自分の好きな人が自分の為に白い目で見られる・・・・
辛いです・・・・
機動戦艦ナデシコ再構成
The fiance of a guinea pig
第23話
休憩時間を利用してアキトの部屋を訪ね、幾つかの話をしたミナト
そして
「アキト君、ルリルリのほっぺにチュぐらいしてあげたら」
すでっ
とんでもない事を言われて盛大にずっこけるアキト
「なっなっなっ、なに言ってるんですかミナトさんっ、ルリちゃんの歳を解ってるんですかっ!!(赤)」
ずっこけたままで、必死に言い返す
「ふ〜ん、その様子じゃルリルリとは何にもなかったんだ、安心、安心」
「安心って、試されたんですか俺?」
立ち上がり、不快感を露にしながらミナトを睨み付ける
もし、ルリになにか出来るのなら、アキトにとっても楽だっただろう
『ルリは俺の女だ』と言い切る事も出来ただろう
そして、ルリを安心させる事も出来ただろう
それが出来ないからこそ、アキトは困っているのだ
アキトの視線に臆さずに話を続けるミナト
「ほら、噂がね」
「噂?」
『噂』というものは、噂の当事者だけは聞けなかったりするもの、アキトは噂の事をしらない、ルリの場合は、アキトと自分の噂が気になって、オモイカネに頼んで艦内の噂話を集めて貰っている為に知っているのだが
「今朝、アキト君とルリルリが二人とも、『私達は寝不足です』って顔してたでしょ、それで、艦内に変な噂が、アキト君がルリルリの事を可愛がり過ぎたんだって」
「なっ、なんなんですか、その無責任な噂は(赤)」
「ルリルリってまだ11歳でしょ、噂なんて無責任な物だけど、やっぱり心配なのよ」
「そんなマネする訳ないでしょう!!、だっ、大体そんな事してルリちゃんに嫌われたらどうするんです!!」
気が動転して、自分が何を言ったかも解っていないアキト
今のアキトは、ルリの事を『11歳の少女』ではなく、『自分の婚約者』という目で見てしまっている
「ふ〜ん、アキト君はルリルリに嫌われるのが怖いんだ」
「そっ、それは・・その、ほら、やっぱ婚約してるわけだし、あの・・・」
しどろもどろに答えるアキト
「ルリルリを悩ませてるのは、アキト君のそんな態度かも」
「俺の態度・・・・・」
確かに、思い当たる事が多いアキト
「ルリルリ、なんか悩んでいるみたいなのよねえ、こう言う時に別の男に優しくしてもらったりすると、ふらふらとその男に走っちゃう事もあるのよねえ、女って」
「別の・・・・・・・・男・・・・・(汗っ)」
「み、ミナトさんっ!!、別の男ってなんですか?(汗っ)」
引きつりながら、聞きかえすアキト
ユリカ相手になら、ジュンの事を応援する気にもなれる
ユリカが幸せになれるなら、素直に祝福も出来る
だが、ルリが相手では・・・
「答えてください、ミナトさん!!」
何も言わないミナトに、必死になっているアキト
「ルリルリも、今のアキト君のそんな必死な姿みたら、少しは安心するかもね」
「いっ(汗っ)」
くすくすと笑っているミナト
「でも、男がしっかりとしてないと、女が別の男に走りたくなるのは本当よ、ねえ、アキト君、何があったのか話してくれない?」
「・・・・・・話せないんです・・・・今はまだ・・・・・・すいませんミナトさん」
アキトとて、本当はミナトの好意に縋りたいのだ
ブリッジで、一人緊張しているメグミ
ユリカの態度を伺っているのだが、何時もの調子で明るい笑顔のユリカ、どうも『噂』の事は知らないようだ
そして、ルリの様子が何時もと少し違う事に気づき話し掛けてくるユリカ
「ねえ、ルリちゃん大丈夫、すこし疲れてるみたいだけど」
びくっとするメグミ
もし、ルリちゃんの口から・・・そしたら艦長はどうするんだろ・・・・
そんな事を想像してしまい、真っ青になる
「いえ、なんでもないです、大丈夫ですから」
そっけないルリの返答
「う〜ん、もし、体調が悪いようだったらすぐに言ってね」
そのまま、素直に引き下がるユリカ
普段なら、どうという事も無い会話ではあるが、『噂』を知っているメグミには、中々に緊張させられる会話だ
「ねえ、ルリちゃん、アキトさんとなにかあったの?」
ユリカに聞こえないように、こっそりとルリに話し掛けるメグミ
ルリは、一瞬ピクッとしたが
「・・・・・なにもありませんよ・・・・」
メグミに対してもそっけなく答える
・・・・アキトさん・・・・・まさか、11歳のルリちゃん相手に(赤)・・・・
ルリのその態度はかえって『噂』を知っているメグミを疑心暗鬼に陥らせてしまうのだが、そんな中、唐突になにかを思いつき尋ねて来るルリ
「そうだ、メグミさんって元声優ですよね、芸能人のスキャンダルとかに巻き込まれた事とかありませんか?」
「えっ、無いけど、どうしてそんな事聞くの?」
「無責任な噂の消し方って無いのかなあって思って・・・・・テンカワさんが私にいたずらしたとかの・・・・・」
「えっ、ルリちゃん、噂の事知ってるの?」
「これだけ噂になっていれば、嫌でも耳に入りますから・・・テンカワさんはそんな人じゃないのに・・・・いえ、無いのなら無いでも仕方ないんです、でも、私は良いけどテンカワさんが・・」
沈んだ表情をするルリ
ルリを沈ませていたのは、アキトでは無く『無責任な噂』の方だったのだと気づき、その態度をみて、ルリちゃんは本当にアキトさんの事が好きなんだなあと思うメグミ
もし、ルリの口からアキトが本当にルリに手を出したと聞かされていたなら、逆にアキトを責めていただろう
最近は、メグミも薄々感づいてきている、ルリとアキトの関係は何か訳ありなのではないか?と
だからこそ、ルリの力になってあげたい・・・とは思うが
芸能界にいたからこそ、余計に『無責任な噂』という物の厄介さが解る
下手に言い訳をすれば、火に油を注ぐような物、では、無視すればいいのか?と言えば無視していても大きくなる時にはなってしまう
「う〜ん」
真剣に悩み始めるが答えは出ない
「あっ、いえ、良いんですそんなに悩まなくても、聞いてみただけですから」
そうは言うが、やはり何処か寂しそうなルリ
そしてまた、何時ものように仕事に向かい合う
「噂にはずいぶん泣かされましたよ、俺達も」
火星の生き残りの人達と雑談をしている捜索隊のメンバー達
「どっかのコロニーでは、まだ守備隊が残っていて奴らを食い止めてるとか、どっかにはまだ食料が残ってるとか・・・・・」
「そんな噂が正しかった事なんて、ほとんど無かった、それでも俺達は噂に振りまわされて右往左往させられたんだ、たまには食料が見つかる事もあったし、それでかろうじて食いつないでこれたけど・・・・だからこそ、噂なんて信じられないって思いながらも、右往左往させられるしかなかったんだ・・・・可能性は0じゃなかったから」
捜索隊のメンバー達は雑談というよりも、ほとんど愚痴の聞き役に回っている
戦場での流言蜚語は恐ろしい
それが、極限状態であれば、普段ならば信じないような事までも信じてしまう
そして、その結果は・・・・・悲劇をもたらす事も少なくない
ここまで、火星で生き残って来た人達ならば、自分が生き残る為に他人を殺すような事をしていたとしても、少しもおかしくはないのだ
捜索隊のメンバーの心の中で、ここに来る前に聞いた隊長の言葉が思い出される
・・・・だから、俺達の出番なんだよ、そんな目にあってきたかもしれない人達を綺麗事だけで救えるわけないだろ、軍の仕事ってのは時には人を殺す事や味方を見捨てる事すら役割になる汚い仕事だからな、汚くならなきゃ救えない人達だっているんだ・・・
ブリッジに戻って来たミナト
そして、戻ってくるなり、真っ直ぐにルリの元へ歩み寄り問い詰める
「ルリルリ、アキト君とあなたの仲ってなにか訳ありなんじゃないの?、ここではっきりと答えて」
次回に続きます
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