「知ってる、俺はお前の事をしってるぞ、ミスマルユリカっ!!」

写真をみてユリカの事を思いだしたアキト

・・・ユリカなら、俺がずっと知りたかった事を知っているかもしれない・・・

アキトは無我夢中で自転車でユリカを追いかける

だが、アキトは肝心な事をすっかり忘れていた

『ユリカが絡んだ時には自分がろくな目にあったためしが無かった』事を・・・・


幸せは自分の手で


ナデシコの乗って最初の不幸は、木星トカゲ達の襲撃

成り行きで、何故かナデシコを守る為の囮をやらされる羽目になり・・・

「あの・・・・10分間ともかく頑張ってください、コックさん」

地上に出るエレベーターの途中で、俺の事を覚えていない素っ気無いユリカの言葉

その態度が逆にアキトを奮い立たせる

「冗談じゃない、こんな所で死ぬ訳にはいかない!!、俺はユリカに聞かなきゃならない事があるんだっ!!」

とはいえ、産まれて始めてのエステバリスでの戦闘

何をどうしたらならないかなど当然解らない不安が襲う

だが

「テンカワさんでしたね、地上の出る前にエステの簡易レクチャーをします」

コミュニケで現れる,ホシノルリ、ナデシコのオペレーター

「えっ、なんで戦艦に子供が?」

一瞬驚くアキト

「子供とかそんな事は今は関係ありません、あなたの仕事には私の命もかかってるんです、時間がないんで手短にいきます」

エステバリスは、IFSによって自分の考えた通りに動くと言うこと

今、持っている武装

ある程度はオートでディストーションフィールドを張ってくれる為に少々の被弾ならば、なんとかなると言うこと

エステのAIの指示通りに戦えば素人でもある程度は戦えると言うこと

わずかな時間で要点だけを纏めて、アキトにレクチャーをするルリ

「下手に戦おうとしないで、10分間逃げ回ってください、生き残りたいなら」

「あっ、ああ、解った」

ルリのレクチャーで少しは落ち着く事が出来たアキト

だが、エレベーターが地上に到達し、その扉が開くそこには、おびただしいバッタ達の群れ

「うっ、うわあぁぁ」

それを見て、一瞬パニックに陥りかけた所にルリの叱責

「テンカワさん、落ち着いてください!!」

その姿と、あの時の事が重なる

火星で助ける事が出来なかったアイちゃんと、今、自分を叱責しているルリの姿が

まるで、助けられなかったアイがルリの姿を借りて自分を叱責しているかのように

「ちっ、畜生っ!!」

アキトは絶叫しながらバッタ達の群れの突っ込んで行く

アキト自身も、その後の事は無我夢中で良く覚えていない

ともかく、アキトは囮役を結果的に務めあげ、ナデシコを無事に守る事が出来たのだ・・・が


 


本来ならば、エステを勝手に動かしたことは重大な問題行為

帰艦した後、格納庫でゴートに散々絞られたアキト

その事自体は仕方の無い事だろう、だからアキトには何も言い返せない

それだけの事なら、別に問題は無かったのだが

「コックよりも給料は良いぞ、危険手当がつくからな」

「えっ?」

何がどうなるとそうなるか解らない内に、素人のアキトがエストの予備パイロットとして扱われてしまうのである

コックとしてプロスに雇われた筈が、コックよりもはるかに危険度の高いパイロット成り行きでやらされる羽目になる・・・アキトの不幸その2

なんだか釈然としないモノを感じるアキト

正直、こんな戦艦すぐに降りてやろうかとすら思った

とはいえ、自分には目的がある

まず、その目的を果たさなくてはならない

『ユリカに自分の両親の死の真相を聞く』という目的が

「ところで、ユリカには何処に行けば会えるんだ?」


 


場面は変わりナデシコのブリッジ

「ルリルリって、ああいうタイプが好み?」

「はい?、何言ってるんですか」

ニヤニヤしながら話しかけてくるミナトに対し、本当に訳がわからないという表情でミナトに答えるルリ

「だって、あのコックの人、テンカワアキト君とか言ったっけ、あんなに熱心にエステの操縦法を教えてたじゃない」

・・・何を言ってるんでしょうか、この人は・・・

ルリは心の中で呟く

「あの場合は、あれがベストの選択と思っただけです、会話を聞いていれば、どう考えてもテンカワさんは素人のようですし、エステの操縦法も知らないままで敵の真っ只中に放り出されれば、すぐに撃破されて囮の役割なんて果たせないじゃないですか」

「囮が囮としての役割を十分に果たしてくれなければ、木星トカゲ達はすぐにナデシコを本体を狙ってくる事は目に見えてましたし、私だって死ぬのはごめんです」

冷静に答えるルリ

「ふ〜ん、本当にそれだけ?」

今度は、メグミ

「それだけです、他に何かあるんですか?」

不機嫌そうに返答、実際にルリには今言った以外の感情はない、だが、その不機嫌そうな態度が逆にミナトやメグミにおかしな勘違いをさせてしまったらしい

その後も、根掘り葉掘り色々と聞かれすっかり嫌気がさしてきたルリは、小声で呟いた

「馬鹿ばっかですか、この戦艦は」


 


ナデシコに乗船したばかりで、中身を案内される前に敵襲を受けたため当然アキトはナデシコの事を知らない

誰かに案内してもらおうにも、プロスもゴートも何処かに行ってしまった

どうしようか悩んでいるアキトだったが

「テンカワさん」

「うわっ!!」

いきなりコミュニケが現れ驚く

「あれっ、君はさっきの」

「ホシノルリ、オペレーターです」

『社交辞令』という感じの自己紹介

だが、アキトはそんな事は気にせず

「ありがとう、さっきは本当に助かった、命の恩人だよ君・・ホシノさんは」

本当に嬉しそうにお礼をいう

「気にしないでください、私だって死にたくなかっただけですから」

あくまでも冷静に答えるルリ、左右ではミナトとメグミがニヤニヤとしている

・・・まったく、何考えているんですか、この人達は・・・

ルリ自身は別にアキトに用があった訳ではない

ただ、左右でニヤニヤしている二人に半強制的にアキトとの通信を繋げさせさられたのだ

・・・これ以上、おかしな勘違いをされるのはごめんです・・・

そんな風に考えているルリはあくまで事務的な口調でアキトと話す

ルリが自己紹介をしたせいだろう、自分はコックとして雇われた事、艦内の事を何も知らない内に敵襲でありナデシコの中の事を何も知らない事など、別に聞いた訳でもないのに話し始めるアキト

そして

「なんか、うやむやの内に予備のパイロットもやらされる羽目になっちゃって」

「はい?」

驚くルリ

「あの、それって本当ですか?」

「本当だけど」

「テンカワさんって、素人ですよね?」

「素人だけど」

「・・・何を考えているんですか、ここの人達は」

ルリは心底、『呆れ果てた』という態度

ナデシコは『戦艦』

『戦争の為の船』なのだ、その重要な役割の一つを素人に任せる

・・・どう考えてもマトモじゃないです、この船は・・・

『性格に問題はあっても腕は一流』

クルー達はこの基準で集められていると聞いた

だが、テンカワアキトの事を考えると、どうしてもそうは思えない

「テンカワさん、この船降りた方が良いんじゃないですか?」

「いっ、いや、本当はそうしたいんだけど」

「今のままなら死にますよ」

ルリはアキトを心配しているのではなく、『ただ思った事を素直に言っているだけ』である

だが、理由はどうであろうと、ルリのその態度はアキトの心の中に深く刻み込まれる事になる

それは後になるほど効いてくるのだが、今は二人ともその事に気付いていない

「俺には降りられない理由があるんだ・・・今はまだ」

「今は?、じゃあその理由がどうにかなれば降りても良いんですね?」

・・・どうせ、足手まといにしかならないなら降りてもらった方が良い、そんな人が居ても私の仕事が増えるだけ・・・

ルリは結構冷たい事を考えていた

もっとも、『素人がいきなりパイロットをやらされる危険性』を考えれば、むしろアキトの為になる冷たさだろう、結果的には

それゆえにミナトとメグミには、その冷たさが別の意味に見えてしまったようで、その後の話がややこしくなってしまうのである


 


ミナトやメグミに焚き付けられ、何故か、アキトの相談にのる羽目になってしまったルリ

ルリにしてみれば、『さっさとこの人を降ろしてしまって厄介払いがしたい』以外の気持ちはない

「あんまり期待しない方が良いです、それ」

「えっ、なんで?」

アキトはルリに両親の死の事や、もしかしたらユリカが何かを知っているかも知れない事を話していた

「だって,考えてみてください、ご両親の死の真相を、もし、ミスマル家の人達が知っていたとしても、テンカワさんと艦長と別れた歳は何歳です?、子供にそんな重要な秘密を明かすと思えます?」

「あっ!!」

ルリに言われて初めて気付くアキト

すこし考えれば解りそうな物だが、アキトもかなり冷静さを失っていたようだ

「でも・・・やっと辿り着いた手がかりなんだ、ほんの僅かでも良いから何か解れば・・・・」

それでもアキトは諦めない、ここで諦めてしまえば二度と両親の死の真相が解らなくなるような気がしたから

「じゃあ、艦長に直接聞いてみましょう、それで、意味が無いと思ったら艦を降りましょう、私も一緒に行きますから」

正直な事をいえば、ミナトやメグミのせいもあり、ルリはかえってアキトの事を嫌いになっていた

『一緒にいく』のは、下手にアキトに中途半端な希望を与えずに、アキトにとっとと諦めてもらって艦から降ろす後押しをする為に過ぎない


 


という訳で、ユリカの所にきているアキトとルリ

「ごめんない、やっぱり覚えてないです、あなたの事は」

それがユリカの答え

「この写真の事覚えてないかな?」

ユリカ達の乗っている車のトランクから落ちた荷物に入っていた写真を取り出しユリカに見せるアキト

「あれっ、この写真は・・・・」

ユリカも何か思い出したらしい

「ほっ、ほら、火星で一緒にいた」

なんとか自分の事を思い出させようとするアキトだが

「火星・・・・アキト・・・テンカワ・・・・アキト・・えっ(汗)」

何を思い出したのか、ユリカの顔色が変わる

「あっ、あなた、アキト?、テンカワアキト?」

「そう、テンカワアキト」

思い出して貰えたようでアキトがぬか喜びしたのもつかの間

「いっ、いや〜〜〜〜〜〜おばけ〜〜〜〜〜〜〜」

真っ青になって絶叫するユリカ

「おっ、おい、ユリカ(汗)」

「いやっ、寄らないで、おばけっ、ゾンビっ!!、あっちいって!!」

絶叫しながらアキトから逃げようとするユリカ

「誰がお化けだっ!!、俺はちゃんと生きてるぞっ」

「うそっ、だってお父様からアキトは死んだって何回も聞かされたのにっ!!」

「だから、こうやって目の前で生きてるだろうがっ!!」

「いや〜〜〜〜、寄らないで〜〜〜〜」

最早、人の話なぞ聞きゃ〜しない

・・・そういえば、ユリカは一度思いこんでしまうと人の話を聞かない奴だった・・・

アキトが思い出した時には既に遅く

「なにっ、なにがどうしたの?」

悲鳴を聞きつけ、わらわらと人が集まってくる

さて、男と女がいて女が悲鳴を上げていて、その男から逃げようとしていれば 周りの人間からはどう見えるか?

「てめえっ、なにやってやがる!!」

いきなり、抑え付けられるアキト

「ちょっ、一寸まってくれっ、俺はただ」

「言い訳は独房でじっくりと聞いてやる」

そのまま、ずるずると引きずられていくアキトだった(涙)

ちなみにルリはと言えば、余りの事にあっけにとられて一言も言う暇も無く・・・

やっと我にかえったルリは、泣きながらぶるぶると震えているユリカに

「艦長、あの人は正真正銘生きた人間です、死人にエステの操縦なんて出来る訳無いでしょ」

「あっ!!」

ユリカもやっと正気に戻るが時既に遅く・・・

「艦長がこんなんで本当に大丈夫なんですか、この艦は・・・」

ルリはますます艦への不信感がつのる事を止めようがなかったという

このまま次の短編へ進む

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この作品は、らいるさんとぴんきいさんのHP、『そこはかとなく存在してみたり』内の企画、festa-sokohakaの参加作品です

『もし、ユリカがアキトの事を覚えていなかったら?』というIFで書かれています

festa-sokohakaは残念ながら2005年の3月いっぱいで閉鎖ということになりました


後書き

なんか、尻切れとんぼな内容ですが、『アキトがユリカの事を覚えていなかったら』って題材でSS書くなら、短編じゃなくてもっとじっくりとやりたかった物でして

ユリカってアキトの事を覚えていない方が、よっぽどユリカ×アキトにしやすいんですよ、これが(苦笑)

だから、『アキトは私が好き、王子様』なユリカよりもよっぽどルリの恋敵として手強くできます

まあ、アキトに恋愛感情を持たないユリカってのもやってみたいんで、ユリカを恋敵にすべきかどうかはまだ迷ってるんですが

それと、このSSが続けば他にもやりたい事がありまして

ルリがアキトを好きになるんじゃなくて、アキトがルリを好きになる話がしたいなあと

 

『女性をものにしたいなら、男が方こそがそれなりに努力せんかいっ!!』

 

ってことで、アキト君の方にルリに好きになって貰うための努力をさせたいんですよ

周りの女性達が勝手にアキトの事を好きになってくれるんじゃなくて

『幸せは自分の手で』ってタイトルはそういう意味です

ルリにはアキトに苦労させるだけの価値があるって思ってますから

ただ、問題なのは・・・・

当分、このSSの続きを書く余裕が無さそうだってことで(T_T)

このまま次の短編へ進む

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