地球には、大量のチューリップが送られて来ています

無尽蔵とも思える、兵器群を吐き出してくるチューリップを先ず叩く事が戦いの要なのですが

地球側の現在の兵器では、それも難しいようです


機動戦艦ナデシコ再構成

The fiance of a guinea pig

第5話


チューリップに吸いこまれていく、パンジーとクロッカス

地球でのテストと訓練を兼ねた航行中のナデシコに、応援要請が入ったのは、ほんの数分前

 

「ルリちゃん、グラビティブラストはチャージ出来てるっ」

「出来てますっ、でも、間に合いませんっ」

 

ほんの数分・・・いや、コンマ数秒の差で明暗を別ける場所が戦場

「後10秒・・ううん、5秒でも早ければ・・・・」

悔しそうなユリカ

「今、撃ったら・・・巻きこんじゃう・・・・」

可能な限り、急いで来ては見たが間に合わず、チューリップに飲み込まれるパンジーとクロッカスをただ見ているしかないナデシコのクルー達

「さっき・・・話してたのに・・・・」

パンジーからの応援要請を受け直接彼らと話したメグミには、特にショックな光景

そして、無線で入ってくる、パンジーとクロッカスのクルー達の悲鳴が途絶えた

 

以前は、敵の木星トカゲの出入だけだっのだが、最近、地球側の戦艦等がチューリップに飲みこまれる事が多発している

木星トカゲ達が何故そんな事をするようになったのかも、そして、チューリップに飲みこまれた戦艦等がどうなってしまったかも誰も知らない・・・

 

 

「ルリちゃん、他に敵影は?」

「確認できません、あのチューリップだけです」

「了解、グラビティブラスト、撃て〜〜」

 

チューリップが機動兵器を送りこむ前に、一気に勝負をつける

面白味は無いが堅実な戦い

ナデシコはこの後、しばらくはグラビティブラストを撃てない

大気圏内での、グラビティブラストの連射性

相転移エンジンの出力

実戦でのナデシコの操作性

諸々のデータを集めつつ、火星へ出発する日が近づいていく

今回の戦いでの、ナデシコの損害は0

だが、クルーの心には・・・・・

 


 


 

 

 

「ぐわ〜〜〜〜、このダイゴウジガイ様に出番が無い〜〜〜」

 

・・・・・・・(汗)

馬鹿はほっといて・・・

 

 

今までの何度かの戦闘

ナデシコ最大の利点は、正規の訓練を受けた訳でも無いクルー達が、ほんの僅かな訓練で動かせる用になってしまう、操作性だろう

『一人前の兵士』を育てるための費用は、時に兵器を作り出す為の費用を超える

たが、『人の心』までは・・・

 

メグミは沈んでいた

今まで、『人の運命』など、自分の人生に重くのしかかってくる事など無かった

後5秒早ければ・・・・・・

それは、通信士である自分が短縮する事も出来たかも知れない時間

だが、けっして取り戻す事の出来ない時間

 

そして、操舵士のミナトも・・・・

自分の操艦がもっと上手く出来ていたら・・・と

 

とは言え、メグミもミナトも良くやっている

元々、性格に問題が有っても腕は一流のメンバーを集めたのだ

今の時点で、それ以上を望むのは酷というものだろう

 

「どうしたんです、皆さん?」

オペレーター席のルリが怪訝そうに尋ねる

「うん、なんでもないよ、ルリちゃん・・・」

ルリには皆が何故そんなに沈んでいるかが解らない

『人の死』なら慣れてしまった・・

自分と同じマシンチャイルド達・・・・

ルリ自身も、「自分は短命かもしれない」と思っている

もっとも、ルリはこの後アキトと生涯添い遂げ、77まで生きる事になる

今のルリはそんな事を想像もしなかったが

 

「皆さん、聞いてください・・・」

沈んでいるブリッジの雰囲気を察した、艦長の声が響く

「皆さんは良くやりました、もし、問題が有ったとしてもそれは、この艦長であるミスマル・ユリカの責任です」

「艦長、そんな事は・・・」

とメグミ

「いえ、皆さんの訓練も、指揮も、艦長であるこのミスマル・ユリカがするべき事です」

・・・・・立派な艦長ぶりである・・・・

ルリに言われた事が、余程効いたらしい

だが・・・・

(・・・アキトはしっかりした女性が好きだって言ってたから、これでアキトのハートをゲットできるかな♪)

本音の一部にこれがあったりもする(苦笑)

もっとも、ユリカがクルーを心配しての発言で有る事もまた事実

後日、ユリカ主導で、訓練が行われる事になる

ほんの数秒を縮める為の訓練が

 


 


艦長の役割は、『戦闘中』だけのものではない

『戦闘以前の準備』、『平時に何をしておくか』も大切な役割

はっきり言って、TVでのユリカのように、戦闘があろうと無かろうとアキトを追いかけ回す事を優先させるようではいけないのである(笑)

 

「でも、ジュン君、本当にこの手の計画立てるの上手いよね♪」

副長であるジュンと共に、訓練計画を練るユリカ

この手の、目立たないが重要な役割となると、ジュンは強い

逆に、目立つ場所では・・・・・

まあ、ジュンだし(苦笑)

 


 


そして、1日が終り、何故かルリの部屋に居る、ユリカ

 

「ねえ、ねえ、今日のユリカどうだったかな?艦長らしかったかな?」

やたらと能天気な声で、ルリやアキトに尋ねる

「はあ、今回は随分と艦長らしかったですが(苦笑)」

「しっかりしてたよ(苦笑)」

内心、(11歳の少女に、20歳の女がそんな事聞くなよ)とか思いながら答えるアキト

「ホント?、よしっ、アキトのは〜とをゲットに一歩近づいた♪」

婚約者同士の目の前で、そんな事が言えるユリカは、大物である(苦笑)

「でも、まだまだですよ、私達はまだ結果を出してませんから」

冷静に答えるルリ

ある意味異様な光景

普通ならこういう場合は、『修羅場』になる物だが・・・

「うん、火星目指して頑張ろうね、ルリちゃん♪」

その、片鱗も見えない・・

今の時点では婚約者とは言っても、ルリにもアキトにも恋愛感情は無い事もあるだろう

とは言え、自分達の気持ちが少しずつ変化してきている事に気が付いて居ない二人

 


 


その晩

今は別々のベッドに寝るようになり、安眠出来るようになったアキト

艦内でのロリコン扱いについては・・・涙を飲んで忘れる事にしている

ルリは、別に一緒に寝ようと別々に寝ようと、どっちでも構わない・・・はずだった

 

 

「ねえ、ルリちゃん、今日泊まって行っても良いかな?」

「はい?」

いきなり脈絡も無く、そんな事を言い出すユリカ

最初は、ルリ達を監視でもする為かと思ったのだが・・・・

どうも、ユリカは脈絡も無く、ただ、そう思っただけらしい

「でも、寝る所ありませんよ?」

「あっ、良いよ良いよ、そこら辺で寝てるから」

「駄目ですよ、ユリカさんは仮にも艦長なんですから、そんな扱いをする訳には・・・・・そうだ」

「?」

「私とテンカワさんが一緒に寝るから、ユリカさんは余ったベットで寝てください」

「だっ、駄目だって、だったら、俺がそこらで寝る(汗)」

「え〜、だって貴重なパイロットのアキトが風邪でもひいたら、ユリカ困っちゃうけど」

「じゃあ、ユリカさんとアキトさんがベッドを使ってください、私が外で寝ますから」

「そんなのは駄目だって」

「駄目だよ、ルリちゃんだって貴重なオペレーターなんだから」

「・・じゃあ、ユリカさんとアキトさんが一緒に寝ます?、私が一人で寝ますけど」

「えっ(赤)・・・・でも・・・私・・・アキトだったら良いかも(ぽ)」

「もっと、駄目だってばっ(汗)」

アキトとて男、間違いを犯さない自信は無い

ユリカが自分の部屋に帰れば良いだけなのだが、ユリカはどうしても泊まりたいらしい

「う〜ん、じゃあ、ルリちゃんとユリカが一緒に寝て、アキトは一人で寝るって事で良いかな」

 

結局、その辺りに落ち着いたらしい・・・が

 

 


 


「ゆっ、ユリカさんくるしっ・・・」

ユリカの寝相はやたらと悪かった・・・・

「う〜ん、アキト〜〜」

どんな夢を見ているのかは解らないが、ルリをしっかりと抱きしめ、その豊満な胸をルリの顔面に押しつけている

「くっ・・・くるし・・」

ルリは窒息しそうである

なんとか、ユリカの腕を外そうとするが、いかんせん、非力

人生の内で、アレほど死が近づいたと感じた瞬間は無かったと、後に語っている

それでも火事場の馬鹿力と言う奴だろうか

かろうじて、ユリカの腕を解くとベッドから這いずり出す

「・・・・・しっ、死ぬかと思いました・・・・・(汗)」

息を荒げ、呟く

『漢』なら本望な死に方の一つかも知れないが、ルリは『少女』である(笑)

 

このまま、ユリカと一緒に寝ていたら明日の朝を生きて迎えられない

本気でそう思ったルリ

「仕方がありません、テンカワさんには悪いですが・」

今度は、アキトのベットに潜り込む

しばらくアキトと別々に寝ていたルリが、不思議に思っていた事がある

 

「テンカワさんと一緒に寝ていた時の、あの、安心感はなんだったんだろう?」

アキトのベッドに潜り込んだルリは、今日も安心して眠る事が出来た

 

次の話へ

The fiance of〜トップ// b83yrの部屋// トップ2


後書き

ほんの僅かな時間が、実戦でどれだけ大切かって一寸書いてみたくなりました



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送