さて、今回は前回出番の無かったアキトさんとラピスが同じ頃何をしていたかの話です

ラピス、アキトさんの事御願いしますね


頑張れ、ユリカさん

第9話、火星その2


「やっぱり、ここに跳べるんだな、俺達は」

アキトとラピスが今居る場所は、火星の遺跡の目の前

一度、試しておいた方が良いだろうと言う事で、ラピスを連れてボソンジャンプで遺跡の内部に潜入したのだ

「ラピス、頼む」

こくり

無言で肯くと、ラピスは遺跡に手を触れ、IFSを使って遺跡の解析を始める

今の時点で下手に遺跡の内部に手を出すと、かえってマズイ事にもなりかねないので、今回はあくまで遺跡の解析のみ

「・・今、ここで遺跡を破壊してしまえば・・・」

アキトはそんな誘惑にかられるが・・・

ふるふる・・と首をふりアキトを止めるラピス

「解かってる、そんな事はしないよ」

今はまだ、遺跡を破壊するべき時ではない

この後の流れ次第では、その事も考えてはいるが

遺跡の破壊、あるいは無力化の方法は幾つか考えてある

遺跡をほんの数分・・いや、数秒前の遺跡にボソンジャンプさせてぶつけてしまい、時の輪の中に閉じ込めてしまう方法

逆に、今から何百年、何千年の未来に遺跡をとばして、この世界でのボソンジャンプを何百年、何千年かの間、出来なくしてしまう方法

どちらも確実とは言えないが、ジャンパーのアキトになら今すぐにでも出来る方法では有る

もっとも、一番無難な方法は、時間はかかるが遺跡を少しずつ地道に研究していく方法だろう

遺跡は破壊すべき物なのか、それとも破壊してはいけない物なのか・・・

実はそれすら、今の時点では解からないのだ

 

ラピスが遺跡の解析をしている間、アキトには特にする事も無い

一応、ラビスのボディーガードも兼ねては居るが、この遺跡の内部には人もバッタ達も入ってきては居ない

と言え、油断は禁物

今の時点の安全が、将来の安全を保障する物ではない以上、警戒の目を緩める訳には行かない

そして、数時間が過ぎた頃、

「アキト、いま、送ってくるって遺跡が」

とラピス

「誰か?、ここに?」

「うん」

「一体誰が?」

不思議には思ったが、左程警戒心を感じないのは、ラビスの態度に慌てた所が無いからだろう

 

そして、遺跡内部がボソンの光に包まれ・・・そこに現れたのは、

 

「アイちゃん!!」


 


さて、『アイちゃん』とくればイネスさんの事なのだが・・・

イネスさんはイネスさんで忙しいらしい

元々、イネスさんもアキトと一緒に遺跡の元にジャンプしてみたかったのだが、

「イネスさんは、アキトさん二人っきりにするとアキトさんを誘惑しそうだから駄目です」

とルリに冗談半分で言われてアキトと一緒の遺跡行きは却下された

もっとも、本当の理由は

「もしかして、火星の生き残りの人達の中には一刻を争う怪我人や病人も居るかもしれないから、医療班のイネスさんは万一に備えてナデシコに残って下さい」

とユリカに言われたからだが

実際、前回地球に送った人達の中にも、栄養不足で衰弱している人や、病気に罹っている人は結構居たのだ

幸いにも、それ程重い物ではなかったのだが今回もそうとは限らない

たとえどれ程の名医であろうと、「死者を生き返らせた」医者は今だに存在しない

 

 

そして、アキト達と一緒に行かなかったもう一つの理由は・・・・・・・

 

 


 


「お兄ちゃんっ」

嬉しそうにアキトに駆け寄るアイ

そして、ひっしと抱きつき

「怖かった・・怖かったよう、」

と泣きじゃくり始める

そんな様子を何処となく不機嫌そうな表情で眺めているラピス

ユリカやルリになら良いが、それ以外の相手にはラピスも嫉妬する

もっとも、まだ子供のアイちゃんを相手に度を超えた嫉妬心を持つ事は流石に無い

 

「アキト・・遺跡がその子にプレートを持たせたって言ってる」

「プレートを ?」

元の世界では、遺跡を跳ばす寸前に貰ったプレート

だが、結局あのプレートの謎は明かされる事は無かった

少なくとも、アキト達が逆行してくる寸前までは

向うの世界のイネスさんが、その後、どの程度プレートや遺跡の解析を終えているかまでは解からないが

 

「大丈夫、大丈夫だからね、ここには何も居ないから」

泣いているアイをなだめるアキト

「うう、ひっく、ひっく・・・みんな・・倒れてて・・・お兄ちゃんもどっかに行っちゃて・・・」

「大丈夫、・・・・ここは・・貴方に危害を加える相手はいない」

泣きじゃくるアイをみて何か思う事が有ったのか、今度はラビスがアイをなだめ始める

アイの元に近づき、その頭を撫でながら

少し、驚くアキト

基本的に、ラピスは物事に無関心で、人見知りが激しい

ユリカやルリ以外の相手には冷たい印象を与える事すらある

 

ラピスは有る事を思い出していた

この世界に逆行してきて、アキトとのリンクが途切れてしまった時の孤独感

 

ラピスは、アキトに、『道具』として大切にして貰っているだけ?

『道具』でなくなればアキトに捨てられる?

 

常にその心配をしていたラピスにとって、実際にリンクが途切れてしまった時の孤独感は・・・・・・

なんだか、その時の泣いていた自分とアイの姿が重なったのだ

結局、アキトは『道具』でなくなったラビスも大切にしてくれた・・・・・ユリカやルリと同じように

ラピスを『道具』としてみないアキトだからこそ、『道具』で無くなる事を恐れた事に初めて気が付いたのはその時の事

何時の間にか、最初にアイに感じた嫉妬心は無くなっていた

変わりに芽生えてきた物は・・

「アキト、この子をどうするの?」

この子を放っておく訳にはいかない・・・そんな気持ち

 

 

アキトも悩んでいた

元の世界のアイちゃんが、プレートを渡したのはイネスさん

だが、この世界のアイちゃんは、既に自分達に会ってしまった

最早その時点で、元の世界の歴史とは違う

下手な選択は、この世界の歴史自体を狂わし、最悪、イネスさんの存在を消す事にもなりかねない

この世界では、「タイムパラドックス」も「平行世界」も同時に起こりうる

 

 

「ラピス、遺跡の方は?」

遺跡からの何らかのメッセージも有るかと思い、ラビスに尋ねて見る

だが、

「その子を送って来た事と、プレートを持たせた事以外何も答えてくれない・・・」

 


 


さて、その頃のイネスさん

なにやら、一人でブツブツと楽しそう

「あの二人、今頃、悩んで居る頃かな」

もしかして、イネスさん、こうなるって知っていた?

「まっ、下手に歴史を変える訳にも行かないしね、だから、あえて言わなかったんだけど、だって私の記憶の中でのあの二人も悩んでいたし」

う〜む、やっぱり知っていたのか、でも、考えてみれば当り前かも、イネス=アイちゃんな訳だから

でも、なんだか『言わない方が楽しそうだから言わなかった』ように見えるのは気のせいだろうか?(苦笑)

「そうそう、今度、「未来の記憶」と引き換えに、アキト君の愛人の座を狙ってみようか」

イネスさんって(汗)

「まあ、冗談はこれくらいにして」

本当に冗談か(汗)?

「遺跡に言われてるのよね、『あの二人が悩んだ末に出した結論なら、どんな選択でも正解』、『むしろ、悩ませる事自体が目的で正解』って」

 

 

次回に続きます

9話その3へ進む

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後書き

しかし、『時間移動』の問題って、考えれば考える程訳わかんなくなって行きますな(苦笑)

ちなみに、プレートの謎に関しては、サターンのゲーム「The blank of 3years」の「虚空の遺跡」シナリオとは別の展開を考えています

あの話、使おうかとも思ったんですがゲームのネタバレしちゃマズイかとも思うんで




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