『生存者が居なかった』事と『生存者がみつからなかった』は別の事

広く薄く捜すのか、狭い範囲を重点的に捜すのか

どちらの方法が火星の生き残りの人達を見つけられる可能性が高いのか?

多分、答えはでないでしょう

時間と人手の尊さは、こんな時には実感します

こんな時にも、『運』の要素は大きい・・・・

でも、『運』に頼ろうとする人に幸運の女神は微笑まない

 


機動戦艦ナデシコ再構成

The fiance of a guinea pig

第16話


探索隊がユートピアコローに向かっている頃、ナデシコはただ待っている訳ではない

ユートピアコロニー周辺とは別に、まずナデシコが向かう場所は、オリンポス山の研究所

上空から、地上を探索しながらの移動

生存の可能性を示す証拠が見つかったユートピアコロニー周辺には、徒歩の部隊によって『狭い地域を重点的に探索』

ナデシコは、上空から『広い場所を薄く探索』

 

 

 

「・・どっちみち、テンカワ君をナデシコから降ろす訳にはいかないよ、彼はエステのパイロットなんだし」

オペレーター席のルリを眺めつつ、会議の一こまでのジュンの言葉を思い出すユリカ

「探索隊の人達は、元々ナデシコの運用には無関係な人達だから、彼らをナデシコから降ろしてもナデシコの戦力には影響は無い、でも、テンカワ君はパイロットだろ、パイロットが一人減る事は、ナデシコに致命的な結果になりかねない・・戦力の分散は良くないなんて、基本じゃないか」

 

ユリカは思う

確かに私はアキトの事になると、冷静さを失う

そんな簡単な事を忘れているようなのだから

これでは『ナデシコを守る』事が出来ない・・・『艦長として失格』と言われても仕方が無い・・・

そして、ユリカの思っているアキトは、ナデシコを危険に晒してまで自分を助けてくれた事を喜ぶような性格ではない

自分を見捨ててでもナデシコを守ってくれるユリカ

・・・・・それが、アキトを振り向かせる事が出来る自分なのだとユリカは思っている

「ルリちゃんには・・・出来るのかな・・・・・・」

出来るような気もするし、出来ないような気もする

ルリも同じ悩みを抱えているとは、思っていなかったが

そして、アキトの事

 


 


火星降下の前日、ユリカがルリを尋ねていった辺りと同じ頃

「テンカワ君、話があるんだ」

通路でジュンに呼びとめられ、振り向くアキト

「単刀直入に聞くけど、ユリカの事どう思ってる?」

真剣な眼差しで尋ねるジュン

「・・ユリカは幼馴染・・それだけだ、俺には婚約者がいるって知ってるだろ・・」

アキトはそう答える事に決めた

 

・・・・ユリカ以外の相手には・・・・・

 

ユリカの泣き顔を浮かべてしまうと、どうしてもユリカの前でだけは言えそうにない・・

それでも、『ルリを守る』為にははっきりと婚約者として振舞う必要がある

そう、「ルリちゃんを守る為」なんだ、俺にはそんな趣味は無いんだと心の中で繰り返すアキト

「ルリに嫌われたく無い」

その気持ちが大きくなっていく事を内心で自覚と否定をしながら

等と思っていると

 

「まあ・・・君の趣味の事はおいておいて」

「うっ(汗)」

『趣味』の事を言われて、内心、(涙)なアキト

覚悟はしているとは言え、やはりロリコン扱いは辛いモノがある

 

その後、ジュンに話してもらったのは会議の事

「そんな事が・・・・・」

「ああ、だからテンカワ君には無茶なマネはしないで欲しいんだ、君が無茶をすればユリカも無茶をしかねないし・・・それはナデシコを危険に晒しかねない、ナデシコの副長として君には言っておかないとならない・・・それに・・・」

「なにより、君に不幸があればユリカが泣くから」

小声でぼそっと呟くジュン

 

だが、アキトにはその呟きが聞こえてしまった

つくづく、アオイジュンと言うのは良い奴だと思う

 

「でも、俺が居なくなればユリカはジュンの方を見てくれるかもしれないんだぞ?」

『趣味』について言われたしかえし

「なっ、なに言ってるんだ君はっ、ぼっ僕はナデシコの副長として(汗っ)」

焦るジュン

ジュンのユリカに対する気持ちは、『ユリカ以外には』みえみえなのだが・・・・本人は認めたく無いらしい

この辺りをはっきりと出来れば、ジュンの気持ちもユリカに伝わったのかも知れない

自分の好きな女性が他の男に夢中で、しかも、その男が「11歳の少女と婚約」していて「ロリコン扱い」されているテンカワアキト

この条件で、尚、恋敵のアキトの心配が出来る

そして、その後もナデシコの副長として「ナデシコを」そして、「ナデシコのクルーとしてのアキト」を守る事に徹する事になるジュン

考えてみればたいしたもの

「まあ、俺も無茶はする気はないさ、自分の命は惜しいから」

「ああ、頼むよ、それと・・・・」

「?」

「いや、何でもないんだ」

 

「ユリカを泣かせないで欲しい」

それが、ジュンがアキトに言おうとした事

ユリカに想いを寄せつつも、「アキトに振られて泣くユリカ」も見たく無い・・・

 

 

アキトは思う

皆、俺の事を買かぶり過ぎだと

自分だって命は惜しい、無茶なんてする気は無い

・・・・・

アキトが、「人を助ける為には、身体の方が先に動いてしまう」タイプだと言う事は、ユリカやルリの方が知っている

アキト自身に自覚は無くても

 


 


生存者の捜索隊は、ユートピアコロニーの探索を始めていた

「隊長、向うの方で生存者は発見出来ますかね?」

「さあな、人を見つけるなんて結構難しい事だし・・それに、もしお前が火星の生き残りだったらナデシコを見つけたらどうする?」

「自分なら、とりあえず身を隠して様子を伺います、見た事も無い戦艦をみて、それが敵なのか味方なのかなんて解かりませんから」

「だろ、だから上空から探索はそんなに発見率は高くない・・もっとも・・だからと言って0%じゃ無い以上止める訳にもいかんし、・・・・・生存者が見つからなくても生存者が居たかも知れない痕跡ぐらいなら、むしろ上空からの探索の方が見つけやすいかもしれんしな」

「例の、「SOS」みたいな事もありますしね」

「そういうこった、あの艦長

『やれるべき事は全てやります、ほんの僅かでも火星の人達を助けられる可能性のある事なら』

だとよ、若いのにたいしたもんだ」

「しっかし、あの艦長テンカワアキトみたいなロリコン野郎の何処が良いんですかね、美人なのに勿体無い」

「人の好みは人それぞれって事だろ(苦笑)、お前はああ言うのが好みか?」

「ええ、実は結構(笑)」

 


 


オリンポス山の研究所へと向かうナデシコ

だが、その途中

 

「艦長、識別信号が、この反応は地球の軍船のものです」

ルリからの報告

「識別信号?、軍は撤退してるのに」

「ちょっと、待ってください、この識別信号は・・・・・・・クロッカス・・・・なんで」

「クロッカス?」

驚くメグミ

「何で火星で?」

とミナト

地球でチューリップに飲みこまれた護衛艦

クルーたちに『人の死』を意識させた船

ブリッジに緊張感が走る

「ルリちゃん、近くに敵影は?」

「半径40km以内には、レーダーに反応はありません、ただ」

「・・・クロッカスの近くにチューリップらしき反応が一つ・・・・・相当近い位置・・・いえ、ほとんど並んでます、この反応だと」

「艦長、どうするんですか?」

メグミが尋ねてくる

もしかしたら、クロッカスのクルー達は生きているかもしれない

いや、「生きていて欲しい」

そんな気持ちが湧き上がってくるメグミ

 

ユリカは悩んでいた

すぐにでも、クロッカスに向かいはしたいが・・問題はチューリップらしき反応

無尽蔵に兵器群を吐き出してくるチューリップが近くに居たのでは、クロッカスのクルー達が生きていたとしても救出作業は危険な物となりかねない

「でも、なんでクロッカスのそんなに近くにチューリップ?、もしかして、そのチューリップから吐き出されたのかなクロッカス」

とミナトが疑問を口にする

「地球の木星トカゲ達は、この火星から送り込まれてるって事ですか?」

とメグミ

「そうとも限らないんじゃないかな、あの時飲み込まれてたもう一隻の戦艦、パンジーだったけ?、が見つからないみたいだし、出口が色々じゃつかえないよ」

「ともかく、この目で見てみないと解からないか、エステバリスで先行偵察をします、メグミさん至急パイロットをブリッジに呼び出して」

 


 


クロッカスの周辺まで近づいたアキトとリョーコの陸戦エステ

チューリップの反応はあっても、他の敵影の反応が無い理由はすぐにわかった

「これは・・・完全に出口が塞がってるな」

チューリップに約3分の1ほど飲みこまれた状態で地面に有るクロッカス

クロッカスに蓋をされ、他の木星トカゲ達が出てこれなかったのだろう

「なら、このチューリップは安全かな、どうしようかリョーコちゃん・・・・ん?」

「どうした、テンカワ?」

「人影?」

「人影?、クロッカスのクルーか」

 


 


同じ頃、ブリッジのルリ

これほど、『戦い』が怖いと思った事は今まで無かった

 

だが、火星降下前日のユリカとの会話の続きを思い出す

 

「もし・・・ユリカの命令のせいでアキトが死んじゃったら・・・ルリちゃんはどうする?」

「ユリカはナデシコの艦長としてアキトを特別扱いする訳にはいかないんだ・・・ユリカやルリちゃんが、アキトを大切に思ってるみたいに他のパイロットの人達を大切に思ってる人も居るんだから」

「危険な事を承知の上でアキトに命令しないとならない事もある・・・」

「もし・・・ユリカの命令のせいでアキトが命を落とすような事になったら・・・ユリカの事恨んでも罵ってもいいから・・」

 

そして、その言葉どうり今回の偵察にアキトを出したユリカ・・・

 

「・・・・テンカワさんは、自分を特別扱いしてもらって喜ぶような人じゃありませんから・・」

あの時、ルリはそれを答えるのがやっとだった

火星の人達の為に、自分のような「子供」との婚約すら受け入れ・・・

ネルガルから自分を守る為にクルーからの白い目にも耐えてくれているアキト・・

 

考えてみれば、私は随分とテンカワさんに酷い事をしている

艦長にしっかりとして貰う為とは言え、自分とテンカワさんの婚約の事をあっさりとばらして

その結果は、ナデシコ艦内でテンカワさんが白い目で見られる事に

でも、その時はその事に何も感じなかった

 

今にして思えばもっと別のやり方もあったかもしれない

そうすれば、テンカワさんが白い目で見られる事も無かったかもしれない

私がやった事は、嫌われても仕方が無いぐらいの事・・・それなのにテンカワさんは・・

 

今のルリにとっては、『アキトの婚約者』の位置は、『失いたく無いモノ』で有ると同時に『重荷』

 

艦長は・・・自分で言った通りに、テンカワさんに先行偵察の任務を与えた

きっと艦長も辛い思いをしている

だから・・

私も、オペレーターのやるべき事をやろう

どんなに怖くても・・・・・・どんなにテンカワさんの事が心配でも・・・

 

次の話へ

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後書き

この話、ルリ×アキトになるから、ユリカ×ジュンにしても良いんだけど・・・

どうしても、ユキナ×ジュンが捨て切れない私

いや、妙に好きなモノで、ユキナ×ジュンって(苦笑)



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