私は・・・・・夫のテンカワアキトの事を愛していた訳ではなかった・・・・


Acting


私が、テンカワアキトと結婚にまで至った理由は、何の事は無い、単なるナデシコクルー達への反発

特に、艦長ミスマルユリカと、メグミ・レイナードへの反発だった

私は、ただ、少々嫌がらせをしてやりたかっただけなのだ

余計な仕事を増やしてくれる二人に

とはいえ、当時の私は、まだ12歳、どう考えても夫がまともに相手をするとも思えなかった、とはいえ、流石に12歳の私に愛情を向けるまでは行かないだろうが、気にしないでいられるような性格でも無い事も、また、見越ていた

そう思えばこそ、かえって安心して、二人への嫌がらせの為に、アプローチをかける事が出来た

解っていたからこそ、私は

「私は、アキトさんの事が好きです、こんな子供に告白されても迷惑でしょうけど・・・」

・・・・・・・・

結果は、私の思い通り

その後も、あくまでも、控えめな自分を演じ続ける私

恋は盲目ともいう、もし、私が夫の事を本当に好きなったのならば、こんな事は出来なかったかもしれないが、内心では、なんとも思っていない私には、簡単に『演技』が出来た

私以外の女との仲が、進みそうになっていた時には、『悲しそうな顔を作り』祝福の言葉すら送った

効果は絶大、結局、夫は誰も選ぶ事が、出来なくなってしまったのだ

別に、自分を選んでもらう必要など無い、ただ、ミスマルユリカやメグミ・レイナードが、選ばれさえしなければ、それでいい、もし、選ぶにしても、それを少しでも遅らせる事が出来るだけでも良い

私は、内心ほくそ笑んでいた

とはいえ、誤算もあった、馬鹿げた話だが、自分とて何時までも子供では無い事を忘れていたのだ

自分では、『子供』である事を利用しているつもりが、夫の目からは、私の成長に伴い、いつの間にか『ホシノルリという女』へと、次第に変化していった

『子供』がやるのと、『女』がやるのでは、同じ事をしていても、効果がまるで違う

夫は、『演技をしているホシノルリ』を本気で愛するようになって行く

正直、少々、于鬱陶しい気持ちもあった、いっそ、全て演技である事を明かしてしまおうと思った事すらある

が、結局、ここでも、ミスマルユリカへの反発が勝る

当時、既にメグミ・レイナードは、優柔不断なテンカワアキトの態度に業をにやし争奪戦から脱落していたため、相手はミスマルユリカ一人

とはいえ、私は彼女の事を左程怖いと思った事は無い、はっきり言えば、彼女は強引過ぎる、故に、夫の性格では、嫌うまでは行かなくても、避けるようになっていた

その事が解っている上で、私は、彼女と夫の仲を疑い、嫉妬し悲しむような『演技』を繰り返す

あまり、強く責めたりせず、目に涙を浮かべつつ

「アキトさんが、本当にユリカさんの事が好きなら、私は身を引きます・・・」

夫の性格を考えれば、そんな事を言われれば、尚更、ミスマルユリカを選ばなくなる事を見越した上で

やがて、夫のプロポーズ

「少し・・・・・考えさせてください・・・」

夫は、本当に残念そうだった

だが、これとて夫の性格を考えての演技でしかなく

その数日後、私は夫のプロポーズを受け入れる

心底、嬉しそうな夫、だが、私はただ、焦らしてみて反応を見ただけ

内心では、『演技』にひっかかり、こちらの思い通りに動く夫を、馬鹿にすらしていた

結婚式は内輪だけの地味な物、なにせ、夫の古郷火星は壊滅、私、ホシノルリには交友関係がほとんど無い

誰か呼ぼうにも、そんな相手はほとんど居ない

それでも、私は自分達の結婚の事を彼女には知らせた

表向きは、『自分の上官』だからだが、本当の理由は、それを聞かされた時の彼女の反応が見たかったから

私と、夫の結婚をミスマルユリカが知った時、彼女は意外にも祝福してくれた

少々、引きつってはいたが・・・

その後の事は良くは知らない、彼女が私たちの前に姿を見せる事はすっかり無くなり、私も興味を失ったからだ

ただ、アオイさんとは一緒にはならなかった事だけは解る

何故ならば、彼は既に、ユキナさんの尻に引かれていたから

 

私には愛してもいない夫に、抱かれる事に嫌悪感は無かった

所詮、自分はネルガルのモルモットのような物、いずれネルガルの方で用意した相手との『交配』をさせられてもおかしくないような人生、ならば、少なくとも、自分の事を愛してくれている相手に抱かれるのならば、少しはマシという物

やがて、子供も生まれ、3人の子供の母となった私

不思議と子供は可愛い、ただ、自分が良い母親になれたかどうかには、自信は無い

子供には、優しくしてやらなければならない時も、厳しくしてやらなければならない時もある、私には、その判断が上手くつけられず、厳しくすべき時に優しくしてしまった事も、優しくすべき時に厳しくしてしまった事もある

子供達の事で、夫と喧嘩になった事もある

『演技』には騙され続けたいうのに、こと、子供達の事となると、不思議とそう簡単には引かず、こちらの思い通りには動いてくれない夫

だが、こちらとて、そう簡単に引く訳にはいかない、自分の子供の事なのだから

こんな時、私達を止めるのは、子供達の役目

『子供さえいなければ、こんな男とは別れてやるのに』

そんな風に思った事も、何回もある

もっとも、そんな事を思っている妻は、いくらでもいるのに、実際に離婚にまで至る夫婦の数となれば、それよりもはるかに少ないもの

いつの間にか私は、『別に、夫を愛していた訳では無い』事を忘れていた

だからといって、夫を愛していたか?、と問われても困るが

ただ、居る事が当たり前の存在へと変わっていっただけの話で・・・

端から見ている分には、『ごく普通の家族の姿』に見えたのだろう、近所の人達からは、『お宅は夫婦仲が良くて羨ましい』と言われた事もあり、苦笑いしてしまった事もある

そんな時、ふと、思い出す、自分は『演技』をしている筈だと

『幸せ』・・・・・・それは一体なんなのだろう?

私は、ずっと『演技』をしてきた筈で、それは普通なら『苦痛』を伴う物の筈

けれども、苦痛に感じた事は無い

振り返ってみれば、『まあまあ幸せかな』と思える人生を送っている・・・・

・・・・・・・・

・・・・・

・・・

・・・もしかしたら、私は夫を愛していたのだろうか?

だとしたら、何時から?

何故、私は夫を追い掛け回す女達に、不快感を感じていたのだろう?

もしかしたら、その時から既に?

私は、本当に『演技』をしていたのだろうか?

いや、『演技』をしていた事に間違いは無い、でも、どうして、『演技を続ける』事が出来たのだろうか?

夫を失いたく無かったから?

もしかして、夫が好きになってくれたのは、『演技をしているホシノルリ』ではなくて・・・・・

だとすれば、騙されたのは私の方?

そんな筈は無い、夫にそんな甲斐性が有るとは思えない

どうしたんだろう?、なんだか・・・・・嬉しい・・・・・・・・

もしかして、私は・・・・・・夫を愛していなかったんじゃなくて・・・・・・

『演技上の私』を愛している夫に不満を感じていただけ?

 

 

 

ルリに告白された時には、驚いた

当時まだ12歳、流石に(汗)

もし、それを受け入れてしまえば、俺はロリコン確定、周囲の目がどんな物になるか・・・

だが・・・・

こちらとしては、ありがたい事に、ルリは、自分が俺に告白した事を、周囲の人達には言わなかった

そんなルリだからこそ、悲しそうな顔をされる事に耐えられなくて・・・

確かに最初は、単なる同情だったのだろう

いくらなんでも、12歳の少女を愛する事が出来るほど、俺は異常じゃない

ルリが、12歳のままならば・・・・

13、14、15、・・・・・・・・・・・成長していくルリ

付き合った所で、非難はされない歳まで成長したルリ・・・・

俺は、そうなる前に、ルリは俺から離れて行くと思っていたし、その方が彼女の為だと思っていた

それなのに、ルリは変わらなくて・・・

そうなると『嬉しい』では無く、『怖く』なっていった俺・・・

何かがおかしく感じる

『君がルリ君に好きになって貰えるほどの男とは、思えないんだけどねえ』

アカツキの嫌味が、心に突き刺さる

ルリは、俺なんかの何処が好きになったのだろう?、アカツキの言う通りだ、俺なんかがルリに好きになって貰えるなんて、何かがおかしい

それでも、俺は・・・

何かおかしい、ルリの本当の気持ちが何処にあるのかも解らない、それでも、ルリが欲しくてたまらない

思い切ってプロポーズをする俺

もし、これで断られるようならルリの気持ちは・・・・・・

「少し・・・・・考えさせてください・・・」

ルリのその答えで俺は諦めてしまった

柔らかに断られたと思ったから

けれども、数日後・・・・・

嬉しかった、心の底から・・・・それでも、腑に落ちないモノは残ったが

俺は、それでも良かった、『結婚』という『形式』を整えてしまえば、たとえルリの気持ちがどんなモノであったとしても、形だけでも、ルリは俺の・・・

子供の教育の事では、ルリと喧嘩をした事もある

俺は、両親と幼い頃に死別し、学歴の無い事で苦労した、だから、子供達にはそんな事になって欲しくなかった

ルリは、子供達を、もっと伸び伸びと育てたかったようだ

「子供達には、私みたいになってもらいたくない」

ルリの境遇を考えれば、それはそれで、解らないでも無い・・・無いが・・・・

「私みたいに」と言われても、そんなルリを好きになった俺の立場は?

確かに俺も、子供達を『ルリのような境遇』にはしたくない、だが、『娘はルリのような女性』に育ってほしい

結局、俺もルリも、『子供達を、自分のようにはしたくない』と思っていたのだと思うと・・・おかしな話だ

こういうのも、『夫婦』と言う物なのかもしれない

それでも、俺は時々不安になる

ルリの本当の気持ちは、何処にあるのだろう? と

ルリは、言いたい事ははっきりと言う方だ、それでも、何か・・・・・・俺に言いたい事があるような顔をする時がある

気のせいなのだろうか?、気のせいだけだとは、思えない

俺には、それを聞いてみたい気持ちと、聞きたくない気持ちが同居している

 

 

 

 

 

結局、この夫婦は、お互いに本音を話す事無く、生涯添い遂げる

もっとも、『本音』といっても、何が本音なのかお互い解らなくなっていたようだが

これも、愛情の一つの形なのかもしれない

晩年、お互いに、自分の伴侶のお陰で、なんだかんだと、そこそこ幸せな人生を送ったと感じていたのだから

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後書き

この作品は、大塚りゅういちの隠れ家内、コミュニケーション広場にて行われている キャラクター人気投票GP支援イベントの、特設支援用小説掲示板への投稿作品です

2005年9月20日〜9月30日まで行われておりますので、よろしければ参加してみてください

普段とは、毛色の違う話にしてみました

なんか、ルリが嫌な女になってます(苦笑)

「演技」は中々見抜けないモノだし

本当に好きになった相手だと、「見抜いていても、見抜きたくない」なんて事になったりもするし


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