されるモニターを見ながら、苦虫をつぶすような顔をしながら呟いた。

モニター上には、地上に出たテンカワのエステを庇いながら木星蜥蜴の兵器・バッタと戦う

クロキ・アキト。

その彼が、先程からバッタに対してライフルを撃つのだがどうにも当たらない。

いや、当たる事は当たるのだが直撃でない為かあまり撃墜できていない。


「どうしよ〜このままじゃ囮をしてもらう前にエステバリスがやられちゃう。
 ルリちゃん、どうにかならない!? 」


ブリッジの艦長席に先程到着したナデシコ艦長、ミスマル・ユリカがモニター上の光景に

慌てふためいている。 何故なら、ナデシコが海上に出るまでにエステバリスに敵を引きつけてもらい

その隙に、海上から出たナデシコのグラビティブラストで殲滅しようと考えていたのだが

今、モニターに映し出されている状況ではそれも難しくなりつつある。


「艦長がもう少し早く来ていただければ、少しはましになったかもしれませんが
 どうにもなりません」


ルリがユリカを突き放すように返答する。


「ん〜〜でも、今はピンク色のエステに乗ってるクロキって言う人は、凄腕じゃなかったの?
 プロスさん?」


操縦士のミナトが、モニターに映し出される光景に不思議そうに見ながら、プロスに聞く。


「いや、いくらクロキさんでも満足に動かないエステバリスではどうしようもないでしょう。
 むしろ、クロキさんだからこそ今でももっているとも考えられますが…」


そのプロスの後方に控えていた、ゴート・ホーリーが何やら、コミュニケを使って誰かと会話をしていた。


「そっちの方はどうなっている? ヤマダのエステは出撃できるのか?」

『無理いうなって、さっきの瓦礫が思った以上に多かったんだ。 そのせいで、カメラがやられちまっているから出撃は無理だって』


ゴートの問いに、コミュニケの向こう側から、整備班班長のウリバタケがスパナ片手に答える。

しかし、それでも何とか出撃できるようにしているのか、周りからは整備員達が懸命に作業しているのが

ゴートの方からでも確認できる。 その後方では、作業音にまぎれてヤマダの叫び声が響いていたが。


「だそうです」

「そうですか…やはり、クロキさんに頑張って頂かないといけませんかねぇ…」


ゴートの答えに、力無く呟くプロス。

ナデシコクルーには、只黙ってモニターに映し出される二体のエステを見守る事しか出来なかった。

只一人を除いて。






『あ、あのっ…俺っ…』

「話は生き残ってからだ! お前は海岸の方に向かって逃げていろ! 邪魔だ! 」


バッタの攻撃に、うろたえるテンカワをクロキは叱りつけるように話しながら戦いに集中していた。

今、クロキが乗っているエステは調整が不充分だ。 だが、それはクロキもそれは承知だったのだが

テンカワを庇いながら戦う事は思った以上に難しかった。

そして、それ以上にクロキが自分の世界で初めて出撃した時よりもバッタ達の数が多かったのも

クロキがてこずっている原因だった。




くそっ! ここまでてこずるとは…良く生き残れたもんだ! あの時の俺はっ!

このままでは、遺跡どころか俺やテンカワまでも!


そう心で、悔しそうにするクロキのコクピットに不意に通信が入る。


『アキトさん、これから援護します』

「ルリちゃん? もう海上に出てこれたのか? 」

『いえ、そうではありませんが、まあ…見ててください』


そう言うと、ルリは通信を切った。


「どう言う事だ? 」

『あれはさっきの子? クロキさん、どう言う事っすか? 』

「お前は生き残る事だけを考えろ!」


ルリの言葉に、戦闘中にも関わらず考え込んでしまったクロキだがテンカワの言葉に

現実に戻されたクロキは、再び戦闘に集中する。




「ルリちゃん、どうしたの? 」


何やらオモイカネと忙しそうにやり取りをするルリに、ユリカが不思議そうに問いかける。


「艦長の遅刻の穴埋めです」


さらっと、きつい事を言うルリ。


「うう…酷いルリちゃん」

「ミナトさん、ルリちゃんって、何かこう・・・・近づきがたい雰囲気を持っていませんか?」

「そうねぇ…多分、今まで普通に生活した事が無いんじゃないかしら? 」


いじけているユリカをよそに、ミナトとメグミはルリの歳相応とは言えない態度に大きな違和感を覚えた。

そのすぐ横では、ミナトとメグミが話している事にルリは気付かないのか、黙々と作業を続けている。


ただ、心の奥底から自分でも言い表せない不安がこみ上げてくる為だとしか言いようが無かった。

そして、その不安がルリを突き動かす・・・・












「くそっ!! 」

『クロキさんっ! 』


クロキのエステが、ミサイルの集中攻撃を受けて転がるように、吹き飛ばされた。

ディストーションフィールドのお陰で、何とか動けるようだが、バランサーの調整が取れていないエステでは

いくらクロキといえど、限界に来ていた。


「IFSの反応も重いな…ジャンプを使うしかないか? 」


クロキがそう考えた時、不思議な事が起こった。

バッタの動きが、鈍くなってきたのだ。 

しかも、バッタから放たれたミサイルはクロキとテンカワを捕らえる事無く、見当違いの方向に放たれている。



『クロキさん、これって? 』


テンカワも何が起きたのか、全く理解でき無いと言った表情で、バッタを見つめている。


「そうか、ルリちゃんの仕業か? 」

『そうです。 先程、アキトさんに頂いたバッタのデータをオモイカネに解析してもらったので、
 そのお陰でバッタのAIにハッキングが出来ました。 まだ完全にはコントロールを奪う事は出来ませんが』



クロキの疑問の声に、答えるようにルリの顔がコクピット内に映し出された。


『へっ? 俺? 』

『違います。 テンカワさんではなく、クロキ・アキトさんです』


テンカワの間抜けな答えに、ルリは感情を込めずに突っ込みを入れる。


「二人とも、話しはそこまでだ。 テンカワっ! 今のうちにナデシコの方まで逃げるぞ!」

『は、はいっ!』


クロキが叫ぶと同時に、エステは走り出した。 その後を、テンカワのエステも続いた。




「そろそろ、海上ね。 ルリちゃん、海上に出るタイミングは大丈夫? 」

「はい、既にタイミングは計算しています。 後は海上に出るだけです」

「では、各員。 準備をしてください。 海上に上がり次第、グラビィティブラストで敵を殲滅します」


ルリの答えに満足したのか、ユリカはきりっとした表情と大きな声でクルーに命令する。

その雰囲気にクルー達にも緊張が走る。

その光景をプロスは満足そうに見つめていた。


「何とかなりそうですね」

「ええ、一時はどうなるかと思いましたが…戦闘の時にしっかりして頂ければ、構いませんからな」


誰に聞こえる事無く、プロスとゴートはユリカを見ながら呟いた。





『クロキさん、テンカワさん、そのままのスピードで海に向かってジャンプしてください』


メグミが、二人に指示を出す。

クロキとテンカワの後方では、先程まで動きが散漫だったバッタ達の動きが徐々に、元に戻りつつある。

ルリとオモイカネによるハッキングは、この時ナデシコの制御の為に解除されていた。

そして、逃げる二体のエステに気付いた様に一斉にエステに向かってくる。



「テンカワ、先にいけ! 後、ラピットライフルを貸せ」

『え、でも、クロキさんは? 』


クロキは、テンカワの言葉に答える事無く、自分のエステが持っていたライフルを右手に構え、

テンカワから奪い取るように受け取ったライフルを左手に構え、その場で立ち尽くす。


「こい!」


立ち止まったクロキのエステに群がる様に、バッタ達がミサイルを発射した。

そのバッタ達に向かって、クロキは両手のライフルを標準を合わす事なく撃ちまくる。

バッタ達から放たれたミサイルはクロキのエステに当たる事無く、ライフルのから放たれた弾丸に当たり、爆発する。

中には、爆発を避けきれなかったバッタがそのまま、地面へ勢い良く激突し、爆発する。


そして、クロキのエステとバッタの間には、大きな煙が巻き上がったと同時に、クロキのエステは

テンカワのエステを追いかける様に走り出した。




『クロキさん、早く!!』


既に、テンカワは海へ向かってジャンプの体制に入っている。

その後に続くように、クロキもジャンプの体制に入る。

そして、二体のエステは海へ向かって、大きな弧を描いてジャンプする。




「よし、丁度良いタイミングだな」


クロキがそう呟くと同時に、海面から白い影が浮上し、二体のエステが海に着地する直前

その白い影が、エステを受けとめるように上昇して行く。



「エステバリス、ブリッジの真上に二体とも無事に着地しました」

「了解、目標、前面に展開する木星蜥蜴! グラビィティブラスト発射!」

「発射」


メグミから、エステの安全を確認すると、ユリカは間髪入れずにお指示を出す。

そのユリカの声が、ブリッジに響き渡ると同時に、ルリは小さな声と同時に発射の指示をオモイカネに出す。


そして、ナデシコから放たれた大きな直線状の光は、爆発の煙から出てきたバッタ達を包み込む。

それはナデシコの勝利が決まった瞬間でもあった。












「やった〜勝ちましたね、ミナトさん」

「そうねぇ〜でも、クロキ君がいなかったらどうなってたかしらね。 あのテンカワ君って言ったっけ?
 あの子一人だったら、今ごろナデシコは海の底だったかもしれないわね? 」


安堵のため息をつく、二人と同じように後方にいたプロス達も安堵のため息をついていた。

そこに置物の様にずっとこれまでの戦いを眺めていた、軍服に身を包んだ老人が喋り出した。


「プロス君、彼は…クロキ・アキトといったか? なかなかの腕前だな。 調整もされていないエステバリスで
 あそこまで動けるとは」

「ええ、最近スカウトした方なのですが、いやいや、まるでエステを操縦する為に生まれてきたような方でして
 本来の実力はあんな物ではありませんよ? 」

「ほほぅ…それは頼もしい限りだな。 で、本来クロキ君が乗るはずだったエステバリスには
 誰が乗っているのかね? ヤマダ君は出撃してないはずだが? 」

「はあ…あちらの方はコックのテンカワ・アキトさんです。 理由は良くわかりませんが
 何故か乗っていらっしゃいますなぁ…後で聞いておきます」


などと、エステの戦いの感想を話し合っているフクベ提督とプロスの会話を何となく聞いていたユリカの顔が

急に難しい顔つきになった。


「アキト・・・・テンカワ・アキト・・・・う〜ん…何処かで聞いた事が・・・・う〜ん・・・・」

「おや? どうされました? 艦長」


妙な唸り声を上げながら、しきりにテンカワ・アキトの名前を言うユリカにプロスは話しかける。

しかし、その問いにも答える事無くユリカは只唸るばかりだ。

その異様なユリカの姿に、ブリッジのクルーも注目する。

そして・・・・


「ああっ!! 思い出した!!! アキトだ! テンカワ・アキト!! アキトね!! 」


そう言うや否、ユリカはブリッジをものすごい勢いで出ていった。


「あの、艦長?」

「艦長は格納庫に向かっているようです」



ユリカの行動にあっけを取られたプロス達は、只見つめる事しか出来ず、ルリのユリカの行く先を伝える声だけが

ブリッジに流れた。
















「いってぇ…」


ユリカが向かっている格納庫では、先程収容された二体のエステの前で人悶着が起きていた。


頬をさすりながら、テンカワは殴った相手を見つめ返していた。

その顔には顔を半分ほど隠すほどの大きなバイザーで隠されている為、表情は窺い知る事は出来ない。

しかし、テンカワに向けている態度から怒っている事は明白だ。



「クロキ…おめぇ・・」


無断で、エステを出撃させたテンカワに文句を言ってやろうと降りてきたテンカワに近づこうとしたウリバタケは

同じように降りてきたクロキの突然の行動に、あっけに取られ、テンカワにぶつける言葉が脳裏から消え去ってしまった。




「テンカワ、貴様どう言うつもりでエステに乗った? 逃げる為にか? 」


クロキとテンカワの周りには整備員達も集まり大きな人だかりになってしまっているが、それを気にする事も無く

冷たくテンカワに問いかけるクロキ。


「そんな…逃げる訳が無いじゃないっすか! 俺は、あいつらが…木星蜥蜴が許せなかったんです!」


逃げる為と言われて、腹が立ったのか怒りを乗せてクロキに言葉をぶつける。


「そうか…許せなかったか…だが、コックのお前に何が出きる? IFSをつけているだけで
 戦闘訓練は受けていないだろう? 」


「でも…」


なおも言いつづけようとするテンカワに、クロキはバイザーを取ってテンカワに静かに語り掛ける。

その顔はテンカワとうりふたつ。 テンカワとクロキがそっくりだと言う事は、クルーの殆どが知っていた事だが

こうやって二人の顔を見比べながら見ると、同じ人間のようにも見えた。


唯一の違いとして、クロキのほうが目つきも鋭く肉体もテンカワよりもたくましい事ぐらいだろう。



「テンカワ…貴様はナデシコにコックとして乗ったんだろう? ならば、自分が出来る事を…
 料理に専念しろ。 戦闘は俺とヤマダに任せろ」


諭すように話すクロキ。 その時、後ろから叫び声が響いた。


「その通りだぞ、テンカワ! 素人は大人しく戦艦の中にいろ。 敵は全てこの、ダイゴウジ・ガイ様が片付けてやるからな。
 たとえ、クロキと顔がそっくりでも戦闘までそっくりにはできんのだからな! 
 あと…クロキよぉ…俺の名はダイゴウジ・ガイだ!」


「それは、『魂の名』だろうが。 それに俺が前に言った事を忘れたのか? そう呼ばれたければ
 実戦で戦果を上げろとな」

「ぐぅぅぅ…痛い所を…」


歯軋りをしながら、悔しそうにするヤマダにクロキは反論する間も視線を向ける事はなかった。





その時、ヤマダ以上に大きな声を上げながら近づいてくる人物がいた。

声からして、女性と分かるのだが、ずっと『アキト、アキト』と連呼している。

その声に、クロキを除く格納庫のに集まっていたクルー達がその声の主に注目する。



「来たか…覚悟しとけよ。 テンカワ」

「え? 」



何を覚悟するのか、全く理解できないテンカワはクロキの方に視線を向けるが、それがこれから起きる事へのあだになった。





「アキトォ〜〜〜!!」


声の主である、ユリカが文字通り飛び込む様にやってきた。

その軌道は、当初はクロキの方に向かっていたのだがクロキは難なくかわし、後方にいたテンカワの胸に向かっていった。



「げふぅええっ! 」

「会いたかったよ〜アキトォ〜」



喜びで瞳には涙すら浮かぶユリカに対して、テンカワは意味不明の叫び声を上げながら地面に後頭部から激突した。



「…誰?…」


意識が遠のきそうになりながらも、何とかテンカワは抱き着いている女性に質問する。

普通の状況ならば、女性に抱き付かれるのは嬉しいものだが、今のテンカワの表情を見るとそうも言えない。

周りの整備員達も、この時ばかりは同情するしかなかった。



「私よ! ユリカ、ミスマル・ユリカ! もうアキトったら、恥かしがら無くても良いのに」」

「え〜と、ユリカ・・・・ユリカ…ミスマル・ユリカ・・・・」


ユリカと言う名前を聞いても、瞬時に思い出せないのだろう、眉間にシワを寄せて考え込んでいる。

その二人の光景を、何か懐かしそうにクロキは見つめていた。


「やっぱり、変わらないか」

「ん? なんか言ったか?」

「いや、何でも無い」


何か、思いふける様に呟いたクロキにウリバタケは尋ねたが、目の前の光景の方が気に掛かり、あまり気に止めなかった。




「ユリカ・・・・・ああっ!? お前、火星にいた時に隣に住んでいた、あの!ミスマル・ユリカか?」

「もうアキトったら、今思い出したようにしなくても、私はわかっているんだからね。 アキトは私の事を好きって事」

「はぁ? 何で、今の会話からそうなるんだよ!? 」

「もう、照れなくても良いのに〜〜、いいの、アキトの気持ちは私はずっと知っているから」

「こら、人の話し聞け! クロキさんからも何とか言ってくださいよぉ…」



テンカワの言葉に耳を傾けずに自分の中で自己完結するユリカに耐えかね、クロキに助けを求めるテンカワ。


「テンカワ・・・・苦労するだろうが、幸せにな」


そう一言、言うだけであった。


「あれ? アキトが二人? ねぇねぇ、アキトのお兄さん? 」


テンカワが声をかけた方向に、何となく視線を移すユリカの先には、全身黒ずくめのクロキが立っていた。


「似ているが、何のかかわりも無い赤の他人だ。 初めまして、艦長。 俺はナデシコの警備主任、及び
 エステバリスのパイロットのクロキ・アキトだ。 まあ、名前も一緒だが俺を呼ぶ時は、クロキで結構だ」


「へ〜〜、警備主任なんですか。 じゃあ、アキトの事しっかり見ててくださいね? アキトが怪我するのは嫌ですから」


「その事でさっきから話していたんだが、まあ、努力はしよう」


ユリカの、あくまでも『アキト限定』の頼みに、クロキは苦笑しながら答える事しか出来なかった。

そんなクロキに、テンカワは今にも泣きそうな顔をするしかなかった。



「じゃあ、俺はこれで失礼する」

「ああっ、クロキさん、助けてくださいよ〜! 」


助けを求めるテンカワを尻目に、クロキはさっさと賑やかな格納庫から逃げるように出ていった。

だが、その顔には笑みがこぼれていた。



「懐かしいな…なんだかんだ言っても、あの頃が一番楽しかったな」


格納庫での、ユリカとテンカワのやり取りがクロキ…未来の世界から来たテンカワ・アキトには眩しすぎた。

例え、この世界がクロキのいた世界とは多少違うとは言え、ナデシコが存在する。

違う世界とは言え全てが終わってしまったクロキには、ここの光景は昔を思い出し心がかき乱されてしまう。



「いまさら、あの頃の生活は・・・・無理だな」


そう言いながら、クロキは決して何も感じる事は無い舌に指を触れた。 


「結局、味覚だけは元に戻らなかったな・・・・どうかしてるな、ここに来たのは昔に戻る為じゃないのに」

『昔がどうかしましたか? 』


不意に、クロキの正面にルリが映るモニターが現れた。 


「…あ・・・・いや、何でも無いよ。 昔の知り合いに似た奴がいたんでね」

『そうですか? 』

「ああ…気のせいだよ」


クロキの驚いた表情を見て、ルリはクロキの今の言葉が嘘である事には気付いた。

しかし、ボソンジャンプの事に関して未だに教えないクロキが隠したのだから、問いただしても無駄と判断し

本題に戻そうと話を再会した。


『なら良いんですが、先程はすいませんでした』

「何が? 」

『ナデシコが到着するタイミングが、遅れてしまった為にアキトさんにご迷惑をおかけしてしまったので』


ルリが示す先程の事とは、クロキがテンカワを逃がす為に敵と撃ち合った事だ。


「気にする事無いよ。 ああ言う仕事も俺の仕事だからね」

『わかりました。 でも、今後は気をつけます』


モニター上で、ルリが頭を下げた事に小さく笑ったクロキだった。 その様子に、ルリは不思議そうな顔でクロキを見つめる。


『なんですか? 何か変ですか? 』

「いや、ちゃんと約束は守っているようだからね。 安心したよ」

『・・・・約束は約束ですから。 では、失礼します』


クロキが笑った事が気に触ったのか、ルリはそう言うとモニターを閉じた。

ルリとクロキが約束した事とは、クロキがルリが知らない木星蜥蜴に関する情報を教える代わりに、ルリがきちんとした

返事をする事だった。 

最初はルリは嫌々だったのだが、クロキに挨拶がどれほど大事か説明され渋々、約束を守った。




もっとも、返事もろくに出来ないとある人物のように、なってしまうと言われたからではあるが。

ルリは、そのある人物の行動を先程、一部始終見てしまった為、返事だけでもきちんとした方が良いと思ったからだが

約束したクロキに笑われたのは、面白くなかったようだ。



「俺が、知っているルリちゃんよりは表情は豊かみたいだな。後は、皆に任せれば良いな」


そう呟きながら、クロキは自室に戻ってゆく。















その時、不意にある事に気がついた。


「そういえば・・・・ジュンとムネタケが乗っていないな? 何故だ? 」






第三章・完


何故でしょう? 別にいらないから、排除したと言うわけではありません(笑)

でも、久々の「一人時の中」でした。 先は長く険しい・・・・

では、ここまで読んで頂いて、ありがとうございました。

次話へ続く

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