ユリカさんは、私達と同じ逆行者でした

その事を知らないでいた今までと、知ってしまった今では同じ態度はとれません

そして、逆行者なら逆行者なりのベストの尽くし方も有るのかもしれませんね


瑠璃とルリ

第8話


「本当の名刀じゃないのか?、ルリは」

「本当の名刀?」

リョーコが何を言いたいのか解らないアキト

普通、『名刀』なら誉め言葉だろう、たがリョーコの言おうとしている事は『本当の名刀』の話だという

「なあ、『名刀の条件』ってなんだか知ってるか?」

「切れ味?」

と答えるアキトだが

「そう思ってる奴も多いが、『本当の名刀の条件』は、『折れず曲がらず』なんだ」

と答えるリョーコ

「俺の居合の師匠に聞いた事がある、『本当の名刀なら一部の特殊な例外を除いて現代に残ったりしない』ってな」

「刀っていうのは、人を切る為の道具じゃない、人を殺す為の道具なんだ、実戦の中で」

「どんなに鋭利な刀でも、実際に人を切れるのはいいとこ2〜3人、後は血糊と刃こぼれで切れ味なんて極端に落ちる・・・それがどんなに切れ味の良い刀でもだ、それは名刀も鈍刀もたいして変わらない、それに切れ味だけ良くてもすぐに折れたり曲がったりする刀はそこで終わり、後は使い物にならない、戦いの最中にそんな事になっちまえば命を落とす事になる」

「けどな、『折れず曲がらず』の刀なら、たとえ切れなくなった後でも、まだ、『突き殺す』、『叩き殺す』って使い方だって出来る」

「命のかかった戦場で、その差は大きい、『名刀』っていうのは綺麗な物じゃないんだ、もっと血なまぐさい物、だからこそ、『折れず曲がらず』の名刀を求められる、そして、」

「普通なら、数人切って役目を終える筈の刀が更に酷使される事になるんだ」

リョーコの言う事にごくりと唾を飲み込むアキト

「優れているが故に、戦いの中で酷使され、並の刀以上にぼろぼろにされて朽ち果てて行く・・・・・・そして、最後には捨てられる、それが、『本当の名刀』の運命・・・・ルリもそうなっちまうんじゃないのか?」

確かにそうなりかねない、ネルガルがルリをどう扱っているかを考えても

「ルリの奴は、物事を冷静に判断して、そう簡単に折れたり曲がったりしない性格をしてる・・・・・そして、その能力は、・・・・・ルリは、切れ味と折れず曲がらずを両立させた名刀なんじゃないのか?、だとしたら、将来は?」








がばっ

夜中に目を覚ますアキト

「なんで、あの時の夢を・・・・・・・・・」

それは元の世界で、自分が瑠璃と一緒になる前にリョーコに聞かされた話

急に不安になり、瑠璃の姿を確認する

何時ものように隣に寝ている瑠璃の寝顔を見て安心すると、自分が汗をびっしょりとかいている事に気付く

瑠璃の力は、戦場でこそもっとも活きる、それはアキトもわかっている

そして、瑠璃のその力がなければ、自分がこうしてナデシコに乗りこむ事も出来なかったかもしれない、だが、だからこそ

「俺が欲しかったのは瑠璃だ、名刀なんかじゃない・・・絶対にそんな事にはさせない・・・・絶対に・・・・瑠璃もルリちゃんも・・・・・・・」






翌日、アキトがそんな夢を見ていた事も知らずに、ユリカとこれからの事を相談している瑠璃

「でも、一寸安心したな、瑠璃さんでも『恋は盲目』になる事もあるんだって」

「私が?」

ユリカの言う事が納得出来ない瑠璃

「だってここが過去なら、アキトがルリちゃんを選べば、それで瑠璃さんを選ぶ事と一緒になる、それなのに瑠璃さんはアキト一緒にナデシコに乗っちゃったんだから、しかも、アキトと夫婦として・・・こっちのルリちゃんはどうするの?」

「それは・・・・・・」

それを言われると辛い瑠璃、確かに、ここが過去ならそうだろう

「でも、ここが過去じゃなかったら?、平行世界だったら?」

「その場合なら、ルリちゃんはあなた達とは他人、でも、もし、そうだとしても、こっちのルリちゃんはどうするの?」

「・・・・・・・・・」

やはり、こちらの質問にも答えられない

「ここが過去で、ルリちゃんがもし、アキト以外の人と結ばれたりしたら、歴史が変わって瑠璃さんとアキトは結ばれない事になる、でも、瑠璃さんとアキトはもう夫婦になってる・・それだとルリちゃんはアキトの事を諦めて他の男の人って事にならない?、瑠璃さんとアキトが、痛っ!!」

ややこしい事を言おうとして、舌を噛んでしまったユリカ

「ユリカさんって、頭も良いしお喋りなわりには、難しい事いうの苦手ですね相変わらず、要するにユリカさんは、私とアキトさんが夫婦である事自体が、『タイムパラドックス』と言いたいんですね?」

手で口を押さえ噛んでしまった舌の痛みに涙目になりながら、コクコクとうなずくユリカ

少し呆れつつも、『これがユリカさんなんだなあ』と変な安心をする瑠璃

「この手の『説明』ならイネスさんが得意そうだけど、呼んできます?」

ぶるぶる!!と、激しく首を横に振るユリカ






「う〜〜〜〜〜〜」

「どうしたんだユキナ?、そんな風にうなったりして?」

「いいのっ、お兄ちゃんには関係無いから!!」

と怒られ、たじたじになる白鳥九十九

「そっ、そんなっお兄ちゃんに対して(汗っ)」

「ともかく良いのっ、あっち行って!!」

妹のユキナにそんな事を言われ、とぼとぼと帰っていく九十九

・・・・・・ごめん、お兄ちゃん、折角また会えたのに、今度はお兄ちゃんを殺させたりしないから・・・・・・

内心では謝っているユキナ

「ジュンちゃん・・・・・・・どうしてるのかな・・・・・・」

ユキナもまた、過去に戻っていた

自分の身体を鏡に移し、『はあ』とため息

元の世界の女子高生の自分なら、ユリカ相手の真っ向勝負も出来た

だが、今の自分は

「ううんっ、まだ希望は有るっ!!、ルリだってアキトさんと初めて会った時は11歳だったんだから・・・・・・・」

「そうよっ、ユリカさんには負けるけど貧乳のルリなんかよりユキナちゃんの方が胸だって大きかったんだからっ!!」

失礼な事を言っているユキナであった(笑)






元々ユリカが瑠璃に相談に来たのはナナフシの攻略の為

今までは、ユリカの逆行の事をユリカ自身が隠していたために、そんな事はしなかったが、ばれてしまった以上、むしろ、瑠璃には全てを打ち明けておいた方が良いと判断したユリカ

『ナデシコ食堂勤務』の瑠璃は、幹部たちの会議には参加出来ないが、ユリカは以前の世界で見た瑠璃の実力を認めている

まだ、ナナフシがクルスク工業地帯に落ちて来ては居ない内に、少しでも対応策を纏めておきたかったのだろう

一つは、ナデシコの艦長として

一つは、瑠璃達と同じ逆行者としての対応を





・・・・・ユキナさん、大変だな・・・・

ユリカとの話を思い出し、ユキナの事を思う瑠璃

今のユリカは、瑠璃の目から見ても魅力的な女性になっている

この、訳の解らない逆行

ユリカも何故こうなったのかわからないと言っていた

自分やアキトのように、『逆行の理由と時期』の部分の記憶だけが、すっぽりと抜け落ちているのだと言う、それ以外の記憶なら有るのに・・・

そして、『誰がどんな形で逆行』してきているかも、全く解らない

もし、ユキナも逆行してきているのなら・・・・・・・ユキナは、『今の』ユリカとジュンの取り合いをしなければならない

ユリカには言わなかったが、タイムパラドックスの問題を気にしながらも、それでもナデシコに乗って正解だったと思ったのは、『今のユリカの魅力』が以前よりも増しているから

『11歳の自分=ルリ』が、今のユリカに勝ち目があるとは、とても思えない

いや、『今の自分=瑠璃』でも、既に夫婦になっていなければ・・・

「何が怖いって、今のユリカさんが自分の魅力に気がついていない事が一番怖い・・・」






「好きと愛しているは違う、私はアキトさんの事を好きなだけ・・・・・」

「私は瑠璃さんに嫉妬なんてしてない、瑠璃さんの事も大好きだから」

自分に言い聞かせるように、呟くルリ

「二股とか愛人とか・・・・・・いけない事なんだ・・あんなに瑠璃さんの事愛してるアキトさんがそんな事する訳がない」

「瑠璃さんだって、そんな事許してくれる訳が無い・・・・」

そんな事を言っているうちに、気分が沈んでくる

「でも、もし・・・許してくれたら・・・・」

しばらく考え込んでいたルリだが

「馬鹿ですね、そんな事有る訳無いのに、瑠璃さんとかアキトさんとか以前に、私みたいな子供が相手にして貰える訳がないんだから」

苦笑いをしながら、何時ものようにアキトと瑠璃の部屋へと向かう

瑠璃とアキトが『ルリが他の男と結ばれる』事を誰よりも嫌がっている事をルリは知らない








そして、それぞれがそれぞれの事を思っていても、来るものは来る

クルスク工業地帯に歴史通りにナナフシが




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後書き

『ルリの幸せ』を考えると、『ルリの優秀さ』って素直に喜べないんだよね、ルリ派の私としては

劇ナデ後のルリって、『本当の名刀』の運命を辿ってもおかしくないし


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