これは電波です。気分を害する表現があるため気を強く持ってお読みください。

 

 

『黒い悪魔』

  

 

 

 

  

果てしなく続く大宇宙。そこを彷徨っている一隻の戦艦の姿があった。

その戦艦のブリッジには黒いバイザーを掛け黒いマントを着ている怪しすぎる男だけが立っていた。

彼はテンカワアキト。火星の決戦で北辰を倒した後に、一度はユリカ達の元に戻ったがそこでの生活に耐え切れずに脱走した。

しかも、リンクのせいでラピスに見付かってしまい仕方なく一緒に脱走した後にアカツキに匿って貰い、ユーチャリスで宇宙を彷徨ったりしていた。

   

「さて、新型のテストも終わったし。ラピスが待ってるから、早くドッグに戻るとするか。」

 

しかし今回は、ラピスは月にお留守番で一人で来ていたらしい。

「この新型があれば、奴等に復讐することが出来る。くっくっく…」

そうやってアキトが一人で怪しく笑っていると、突然警報が鳴り響いた。

ピーピーピー

  

「どうした!」

【レーダーに機影確認。照合開始。照合終了。機影はナデシコC一隻だけです。】

  

「ジャンプの用意を。ハッキングに気をつけろよ!」

「アキトさん!迎えに来ました。一緒に帰りましょう!」

    

「俺は帰ることが出来ない。………、というか帰りたくない…」

「そんな!一度は帰ってきてくれたのに!………、確かに嫌かもしれませんが…」

「…その艦にユリカも乗ってるのかい?」

「いいえ、……して待つのが妻の役目だからって言って家で待ってます。」

ルリのその答えに、アキトは表情を歪める。

    

「……………く、なおさら帰るわけにはいかなくなったな。」 

 

「そんな!私だけ見捨てるんですか…?」

そう問い掛けながら悲痛な表情で見つめるルリの視線を耐える事はアキトには出来なかった。

「…………、ならルリちゃんも一緒に来るかい?」

「はい!連れて行ってください。」

そんな遣り取りの後、ルリはナデシコCを自動操縦で帰還するようにすると、ユーチャリスに乗り込んだ。

  

しかし、その直後に火星の後継者の奇襲に遭い。ユーチャリスはまだ離脱していなかったナデシコCと共にその姿を消した。
そして同じ頃、月に居たラピスも青い光に包まれて姿を消していた。

    

その後、三人の捜索が行われたがその行方はわからなかった。







 

その頃のユリカは…

「アキト、早く帰ってこないかな〜」

鍋をおたまでかき混ぜている。その鍋は何故か黄色い煙を噴き出している。    
  
「アキト!貴方の奥さんがおいしい手料理を作って待ってるわ〜」

「いつもはあまりの美味しさに一口目で気を失っちゃうけど、今度は大丈夫!」

アキト君が脱走した理由はそれか!

「ルリちゃん遅いな〜。料理の味見してもらいたいのに…」

自分でしろよ!!  

それは、ルリちゃんも一人で残っていたく無いよな…。











そして、姿を消したアキトたちはどうなったか?

  
火星の程近い宇宙空間に突然、青い光が輝き。二隻の白い戦艦が姿を現した。

アキトは回復しない視界のままで朦朧とする頭を振りながら、ルリに声を掛けた。     
    
「……くっ!ここは…。ルリちゃん、大丈夫か?」

「…はい。大丈夫です…。」

「…どうなったんだ?」

「………あの、手をどけてくれませんか?」

視界が回復してアキトが視線を手に向けると何かを掴んでいるのが見えた。それもとびきり柔らかいものを。

掴んでいるのもは何かと視線を上に向けると赤い顔をしたルリの顔が目の前に現れた。

なんと、アキトはルリを下敷きにしていた。しかも、そのアキトの手はルリの胸を…。    

二人はそのままで暫く固まっていたが、アキトは何かに気付いたように手を動かし始めた。    

「あれ…?」

 モミ 

「あん!」

「手の感触が…」

 モミモミ 

「ああん!」

アキトが手で何かを握ったりすると、触感が戻っていることに気付いた。
 
「これは……ルリちゃん、他の感覚も戻ってるか確かめるの手伝ってくれないかな?」

「…あ、はい…」

そう頼むアキトに、ルリは何故か夢見心地な表情のまま頷いた。

「ルリちゃん!」

「あぁぁぁん!」





    (暫くお待ち下さい)






何故か服を着ておらず満足そうにしていた二人は服を着ながら自分達の状況を確認し始めた。 
  
「場所は火星の近くだな…」  

「アキトさん!ネットに繋いでみたら日付が!」
    
「この日付は…木連が火星に攻めてくる1年前じゃないか!」
    
「この時間の私達は、別に存在しているみたいですね」  

「変えられるのかあの未来を…」  

「アキトさんが月に飛んだ時みたいに何も出来ないかもしれませんけど…」

「無理だと思うかい?」

「いえ、私はアキトさんに協力します…」

「だって私は、アキトさんを愛してますから…。どこまでも付いて行きます」

「ルリちゃん…」  

「アキトさん…」

見詰め合う二人は段々近づいていき…。 

「あぁん♪」

  







     (また暫くお待ち下さい)









暫くすると、何故かまた服を着ていない二人が今度はまだ何かしていた。

「アキトさん…まだ元気です…」

「まだまだ逝けるよ、ルリちゃん…」

(…アキト……どこに逝くの?)

「わっ!ラピス、聞いてたのか…。ってラピスもジャンプしてたのか?」

(うん…気が付いたら小さくなってた。今、……に居るから迎えに来て…)

「わかった。すぐ迎えに行く。」

「ラピスがどうかしたんですか?」
  
「ラピスもジャンプしてたらしいんだ。今、リンクで迎えに来いってさ。」

「…そうですか…。行ってらっしゃい…」

「…帰ったら、また続きしようね?」

ルリの声が寂しそうだったのに気付いたアキトはルリの耳元にそう囁くと、青い光に包まれて、姿を消した。
  
「あ!…アキトさん、服…」


  





     (今度は中略)









     そして、ナデシコ出航の日

  


一機のエステバリスが数百機の無人兵器に囲まれながら疾走していた。

「囮のエステバリスの損害率50パーセントを突破。」

「くっそー!囮なんか出来るかよ!!」

しかし、無人兵器のあまりの数に周りを囲まれてしまう。

「テンカワ機、敵に囲まれました。」

そして、無人兵器から放たれたミサイルがエステバリスに降り注いだ。
 
「ぐわぁぁ!!」 
 
直撃するかと思われたその時。黒い閃光が煌めくと、ミサイル共々エステバリスの上方の無人兵器が一掃された。

しかも、それだけでなくエステバリスの周囲を囲んでいた無人兵器も何かの直撃を受け次々と爆砕していく。
  
    

「…何が起きたの?」

「索敵範囲外からの攻撃です。」

「新しい敵か!」

「未確認の機体接近中。」

「その未確認の機体から通信入ってます。」

「繋いで下さい。」

そして映ったのは……

黒尽くめの格好で黒いバイザーをかけた黒っぽい男だった。


それを見たブリッジクルーの感想は「怪しい」で統一されていた。

「どなたですか〜?」

「…通りすがりの者だ…」

「貴方のお名前は?」

「…『アヴェンジャー』とでも呼べ。」

「何が目的だ!」

「…今からそちらを援護する。戦闘に集中するから途中で通信を繋ぐなよ。」

黒っぽい男は最後は一方的にそう言うと通信を切った。

「通信、遮断されました。」 

「とりあえず、味方のようですな。」
  
通信が切れると、すぐにその機体が戦闘区域に侵入した。その速さは黒い閃光の様だった。 

そのおそらく黒い色をした機体が凄いスピードで飛び回り、次々に無人兵器が倒されていく。

「速すぎて、肉眼で確認できない!!」

その機体は黒い閃光を、おそらくグラビティブラストであろう。を放つと、敵機が

その閃光に消え、さらに放たれる弾丸は外れる事無くすべて直撃して敵を蹴散らしていき

姿を確認する事も出来ないスピードで敵の攻撃を回避しながらも体当たりで敵機を粉砕していく。

「なんて動きだ!」

「あんな動きで中の人は大丈夫なの?」

皆がその強さに驚き、これで助かったと安堵していた。

だが、次の瞬間その機体に敵機が居た方向と別方向から、次々と黒い閃光が直撃していった。

「別方向から出現したチューリップから、敵機多数出現。」

その報告と共に映し出される光景に、皆が絶望を感じた。それはチューリップの中から、

何百という戦艦と数千の無人兵器が吐き出されている所だった。

さらに、ピンチを救ってくれていた謎の機体は、今もその戦艦達が放ったであろう砲撃を

受け続けている。その容赦の無い砲撃を受けている機体は跡形も残っていないだろうと皆が思い、

次の瞬間には自分達もそうなるのだろうと恐怖していた。



しかし、次の瞬間。戦艦の砲撃を弾きながら黒い機体が飛び出してきた。

  
黒い機体は全くダメージを感じさせない動きで敵の砲撃の間を潜り抜け敵艦に接近すると、

まるで蝶のように敵艦の間を縫う様にしながら飛び回った。すると、その機体が近くを通り過ぎていった

敵艦が分解された様にバラバラになって落ちていく。

「凄い…」

「まるで舞ってるみたい…」 

皆がその動きに目を奪われ、目を放せないでいた。
    
そうして敵が次々撃破されていることに安心して余裕が出来てきたブリッジクルーは、強すぎるその

機体の事が気になりだした。しかも、その機体は凄まじいスピードで動くのでその形状さえ分からないのだ。

「あれって、どこのロボットでしょう?」

「速過ぎて全然見えないわね…」

「形状が分かれば、どこの製品か判るかもしれないんですがね…」
 
「カメラの映像をスローで再生すれば見えると思いますけど?」

「…お願いできますかな。」

そして、それが大きなウインドウにその機体が映し出された!

そこに映し出された機体は………

  

    


台所の黒い悪魔と呼ばれるアレの形をしていた。
      











「ゴキブリ?」


「ゴキブリですね。」


「ゴキブリよね〜」


「…ゴキブリだな。」

「ジュン君、ゴキブリだよ。」


「確かにゴキブリに見えるね。」




「あれは火星撤退の時に現れた…」


「提督、あれを知っておられるので?」


「ああ、あの機体は火星撤退の折に、私がチューリップに突撃させた私の艦をチューリップごと落とした機体だ」


「そうですか。あれが噂の…」


「ついでの様にムネタケの息子が乗っていた艦も落としていたな…」

「…………………」

 

ブリッジクルーのそのあまりにも容赦の無い感想が気に障ったのか、
  

「ゴキブリ、ゴキブリ言うな!!」     


黒っぽいパイロットが自分で繋ぐなと言っておいた通信を繋いでまで否定してきた。



しかし、いくら黒っぽい男が精一杯否定しても、それは台所の黒い悪魔にしか見えなかった。



黒くカラーリングされ黒光りするボディ。足は飛行中は折り畳まれている様だ。

頭の口みたいな物はおそらくグラビティブラストであろう。さらに、触覚のように突き出たレールガン。

その羽は敵を切り裂く高周波ブレードになっているようで細かく振動している。
  
その姿は、まさに台所の黒い悪魔のように見える。

 
そんな形なのに敵機の10倍以上のスピードで飛び回り、戦艦の砲撃でさえ防ぎきるフィールドをも備えている。

その強さ、その姿、その全てが圧倒的だった。

チューリップから出てくる敵は次々に落とされていき。

遂には、敵を吐き出し続けていた巨大なチューリップまでもが落とされてしまった。

  
そんなありえないほどの強さをしている機体だった。しかし…





その姿は、何処から見ても大きな『ゴキブリ』にしか見えないものだった。






    

「索敵可能範囲内に敵の反応在りません」

「私達、勝ったんですか?」

「とりあえず、戦闘終了ですな」
 
「では、俺は行くぞ」

「あの〜、直接お礼が言いたいんで着艦して貰えませんか?」   

「……わかった…」
    
そんなやり取りの後、黒い機体を収納したナデシコは出航した。






「おーい。俺のこと忘れてないかー」






                            
「誰か忘れてない?」

「誰かいましたっけ?」

「あー、アキトは何処へ行ったのー?」







ナデシコに収納された『ゴキブリ』の上から、黒尽くめの男が颯爽と飛び降りてくる。

……高さは3メートル程しかなかったが。

「あなたは何者ですかな?」

「言っただろう…。ただの通りすがりだ。」

 

「では、その機体は?」

「こいつは名前は『ダークデビル』。鹵獲した無人兵器『バッタ』を元にして、俺がグラビティブラストと小型の相転移エンジンを搭載させて設計し直した機体だ。」  

「そうですか。…それでご相談なんですが…。ナデシコに乗りませんか?」

「ナデシコ?」

「この船のことです。」

「…無理だな。家族と離れたくないんでな…」

「では、ご家族もご一緒ではどうですか?」

「………相談してみよう…」

そう言うと黒っぽい男は『ダークデビル』に乗り込み、どこかに通信し始めた。

                              
「ルリちゃん、何とか乗り込めそうだよ。」

「そうですか、予定通りですね。」

「じゃあ、こっちに向かっ「おぎゃー!」れ。」

「あ、どうしたんですか?」

「お腹空いたみたい…」

「それじゃ、アキトさんこの後は予定通りに…」

「ああ、わかった…」


黒っぽい男は相談が終わったのか、『ダークデビル』から降りてきた。
    
「いいだろう。家族も色々出来るから一緒に雇ってくれ。」

「では契約を…」

プロスが契約書をどこかから取り出しながら交渉に入ろうとしたが
  
「それは家族が着いてからにしてくれ。」

「そうですか…。紹介はご家族が来てからが良いでしょうし、艦内の説明でも…」

プロスがそう言って先導しようとすると、暑苦しそうな声が響いた。    

「カッコは悪いが、こんなに強い機体に俺も乗ってみたいぜ!!」

「欲しいなら機体の設計図はあるから作ってもらえばいいだろう。だが作ってもらっても、軽い気持ちで乗らない方が良い。俺以外が乗っても加速で失神するのがオチだぞ」

「そんなにきついのか?」

「ああ、俺がこれを乗りこなすのにどれだけ訓練したか……」

黒っぽい男の脳裏には訓練の時の苦い記憶が走馬灯の様に甦っていた。

チョンチョン

「ん?」

「あのー、いいですか?」

呼びかけに黒っぽい男が振り向くとそこに居たのは、銀髪の少女。
 
「君は…」(知らないふり、知らないふり)

「ホシノ・ルリ。このナデシコのオペレーターです。ちょっと疑問なんですが?」

「元々は無人兵器なんだから、人が乗る必要ないんじゃ…」

「……………」

その質問に、格納庫は痛い沈黙に包まれた。


「ほ、ほら!人が乗ったほうが咄嗟の判断が出来るようになるから…」

とっさにそれっぽい理由を話し出す黒っぽい男だが、さらに鋭いつっこみが入る。

 
「でも、あれだけ機体性能が高いなら、飛び回らせてるだけで勝てるんじゃないですか?」  

少女の隣に現れたウインドウ。それにはさっきの戦闘で集めた『ダークデビル』の

戦闘能力データがグラフで表示されていた。
 
それによると、火力、防御能力、機動力、その全てがナデシコの数倍あり、
   
総合力はナデシコの数百倍あると試算されていた。   
  



  「……………」



  「……………」



 
後に、逆行してきた方のルリは赤ん坊を抱きながらこう語った。

「私もナデシコに染まってたんで気付きませんでしたね…」

ネルガルの極秘研究所から助け出された(攫われたとも言う)精神だけ逆行した5歳位のラピスは

「アニメで一番強いのは、人が乗ってる専用機…」   

変な理由でアキトが乗るのを当たり前だと思っていた。






  
その後、『ダークデビル』は無人機に改修され量産されることになった。
  

人の乗るはずのスペースにAIが搭載され、量産するということでさすがにグラビティブラストと小型相転移エンジンは省かれることになったが、そのスペースにバッタ本来のジェネレーターを改造した物を複数搭載することで前と同等以上の出力を獲得した。
  
それによってフィールド強度が以前の50%ほど増した。さらに速度はどんな人間も乗ることが出来ないほどのスピードで稼動できるようになった。

そうやって、人が乗ることが出来なくなったおかげで機体性能が大幅に上昇したが、そのかわり戦術は体当たりなどの単純な物しか取れなくなってしまった。しかし、それでも十分なほどに改良された『ダークデビル』は黒っぽい男が乗っている時の物より強くなっていた。

  


「俺の血の滲む様な訓練は……」

その結果に対して、黒っぽい男は改修された自分の機体の前で涙を流して蹲っていた。





そうやって量産された『ダークデビル』の活躍によってあっという間に地球と月、そしてコロニーの近くのチューリップはすべて撃破されることになり。しかも、火星までもを取り戻す事が出来た。

そして、さらに驚いたことに絶望的だった火星には生き残りが存在しており、さすがにその数は戦争前の半分ほどになっていたが嬉しいニュースとして報道された。

さらに送り込まれてくるチューリップも『ダークデビル』によって火星圏に到達する事も出来ずに撃破されるようになり、地球と火星は事実上の平和を取り戻した。

しかし、その頃になるとネットに木星蜥蜴の正体が百年前に地球から追放された人間だと流れて地球は再び大混乱に陥った。

その混乱は暫く続いたが、それを隠した地球側も悪いが火星を虐殺しようとした木連にも否が在るとして木連本国への侵攻作戦を行うことに決定された。しかし、あくまで降伏させる為の侵攻ということで、
  
対人用のノン・リーサル・ウェポンを搭載した『ダークデビル』の小型機が数種類設計され、量産された。

その侵攻作戦の概要は先行して『ダークデビル』シリーズを送り込み、木連が反抗する戦力を無くした後に、遅れて到着した連合艦隊が降伏勧告をするというものだった。







そして侵攻作戦は発動され、遂に『ダークデビル』は、木星にも送り込まれた。







   

侵攻作戦が発動した頃、木連では劣勢な戦況を打開する為に連日のように続けられている会議が行われていた。
  
「送り込んだ次元跳躍門は全て破壊された…」

「このままでは、地球軍が我が木連まで…。何か策は無いか…」

「やはり、火星の遺跡を…」
   
「しかし!次元跳躍門は火星に着く前に全て落されているのだぞ!」

だが、有効な策は見つからずいつもどうりに結論の出ないまま閉会すると思われた。      

しかし、その日はいつもと違った。会議中に緊急の報告が入ってきたのだ。

「哨戒中の無人兵器より報告!謎の機影が接近しています」  

「なに!!遂に地球からの侵攻か?」

「確認中……その機影の数、一万機以上!!」

「さらに報告!まだ増え続けているようです!」

「謎の機影に哨戒中の無人兵器及び無人艦が破壊されました!」

「その謎の機影を敵と判断!これより迎撃を開始する。先行させて無人兵器と無人艦を送り込め!!」

「優人部隊出撃用意!悪の地球人からの侵略を防ぐのだ!!」

「出撃させた無人兵器の半数以上がすでに撃破されました!」
   
「無人艦も次々に撃破されています!」

「敵の一部が防衛線を抜けて、コロニーに取り付きました!」

「戦える者は白兵戦準備!内部に侵入した敵を迎撃させろ!」

  

    
  
全く灯りの無い漆黒の空間。そこに数人の編み笠を被った男達が居た。

「……では、我々は………御意。……どうやら我が軍は劣勢のようだ。」

「…隊長、我々も出撃するので?」

「…違う。我らの任務は内部に侵入した小型機の排除だ。往くぞ。」
  
「御意!」

北辰達はすばやく隙の無い動きで敵に進入されたブロックに向かった。  

そして、目的の地点に到着した北辰達が見たのは1メートルほどの大きさで木連では
   
労働力として広く使われている無人機械に似ている黒い無人兵器の姿だった。     

「む。我が木連の兵器を利用したか。悪の地球人め!」 

その黒い無人兵器は北辰達に気付くと振り向き、頭部から何かを放った。
  
「く、散!」

北辰達は、素早く散開してそのを回避しようとしたが、一人だけ回避出来ずに直撃してしまった。      
  
「…!ぐわぁぁぁ!」

それを直撃した者は、暫くビクビクと痙攣すると急に動かなくなり、ゆっくりと崩れ落ちた。   

「未熟者が…。殺るぞ、滅!」

北辰の掛け声に全員が一斉に小刀を投げつける。それは装甲の無い部分を直撃する。

「ふっ、機械如きが我らに勝てると思っているのか…」

さすがに機械であってもその攻撃に沈黙した。かに見えたが、黒い無人兵器はまだ生きていた。

「……!伏せよ!」   

黒い無人兵器は背中の装甲を開くと、爆発を起こして飛び散った。

ドッカーン!  

「自爆か…」
 
その残骸を見て撃破を確認すると、北辰達は次のブロックを目指して走り出した。

「ぎゃぁぁぁ!」  
  
しかし、急に響いた叫び声に後ろを振り向いた北辰達が見たのは、黒い物体に纏わり付かれて苦しんでいる仲間の姿だった。その異様な光景にさすがの北辰達も呆然と立ち尽くした。
  
北辰達が呆然としているとその仲間は力尽き倒れて、その身体に纏わり付いていた物体は次の獲物を求めて北辰達に這い寄った。黒い物体達がどんどん近づいていく。

そして、近づいてくると小さくて判らなかった黒い物体の細部まで見えるようになっってきた。それは、5cmほどの台所の黒い悪魔に似た物体だった。

その黒い悪魔達は足をサワサワと動かしながら、素早い動きで近づいてくる。

「地球人め。なんと面妖な…」

それに北辰達は近づいてくる黒い悪魔を打ち払いながら後退していたが、

そのあまりの数の多さに、遂に退路を失い壁際に追い詰められてしまった。

逃げ場を失った北辰達は、黒い悪魔の接近を防ぎきれずに身体に取り付かれていき。

「うわ!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
   
その叫び声を最後に、北辰達は黒い悪魔の群れに覆われて埋もれていった。
  
  




 
その頃、格納庫では無人兵器に遅れて外の迎撃に優人部隊が出撃しようとしていた。

「邪悪なキョアック星人め!俺達が全て倒してやる!」

そう意気込みコックピットに乗り込んだパイロットは何か黒い物体を発見した。   

「…なんだこれ?」
  
気になったパイロットがそれを掴もうとすると素早い動きでうごきだした。

「まさかこれって…(汗)」

その動きで黒い物体の正体に気付いたパイロットが周りを見渡すと…。

「のわっ!!」

コックピットの中を黒い悪魔が数え切れないほど這いまわっていた。そしてそれはパイロットに群っていき…。

「く、来るな!あああああああああああ!!」

格納庫には沢山の恐怖に震える悲鳴が響いていた。

その被害は軍施設だけでなく。民間人の居住ブロックにまで広がっていた。

   
 
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」          

   
地面を埋め尽くすほどの黒い悪魔の群れに誰もが恐怖し、木連で悲鳴が響いていない場所はどこにも無かった。


その後、遅れて降伏勧告のために到着した連合艦隊が目撃したのは、恐怖に震える木星の人々の姿だった。

地球からの木連への降伏勧告は当然のように呑まれた。救助を求める声と共に。



後にこの作戦は『黒い悪魔の悲劇』と呼ばれ、もっとも悲惨な事件として人々の記憶に残った。





  

そんな悲劇の原因を生み出した黒っぽい男はどうしていたか?

黒っぽい男は戦う必要の無くなったナデシコを降りて、家族と平和に暮らしていた。

そんな平和な生活の中で幼妻なルリは、今まで聞けないでいた質問をしてみた。
    
「アキトさん、そういえばあの機体、何であんな形にしたんですか?」
 
「…それは…」

「いえ、言いたくないならいいんです…」

「そういうことじゃないんだけど、聞いても気持ちのいい話じゃないからね。それでもいい?」

黒っぽいアキトは幼妻なルリが頷いたのを確認すると、話し出した。

「あれは、火星の後継者にボソンジャンプの実験をされてる時だった…。
ボソンジャンプで危機的状況から脱出できるかの実験で、虫で埋め尽くされた部屋に閉じ込められて…………」
     
話ていて、その時の恐怖を思い出したのか震え始めた黒っぽいアキトを幼妻なルリは優しく抱き締めた。

「…ありがとう…」

何故か急にラブラブな雰囲気を生み出し始めた二人を横目で見ながら会話をしている他の家族は、

「よく分からないけど、辛かったんだろうな…」

理解は出来ないようだが辛かったことは分かったのか同情的なコメントを話す普通なアキト。

「要するにただの仕返し、子供のケンカですね…」

何故か黒っぽいアキト達の事情を知っていて容赦の無いコメントをする小さなルリ。  

「…あれは怖い…」  

黒っぽいアキトとのリンクでその恐怖を知っているのか青ざめた顔をしながら赤ん坊を抱いているラピス。

彼らは何故か六人一緒(一人赤ん坊)にホウメイさんのところで働いていたりする。  

そんな感じで、彼らは家族六人で幸せそうに暮らしていた。







   
近いうちに、もう一人くらい増えて七人になるかもしれないが…
  
  

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あとがき

まず、最後まで読んでいただきありがとうございます。  

しかし、なんだろこれ…。(汗)

電波に任せて書いてたらこんな物が出来てしまった…。電波って凄いなぁ…。(遠い目)

でも、○○○さんの要望通りにちゃんと赤ん坊出しましたよ〜。(笑)

最後にこんな物書いてごめんなさい。(苦笑)     
  


b83yrの感想

黒い悪魔・・・う〜む

これって、一つ間違えればホラーですな、大量のアレに纏わりつかれるなんて(汗)

というか、例の台所の黒い悪魔が滅茶苦茶苦手な人には、既にホラーかもしれん

・・・・誰か、リアルな絵で例の黒い悪魔の挿絵つけてくれたら、更に恐怖度がアップ・・・流石に、誰も居ないだろうが、というか、居ても困るけど(苦笑)

しかし、アニメとかって考えてみると不思議ですな

『無理に人を乗せずに、無人機の方が強いだろう』っていう『現実的』な突っ込みの方が、『電波』になっちゃうんだから(笑)

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