ナデシコは無事に火星を脱出、でも、今まで順調過ぎました

勿論、問題が全く無かったと言う訳ではありません

でも、『ナデシコ一隻で』という事を考えるなら、むしろ順調過ぎたと言っても良いぐらいでしょう

そして、そのツケは・・・


機動戦艦ナデシコ再構成

The fiance of a guinea pig

第27話


「ルリちゃん、まだついて来てる?」

オペレーター席のルリに確認するユリカ

「はい、火星からずっと」

火星を脱出したナデシコだが、今まで何も無かったと言うのに、今は火星からずっと付いて来ている敵の戦艦12隻に悩まされている

「泳がされていたのかな?、私たち」

「その可能性は高いですね、あの送り狼達をみれば」

はっきりいって、ナデシコの火星探索は順調過ぎた

いくら、敵に見つからないように細心の注意を払っていたとはいえ、一度も敵と遭遇せずに済んだのは出来すぎだろう

「おそらく、ナデシコの目的を調べる為に泳がされていたんでしょう、こちらはたった1隻、沈めようと思えば何時でも出来る、何時でも出来る事は後回しにして・・・」

・・・・大丈夫かな、コロニーの人達・・・・

ルリの耳元とそっと耳打ちするユリカ

・・・だめですよ艦長、そういう事はこういう場所では聞かないでください、もし、ばれたら・・・

ルリも小声でユリカに注意を促す

コロニーに残った生き残りの人達の事を知っているのは、ナデシコの一部の人間だけ

今更火星に戻れる筈も無い

ナデシコが火星で周れる事の出来たコロニーは5つ、その内生存者が発見出来たコロニーはユートピアコロニーのみ

相転移砲のデータのあったオリンポス山の研究所の記録は、全て消去して研究所は破壊した

だが、もし、泳がされていたとすれば、コロニーに残った生き残りの人達はどうなるか?

不安に苛まれるユリカ

とはいえ、今出来る事といえば祈るぐらいしかない

敵の勢力圏下の火星でナデシコ一隻で出来る事は元々少なかったのだ

今最優先で考えなくてはならない事は、ナデシコが無事に地球まで帰る事

「ルリちゃん、身体の方は大丈夫?」

「はい、大丈夫です、でも艦長、私の事よりも、メグミさんやミナトさんの事を心配してあげてください」

相手は疲れを知らない無人兵器、対してナデシコのクルーは疲れもする人間

『持久戦』

単艦、最小限度の人員で運用されているナデシコにとって、もっとも苦手な戦い

敵の攻撃も、たまに思い出したように来るだけではあるが、たとえディストーションフィールドのお陰でナデシコの船体にダメージは無くても、その度に『人の精神』を削りとっていく

ルリはこんな時には肉体的にはともかく精神的には強い、元々そのように教育され、訓練を受けて来た

「大丈夫、ルリルリが頑張ってるのに私がまいったりしないから」

「そうそう、だから、ルリちゃんは心配しないで」

笑顔のミナトとメグミだが、その顔には疲労の色が見える、元々ただの民間人なのだ、ミナトとメグミは

ナデシコが火星を脱出してから3週間、その間敵の12隻の戦艦は常につかず離れず微妙な距離を保ちナデシコにプレッシャーを与え続けていた


 


場面は代わり、パイロット達の待機室

「あんなの、ぶっ飛ばしちまえば良いんだ」

「あほ」

威勢の良い事をいうヤマダジロウにたいして、呆れているリョーコ

「それがそう簡単にいかないから、艦長達も苦労してるんだろ」

「そんなんじゃ駄目なんだ、熱血があれば」

「んじゃ、お前一人だけでやってこい・・・」

本当に・・・ガイ相手に心底疲れ果ててしまうリョーコ

 

「アキト君、ヤマダ君と訓練一緒だったんだよねえ、以前からあの調子?」

「あの調子(苦笑)」

ヒカルの質問に苦笑いしながら答えるアキト

ヒカルとガイは、『ゲキガンガー』では話が合うが『現実の戦争』の考え方まで話が合う訳ではない

パイロット3人娘達は、もっと『現実的』に戦いという物をみている

12対1、これで勝てると思える程考えが甘くは無い、仮に勝てたとしても、ナデシコも無傷ではいられない、無事に地球に戻る為には戦うのではなく、逃げ切る方が重要なのは解り切った事

まあ、それが解らないのが、ヤマダジロウことダイゴウジガイという男ではあるが

「でも、意外だったなあ・・」

「何が?、ヒカルちゃん」

「アキト君って、ロリコンな事以外は普通の人なんだもん」

ずでっ

盛大にひっくりかえるアキト

「おっ、俺はロリコンじゃない・・・」

泣きたい気持のアキトではあるが

「ふっふっふっ、ルリルリと婚約なんてしてる時点で、説得力ないよ〜〜」

「それは・・その(汗)」

それを言われてしまうと何も言えない

・・・俺はロリコンじゃない、俺はロリコンじゃない、俺はロリコンじゃない・・・

それでも心の中では呟き続けるアキト

「ところで、ルリルリとの仲はどのくらいまで進んでいるのかな〜(にやり)」

邪悪な笑顔で更に突っ込んでくるヒカル、答えられないアキト

アキトに答えられる訳が無い、自分でも自分の気持が良く解らない上、ルリの気持も良く解らない

この前、抱きしめてしまった事で「嫌われたかもしれない」と恐れているぐらいだ

「いっ、言っておくが犯罪になるような行為はしてないぞっ(赤)」

と言いつつ『抱きしめてしまった』には罪悪感を拭い切れない

「ふ〜ん、本当に?」

完全に疑いの眼差しのヒカル

「まあまあ、テンカワの事信じてやれよ」

ヒカル達の事に気づいたリョーコが、アキトに助け舟を出す

「ほら、きっと『親が決めた婚約者』とかなんだよ、だから、なっ、テンカワ」

はっとするアキト、良く考えてみれば、最初からそう言っておけば良かったのだ

「そっ、そう、親が決めた婚約って奴、あはははははは(汗)」

咄嗟にその場を言い繕うアキト

「ふ〜ん、それじゃあ、アキト君はルリルリの事、なんとも思ってないんだ」

ヒカルの更なる突っ込み、なんとも思っていなければ、こんなに悩んだりしない

こんな会話を見ていると、ナデシコに危機が迫っているのに緊張感が無いように見えるかもしれない

が、人は緊張感の持続を何時までも続ける事は出来ない、そんな事を続けていれば、いざ本番という時には心身共に衰弱していてかえって悪い結果を招く事も多い

ごく普通の世間話をする事で、平常心の維持をする、そしていざ本番という時に備える

もっともナデシコのパイロット達は、意識してやっている訳ではなく、ただの『地』であるが

「ルリルリって将来綺麗になりそうだよね、そうなったら周りの男達が放っておいてくれなくて、アキト君の事なんて相手にしてくれなくなったりして(にやり)」

「それは・・その・・・あの・・・(汗っ)」

「今の内に、ルリルリのハートをがっちりと掴んでおいた方が良くない?(にやり)」

「・・・・」

つい、真剣考え込んでしまうアキト、確かにヒカルの言う事にも一理ある、が、どうすればルリの心を掴めるか?が解らないから困っている

「やっぱ、女心をがっちり掴む方法と言えば・・・」

故に、ヒカルの話を真剣に聞いてしまうアキト、はっきりいってヒカルはかなり邪悪な表情をしていて、普通ならその事に気づきそうな物だが、『今の』アキトはその事に気づかない

「こらっ」

「いたっ」

背後からそんなヒカルの頭を小突くリョーコ

「何考えてるんだヒカル、テンカワを変な風に煽るんじゃない」

「え〜、だって、リアルで『光源氏計画』やる人なんて滅多に居ないし、これほど面白い『ネタ』無いんだけどなあ」

「テンカワだって迷惑だろ、こんな風にからかわれちゃ」

「そっ、そうだね、リョーコちゃん(汗)」

実はアキトとしては、『聞きたかった事』が途中で邪魔されて、残念という気持の方か勝っているが、そこでリョーコを嫌いになったり邪魔に思ったり出来ないことがアキトらしいというか

「光源氏・・・光源氏・・・ヒカルは、ゲン爺の孫・・・クスクスクス・・・」

それを見ていたイズミは、相変わらず訳の解らん駄洒落で一人で笑っていた


 


・・・もし、敵の総攻撃が来るとしたらそろそろ・・・

ユリカはそう判断している

ある程度地球に近づけば、軍に助けを求める事も出来る、だが、まだ地球は遠い、今はそれもままならない

もし、木星トカゲ側が、「人の心」までも考えて戦うのならば、そろそろチャンスと考えてもおかしくはない、実際にミナトやメグミには疲労の色がみえる

12対1、まともに考えれば勝目は無い、とはいえ、だからといって諦める訳にもいかない

ユリカは頭を悩ませる

大人数の敵と1人で戦わなければならない場合の手段は色々と伝わっている、伝わってはいるが、実際にそれをやり遂げる事の出来た人間は少ない

基本的には、そのまま多数対1人で戦うのではなく、どのような方法にしろ、まず敵を分断させ、1対1の戦いに持っていって、1人ずつ倒していくのだが、敵がそれを知っていれば、分断させる事すらままならない

いや、戦いの場に身を置いているのならば、知らない方がおかしいぐらいだろう

もし、敵の総攻撃が来た時、ナデシコにとって唯一付け込めるチャンスがあるとすれば、『無人機は、条件反射的な単純な艦隊運動をする確率が高い』という事

とはいえ、それでも12対1という数の不利は否めない

・・・このまま、うまく逃げ切れれば良いんだけど・・・

ユリカは内心では祈るような気持だった、だが

「地球に帰ったら、特別ボーナス出ますよね、プロスさん♪」

「メグミさん、ミナトさん、ルリちゃん、帰ったらユリカと一緒にショッピング行こう♪」

ブリッジのクルー達に、女子高生のようなノリでユリカは話す

「馬鹿・・・」

そんなユリカに少々呆れているルリ、だが、それと同時に、どこか安心出来る『何か』を感じていた、そしてそれはルリだけでなく、ミナトやメグミも

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後書き

12対1・・・・・勝てませんな、これじゃ(マテ)


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