ここは敵地火星

でも、戦いは火星だけじゃありません

ネルガルにもネルガルなりの地球での戦いがあるようです


機動戦艦ナデシコ再構成

The fiance of a guinea pig

第18話


「火星出身者の周りで不穏な動きが有るって?、エリナ君」

「はい、これを見てください会長」

エリナから渡された資料をみて、顔色を変えるアカツキナガレ

「なんだい、この数は・・」

「ここ数ヶ月間の火星出身者の「死亡」及び「行方不明者」の数の激増は異常です」

「エリナ君はどう思う?」

「おそらく、ネルガルと同じように、『火星出身者がジャンパーになれる可能性』に気がついた・・・」

「不味いな・・・」

「ええ、このままだとネルガルのジャンプ研究が遅れを取る事に」

「エリナ君、「死亡者」や「行方不明者」は、今どうしていると思う?」

「・・・・・・・・・あまり、想像したく無い事になっているでしょうね・・平気で『誘拐』をするような相手です、どんな実験をされていてもおかしく無いですから・・・」

 

 


 


木星トカゲの正体・・・木連

100年前に、月を追放された『人類』

100年前に追放された怨み

100年の間に培われ、拡大再生産されていった『反地球教育』

彼らにとっては、地球は『悪』

火星の地球人達を全滅に追いこんだ事に、ほとんどの者が良心の呵責など感じてはいない

『悪の地球人は殲滅される事が当然』

彼らはそう教えられて育ってきた

もっとも・・・・

火星に居た人達がなんの罪もない、たまたま火星に住んで居ただけの人達・・

自分達と同じような、『人間だと言う実感』が木連の住人達に有る訳ではない

火星を全滅に追いこんだのは、あくまで、木連の『無人艦隊』

『人の死の実感』など有りはしない

こんな時、人はいくらでも残酷に・・・いや、『残酷になる必要すらなく』多くの人を殺す事が出来る

 

もし、『自分達と同じ人間』である事を知った時は・・・・

 

 


 


「・・・でも、こうやって火星出身者の誘拐が激増してるって事は、火星出身者がジャンパーになれる可能性の高さを、敵の方から示してくれたったことだよね、エリナ君」

「ええ、もしなんの関係も無いなら、こんなに大量に誘拐される人や殺される人が出る訳ありませんから」

「テンカワ君達は、どうしているかな?」

「敵に見つかり難くする為とは言え、連絡が取れないのは辛いですね」

「テンカワ君も、ナデシコの艦長ミスマルユリカ君も、火星出身・・・・・これから辛い事になるかもしれんな・・」

ナデシコの2人を思いながら呟くアカツキ

「ナデシコの生存者救出作戦が成功した後の事も考えないと、ネルガルはどう動くんです?」

「・・そうだな、たかが1企業のシークレットサービスが火星出身者全てを守る程の規模も力量も有る訳は無いし、といって敵のやる事を黙って見ていても、ネルガルの利益にはならんし」

一見悩んで居る様に見えるアカツキ

「軍との連携も考えないとならないかもしれません、場合によってはジャンプの独占も出来なくなる事も考えておかないと」

「まっ、商売なんてやってれば思い通りにいかない事なんて腐る程有るさ、路線を変更するなら何時何処でどんな変更するかの決断も大切だからね、こういう時にエリナ君みたいな優秀な秘書が居るのは助かるよ」

何かに期待するようなアカツキ

「・・また、私の仕事が増える訳ですか・・・」

少々げっそりとしながら答えるエリナ

「まっ、人助けと思って頑張ってくれたまえ、エリナ君♪」

「私の知っているネルガルの会長は、人助けなんて理由だけで動くほど善人じゃありませんが」

軽い口調のアカツキに対し少し呆れが混じった口調で答えるエリナ

「まあそれは言いっこなし、裏にどんな思惑が有ろうと人助けは人助けだ(ニヤリ)」

アカツキナガレ・・

彼は基本的に悪人なのである

もっとも、『悪人で有るが故にかえって信頼出来る所も有る』と言われてもいるが

「さて、上手く行けばだけど、敵のジャンパー誘拐を辿って行けばジャンプ研究の最新のデータを横取り出来るかもしれないな、エリナ君、ネルガルシーンレットサービスの責任者を呼び出して」


 


最初はただの偶然

木連の側も色々な戦略を試している

地球側の戦艦等のデータ収集の為、チューリップによる鹵獲を繰り返して居るうちに偶然居た生存者

『生きた人間は次元跳躍門(地球側で言うチューリップ)を通れない』

木連は次元跳躍門研究の初期の頃、その事を知らずに有人の船を通過させ多くの犠牲者を出した

 

何故彼は生き残る事が出来たのか?

徹底的な研究が進められ、『火星出身者=ジャンパー』の可能性に辿りつく

だが、その事に気が付いたのは火星を全滅させた後

火星には生存者は居ない・・木連側はそう思いこんでいた

火星の僅かな生き残り達には幸いな事だったが

そこで、地球の事を調べ上げ、地球に存在する火星出身者をさらい実験に使う事を思いつく

送りこんだチューリップを使い、地球で誘拐した火星出身者を木連の戦艦の乗せ木連へと送る

もし、成功すれば、木連で更にジャンブ研究の為に使用する・・・・

そして、ある程度の成功例を収めたとき、木連の行動は次の段階に入る

彼らは気がついていない・・

自分達の行動が、何時の間にか自分達を100年前に追放した地球人達と同じかそれ以上に罪深くなっていく事に・・・

火星を全滅に追い込んだ事で、『殺した人間の数』ならば、既に遥かに超えている

100年前に自分達を追放した『悪の地球人』を

 


 


ナデシコに収容された、イネス達

これからの為に、協力をお願いしているユリカ

だが

「戦艦一隻で火星まで・・・・無茶というか、無謀と言うか・・・・」

ナデシコ一隻で火星に来た事を知り、呆れているイネス・フレサンジュ

「はあ、やっぱりそう思います?」

とくに怒るような様子も見せず答えるユリカ

「ナデシコ一隻で勝てると思うの?」

本気で『勝てる』と思っているような艦長ならそんな相手に命を預ける訳にはいかない

「勝つ事なんて考えてません、出来るだけ戦いを避けて、火星の人達を一人でも多く助け出す事、火星に残された貴重なデータを地球へ持ち帰る事がナデシコの役割です」

少しはほっとするイネス

「そこまでお馬鹿な艦長でもない訳か、でも、火星を脱出するだけでも難しいわよ、私は軍事に付いては専門外だけど、撤退戦の難しさは素人でも知っている事だし」

「私には、ネルガルやプロスさんが選んでくれた優秀なスタッフが付いてます」

ブリッジのクルーを見渡しながら、一点の曇りもない目ではっきりと答える

ここまで信頼されていると、自分の席についたままで一緒に話を聞いている、メグミ、ミナト、ルリとしてはかえって恥ずかしい

「艦長がクルーを信頼するのは悪いとは言わないけど、信頼が盲信にならないようにね」

「はい」

素直に答えるユリカ

「ともかく協力はするわよ、私達に残されたチャンスなんて少ないんだから」

「ありがとうございます、イネスさん」

イネス達が、クロッカスの周辺をうろついていた理由は、ユリカも心配していたように『食料』の問題だった

火星の生き残りの人達は、食料を求めてコロニー間を転々としてきたらしい

クロッカスの食料貯蔵庫に備蓄されているかもしれない食料を求めて様子見に来ていたのだ

クロッカスの内部に入れる可能性は低いが・・・・その僅かな可能性にでもかけなければ・・・

「でも忘れないで、火星の人達は自分達を見捨てた地球に不信感を抱えてるって事を、それでもその地球の戦艦にかけなければならない私達がどんな思いかって言う事を」

 


 


「照明が・・・・これは当たりかもしれませんね、隊長」

ユートピアコロニーの地下に侵入した一行は、地下の照明をみて呟く

本来地下に光りは無い

人為的な照明が無い限りは

「ライトとか要らなかったですかね?」

「そうも言えんだろ、何時照明が消えるか解からんしから目印はちゃんとしておけよ、それに発電施設だけが生きている可能性も無いとは言えん」

「はい、しかし、木星トカゲの襲撃から1年・・バッテリーか発電機かしらないけど、そんなに持つものですか?」

「火星の地熱を利用した地熱発電所が、シェルターの中に設置されてるんだそうだ、ユートピアコロニーには」

「なるほど、それでトカゲ達にも破壊されずに電気を」

「もっとも、完全にメンテナンスフリーって訳にもいかんからな、地熱発電所といえど何時かは壊れる、もしかしたらそれが『今』になる可能性を常に考えとく癖をつけろ、戦場で生き残る可能性を高める為には」

「はい、隊長、しかし、RPGのダンジョン探索みたいな事してますね、自分達」

「リセットもコンティニューも無いけどな」

「隊長は、リセット出来ればって考えた事はあります?」

「どうせできゃしない、そう言う事は考えないようにしてる」

笑いながら答える隊長・・だが心の中では

 

・・・・何回も思った事があるさ、上官、同期、部下、守り切れなかった民間人・・・・・

・・・・死んで欲しく無い人達が死に、守りたい人達が守れなかった事が何度・・・

 


 


イネスとの話も終り、今度はリョーコとアキトの報告

「つまり、アキトは周りの確認もしないで飛び出してしまったんですねリョーコさん」

「ああ、結局敵は居なかったが」

自分でも不味かったと思って居るので何も言えないアキト

ユリカはしばらく考えこんでいたが

「アキト・・・ユリカはアキトに罰を与えないとなりません」

「仕方ないさ、俺はどんな罰でも受けるよ」

だが

「罰っていくらなんでも重すぎないか?、敵は居なかったんだし」

リョーコがそういうがユリカは悲しそうにゆっくりと首を横に振る

「ここは戦場です、なにか起こってからでは遅いんです」

そう言われれば、リョーコも言い返せない

「では、ナデシコの艦長ミスマルユリカは艦長としてテンカワアキトに罰を与えます」

 

「テンカワ?」

その苗字を聞き、ふとある人物の事を思い出すイネス

 

「テンカワアキトは罰として・」

ブリッジに居るクルー達にに緊張感が走る

 

 

「今この場で、婚約者のホシノルリに謝るように」

 

 

「へっ?」

どんな厳罰かと覚悟していたアキトがマヌケな返答を

「聞こえなかったかな?、アキトはルリちゃんに謝るっ、婚約者が居るのに無茶するような男の人は最低だよ、ねっルリちゃん」

妙に明るい、だが意地悪そうな口調のユリカ

「うん、そうだなそういう男は最低だな」

ユリカの意図を悟ったリョーコが腕組をしながらうんうんと肯いている

「そうよねえ、こういう場合はアキト君はルリルリに謝るべきよねえ」

ユリカの意図に加わるミナト

女性の団結と言う奴は、こういう場合妙に堅い

ちなみに、メグミはさっきルリを怒らせてしまったばかりなんで、どうして良い物か悩んでいたりする

 

「いっ、いや、あのえ〜と(赤)」

アキトもいきなりな意外な展開にどうして良いのか解からなくなっているが

 

「いいから、ちゃんとルリ(ルリ)ちゃんに謝るっ」×3

「はい(汗)」

 

「あっ、あのルリちゃん・・ごめん・・」

しどろもどろになりながら、ルリに謝るアキトと

「いっ、いえあんまり無茶はしないでください・・・(真っ赤)」

アキト以上に訳が解からなくなって、それだけを答えるのがやっとのルリ

 

そしてそんなやり取りを聞きて居たイネスは

「艦長、婚約者って・・あの子はまだどう見ても(汗)」

「あっ、イネスさんに紹介しておきます、ホシノルリ、11歳、ナデシコのオペレーターでユリカの恋敵です」

「11歳の恋敵って(汗)・・・・・・大体テンカワアキトってペドフィリアなの?」

少しムッとしてユリカは答える

「アキトはロリコンじゃありません、ルリちゃんとお話しててハッキリと解かりました」

「アキトが好きになったのは、『ホシノルリ』っていう立派な女性です、『11歳の少女』じゃ無いんです」

「アキトとルリちゃんは、もう婚約までしてるのに、ユリカはそれに横恋慕してるんです、最低だと思いません?でも」

「それなのに、・・・本当なら怒っても良いのに、横恋慕しているユリカの事を認めてくれて、ユリカに塩を送ってくれて正々堂々と勝負してくれたり、私が間違った事をすれば、ユリカの為に叱ってくれたり」

「ルリちゃんは、私の目標としている女性です」

きっぱりと言い切るユリカとそれを聞いて、どう答えて良いやら解からないイネス

「かっ、艦長、それ私を美化し過ぎです(真っ赤)」

真っ赤になって俯いているルリ

「・・・・(赤)」

そして絶句しているアキト

人を客観的に評価するのは中々難しいものなのだ(笑)

 

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自覚の無さ故の怖さってありますよね



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