『相転移砲』

ナデシコが無茶を承知で火星まで来た理由の一つ

軍がナデシコの無茶な行動に目を瞑っているのも、『戦局を逆転しうる可能性をもった兵器』を手に入れたい為

地球の軍人さん達は本当にギリギリの戦いを強いられています

今こうしている間にも、木星トカゲ達から地球を守る為に命を落としている人もいるのでしょう

そして、ズルズルと木星トカゲに押されていっている事は紛れもない事実、だから、ほんの僅かな可能性でも賭けなければならなかった・・・・・たとえ、成功すれば儲け物程度の可能性だったとしても

幸いな事に貴重な研究データはかなりの部分がオリンポス山の研究所に残されいて、回収する事ができました

残念な事にオリンポス山の研究所には生存者は居ませんでしたが

そして、敵に相転移砲の研究データを万に一つも渡さない為に、オリンポス山の研究所の完全破壊

ユートピアコロニーへ向かった捜索隊を無事に回収出来れば、直ぐに地球へと帰還ですが

向うでは、生存者を無事に発見する事が出来たのでしょうか?


機動戦艦ナデシコ再構成

The fiance of a guinea pig

第22話


「・・・・・37人か・・・・・・・・あれだけ居た火星の人達が・・・・・」

なんとか、火星の生き残りの人達を説得した捜索隊の一行

37名とは、ナデシコに乗り地球へ帰る事を選択した人達で、見つけた全ての人達が、ナデシコに乗る事を選択した訳ではない、火星に残ると言い張る人達も居る

ほんの僅かな可能性・・・・・・・もしかしたら、生き別れになった家族が何処かで生きているかもしれないという、限りなく絶望的な希望を抱いて火星で待とうという人・・・・・

やはり、戦艦一隻で火星脱出なぞ、信じられない人・・・・・

理由は様々だが

隊長達には、全員を助ける事に拘って、今、助けられるかもしれない人達を余計な危険に晒す気はない

説得に時間を取られて、余計な時間を使えばそれだけリスクも増す

戦場で、少しでも多くの人を助ける事はけっして甘い物ではないのだ

何処かで割り切らなければ、更に多くの人を殺す事にもなるのだから・・・・

そして、その事でかえって恨みを買ってしまう事すらあるのが、『極限状態で人を助ける』と言うこと・・・・恨みを買うことも、軍人の仕事の一つなのだ、それがたとえどれほど不条理なものであったとしても

それに、火星に残った方が生き残る事が出来るかもしれないという意見にも一理ある

ナデシコVS木星トカゲの雲霞のような大軍、マトモに考えれば火星脱出その物が極めて成功率の低い賭け

「さて、後はミスマル提督の娘さんのお手並み拝見って所だな・・・・・」






ナデシコが、捜索隊を迎えに行く期日にはまだ数日ある

その間に、少しでも多くのコロニーを調べなければならない

広い火星、しかも、敵の目をかいくぐっての生存者探索は困難ではあるが、やらない訳には行かない、たとえそれがどれほど生存者発見の可能性が低く、リスクの高い賭けであったとしても

そんな、ある日の夜

「はあ・・・・・」

「テンカワ君どうしたんだい?、ため息なんてついて」

夜の誰も居なくなった食堂のテーブルにすわり、ため息をついているアキトに背後からの声

「気持ちが通じないのって辛いなあって・・・・・・・・・・・・えっ」

背後からの声に何気なく答えてしまい、振り向いてみると

「ううっ(涙)」

そこには、拳を握り締め、天を仰ぎ滂沱の涙を流しているジュンがいた

「なっ(汗っ)」

その様子に驚き、少し引いてしまうアキト

だが、ジュンはその事を気にもせずに、アキトの手を握り締め

「解るっ、解るよ!!」

とコクコクと何度もうなずく

そう、『気持ちが通じない』苦労ならば、ジュンは長い

アキトよりも長くユリカと一緒にいながら、ちっとも自分の気持ちに気がついてもらえないのだから

・・・・・・・・ユリカ以外ならみんな解ってるのだが(苦笑)・・・・・・

しばらくは引いていたが、ジュンが何故そんな事になっているか気がついたアキトが何気なく呟いた

「ユリカも少しは副艦長の気持ちに気がついてやれば良いのに・・・・・・・」

しばらく、コクコクとうなずいていたジュンだか、更にしばらくすると

「なっ、何言ってるんだテンカワ君、ぼっ僕はユリカの事なんて一言も(赤っ)」

唐突に正気に戻って、自分が何を言われたのか気がついたらしい

「いや、その態度みればみえみえだし・・・・・・・」

正直に思った事を呟くアキト

「とっ、ともかくテンカワ君の方は何があったんだい?」

なんとか誤魔化そうと、アキトへ質問をするジュン

「うっ(汗)」

今度は、アキトが困る番






アキトがため息をついていたのには訳が有る

数日に一度はアキトとルリの部屋へ泊まりにくるユリカ

そんな日は、ルリはアキトのベッドに潜り込み一緒に寝ていた

・・・・・・・今までは

が、自分の気持ちを伝えたルリは、その事で今まで以上にアキトを意識するようになり、それが出来なくなってしまう

そこでルリはどうしたかといえば

その気になれば、ナデシコの艦内では、かなり好きなように振舞えるルリは空いている部屋で寝る事に決めたのだ

アキトは、ルリにそんな事はさせられない、俺の方が出ていくからと言ったのだが

「・・・・私と艦長を2人きりになんてしないで下さい・・・・・・私にだって嫉妬心はあります、艦長に何を言ってしまうか解らない・・・・・・」

辛そうにルリに言われて何も言えなくなってしまうアキト

結局ルリは、部屋から出ていき、一人ベットに寝るアキトを苛む不思議な寂しさ

自分の隣にルリが居ない事の寂しさ・・・・・いや、この部屋にルリの居ない寂しさだろうか?

「何を考えているんだろうな・・・・・・・俺は・・・・・・・」

眠れないまま、天井を見つめるアキト

向うのベッドでは、ユリカが安らかな寝息を立てている

やはり、寝相は悪いが・・・

・・・・・・アキトさん、ユリカさんと2人きりになってなにかあったとしても・・・・・・私怒ったりしませんから・・・・・・・・

ルリは、部屋から出て行く時そんな事を言ったが、元々アキトにそんな気はない

アキトとて男、間違いを犯さない自信はないが、この場にいるユリカよりも姿の無いルリの方が気になってしまう

「駄目か・・・・・どうせ眠れないなら・・・・・」

気分転換の為に少し艦内の散歩でもしてこようとベッドから身を起こし、布団を蹴飛ばしているユリカに布団をかけ直してやろうとすると

「・・・・・う〜〜ん、ルリちゃん、アキト、一緒に火星の人達を助けようね・・・」

そんな、寝言を言うユリカ

・・・・・・ごめん、ユリカ・・・俺は・・・・

心の中でユリカに謝りながら、部屋から出ていくアキト

何処かでルリに会える事を期待しながら






「・・・・・・馬鹿だな・・・・・・・・・私・・・・」

あてども無くナデシコの艦内をさ迷っているルリ

「最初から、こうすれば良かったんだ、そうすればテンカワさんに迷惑かける事も無かったのに」

とは言うものの、空いている部屋なら幾つもあるのに、何故かそこに入る気になれない

そして、ある部屋の前にさしかかる

「ここは・・・・・」

ふと気がつくと、そこはアキトがルリと一緒の部屋になる前に入室していた部屋

今は、入室者もなく、ひっそりと静まり返っている

何かに引かれるように、その部屋に入るルリ

だがそこは誰もいない・・・・・・・なんの温もりも無い部屋

この部屋をみて気がついた事がある、たとえアキトが居ない時でも、アキトと共に暮らす部屋には、何処かに温もりが残っていた事に

共に暮らし始めてからは忘れていた、以前は当たり前だった待つ人の居ない部屋の冷たさ

「でも、他よりはマシ・・・・・・なのかな・・・・・」

寂しそうに呟くルリ






部屋を飛び出したは良いが、ルリが何処に居るかなど当然解らないアキト

ともかく、ぶらぶらとナデシコの艦内を回ってみて、 少し休息しようと夜の食堂へ

そこで、偶然ジュンと会い

まさか、ルリの居ないベッドでの一人寝が寂しかったなどとは言えず、どう誤魔化そうかと悩む事に

「副艦長、思いきってユリカに正直に自分の気持ちを伝えてみれば?」

結局、誤魔化し方が思いつかず、話を変えようとするアキト

「駄目なんだ、今は」

首を振って答えるジュン

「今、ナデシコもユリカも大変な時だから、余計な事をして、ユリカの手を煩わせたくない・・・・・・・そんな事をすれば、ナデシコのクルーへの危険だって増すかもしれない・・・」

「・・・・」

流石は副艦長という要職に選ばれるだけの事は有る、ルリの事で悩み、こんな所に居る自分とは大違いだと思うアキト

「地球に無事に戻れた後だったら・・・・・・・・・・」

「頑張ってください、副艦長、俺もやれるだけの事はやりますから」

今まで、何処か軍人に信頼感が持てなかったアキトだが、ジュンに対しては素直に信頼がしても良いような気がした

そして、ジュンならばきっとユリカを幸せにしてくれると思ったという

実は、ジュンにとってこれが何回も繰り返された決断で有る事をアキトは知らない

何度も考え、何度も繰り返され、何度も決断し、それでも何度も『あと一歩』が踏み出せず、結局、『お友達』止まりだった事など

『あと一歩』が踏み出せれば、ナデシコに乗る前にジュンの想いもかなっていたのかもしれない

さて、今回はどうなるのか?、また同じパターンを繰り返すのか?

後に、その事に気がついたアキトはこう思ったという

「なんだか、自分を見ているようで歯がゆかった」と






そして、朝

アキトもルリもそんな状態で、当然寝不足

が、そんな訳なぞ知らないナデシコのクルー達

二人がそろって、『私は寝不足です』という顔をみて、おかしな噂が流れてしまう

「やっぱり、テンカワはそういう趣味の人間だ、きっとルリの事を可愛がり過ぎたんだ」と

そんな噂を耳にし、落ち込んでしまうルリ

「私って、何をしてもテンカワさんに迷惑を・・・・・・・」

だが、落ち込んでばかりいる訳にもいかないと、気持ちを切り替え自分の仕事をこなしていく

いや、落ち込むような事があったからこそ、仕事でその事を忘れようとしているのかもしれない

そんなルリに、なにか痛々しいモノを感じたミナトは・・・・・





次話

The fiance of〜トップ// b83yrの部屋// トップ2


後書き

今回は、アキトに気持ちを知られてしまったが故に一緒に寝れなくなってしまったルリです

ううっ、最終的には、ルリ×アキトで、ジュン×ユリカになりそうだが・・・・・・というか、この流れからならそうなる方が自然って気もするが・・・・

私の好み的にやっぱり捨てきれない、ユキナ×ジュン

どうしましょう?(苦笑)


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送