マキビハリ

私はその名前をしりません

ネルガルにとって、私はその程度の存在

でも・・・

私はテンカワさんの事だって、最初の頃は何もしらなかった

テンカワさんも、マキビハリも、同じようなもの・・・・の筈です

どちらも、『遺伝子提供者』なのだから

・・・そんな事は解かっていた筈なのに・・なんでこんなに・・・

 


機動戦艦ナデシコ再構成

The fiance of a guinea pig

第20話


「誰なんですか、その男は?」

明かに嫌悪感の混じった口調で聞き返すアキト

ルリは、何も言わずに黙っている

何かをこらえるように震えながら

「あら、気になる?」

「当り前ですっ、ネルガルはルリちゃんをなんだと思っているんですか!!」

怒鳴り声を上げるアキト

「ふ〜〜ん、でも・・・」

イネスはしばらく間を置き

「あなたとホシノルリとの関係はなんなのかしら?」

「それ・・・・は・・・」

アキトとて、最初、火星に行く為の手段だったのだ、ルリとの婚約は

ルリに直接会うまでは

「ほら、そうやって言葉につまる所をみると、なにか訳ありなんじゃないのかしら?」

 

「イネスさん・・・私達の事・・・・何処まで知っているんですか?」

ルリがようやく口を開く、

不安げな口調で

ルリもアキトも、自分達の関係をイネスに話してなどいない

それなのに何故?

ルリの心に芽生えた疑問

イネスはまるで全てを見透かしてるようにも思える

「私は何も知らないわよ、ただ、かまをかけただけ、でも、大体私の予想通りって確信してるけど」

「予想?」

「そっ、今からそれを『説明』してあげるわ」

 


 


「まず、私は11歳のホシノルリの婚約者になったって言う、アキト君の事に興味をもったのよ」

「最初は確かにびっくりしたわよ、でも、後で冷静になって考えてみると、貴方達は訳あり?って思ったの」

 

「私はこれでも、相転移エンジンやその他のナデシコの根幹に関わる研究に携わってきた」

「だから、ナデシコの新型AIをより効果的に活かす為の、IFS強化体質の人間の研究をネルガルがして居る事も知っていた」

「ホシノルリ、あなたのプロフィールにあったわよ、「ネルガルの研究室所属」って、11歳の少女が戦艦のオペレーターしてる事自体異常な事だし、それが何か理由がある事ぐらいはすぐ解かる」

「そして、IFS強化体質の人間同士の交配で、より優秀な存在を作り出す・・・そんな研究案が出ていた事も」

「アキト君?あなたももしかしたらIFS強化体質なの?、それでネルガルにホシノルリの遺伝子提供者として?」

 

「違います・・・テンカワさんはそんなんじゃありません・・・私なんかとは違うんです・・」

「テンカワさんは普通の人・・・モルモットとは違う・・・私みたいなモルモットとは・・・」

「違うっ、ルリちゃんはモルモットなんかじゃないっ、モルモットなんかじゃないんだっ!!」

語気を荒げるアキト

「・・・いいんです、もう・・・テンカワさんは無理しないでも・・・・・」

何時の間にか泣いているルリ

「・・ルリ・・・・ちゃん」

「マキビハリ・・・私と同じ・・・・・モルモット同士でお似合いじゃないですか・・・・テンカワさんには艦長の方がお似合いです、私なんかよりずっと・・・」

「そんな・・・駄目だっ、駄目だよルリちゃんっ、会った事もないんだろ、そんな男と、そんな相手と」

「私は・・テンカワさんの事だって、知りませんでした・・変りはしません」

「それは・・・・」

そう、確かに変らない

いや、それどころか自分は・・・・

 

 

「ただの火星に来る為の取引の材料・・・・・だった筈ですテンカワさんにとっての私は・・・・」

そう、アキトにとってルリは・・・・

火星に来る為の取引の材料に過ぎなかったのだ、最初は

心が締め付けられるアキト

 

・・俺には・・・・ルリちゃんを守るなんて言う資格は無かったのか・・・・最初から・・・・・・

そんな気がしてくる

 

「・・・なんで・・・なんで、テンカワさんはそんなに優しかったんですか!!」

急に語気を荒げるルリ

「どうして私をモルモットのままでいさせてくれなかったんですか!!」

「・・・・・・」

 

今度は一転して、消え入るような声をだすルリ

「優しくしてくれる度に・・・・・・私が苦しんでいた事を知っているんですか・・・・・・・」

「ルリ・・ちゃん・・・」

「中途半端な希望を与えてくれるより、モルモットのままの方がよかった、そうすれば私は苦しまないですんだのに・・・」

「違うっ!!そんな事は絶対に違うっ!!、ルリちゃんは人間なんだ、人間なんだから!!」

「ルリちゃんは、好きな人と一緒にならないと、駄目なんだ!!」

 

そんな会話の途中

 

「あの、御取り込み中悪いんだけど・・・」

バツが悪そうにイネス

「遺伝子提供者って言っても、マキビハリって、まだ6歳の子供なんだけど(汗)」

「えっ?」

「えっ?」


 


「痴話げんかするなら、人の話を最後まで聞いてからにして欲しかったわね」

「すいません」

「ごめんなさい」

真っ赤になりながら、イネスに謝るアキトとルリ

「まあ、でも、ここまでも私の予想通りだけど(にやり)」

「・・・・・」

「ホシノルリ、貴方、最初はともかく今は本当にアキト君の事が好きになっちゃったんでしょ?」

「なっ(赤)」

アキトのいる所で、面と向かって言われた事は初めてのルリ

 

「それに、アキト君、貴方は本気でホシノルリを守りたいと思ってる」

「・・・・はい・・」

「あっ、あのイネスさん(赤)」

「あら、な〜に、ホシノルリ?(にやり)」

「あっ、あの私は・・」

「貴方がアキト君の事好きになっちゃったのは、誰が見ても解かるわよ、でないとマキビハリの名前が出たとき、泣いたりしないでしょ?」

「・・・・・・(赤)」

「それに、私は「元」そういう話があったって言っただけ、これからの事を話した訳じゃ無いのに、そこまでうろたえるようじゃ駄目よ、よっぽと大好きなアキト君と引き離されるのが怖かったのね、冷静さを失ってあんなにムキになって」

にやにやと笑いながらイネス

「・・・・(赤)」

 

 

「それと、アキト君、あなた言ったわね、ホシノルリは好きな人と一緒になるべきだって、彼女の好きな人はあなたみたいだけど、と言う事は(にやり)」

 

「ホシノルリは、テンカワアキトと一緒になるべきだって事かしら?」

「それは、(赤)」

「11歳の少女相手にプロポーズ?」

「違います、テンカワさんは私を守ろうとしてくれてるだけなんです、そんな趣味は無いんです」

アキトを庇うルリ

「そうね、今のホシノルリに惹かれてるようじゃ、成長したら捨てられるわよ、そんなの嫌でしょう」

相変らずにやにやとしているイネス

 

アキトにはかなりキツイ内容でもある

・・・・・・自分がルリを捨てる・・・・・そんな事、考えたくも無い・・・・

そんな事を考えている、自分の気持ちを更に自覚してしまう

だが、今のルリは『11歳の少女』

 

ルリはルリで、やはり自分は『11歳の子供』なのだと再認識させられ沈んでしまう

 

「でも、確かに今のあなたを好きになってもらうのかは無理かもしれない、でも、この先何年かして、『成長したホシノルリ』なら、アキト君も好きになってくれるかもよ」

「あっ」

ルリは解かっていた筈の当り前の事に改めて気付く

そうだ、自分だって成長する、何時までも子供じゃない

その時は・・・・

 

「その為には、良い女にならないとね、自分の事『モルモット』だと思ってるようじゃ駄目、人間は人間を好きになる物なんだから」

「はい」

初めて「希望」を持つ事が出来たルリは無意識の内に素直にそう答えていた

だが、この事で、アキト自身も自分の気持ちに気付き、ルリの気持ちも知っているのに、アキトのルリへの告白は随分と我慢させられる事となる

良かったのか悪かったのか(苦笑)

「それと、アキト君、ネルガル相手に自分一人でホシノルリを守れると思う、味方が欲しくない?」


 


「ヤバイな・・・・」

「ええ、ですね隊長(汗)」

赤ん坊の泣き声の方に向かった一行

だがそこには

 

「誰だ、おまえらは?」

何処から現われたのか、明らかに自分たちに敵意を剥き出しにした集団に囲まれてしまう

みな、幽鬼のようにやせ細り、明らかに栄養不足を感じさせる

 

「地球から来た、助けに来たんだ」

「本当か?、その手の嘘をつく奴らは今までもいたんだ、それをどうやって証明する?」

集団のリーダー格らしき男が、殺気だった声をあげる

 

・・・証明の方法か・・疑心暗器になった集団相手にそんなものがあれば苦労はないが・・・・ここから先は賭けだな

 

 

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後書き

この話、ルリの意思を無視して、婚約させられてる話だから、見ようによっては結構ダークな部分や悲劇な部分を最初から内包してるんですよね

もし、ルリの相手がアキトじゃなければ・・・

そのアキトだって、最初は「取引の材料」としてのルリとの婚約だった訳だし

 



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