「リョーコさん・・・・・・凄いですね・・・・・・」

呆れながら、リョーコの貰ったチョコを見ているルリ

「うっ・・・嬉しくないぃぃぃぃぃ、「女」だぞ俺はぁぁぁぁぁぁぁ」

絶叫するリョーコ、心底疲れ果てているようだ

「そこで、「俺」 とか言っちゃうから、チョコが増えるんですよ」

「はっ、そうかっ、お・・いや、私は」

・・・・・・・そして、それから、数年後

「『俺』から『私』に直しても、チョコ減らないじゃないかぁぁぁぁぁぁ」


それぞれの2月14日


ルリは、リョーコのそんな悩みを苦笑いしながら見ていた

こういう事は、ルリにどうこう出来る事でもない

また、『持って生まれた性格』というモノもある訳で、リョーコ自身にもどうにもならない

「まあ・・・・・諦めて、受け入れるしか無いんじゃないですか」

ルリにとっては、所詮は人事であるし、実際、「気にしないようにする事」ぐらいしか対応策は無いのだ

しかし・・・・・

 

 

「同士(にやり)」

「・・・・・・・・・・(汗)」

心底嬉しそうな顔で、にんまりしながらのリョーコに話しかけられるルリ

自分も、バレンタインに『女性から』チョコを貰って立ち尽くすルリ

女友達や職場での、軽い気持ちで渡すチョコならば、問題は無い、そんなモノならばルリも今まで沢山もらっているが

頬を赤らめ、『恋する乙女の瞳』で、渡されてしまったのでは・・・・・しかも、その場面をたまたま通りかかったリョーコに目撃されてしまい

「なっ、何かの間違いですコレはっ、私にはちゃんと、アキトさんって夫もいるのにっ(汗)」

「ルリ・・・・・・現実を受け入れろ、まあ、「気にしないようにすること」ぐらいしか無いんじゃないか」

本当に・・・・本当に心底嬉しそうなリョーコ

「まっ、ルリが格好良く見える女だって沢山いるさ、その歳で艦長なんてやってて、男から一目置かれてればな」

「なにせ、パイロットのあたしよりも、『偉い』んだからな、ルリは」

そう、16歳で試験戦艦とはいえナデシコBの艦長職につき、下の者に命令する立場の女性

となれば、『憧れ』を持つ女性も出てくる訳で・・・

その中には、『そういう趣味』の女性がいたとしても・・・・

「わっ、私にそっち方面の趣味はありませんっ(汗っ)」

「あたしにだって、そっち方面の趣味は無いぞ、まあ、諦めろ」

リョーコの言っている事は、全て、昔ルリがリョーコに言った事である

まさか、こんな形で復讐されてしまうとは・・・・『口は災いの元』とはよく言ったモノ

とはいえ、ルリにだって悪気があった訳では無い、『そうとしか言えなかった』だけの話であって、ただ・・それでも、自分が言われてしまう立場となると

「う〜〜〜・・・・・・・・・」

普段のルリからは想像も出来ないような、うろたえよう


 


さて、バレンタインで、普通とは違う悩みを抱えている者は、他にも居た

それは、バレンタインの数日前

最初は、一寸した冗談、何気ない一言・・・・・の筈だったのだが

「ジュン君って、チョコ貰うよりも渡す方が似合いそうねえ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ、くっ・・・・」

つい、女装したジュンを想像してしまい、笑いが止まらなくなってしまったユキナ

「にっ、似合う、物凄く似合うっ、ミナトさん笑わせないでっ」

「あの顔で、頬を赤らめながら、チョコ渡したら、そういう趣味のない男の人でもくらっときちゃうかも」

「やめてぇぇぇぇぇぇぇ」

息が出来ない程、笑ってしまうユキナ、余程ツボにはまったらしい

しばらく、呼吸も出来なくなるほど笑った後

「ハアハア・・・みっ、ミナトさん、ひっ・・ハアハア・・人を笑・・くっくくく・・笑い死にさせる気っ・・・・・・くっ」

「だっ、駄目だっ、またおかしくなってきたぁぁぁくく・・・」

そんなユキナをみて更に追い討ちをかけるミナト

「ユリカさんが男で、ジュン君が女なら、上手くいってたかもジュン君・いや、ジュン「ちゃん」って男を立てるタイプでしょ」

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、お願いだから、やめてぇぇぇぇ、死ぬっ、本気で笑い死ぬぅぅぅぅ」

ようやっと、笑いが収まってきたというのに、これでは

最早、拷問でもされているぐらいの気持ちで、息も出来ずに大爆笑しているユキナ

「で、今年も渡すんでしょ、チョコ」

流石にかわいそうになって来たミナトは、話題を変えてみる

「だっ、駄目っ、しばらくはジュンちゃんに会えないっ、ジュンちゃんの顔みたら、絶対思い出して笑っちゃう」

「それもそうねえ・・・・・うーん、困ったわ」

まさか、自分の何気ない一言から、こんな事になろうとは思ってもみなかったミナト

ジュンと会ったユキナがいきなり大爆笑すれば、「何事か?」 と思うだろうし、気分の良い物でもないだろう、となれば、二人の仲も怪しくなりかねない

ユキナは、「恋人」だと言張っているが、ジュンは、「恋人?」

ジュンも、ユキナを嫌っている訳でもないし、むしろ、惹かれている事は端で見ていれば解るが、ジュン自身に自信が無い為に、いまいち、その仲は進んでいない

そんな関係で、大爆笑などされてしまえば、「やっぱり、ユキナちゃんは僕をからかっていただけなのか」と勘違いされかねない


 


「と言う訳で、協力して欲しいのよ、ルリルリ」

「それは・・・・仕事に差し支えない範囲でなら構いませんが」

「大丈夫、ユキナの代わりにこのチョコをジュン君に渡すだけだから、本当なら、ユキナ本人が渡す予定だったんだけど」

「それは・・・仕方ないと言えば仕方ないかもしれませんが・・・・・馬鹿な理由ですね」

「言わないで・・・・・・私だってこんな事になるとは思ってもみなかったし(苦笑)」

「まあ、確かに・・・・・・アオイ中佐はチョコ渡す方が似合うかもしれませんが・・・くすっ」

流石のルリも、失笑が漏れてしまう

「ユキナも、それぐらいで済むと思ったんだけど・・・・まさか、あそこまでうけるとは(苦笑)」

 

ジュンにユキナからだと渡してくれと頼まれたチョコレート

この事は、夫のアキトにも言ってある

下手に隠して万一勘違いされるよりも、先にちゃんと話しておいた方が、誤解も招かない

普段ならば、この手の事は忘れないルリ

しかし、今回は、自分が、『女性からの本命チョコ』を貰ってしまった事で何時になくうろたえていた

予断だがルリは自分ががアキト争奪戦の勝者になれたのは、『アキトにとって自分が一番魅力があったから』とは思っていない

では何故?、問われれば、『漁夫の利』と答えるだろう

ユリカとメグミのアキトの奪い合いを尻目に、こっそりと近づき、意識的に『二人の逆』をやったのである

二人のアキトの奪い合いに憔悴しきっていたアキトに、これは効いた

まともに張り合えば、どう考えても勝ち目の無い、当時13歳のルリに、『時間的猶予』を与えてくれたのだ

ルリは、『漁夫の利』と言うが、『作戦勝ち、粘り勝ち』と言った方が実態には合っているかもしれない

そんな計算高いルリではあるが・・・・・流石に、自分がチョコを貰う立場になってしまうのは、思ってもみなかった事で・・・・・

故に、つい、『忘れて』しまったのだ、ユキナのチョコの事を


 


それに気づいたのは、自宅に帰った後

「あっ・・・・・・・しまった(汗)」

「どうしたの?」

ルリが珍しく、うろたえている様に、訝しがるアキト

「忘れ・・・・・ちゃった、ユキナさんのチョコ(汗)」

「えっ」

ルリにしては珍しい事にと、驚いてしまうアキト

「どうしたの?、仕事がよっぽど忙しかったとか?」

「いえ・・・そうじゃないんですけど・・・・その・・・・・・(赤)」

「あの・・・・・笑わないで聞いてもらえますか?」

そして、今日あった事をアキトに話すルリ

「本命チョコって・・・・・・・・・・・・・ぷっ」

「あ〜〜〜、やっぱり笑った、アキトさんの嘘つき」

「いや、ごめん、ごめん、でも、どうする?」

「それは・・・・・どうしましょう・・・」

「全部、正直に言って謝るとか」

「それは、絶対に嫌です、ユキナさんにからかわれます」

ユキナとルリは、腐れ縁というか、お互いにからかいあう事も多い、ある意味では、ライバルのような関係

もし、ユキナに、「女性からの本命チョコ」の事がばれたりしたら、どうなるか

「ユキナさんだったら、絶対に言いふらしますっ(きっぱり)」

まあ・・・『女性からの本命チョコ』に関しては、ルリの落ち度ではないだろうし、実はそれが広まったからといって、ルリ自身がしっかりしていれば、なんの問題も無いのだ

しかし、それでも、『からかわれる理由』を増やしたくは無い、特にユキナには

人の心というものは、中々複雑なモノである

結局、ユキナのチョコの事は、そのままうやむやになってしまうのだが・・・それば、思わぬ効果を産む

『何時もならば、チョコをくれるユキナちゃんが、今年はくれない、しかも、なんだか最近避けられている』

こうなると、ジュンとしてはかえってユキナの事が気になってしまう

故に、ジュンとユキナの関係が、『チョコを渡さなかった事』で、ほんの少し進むのである

・・・罪悪感を抱いたルリが、多少、後押しした事もあるが・・・

その後、実はチョコ渡さなかった事が、ユキナにばれた時、ルリはこういった

「いっ、いや、こうなるって見越してわざと渡さなかったんだけど、あははははは(汗っ)」と

結果良ければ、全て良しっ・・・・・・・・なんだろうか?(苦笑)


後書き

え〜、この話は、完全に行き当たりばったりです、ええ(苦笑)

元々は、『チョコを貰うヒナギクさん(解る人には解る)』から、ヒントを得た話なんですけど

生徒会長のヒナギクさんがチョコを女性から貰ってる

     ↓

そういや、ルリも『艦長』か

     ↓

ルリの歳で、『艦長』なんて地位について、男も含めた部下に命令を下す姿に『憧れ』を持つ女性が居たっておかしくないのでは?

     ↓

となれば、『ルリが女性から本命チョコを貰う』こともありえるかも

って、連想していったんですよ、ただ、時間が無いんでどうしてもその先を詰められない

で、『ともかく書き初めて』『行き当たりばったりで』話を進めていったら、こんな話に(苦笑)

書いたb83yr本人ですら、こんな流れになってこんなラストになるとは、思ってもいなかったという(苦笑)

次話へ進む

短編の部屋// b83yrの部屋// トップ2


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送