ユリカさん、アキトさんを追いかけまわさなければ、結構優秀な艦長です

アキトさんも、こんな事なら元の世界でも初めから態度をはっきりとさせておくべきだったって後悔してました

でも、もしそうだったら私にアキトさんと結ばれるチャンスなんて無かったんで複雑な気分なんですが


瑠璃とルリ

第三話


「ユリカさん・・・ずるい・・・」

「ジュンちゃんの事なんて、ちっとも見てなかったたくせに、ジュンちゃんを好きになったのは私の方が先なのにっ」

「ユキナ・・ちゃん・・・」

 

がばっ

 

目を覚ますユリカ

「また、あの時の・・・・夢・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「私・・アキトだけじゃなくてジュン君の事も見てなかった・・・・・」

何時の間にか涙ぐんでいるユリカ

「仕方ないよね、アキトに振られても、ユリカが見てたのは「王子様」、ルリちゃんが見てたのは最初から「アキト自身」」

「好きと愛してるの違いが1番解かっていなかったのは私・・・・」

「でも・・・・今度は・・・・」

 


 


「アキトさん、結局、この世界はどっちなんだと思います?」

「う〜ん、それを確認する方法が有れば良いんだけど」

火星から地球へと戻ってきた時点で、色々と歴史に変更が出てきている

そもそも、「火星の生き残りの人達が助かった」事自体、大きな歴史の変更だろう

その多くに、火星にいたネルガルの研究員が含まれていた為、ネルガルとしては『資料』だけでなく、多くの『人材』まで手に入れた事になる

だが、瑠璃もアキトも特別な事は、なにもしていないのだ

歴史の修正力

本当にそんな物が有るかどうかは解からない

もしここが平行世界で元の世界の歴史に影響を与えないのであれば、『動かない』事は助けられる筈の人達を見殺しにする事になる

だが、もしここが過去であり、歴史の修正力なんてものが本当に有るのであれば、未来を知っている自分たちが迂闊に動いて目先の人助けをしたとしても、その先のしっぺ返しがどんなモノになるか

もしかしたら、『それ以上の』人を殺す事にもなりかねないのだ

 

瑠璃とアキトは『動かない』というより、『動くに動けなかった』と言った方が正解に近い

もし、この世界が『平行世界』なのだとはっきりと言い切る事が出来るなら、二人とももっと楽だったのだろうが

『本来死ぬ筈の人達が助かった』

確かにそれは嬉しい事

だが同時に、不安要因でもある

 

・・・・と難しい話はおいておいて

 


 


「お邪魔します」

「いらっしゃい、ホシノさん」

 

べこりとお辞儀をし、アキトと瑠璃の部屋に上がるルリ

ここ最近、ルリが二人の部屋を訪問する事が多くなっている

きっかけは些細な事

「料理は覚えておいて損は無いよ」

アキトにそんな事をいわれ、料理を習いに来るようになったのだ

今は、瑠璃とアキトが交代でルリに料理を教えている

 

今日は、瑠璃がルリに料理を教える順番

二人を見ているとなんだが微笑ましい気持ちになって来るアキト

母が娘にと言うか、姉が妹にと言うか

幼い頃に両親を無くしたアキトが味わう事の出来なかった、『家族』の姿

瑠璃も、ルリに料理を教える事が楽しいようだ

 

 

「少し、あの子の事が羨ましいかな、私にはアキトさんはいても、『父』や『母』は居なかったから」

アキトにこんな事を話していた瑠璃

「でも、だからこそあの子の姉や母のような存在で居てあげたいから」

その気持ちはアキトにも解かる

確かに瑠璃には、ネルガルの研究者であった、『名目上の両親』やピースランドの国王夫妻のような『遺伝子上の両親』なら居る

そして、人ですら無かった黒いシルエット・・・・・

だが、人ですら無い黒いシルエットの方に、人間よりも『何か』を感じていた瑠璃

結局、瑠璃には『家族』と呼べる存在は居なかった

アキトは瑠璃にとっての最初の家族

兄であり父であり夫であり・・

瑠璃はアキトに多くの事を求めている訳ではないが、その実、誰よりも多くの事をアキトから受けとっているのかもしれない

 

 

「瑠璃さんは、テンカワさんの何処が好きになったんですか?」

料理を教わりながら、尋ねてみるルリ

「馬鹿な所かな」

と瑠璃は答える

「馬鹿って(汗)」

ルリにしてみれば意外な言葉

「そう、馬鹿な所、なんと言っても1番馬鹿な所は、私みたいな女を選んでくれた所かも、私には勿体無いぐらいの人だから」

冗談半分でそう答える

もっとも、冗談半分って事は、本気も半分入ってる訳で

ルリにしてみれば、この二人ほど似合っている二人も居ない

・・それが少し、悔しくもある・・

ちなみに、一部・・・・というか結構多数かもしれない・・・・のナデシコクルーの評価は、

「瑠璃さんはテンカワの奴には絶対勿体無いっ(力説)」

なのだが(苦笑)

 

実はアキト自身の評価も、多数のナデシコクルーの意見と同じ

余談だが、元の世界でナデシコから降りてしばらくして、瑠璃にも同年代の友達が居た方が良いだろうと言う事で、学校に通わせた時

・・・もしかしたら、瑠璃が同年代の他の男に惹かれてはしまわないか?・・・

と内心ハラハラしていた事は、秘密である(笑)

 

ルリの気持ちの中には、瑠璃に料理を教わる事に嬉しさと残念さが同居している

「好きと愛しているは違う」

そう言ってもらって随分と楽になったが、それでも楽になり切れない部分がある

正直、アキトに料理を教わっている時の方が嬉しい

だが、自分の為に親身になってくれている瑠璃の事も好きになっていく

 


 


親善大使の救出

これが今回ナデシコに与えられた役目

元の世界のユリカは、アキトとメグミとの事で不安になって失策をしてしまったが、今回はユリカに失敗をする理由が無い

瑠璃とアキトは、今回も静観する事にしている

ブリザードにまぎれ、進むナデシコ

警戒を怠ってはいないとは言え、ブリッジは結構暇である

 

「そう言えばルリルリ、最近アキト君達の部屋によくいってるみたいだけど」

「えっ、本当ですか?」

ミナトとメグミが、ルリにそんな事を話かけてくる

「はい、それがなにか?」

「んっ、ルリルリって最近随分明るくなったなって、おね〜さんは嬉しいぞ」

「えっ」

ルリには自分が変った自覚は無い

「そうですね、ルリちゃん物腰が柔らかくなったと言うか、喋り方が優しくなったというか」

「・・・・」

「だって、ルリちゃんには「家族」が出来たんだもんね、アキトと瑠璃さんって言う」

何時の間にか艦長席から降りて、ユリカまで話に加わる

「いえ、私はただお二人に料理を習ってるだけなんですが」

自分達はそこまで深い関係じゃない

ルリはそう思うが、悪い気はしない

「へえ、ルリちゃん本職の二人に料理教わっているんだ」

感心したようなメグミ

「いえ、料理って言っても、基本的で簡単なモノばかりですし、そんなに自慢出来る程のものでも」

感心されると、少し恥ずかしい気持ちもする

「そっか、ねえルリちゃん頼みがあるんだけど」

「頼み?どんな頼みですか、艦長」

「うん、今度ユリカにも料理を教えてもらえるようにアキトと瑠璃さんに頼んでもらいたいんだ」

 


 


親善大使のシロクマの救出はあっさりと成功

もっとも、ムネタケはその事で、ナデシコのクルー達に更に白い目で見られるようになったが

だが

 

「ユリカに料理を教える(滝汗)」

「そっ、それは(汗)」

「どうしたんです、二人とも?」

ユリカの料理の破壊力を知らないルリは、普段は見せないうろたえようをみせる瑠璃達に怪訝な表情をする

もしかしたら、これまででもっとも過酷な戦いが始るのかもしれない・・・

 

続く

 


後書き

さて、どんな過酷な戦いになりますかねえ(笑)

 

第4話

瑠璃とルリのトップ// b83yrの部屋// トップ2





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送