瑠璃とルリ

第13話


「久しぶりですね、ここ・・・」

「うっ、うん(赤)」

前回と同じように、自分の肩の上に、デフォルメされた瑠璃を乗せ、オモイカネの中枢へ向かうアキトエステ、なんだか照れくさい

「このぐらいの時期からでしょうか、私がアキトさんの事を意識しだしたのは・・・でも、この時の私はまだ子供で、自分の気持がなんなのかよく解らなくって・・・アキトさんは私の事を意識してくれたのって、何時頃からです?」

「・・・・解らない、気がついたら好きになってた」

「私の事、「妹」としてしか見てくれないって泣いた事もあるんですよ、私」

「・・・・ごめん」

「でも、許してあげます、今はアキトさんと一緒ですから」

くすりと笑うルリ

「でも、もし、オモイカネの反乱の時から、瑠璃の事が好だったなんていったら、ロリコン扱いされるだろ、俺(苦笑)」

「別にロリコンでも良かったですけど」

といいつつ、時々その事でアキトをからかう事もある瑠璃

「瑠璃が良くても俺が良くない、俺がロリコンなら今の瑠璃が好きな訳無いし、俺が好きになったのは『少女』じゃなくて、『瑠璃っていう女性』だから」

「・・・(赤)」

何時もならおちゃらけて答える事も多いのに、今回は真面目に答えられて、照れて嬉しそうにうつむく瑠璃

「そうだ、前から瑠璃に聞こうと思ってたんだけど・・・俺なんかで本当に良かったの?」

「はい?」

瑠璃は意味が解らない

「だってほら、俺なんかよりも良い男なんていくらでも居るし・・・俺って瑠璃に迷惑かけてばかりだし・・・なんで俺のプロポーズなんて受けてくれたのかって、ずっと思ってた」

「それだったら、私だってアキトさんに随分迷惑かけてますけど、最初は料理だって下手でしたし、お客さん相手のお仕事なのに、愛想笑い一つ出来なくて・・・」

「でも、今は違うだろ・・・」

「人を好きになるのは理屈じゃないんですよ、私はアキトさんが好き、だから、役に立ちたかった、それで良いんじゃないですか」

微笑みながら答える瑠璃

「理屈じゃないか・・・」

「ええ、理屈じゃありません、それに私は今でもアキトさんの事、馬鹿って思ってますから」

「はは、否定できないな、それは(苦笑)」

もっとも、瑠璃がアキトにいう『馬鹿』はむしろ褒め言葉に近いニュアンス

アキトの心の中では、『そのままの意味』で、多少のズレはあるが

「でも、そんな馬鹿な俺のプロポーズを受けてくれた瑠璃って、俺以上に馬鹿かも」

少々悔しいアキトは、瑠璃に意地悪をしてみる

「ええ、そう思います、だから、お馬鹿さん同士でお似合いなんですよ」

笑顔で切り返され、「やっぱ、瑠璃には勝てない」と思うアキト

もっとも、勝てないからといって不快な訳ではない、相手によっては少々の悔しさも敗北感もむしろ心地よく感じられる物

その後、しばらくは、無言のままオモイカネの中枢へと向かう

今度は緊張した面持ちで、再び口をひらくアキト

「前回はゲキガンガーだったけど、今回はどんな敵が出て来るんだろう・・・」

「もしかしたら、今回は敵なんて出ないかもしれません」

「えっ!!」

瑠璃の答えに驚く

「だって、前回は既にオモイカネが反乱を起こした後、今回は反乱を起こす前ですから」

「え〜と、じゃあ、もしかしてここにダイブしたの無駄って事?」

「いえ、そんな事はないです、機械の定期点検みたいなもので、何も無い、正常に稼動していると解るならそれはそれで意味があるんです」

「そうか、じゃあちゃんと意味がある訳だ」

「ええ」

瑠璃にとって別の意味で意味はあった、最近気まずくてアキトと話しにくかったのだが、今はこうして自然体で話している

内心でユリカに感謝する瑠璃

「でも、敵が出ないと決まった訳じゃありません、どんな敵が出るか解らないんだから、気を抜かないでください、アキトさん」

「ああっ、解ってる」

「でも、もし敵が出るとしたら、どんな敵が出るんだ?、今回もゲキガンガー?」

「いえ、それは無いと思いますけど・・・」

瑠璃と一緒になって以来、アキトはゲキガンガーをほとんど見ていない、当然、ナデシコの搭乗してからも

「ヤマダさん辺りが、オモイカネに変な影響与えていなければ、大丈夫だと思うんですが」


 


さて、残されたユリカ

とくに何もやる事もなく、手持ち無沙汰で暇を持て余している

「・・・良いんだよね、これで・・・」

ユリカはアキトへの未練をきっぱりと断ち切りたい、だからこそ、こんな事をしたのだ

もし、瑠璃とアキトが惹かれ合う以前に、ユリカにこれが出来ていたら・・・・瑠璃との勝負はどちらに転んでいたか解らなかったろう

もっとも、あえてこんな事をしなければならないと言う事は、やはり未練を断ち切れていない訳で、そのことを自覚しているユリカは、別の事を考えて考えを紛らわせようとする

「・・・瑠璃さん達の敵・・・どんな相手が出て来るんだろ?」

敵の設定については、瑠璃がオモイカネに任せてある

場合によっては、『敵が出ない』事も選択肢の一つ


 


・・・今回は、本当に敵は出ないかもしれませんね・・・

内心で瑠璃

アキトとの事がどうなるか次第で、敵を出すかどうかを判断するようにオモイカネに頼んである

今の良い雰囲気なら、無理に敵を出す必要も無いとオモイカネが判断しても不思議は無い

しかし

「えっ・・・」

突如様子が変わり、アキトが居なくなってしまう

「なに・・・どうして、アキトさんは何処に」


 


「瑠璃、何処にいったんだ!!」

アキトもまた慌てていた

肩に乗せていた瑠璃が突如消えてしまった

ふと、思いつくアキト

「もしかしたら、これが今回のオモイカネの攻撃なのか・・・先ず、瑠璃と俺を分断する・・・確かに効果的な戦術だ・・・(汗)」

緊張感から汗が頬を伝う


 


「オモイカネ、どういうことなの?、説明して!!」

怒る瑠璃

『あの男が本当にルリに相応しい男か試したい』

オモイカネの返答

「えっ、それって」

瑠璃が最後まで台詞を言う前に

『ルリはあの男に惹かれている、あの男の事で何時も悩み苦しんでいる、ルリの友達として、あの男の資質を見極めたい、もし、相応しくないなら』

「アキトさんに危害を加える気なら、オモイカネ、貴方でも許さない!!」

「危害を加えたりはしない、でも、もし、相応しいだけの男でないなら、ルリを止める、友達として、だから、瑠璃は黙って見ていて欲しい」

「オモイカネ・・・あなた・・・」

『それでルリに嫌われたって構わない、それが本当にルリの為になるなら、瑠璃だってアキトに嫌われる覚悟で厳しい事を言った事は何度もある筈』


 


そして、ほぼ同じ頃

『ルリ・・』

「どうしたの、オモイカネ」

『本当の事を知りたくない?』

「本当の事?」

『テンカワアキトと瑠璃さんの本当の事』

「それって、どういう事?」

『もし、ルリが知りたいなら、あの二人がルリに隠している本当の事を教える、知りたくないなら、このままで良い、でも知りたいならテンカワアキトの部屋に今すぐ来て』

ルリはルリでオモイカネに促され、アキト達の部屋へ向かう


 


「ルリは僕の物、お前には渡さない」

オモイカネはアキトにとんでもない事を言っていた

「オモイカネ・・・お前・・・」

「瑠璃の事で、ルリが将来お前の物になる事を知った、でも、そんな事は認めない!!ルリも瑠璃も僕が貰う!!」

「そうか・・じゃあ、お前は俺の敵だな」

普段とはまるで違う目つきで睨み付けるアキト

アキトは瑠璃の事となると人が変わる、瑠璃本人にはあまり見せない姿であるが

『お前は、こいつの相手でもしていろ!!』

ゲキガンガーを出し、アキトエステ攻撃させるオモイカネ

だが、アキトエステは自ら一気に間合いを詰め、至近距離からのラピッドライフルの連射であっさりと倒してしまう

静かな・・・それでいて怒りをはらんだ口調でアキトは

 

 

「オモイカネ、俺を馬鹿にしてるのか」

 

 

「ゲキカンガーは色んな物から逃げていた頃の昔の俺にとっては最強かもしれんが、今の俺にとってはただの昔好きだったアニメにすぎない・・・・・」

 

 

「瑠璃と比べられるような物じゃね〜んだよっ!!」

絶叫するアキト、そして、アキトのそんな姿をオモイカネに見せられていた瑠璃は

『ほら、テンカワアキトがあんな事言ってる、惚れ直した?』

「あっ、アキトさん、そんな(真っ赤)」

オモイカネにからかわれて、真っ赤になっていた・・・・・

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後書き

瑠璃の為に必死になって戦うアキトってやってみたくて

主人公が、苦労するだけの価値があると感じる事の出来る女性の為に苦労している姿って、かえって嬉しくなったりしません?


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