テンカワアキトはルリからバレンタインのチョコレートを貰った事がない

別にルリに嫌われている為ではない、既に二人は夫婦となっている

ただ、付き合い始めた最初の頃は、ルリ自身がその特殊な生い立ちの為にその手の世間の風習に疎いかったこと・・・ルリにとってバレンタインという物は知識としては知っていても実感を伴うものではなく・・・

また、本来バレンタインのチョコというものは『好きな人に告白』する為のものであって、既にお互いの気持がはっきりと解っているのに、今更チョコを渡す事には意味がないとルリが思っているだけの話

とはいえ、男のアキトの立場としては多少は期待もしてしまうわけで


百年経っても・・・


「うそっ、ルリってアキトさんにチョコ渡した事ないの?」

「あの、妻が夫に渡すことに意味があるんですか?」

驚くユキナに、本当にわからないルリ

「あたしは、ちゃんと毎年渡してるけど、ジュンちゃん喜んでくれるし」

「・・・そういうものなんですか・・好きな人に告白する為のチョコなんだから、既にお互いの気持が解ってるのに、渡しても意味がないと思ってました・・・」

変に感心するルリ

「あ〜〜、なによ、それって惚気?、まったく仲良いわよねえ、ジュンちゃんももっとはっきりしてくれたら良いのに・・・」

半眼でルリを睨むユキナ、ジュンとユキナは結構長く付き合っているのだが・・ルリと違い、いまだ、ユキナは「白鳥」姓のままである

ジュンは周りに、いい加減はっきりさせとかないと、ユキナに愛想をつかされると言われてはいるのだが

「・・まったく、あたしったらジュンちゃんなんかの何処が良いんだろ・・・」

なんだか腹が立ってくるユキナ、とはいえ

「はあ、だったら、アオイ中佐よりも良い人は一杯いると思いますけど」

ギロリ

ルリにそんな事を言われてみれば、ルリを睨み付けたりもするのだ

・・・ユキナさんのこれも、惚気の一種なんでしょうか(苦笑)・・・

そうなる事が解っていたルリは、内心で苦笑い、ユキナは自分でジュンの悪口を言うは良いのだが、他人に言われると腹が立つらしい

「ルリぃぃぃぃぃぃぃぃ、だったらアキトさんなんかよりも良い人なんて、いっくらでも居るんじゃないの〜〜〜〜〜?」

地の底から響いてくるような声で、ユキナの反撃

「ええ、アキトさんなんかよりも素晴らしい人はいくらでも居ますよ、でも、私の夫はアキトさんです」

しれっと答えるルリ、その態度にユキナは毒気を抜かれてしまう

「大体ねえ、ルリだってアキトさんの愚痴を言う事だって結構あるじゃないの、それぐらい解ってよ、まったく」

・・・いえ、こうなるって解っていればこそ、そう答えたんですけど(苦笑)・・・

気の合うようで合わない、合わないようで合うユキナとルリの付き合いは長い

「ジュンちゃんって優柔不断だから、別の女にふらふらしないか心配なのよ、ルリだってそれは解るんじゃない?、アキトさんと付き合ってたんだから」

「・・・確かに・・それは解りますけど・・・」

そう、それはルリにも解る

「でも、確かに優柔不断かもしれないけど、アオイ中佐に別の女と付き合う度胸なんてないですよ、ええ」

「度胸が無い」酷いと言えば酷いが、「的確」でもある評価を下すルリ

「いや、確かにそうなんだけど・・・・・ルリに言われると腹立つっ!!」

「でも、事実は事実ですから」

「事実は事実っていうなら、アキトさんだって別の女と付き合う度胸なんてないじゃないのっ、それなのに右往左往するルリは、見てて滑稽だったわよ」

「ふっ、昔の話です、今はアキトさんの妻の座を見事射止めました」

余裕で答えるルリだが、実は内心は焦っている、ユキナとの勝負では、弱みを見せた方が負けなのだ(笑)

なにせ、少しでも隙を見せればとことん突っ込んでくるユキナ、こういう相手と真っ向勝負する為には、やせ我慢でも隙を見せない以外にない

ちなみに、ユリカはといえば、しばらくナデシコの関係者達とは会っていない

アキトがルリを選んだ事で、かなりのショックを受けたユリカ

ルリとしてもユリカには会いにくくなり、そのまま疎遠となってしまった

ジュンはユリカを慰めていたが、だからといって振られたユリカの気持に付け込む事を潔しとせず・・・・

結局、立ち直ったユリカの新しい王子様との仲を取り持つ事までしてしまったのだ・・・つくづく人が良過ぎるというか

そんなジュンに呆れながらも惹かれていったユキナ

今では、すっかりジュンの事を尻に引いている、ジュンも満更でもないようなので、何も問題は無い・・・筈だ(苦笑)

・・・それでも、ジュンはいまだにユリカに未練があるように見えて、ユキナがいらつく事もあるのではある

と言うわけで、ユリカとユキナは仲が悪いというわけではないが、ユキナがユリカを一方的に敵視している

ユリカから見れば、自分が一番落ち込んだ時に慰めてくれたジュンを幸せにしてくれそうな女性が現れてくれた事が嬉しくて、「そっか、ジュン君よかったね」と心底喜び、むしろユキナの事が好きなのであるが、ユキナの方が避けているのだ

話をルリとユキナに戻そう

「よしっ、じゃあ、一緒にチョコレートを買いに行こう!!」

「あの、私はアキトさんにチョコ渡すって決めた訳じゃ・・」

「いいの、私が決めたのっ、だから黙ってついて来る」

なにやら、いきなり話が進んでいて、ユキナに強引に引っ張られていくルリであった


 


「そろそろはっきりした方が良い・・・それは・・・・解ってるんだけど・・・」

一人呟くジュン

「解ってはいるんだ、・・・解っては・・」

が、解ってはいてもジュンの性格では、思い切ってプロポーズなどはしにくい

ジュンがはっきりと自分の気持をユリカに伝えていたのならば、芽もあったのかもしれないが

性格というものは、中々変える事の出来るものではなく・・・


 


「大体、待ってるなんてユキナさんらしくないです、「ジュンちゃん結婚しよう」って軽く言って見れば良いじゃないですか」

チョコを買い、デパートの喫茶店で休憩している二人

しばらくの沈黙の後

ぽんっ

手を叩くユキナ

「そっかその手があった!!」

「その手があったって、気づいてなかったんですか?」

呆れるルリ

「アオイ中佐みたいな優柔不断な人のプロポーズなんて待ってたら百年待ってても駄目です」

「うっ、酷い言われ様だけど否定出来ない・・・・(汗)」

ユキナも納得してしまったらしい

そして、ふと気づくユキナ

「そっか〜、アキトさんみたいな優柔不断な人とルリがなんでくっ付いたのか、今までずっと不思議に思ってたんだけど、そうやったんだ、ルリって、そうだよねえアキトさんみたいに優柔不断な人のプロポーズ待ってたら百年待ってても駄目だもんねえ」

心底納得したと、うんうんと頷くユキナ

「いえ、私はプロポーズはアキトさんの方からされたんですけど」

否定するルリではあるが

「ふっふっふっ、見栄はって嘘ついたって駄目だよルリ、あんな優柔不断なアキトさんが自分からプロポーズなんてするはずがないっ(断言)」

「いえ、だからあの時は(汗っ)」

「まあまあ、ルリが言いたい事は解ったから、よしっ、そうと決まったら善は急げっ」

ユキナはそのまま、突っ走っていってしまうのである

「ひっ、人の話を聞かない人ですね・・・なんか、誰かさんに似てます、ユキナさんって(汗)」

そして、ルリはあることに気づく

「あっ、ここのお勘定・・・」


 


その後、アオイジュンが白鳥ユキナに押し切られてしまった事についてはわざわざ言うまでもないだろう

まあ、ジュンにとっても渡に船でありがたい事ではあったのだ

さて、ルリとアキトの事なのだが

「ユキナさん、プロポーズはアキトさんの方からしてくれたっていっても、全然信じてくれませんでした」

「あはははは、酷いなそれは(苦笑)」

ルリは今日のユキナとの事をアキトに話している

「でも、本当にやろうと思った事はありますよ、アキトさん優柔不断だから」

ルリの悪戯っぽい笑顔

「おっ、俺だってやる時はやる・・・」

「でも、そんな風に見られてません」

「うっ(汗)」

がっくりとしてしまうアキト

「そうそう、はい、これバレンタインのチョコです、すいません、いままで一度も渡した事がなくて」

「あっ、ああ、ありがとう、とっても嬉しいよ」

すこし照れくさそうで嬉しそうなアキト

「他の人の喜んでくれる姿が自分にとっても嬉しいなんて感じたのって、アキトさんが始めてだったんですよ、私、それまで他人は他人でしかなかったですから」

アキトの嬉しそうな姿をみて、自分も本当に嬉しそうなルリ

そんなルリだからこそ、誰にも渡したくない、自分だけのものにしたいとアキトは心底思ったのだ


後書き

今年はバレンタインネタ書く気なかったのに、唐突に思いついたネタを纏めてみました

二次創作ではなく、本編の元々のルリって、バレンタインみたいな行事にはあんまり興味無いかもって所から思いついたネタですが、さて、反応はどうでしょうか?

ともかく、唐突に思いついたネタをバレンタインに間に合うように急いで執筆したものなんで、推敲とかも全くしてなかったり

このまま次の短編へ進む

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