天の川・・・天を横切る美しい川

それは宇宙に散りばめられた無数の星

その星々の数ほど生の煌きがあり

その
星々の数ほど死の瞬きがある

人が死を超える時

新たなる力と共に新たなる戦いへといざなわれる




機動戦艦ナデシコ劇場版-if-
『守られし約束』







ミーン ミーン ミーーン


夏、セミがせわしく鳴く頃・・・・、

一本の飛行機雲が青空に出来ている。

その青空の下、一人の長髪の男が黒いスーツ姿で墓地の中の一つの墓の前に向き合って立っている。



「・・・テンカワ君。少し早いがね、今日は君の三回忌として来たよ」


その墓に向かって、そう報告するのはネルガル重工会長アカツキ・ナガレその人である。



「・・・君は今、そっちで一人のんびり暮らしてるのかい?・・・皮肉なものだよね、あんなに家族を大事に、

家族を求めてた君が、結局最後まで一人ぼっちで居るなんてさ・・・。君と共に僅かな時間を過ごした家族は今、皆元気にやってるよ。

ルリ君は君や艦長を失った時にはかなり酷いもんだったけどね・・・、今じゃ新しい仲間も出来て、軍でも大活躍だ。

君は怒ってるかな?軍なんかにルリ君を置いてしまって・・・。でも仕方がなかったんだ、軍が一番安全だしね、

それに、彼女にはやってもらわないといけないことがあるからね・・・。

・・・・・・・・・・・・そう、君も知っての通り『奴ら』が動き出したよ。君を殺した『奴ら』がね。」


両の手を力いっぱいに握るアカツキ。

そこにあるのは自身への怒りか、それとも『奴ら』に対する憎しみか・・・。



「大丈夫。艦長は絶対に取り戻して見せる。・・・・それだけじゃない、この戦いは君を殺したあいつらに対する復讐だ。

・・・復讐・・・。君はそんな事望まないかもしれないけど、あと少しであいつらを追い詰める事が出来る。だから・・・」


そう言って、墓地に背を向けるアカツキ。


「だから最後まで彼女が無事な様にそっちで見守っていてくれ・・・」





『あぁ、分かってる。お前こそしっかりやれよ』





最後にそんな声が聞こえた気がしてアカツキは振り返る。

しかし、そこには誰が居る訳もなく、『天河家之墓』があるだけであった。

アカツキはふっ、と口元を緩め墓地を後にした。














第一話【新たなる戦いの刻へ・・・】











空気が無いために音が伝わらない空間、静寂な宇宙。

そんな静寂の中、私たちはのんびり航行しています。

私たちの乗っている船の名前は戦艦[ナデシコB]、前大戦において木連と地球の休戦協定の立役者でもあり、

いまだその最強の名を欲しいままにしている戦艦[ナデシコA]の後継艦です。


「あっ、・・・挨拶が遅れましたね。私は、この船の艦長をしてます連合宇宙軍少佐ホシノ・ルリです。よろしく」


ちなみに私たちは今、月周辺を哨戒中です。

最近、ボソンジャンプの管理計画、ヒサゴプランの中枢たるターミナルコロニーが次々と破壊される事件が起こっています。

そんなことが起こってる中、ナデシコは月周辺で暇つぶし。

そんな事してていいのかな、って思いますが、そのヒサゴプランを管理してるのは統合軍。私たちナデシコは宇宙軍。

統合軍と宇宙軍は仲が悪く、そんな中にこのナデシコが入るのはいろいろとまずい事になるんでしょうね。

私、もう16ですけど、やっぱり大人の世界って面倒です。



「艦長〜。聴いてくださいよ、サブロウタさんまた艦内でナンパしてますよぉ〜・・・」


そう私に泣きついて来る髪をオールバックにしたこの少年はマキビ・ハリ、通称ハーリー君。ナデシコBのオペレーターをやってもらってます。

つまり、私と同じ身の上の子です。一応愛称は私が考えました。


ま、それはともかくとして、サブロウタさんが軟派なのはいつもの事ですし、そんな事で私に泣きつかれても困るのですが・・・、

まぁ、無視しちゃいましょう。いつもの事ですし。


ハーリー君が何故か潤んだ瞳でこちらを見つめ続けてきていますが、それも無視。いつもの事ですし。




プシューッ


そんなやり取りをしていると艦長席の後ろにあるブリッジの扉が開きました。


「おっ、ハーリー。お前、なんで艦長に泣きついてるんだ?」


サブロウタさんがハーリー君にニヤニヤした顔でハーリー君の頭を腕で抱きしめ(?)グリグリしながら問い詰めてます。

この金髪に赤いメッシュを入れた長髪のお兄さんはタカスギ・サブロウタ。

サブロウタさんは旧木連の優人部隊の軍人さんです。今では木連男児とは思えない位に軟派化していますけど。



「い、痛いです!やめてください!そ、それに泣いてなんか居ません!!

そもそもサブロウタさんは木連の軍人さんなのに、なんでナンパなんて事してるんですか!?」


「いいじゃねぇか、硬いこと言うなよ。ナンパは男の甲斐性、お前も女の一人や二人口説いてみたらどうだ?」


「ねっ!艦長」とサブロウタさんが同意を求めてきます。

でも、サブロウタさん。それを言うなら浮気は男の甲斐性なんじゃぁ・・・。



「そんな事、私に言われても・・・。私、少女ですから」


そんな事を言って適当にあしらいます。

それを聴いてか聴かずか、サブロウタさんは再びハーリー君をいじめ始めました。


そんないつもと同じ光景が前ナデシコに負けず劣らず繰り広げられている・・・。


・・・いえ、前のナデシコに勝るものはありませんね。

それに、あの時にはまだユリカさんも、アキトさんも・・・・・・。




「艦長??」


気付けばハーリー君が私を覗き込むように見ていました。

どうやら、少し気持ちが沈んでしまっていたようです。


それにしてもハーリー君、あまり女性の悲しんでる顔を覗き込むものではありませんよ?

ま、そこまで表情を表には出してはいませんから、誰も悲しんでたなんて気が付かないでしょうけど。




「艦長、ムネタケ参謀長から連絡が入ってます」


相変わらず漫才を続けてるサブロウタさんとハーリー君をほっといて、通信士の人がそう報告してきました。



「?・・・分かりました。メインスクリーンに出してください」


なんでしょうね?・・・もしかして、例のコロニー襲撃事件についてでしょうか?



ピッ


『こちら連合宇宙軍参謀長、ムネタケだ』


「こちらナデシコB艦長ホシノ・ルリです」


私たちの目の前のメインスクリーンに初老のおじいさんが映りだされました。



『うむ、久しぶりだね。ホシノ少佐』


「はい、そうですね」


今、私たちの目の前のスクリーン上に映っているこの初老のおじいさんはムネタケ・ヨシサダ。

ナデシコAで提督をしていた、ムネタケ・サダアキ氏の父親です。

サダアキ氏は前大戦の時に自分の正義の拠り所を見失い、暴走の末に死亡。

あんまり死んだ人の悪口は言いたくないけど、あまりいい人とは言えませんでした。

その父親たるこの人は、面倒見もよく、頭も回り、性格も良い、優しいおじいさんです。




『さて、早速本題に入るとするがね・・・、ナデシコBにはアマテラスに向かってもらいたいんだよ』


「アマテラス・・・ですか?」



『うむ、・・・つい先程シラヒメが襲撃されてね』


「────っ!?」


左後ろのハーリー君の席から息を呑む声が聞こえました。

なるほど、遂にナデシコにお鉢が回ってきた、という事ですか。



『ヒサゴプランの開発公団への許可はもう取ってある。名義上は、シラヒメの事件においてボソンの異常増大が認められたため、

ヒサゴプランの中枢であるアマテラスへ緊急査察という事になっているよ』


ボソンの異常増大、ですか・・・・。



「了解しました。その任務、謹んでお引き受けいたします」


『うむ、任せたよ』


そう言って通信を切ろうとしたムネタケ参謀が何かを思い出したような顔になり、口を開きました。



『おっと、忘れるところだった。シラヒメに行ったアオイ君の報告によると、全長約10メートルの機動兵器らしきもの、が確認された。

しかもその機動兵器は驚く事にボソンジャンプらしき事で 現れ、ボソンジャンプらしき事で去っていったそう だ』


らしき事ですか。・・・なるほど、レーダーの状態が悪いか何かで明確ではないといったところでしょうね。

・・・・あれ?ボソンジャンプ??それって───。

それがもし機動兵器でボソンジャンプをしたとなると、・・・犯人はA級ジャンパー?

それに全長約10メートルの機動兵器?・・・その大きさでジャンプできる機動兵器など存在しない筈。


しかも、A級ジャンパーの人は火星出身者。火星出身者はイネスさん、ユリカさん、・・・アキトさん。

その三人だけのはずなので、三人とも亡くなった・・・。


・・・いえ、まだ難を逃れた火星出身の人が居るのかもしれません。

これは、アマテラスに着く前に調べる必要がありそうですね・・・・。



「了解しました。それでは、本艦はこれよりアマテラスへ向かいます」


『うむ、いい結果を期待しておるよ』


先程までの軍人の顔から一転、ムネタケ参謀は優しい笑顔で言いました。


「はい」


こちらも笑顔で答えます。

作り笑顔ですけど、別に誰もその事に気が付きはしないでしょうね。


・・・アキトさん、あなたがくれた私の本当の笑顔、もう出せなくなっちゃいました。

ごめんなさい。私、悪い娘ですね・・・。




「では、進路をアマテラスへと向けてください」


頭を振って悲観的な思考を消し、ナデシコ艦長としての思考に切り替えます。



「了解!ナデシコB、進路をアマテラスへと固定!!」




「・・・・・・・・・・・・・・・新しい戦いが始まりそうですね」



私は誰にも聞こえないように呟きました。


そう、これはきっと新たな戦いへの始まりなんだ。



───戦い、か・・・・。


「進路固定、完了!」


もしかしたら、アキトさんとユリカさんに会えるかな・・・。

・・・そんなことしたら、お二人に怒られちゃいますね。


ふふっ。大丈夫、そんな事しませんよ。

私、ナデシコの艦長なんですから。

ちゃんと、これから始まるであろう戦いにも勝って見せます。



そう・・・・。私、ホシノ・ルリは新しい仲間と共に、

新たな戦いへと向かいます。



だから・・・・・・・・


だから、ユリカさん、・・・・・・そして、なによりアキトさん。



どうか・・・・・・



どうか、私を見守っていてくださいね。





「───ナデシコB、発進」



<To be continued......>

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あとがき?


皆さん、はじめまして(?)フックです。

一度完成(?)させたモノを完全に内容までも改訂しました。

なにせ、最初に書いたのはルリさんもアキトも出てこなかったですから・・・・。(汗)


今回は珍しくルリさんが出てこないあとがきで行ってみようと思いますが・・・・・・・

えっと、まぁ劇場版再構成ですね。何度か読み返していて、なんか冒頭の詩(?)が微妙だなぁ、などと反省してみたり・・・。

ちなみにここのチャットで持ち上がった誰かさんのお望みの孕ませは今回無しの方向なので、あしからず。

さて、気になるルリとアキトの絡みはどうなるんでしょうね・・・。なにせアキトが死んで・・・・・・・(ゾクッ)

・・・・・・ウッ、ウシロカラナニカスゴイシセンヲカンジル・・・・・・



ルリ:「・・・・・・・・・・・・・・・」

フック:「・・・る、ルリさん。ど、どうしたんですか?こんな所で」(汗)

ルリ:「どういうつもりですか?」(ニッコリ)

フック:「どっ、どうって・・・、えっと、あのその・・・・」(汗汗)

ルリ:「アキトさん、死んでますよ?」(笑顔)

フック:「(コ、コワイ)ほ、ほら、ここテンカワ・ルリファンサイトですし、最終的にアキトと結ばれますよ!」(汗汗汗)

ルリ:「・・・・・・・・・・・・・・・・。はぁ。毎回なんであなたは、私とアキトさんの仲をはじめに引き裂くんですか?」

フック:「うっ、・・・ほら、書いてる本人が出来るだけTV版本編をなかった事みたいにしたくないからですよ」(汗)

ルリ:「ふーん(冷たい目)、まぁいいですけどね。空きもないので今日はこの辺にしときますけど・・・、もしアキトさんに変な事したら・・・」

フック:「しません!絶対しません!!(元より死人にどうしろと?(汗))」

ルリ:「・・・・・・・・・・なにか今、変な事思いませんでしたか?」

フック:「いっ、いえ!なにも!」

ルリ:「・・・・・・・・・・・。そうですか、なら安心です。それではまた次回」

フック:「って勝手に締めてるよ・・・、では次回に会いましょう!・・・・はぁ、結局ルリさん出てきたし・・・」(涙)

b83yrの感想

フックさんからの初投稿です

ところで、アキトが死んでいるというのに、どうやってルリ×アキトにする気なのでしょう?、気になりますな

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