ミナトさんが私の事を心配してくれている事はわかります
でも、今は・・・
機動戦艦ナデシコ再構成
The fiance of a guinea pig
第24話
「訳なんてないです・・・」
ミナトの問いに目を逸らすルリ
「ミナトさんどうしたの?」
不思議そうに尋ねてくるユリカにミナトは聞き返す
「艦長は噂を聞いてないの?」
「噂?」
・・・マズイ(汗)・・・
その後の修羅場を予想してしまい、顔面蒼白になっているメグミ
「今日、ルリルリが疲れたような顔してるのは、昨日アキト君がルリルリの事可愛がりすぎたせいだって」
「えっ」
ミナトの言う事に、一瞬時間の止まるユリカ
「そっ、そんな羨ま・・じゃなくて、いえ、だから、ほら、二人は婚約して、その・・だから、あの・・・・」
ユリカは何を言えば良いのか解らなくなってしまい、全ての事が頭からすっぽぬけ、訳のわからない言葉を繰り返すが
「艦長、私は何もされてません、テンカワさんの事を信じてあげてください!!」
そういってユリカの暴走状態を止めたルリ
「ほんと?、本当に?」
「本当です・・・」
不安そうに聞き返してくるユリカに答える
・・・テンカワさんがそんな事をする訳が無い・・・艦長が居るのに・・・・それに、どうせ自分は子供・・・
そう思うと沈んでしまうが
「だったら、なんでそんなに沈んだ顔をしてるのよ?」
「私は普段から無表情なだけです、沈んでなんていません」
追求するミナトを疎ましく感じながらも、何時ものポーカーフェイスを崩すまいと気をつけるルリを更に問い詰めるミナト
「ねえ、ルリルリ、本当になにもないの?、なにか訳有り・・ううん、訳有りにしか見えないんだけど?」
「そんな事は無いです!!」
言ったのはルリではなくユリカである
「えっ!!」
あっけにとられるミナトとメグミ
「ルリちゃんとアキト、二人をみてれば良くわかります、アキトもルリちゃんもとってもお似合いの二人です、お似合いだから一緒に居る、ねっルリちゃん」
笑顔でルリに話かけるユリカ、その笑顔はどこか寂しそうでもあったが
「ごめんね、ルリちゃん、二人がどうなろうとユリカがどうこう言っちゃいけないんだよね、だって二人はもう婚約までしてるんだから・・・・」
「艦長・・・・」
ルリにとっては、ユリカにこんな態度を取られてしまう事が一番辛い
そんな姿こそが、アキトが本当に好きなのはユリカなのだと思わせる姿、自分よりもユリカの方がアキトには相応しいと思わせている姿なのだから
「だから、この話はこれで終わり、さあ、みんなお仕事お仕事」
ミナトは不満そうな顔をしているが、結局この話はここでとりあえず終わる
それは、ルリから見れば、『立派な態度』に見えたかもしれない、だがユリカの内心はそんなに割りきれている訳ではない
ユリカは、ただ、ルリの口からは聞きたくなかっただけなのだ・・・・たとえそれがどんな内容であろうと
敵地で行動しているナデシコにとって、もっとも大切な事は『勝つこと』ではなく『見つからない事』
その為に、敵のレーダー等に探知されないための出来るだけの低空飛行、火星の地形の利用、電波かく乱等のあらゆる手段を使っている
もし、見つかってしまえば、仮に初戦には勝てたとしても、いずれ敵の数に押しきられる事は目に見えている
そのため、24時間、常に敵の影には細心の注意をはらっておかなければならないが、人の体力、集中力というものはそんなに続く物ではない、食事も睡眠も娯楽もなければ人は動けなくなってしまう
その為に他の戦艦ならばそれなりの人員が与えられていて、2交代制、3交代制をとる所だが、『最小限度』の人員で運用されているナデシコでは、それも難しい
ましてや、ナデシコのクルー達は訓練を受けた軍人ではなく民間人の寄せ集め
ここで、大きな役割を担うのがオモイカネのようなAIである
人にはルーティンワークを長時間ひたすら続けることは出来ないが、『機械』であるオモイカネにとっては、むしろそれは得意分野
だから、今はルリ一人がブリッジで当直をしている、オモイカネに任せておけばブリッジにいる人員は最小限度で済むからだ
ほんの少し前は、ブリッジでの一人だけの当直も何とも思いはしなかったルリ
今は・・・むしろ、ありがたい、アキトと顔を合わせなければ気まずい思いをしなくても済む
だが
「ルリちゃん、ご苦労様」
当直の交代の時間になりユリカとルリが入れ替わる
「後はお任せします」
必要最小限のそっけない報告
本当はルリにはユリカに聞きたい事はいくつもある、が、それは出来ない
そして、それはユリカも同じ
ルリはアキトと共に暮らしている部屋に帰らなくてはならない、また、別の部屋に泊まろうかとも思いもしたのだが、あの時に感じられた寂しさがそれを拒む
結局、自分の部屋に戻ってきてしまったルリは、ドアの前で呟く
「テンカワさん、もう、寝てるかな・・・・」
顔を合わせるのは気まずい、だが、一人でいるのは寂しい
「もう、寝てますよね、こんな時間だし・・・」
意を決して、ドアを開けると
「あっ、おかえり、ルリちゃん」
アキトは、まだ起きていた
「あっ(赤)」
思わず,顔を赤らめてしまうルリ
だが
「テンカワさん、なんでこんな時間まで起きてるんですかっ、パイロットは休める時にはしっかりと休んでおく事だって仕事の一部のはずです」
気を取りなおして、強い口調でアキトを叱る
アキトとて、それは解っている、解ってはいるが眠れなかったのだ
ルリが、このまま戻ってこないような気がして・・・
「いっ、いや、たまたま起きただけだから、もう寝るよ」
言い訳をするアキトだが、その様子はどうみても、今たまたま起きたものではない
「しっかりとしてくださいね、テンカワさん」
・・・今、一番しっかりとしなけれればならないのは自分なのに・・・
内心で、自己嫌悪を感じながらルリ
「あの、ルリちゃん・・・・・・」
真剣な表情で、ルリに何かを言おうとするアキト
・・・男がしっかりとしていないと、女は別の男に走りたくなる・・・
ミナトに言われた事が、アキトの後押しをする
・・・ルリの奴は、お前にそんな趣味は無いと信じている・・・
同時にリョーコに言われた言葉がアキトを縛る
アキトには、何を言えば良いのかも何をすれば良いのかもわからないが
「えっ(真っ赤)」
アキトにも、何故そんな事をしてしまったのかは解らない
だが、身体の方が勝手に動き、気が付けばルリの事をしっかりと抱きしめていた・・・
「はあ・・」
ブリッジで、一人ため息をつくユリカ
「今、ルリちゃんとアキトは二人っきりか・・・」
そう思うと、おもわず涙が流れる
「仕方ないよね、二人はお似合いなんだから・・・でも・・・」
「もし、ユリカがルリちゃんよりも先にアキトと再会してたら・・・」
そんな想像をしてしまった後、頭をぶるぶる振って、自分の考えを追い払う
「駄目、そんな事考えてるからルリちゃんに勝てない、今は艦長としての職務を果たす、ルリちゃんだってしっかりやってるんだから」
ルリは、当直を交代した時にも、誰も見ていないからといって手を抜かず、やるべき事はしっかりとやっていて、しっかりと報告すべき事を報告してくれた
ナデシコ艦内で最年少のルリは最も仕事に対して真摯な態度でのぞみ、その姿はユリカからみれば、『こんなルリちゃんだからこそ、アキトは惹かれたんだ』と思わせる
自分はもうアキトの事を諦めるべきなのかもしれない・・・・諦めきれない、諦めたくない・・・
ユリカの中のそんな葛藤
・・・艦長としての自分の仕事をしっかりとやり遂げよう・・・
・・・それだけが、ユリカがルリちゃんに勝てるかもしれない唯一のチャンスだから・・・
「隊長、ナデシコは今どの辺りにいるんでしょうね?」
地上に出て、空を見上げている隊長に話しかける部下
「さあな、俺達に出来る事は信じる事だけだからな」
「不安になる事ってありません?、ナデシコはもう撃沈されてるかもしれないって」
「あほっ」
「いてっ」
かるく部下を小突く隊長
「そういう事は、俺の前で言っても良いけど他の奴らの前では言うな、みんなが不安になるだろ」
「はい、すいません」
「俺だって、本当は不安なんだよ、でも、俺が平気な顔してないと下の者に不安が伝染するだろ・・・」
とか言いつつ、その姿は不安そうには見えない
「でも、隊長が不安そうに見えた事無いんですけど」
正直に思ったままを言う部下だが
「演技だよ、お前にもそのうち解るさ、俺がどれだけやせ我慢を続けて来たと思ってるんだ」
そして、また空を見上げ呟く
「頼むぜ、艦長さん・・・」
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