木星トカゲは基本的に直接人を襲わない

でも、直接襲わないからと言って人が死なない訳じゃ無い

火星で起こった事は・・・


機動戦艦ナデシコ再構成

The fiance of a guinea pig

第17話


「しかし、木星トカゲの連中も、徹底して火星を破壊してますね隊長」

ユートピアコロニーの廃墟を見渡しながら呟く部下A

「ここを壊滅させたのは、フクベ提督が墜としたチューリップだ、正確には」

「もっとも、ここに来るまでのナデシコからの観測じゃ、何処のコロニーも似たようなモノです、チューリップを墜とされた訳でもないのに」

部下Bも話に加わる

「・・・・隊長、火星でどれだけの人が死んだんでしょう?」

部下Bが暗い顔で尋ねる

「さあな、ただ一つだけ言えるのは、木星トカゲは民間施設だって襲うって事だ、『軍』が居なくなれば・・・・・・・・・・・・地球じゃあ、トカゲ達が、直接人を襲わないんで、怖さを感じて無い民間人も多いけどな、軍の苦労もしらないで」

 

 

木星トカゲは軍事施設や軍用機が居なくなれば、今度は民間施設の中で一番エネルギー反応の高いモノを順に狙う・・・・・

・・・・その時どれだけの人が死ぬか・・・

それが火星で実際に起こった事・・・

たとえ直接人を襲わなくても、ライフラインを絶たれれば人は脆い・・・

居住施設までもが徹底的に破壊され、廃墟と化している火星

地球がそうならない保証は何処にも無い

 

部下の一人がポツリと呟く

「だから、軍が戦ってる、勝ち負けじゃない、『盾』になるために・・・・・・戦っている限りは奴らが民間施設を襲う事は後回しになるから・・」


 


「テンカワっおいっ、テンカワっ!!」

人影をみつけ飛び出すようにしてクロッカスに向かっていくアキトの陸戦エステ

遠くから偵察してもう少し様子見の筈が、予定変更を余儀なくされる

「くそっ、あの馬鹿」

すぐその後を追うリョーコ機

「周りに敵の隠れていない保証は無いっに、まったくっ」

呆れつつも面倒見の良いリョーコ

もちろん周辺への警戒を怠らない

 

人影を見つけたアキトは、思わず飛び出してしまっていた

ようやっと辿りついた火星

もしかしたら、居るかもしれない生存者

色々な事が頭をよぎり、結果として行動は・・・

 

「まったく、これじゃルリの奴が心配する訳だ」

呆れつつリョーコ

もっとも、後でこの話をヒカルやイズミにした時

「ふ〜ん、何時もならリョーコが真っ先にやりそうなことなんだけどなあ(苦笑)」

「うっ(汗)」

等と言われてしまったのだが

 

幸いにも、今回は敵は居なかった

そして、火星で最初の生存者達の発見

その内一人の名は『イネス・フレサンジュ』


 


少し、地球での話に戻ってみる

地球に火星出身者が少ないとは言え、居ない訳ではない

だが、『ネルガルに協力してくれる』火星出身者となれば話は難しくなってくる

ましてや、『ボゾンジャンプの機密』を守りつつ、かつ『死を伴うかもしれない危険な実験』に協力してくれる人材となれば

『火星出身者=ジャンパー』と言う図式は、今はまだ仮説の段階でしかない

サンプルはまだアキト一人しか居ないのだから

その事でエリナを頭は悩ませていた

火星出身者のスカウトは積極的に進めたいが、あまり表だって出来る事ではない

ともかく、地球に居る火星出身者のリストと周辺を調査しまとめて行く内に有る事に気付く

「なに・・これ?」


 


「火星の人達って食べ物とかどうしてたのかな?」

メグミが疑問に思って居た事をポツリと呟く

「火星のコロニーには、備蓄食料が地下に数年分保存されている事が多いそうです、テラフォーミング初期の過酷な火星の環境下で万一の事があった時の名残で」

ルリが答える

「じゃあ、もしかしたら結構生き残ってる人が居てくれるかもしれないんだ」

明るい顔になるメグミ

「・・・・」

だがユリカは暗い顔をしている

「どうしたんです、艦長?」

怪訝な顔で尋ねるメグミ

「・・うん、火星の人達って生きてくれていても、生きていく為に凄く辛い思いをしてきたんだろうなって」

「そう・・ですね」

「食料に囲まれて餓死をするって知ってる?」

「なんですそれ?」

「食べ物が「有る」事と「手に入る」事は別なの」

「・・?」

「もし、コロニーの地下に食べ物が有っても・・その事を知っている人が真っ先に死んじゃったら、コロニーの人達には食べ物は手にはいらないから飢え死にしちゃう」

「あっ」

「食べ物が有る事が解かっていても、その食べ物がシェルターとかの中にあって、扉を開く方法が無ければ、食料が有る事が解かっているのに手に入らない」

「そう・・ですね・・」

「火星の人達って、生きていたとしても、そんな事を経験しながら生きて来たと思うんだ、だから・・・・」

「助けたいよねそんな人達を」

「はい」

本当に「助けたい」と思うメグミ

自分が以前言っていた事の浅はかさに少し自己嫌悪を感じながら

「戦艦に乗ればかっこいい人い〜〜ぱい居ると思ったんだけどな」

そんな軽い気持ちでナデシコに乗る事にしたメグミ・レイナード

あの頃の私は、ナデシコのやろうとしていることの「重さ」が少しも解かっていなかった・・・と

 

そんな会話のしばらく後

 

「はあ・・・」

「どうしたんですメグミさん、ため息なんて付いて」

「んっ、艦長って凄い人だなって」

「そうですね・・・」

「私なんて、ただ生きててくれればって思ってただけで、そこまで考えなかった・・」

ルリは内心思う

私なんてもっと酷いです・・と

以前なら、「人の生死」を単純に「数」でしか考えなかった

誰か一人の犠牲で多くを救えるのなら構わない筈だと

でも、多くの人を犠牲にしてもたった一人を助けたくなる事も有る事だって今なら解る

艦長はその事が解かった上で、尚、「両方を助ける」事を考え、「いざとなれば、テンカワさんを見捨てる覚悟」をしている

 

「でも・・ルリちゃんも凄い人を恋敵にしちゃってるけど、大丈夫なの?」

メグミに唐突に話題を変えられ焦るルリ

「えっ、あっ、あのそれは(赤)」

「私がアキトさんなら、艦長選んじゃうかも」

「・・・・」

ルリだってそう思っている

自分に選んで貰えるだけの理由が有るとは思えない

「でも、なんであんな凄い人がアキトさんの事好きなんだろ・・・・・釣り合わないと思うんだけどなあ、アキトさんってなんか情けない処有るし・・」

メグミが何気なく言った台詞だがムッとしてしまうルリ

そして・・

「あっ、ルリちゃんごめんなさい(汗)」

その時のルリは、はっきりと「怒った」顔をしていた

ルリの怒った顔を見たのは、もしかしてメグミが最初だったかもしれない

「しりませんっ」

メグミはその後半日ほど、(プライベートでは)口を聞いて貰えなかったとか

 

もっとも、この事で、アキトを戦場に出している怖さが軽減されルリはかなり楽になったのだから、世の中は何が幸いするかわからない

 

 


 


「さて、そろそろ地下の探索を始めるぞ」

「はいっ、隊長」

部下を一列に並べ指示をしていく

「今までは、バッタ達も居なかったが地下に潜り込んだ奴らが居ないとは限らんっ、十分注意しろよっ」

「はいっ」

「バッタだけじゃない、辛い目に有ってきた人間って言うのは疑り深くなって暴徒化しやすいって事も忘れるなっ」

「はいっ」

「さっき誰かが言ってたな、俺達は「盾」だって、「盾」って言うのはボロボロにされてもそう簡単に壊れちゃいけないって事も忘れるなよっ、なにかを『守る』為にはな」

「はいっ」

「よしっ、いくぞっ」

 

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後書き

結構、軍人の死って軽視されてる事多い気がするんですよね

でも、「兵士だって人間」だって事は忘れて欲しくないです



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