「みんな・・・・ふけたね・・・」

「よかった、何時ものぼけだ〜」

救い出されたユリカをみて、ほっとするナデシコのクルーたち

「私・・・ずっと、夢見てた・・・・・」

「アキトは・・・何処?」

 

私たちは火星の後継者からとうとうユリカさんを救出する事に成功しました

でも・・・・・・・なにか、おかしいんです

ユリカさんの夢と現実の区別がおかしくなっていて・・・・・・

しばらくの入院生活で、ようやっとユリカさんの容態も落ち着きを取り戻してきたようです

・・・・・・・・・・私は、伝えなければなりません、真実を

 


劇ナデアフター


「夢・・・・・・・だったんだ・・・・・みんな・・・・」

辛そうに呟くユリカ

「ええ、アキトさんはあの時誰も選んだりしなかったんです」

火星の後継者にさらわれ、遺跡へと融合させられていたユリカ

彼らに見せられていた夢

そこでは、アキトがユリカの為にボロボロにされた身体で、命がけで戦ってくれていた

だが・・・・

「・・・・・・・そう・・・・・だよね、アキトは誰も選ばなかったんだよね、遺跡を跳ばしたとき・・・・・・」

火星の後継者は、ボソンジャンプのコントロールの為にアキトに失恋し傷心のユリカの心すら利用した

「・・・・遺跡を跳ばした時のアキトとのキスも・・・・・・その後のルリちゃんとアキトとの幸せな生活も・・・・・・みんな、あいつらに見せられた夢・・・・」

現実はアキトは誰も選ばずナデシコを降りた後、一人で屋台を切り盛りしていた

そして、ルリはネルガルに残り、様々な研究

確かに、ユリカもルリもアキトの屋台にはよく行っていた

だが、アキトは誰も選ばなかったのだ、その時点では

しかし、やがて、アキトとルリの距離が近づいていった

ユリカは悩んだ

ルリは自分にとって妹のような存在

愛情など知らずに育ってきたルリが、始めて好きになった相手は、『ユリカの王子様』でもあるアキト

そして、ルリがユリカに気を使ってくれて1歩引いた態度でいる事が余計にユリカを苦しめた

そして・・・・皮肉な事にアキトはルリのそんな態度にかえって惹かれていく・・・

アキトにとっても、『妹』であったルリが成長し何時しか『女性』へと変わり

結局、アキトが選んだ相手はルリ・・・・・・

遅すぎたのだ、ユリカが『王子様』ではなく、『アキト自身』を見られるようになる事が

ルリの心身の成長に、『ユリカの心の成長』が追いつく事は出来なかった・・・ 




妹のルリの想いがかなった事を喜んであげたい気持ち・・・・ 

自分が振られた事の悲しみ・・・・・・・・・

そんな葛藤にゆれるユリカが融合された遺跡の中で作り上げた理想の世界、それが、

 

『妹』のルリとアキトとの3人での幸せな生活、自分とアキトとの事を祝福してくれるルリ

そして、

『さらわれたお姫様を命がけで助け出そうとしてくれる黒い王子様アキト』 







今にも泣きそうな顔で、しばらく黙っていたユリカだが・・・

「・・・・・・ごめんね、みんなに迷惑をかけて、ユリカを助ける為にみんな苦労してくれたんでしょう」

なんとか、元気を振り絞り、お礼を言う

「でも・・・夢で良かった、だってアキトは元気なんでしょ?、味覚を無くしたりしてなんかいないんでしょう?」

「はい]

「そっか、じゃあアキトはちゃんとコックさんになれるんだ」

嬉しそうに言うユリカに心が痛むルリ

「ユリカさんのアキトさんを見る目は間違ってなんかいなかったんです、今回、ユリカさんを助け出す為に、一番熱心だったのはアキトさんでしたから・・・・アキトさんならきっと、ユリカさんの夢の通りの事してくれました」

ルリはなんとかユリカを慰めようとする

だが、ユリカはゆっくりと首を振る

「ううん、ルリちゃん、アキトなら私じゃなくても・・・・ルリちゃんでも他の誰かでも、きっと助けようとしてくれた、だって・・・・・」

「それが、『ユリカの王子様』で『ルリちゃんのナイト』のアキトだもん」

まるで、自分が好きになった相手を自慢するかのようなユリカ

「だから・・・・・離しちゃ駄目だよアキトの事、またこんな事有った時きっと無茶をするから、誰かが止めてあげないと」

「ユリカさん・・・・・・・一番アキトさんの事解ってなかったのに、一番解ってるんですね・・・・・・・・」

なんとなくそう思い、すこし悔しいルリ

「なにそれ?、訳わかんないよルリちゃん」

笑いながら答えるユリカ

その笑顔は何処か悲しそうでもあったが

「でも・・・・・もし、さらわれたのが私だったら、ユリカさんの夢みたいな格好の良いアキトさんにはならないと思います、私はアキトさんの情けない所結構見てますから」

「私の中のアキトさんのイメージは、『木連式柔』じゃなくて、中華鍋とお玉で戦いそうな人ですから」

ルリは、冗談でもいって場を和ませようとするが

「うん、だからアキトはルリちゃんを選んだんだよ、ユリカじゃなくて・・・・だって・・・・」

「だって、ユリカは、夢の中とはいえ、アキトの一番の夢を奪っちゃったんだから・・・・」

「・・・・」

悲しそうになるユリカにしまったと思い、何も言えなくなってしまうルリ

ユリカは慌ててしまう

「あっ、ルリちゃん気にしなくて良いから、気にしてない・・・・って言えば嘘になるけど・・・・・・」

「ともかく元気だして、ユリカが本当に妹みたいに思ってるルリちゃんがそんな顔してたら悲しいから、ほら、笑って笑って」

ユリカは本当に心配そうだ

もし、アキトがルリを選ぶ前にユリカのそんな姿をみる機会があったなら・・・・

恋愛の成就には、本人の行動以外にも、『運』や『時期』の問題もあるもの

 

「・・・・」

黙ってしまって何も言えないルリに

「う〜ん、もうっ、わかった、ねえ、アキトは?」

とユリカが聞いてくる

「アキトさんなら、待合室にいます・・・・・・」

「ルリちゃん、アキトの事呼んできて、二人に話があるから」

ユリカは、なにか決意をしたらしい


 


「アキト、ルリちゃんとキスして、ユリカの前で」

「えっ(赤)」

「ゆっ、ユリカさんなに言ってるんですか(赤)」

唐突にそんな事を言われ、慌てる二人

だが、ユリカは真剣だ

「・・・・・・・・・・ちゃんと、ユリカにアキトの事諦めさせて・・・・・・・・・・・・・・・」

悲しそうな表情で言うユリカ

「アキト・・・・・・・・いつも優しかったけど・・・・・・・・残酷だよ、それ・・・・・・・・・・・・」

「ユリ・・・・カ・・・・」

「だから、変に期待しちゃう・・・・・・・・・・・・・ユリカにもまだチャンスはあるんじゃないかって・・・・・・・・・・」

「メグミさんも・・・・・・・・・リョーコさんも・・・・・・・・・・それで余計に悲しんだんだから・・・・・・・・」

「ごめん・・俺・・・・・・・・・・・」

「駄目だよ、そこで謝っちゃ・・・・・・」

「ルリちゃんだって、中途半端は嫌でしょ?」

ルリはしばらく悩んでいたが

「はい」

とはっきりと答える

 

 

もう、終わりにしなければいけない・・・・・・・・・ユリカさんの為にも・・・・

私の態度だって、ユリカさんを苦しめたのだから・・・・

それに・・・・今のユリカさんには私は・・・・

 

 

決意するルリ・・・・そして・・・・

 

 

二人が帰り、一人残された病室で呟くユリカ

「ありがとう・・・・・・・・・・アキト・・・ルリちゃん・・・・・・・そして・・・・・・」

「さようなら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・王子様・・・・・・・・・」

そして、ユリカは思いっきり泣いた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


 


病院の待合室で、アキトに尋ねて見るルリ

「アキトさん・・・・・・もし、ユリカさんが火星の後継者にさらわれていなければ・・・・・どうしていました?」

「・・・・・・・・・・・わからない、こんな事いうとルリちゃんは怒るかもしれないけど・・・・」

「・・・・・・・怒るべき所なんだろうけど・……わかります、だって・・・」

 

 

「だって、私がユリカさんの目の前でアキトさんとキスをしたのは、本当は・・・・・・・・・・・・・・・・ユリカさんの為なんかじゃないんです、いえ、それもあったけど・・・・・・・・・・・一番の理由は、怖かったからなんです、ユリカさんが」

「怖かった?」

不思議そうに尋ねるアキト

「『王子様』じゃなくて、『アキトさん』を見られるようになったユリカさんに勝てる自信なんて無いですから」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「ユリカさんが、アキトさんの事を王子様扱いしている事・・・・・・すこしほっとしている所もあったんです・・・・・・・その間は・・・・きっとアキトさんはユリカさんを選ばないから・・・・・」

「だから・・・・私は言えなかった・・・アキトさんは王子様じゃないって、ユリカさんがそれに気づいてしまえば・・・私は・・・・卑怯ですよね・・・・・・・・」

ルリ自身は気がついていない

ユリカの心を、アキト自身を見られるまでに成長させたのは、自分の態度だった事に・・・

「・・・・・・・・卑怯って言うなら・・・・・俺が一番卑怯だよ・・・・」

「最初から・・・・・もっと態度をはっきりとさせておくべきだったんだ、今回だってルリちゃんに言われなければ・・・・本当は俺自身から言うべきだったのに・・・」








「まっ、でも、卑怯者同士でお似合いなんじゃない」 

「えっ」

背後から声をかけられ驚く二人

そこには、にやにやとしながら笑っているユキナ

「ユキナさん、どうしてここに?」

「ユリカさんのお見舞いと・・・・・それと偵察のため」

笑いながら答えるユキナ

「偵察?(汗)」

ユキナが、ユリカにそんな事をするとすれば・・・・

「まず、敵を知らないとね、ジュンちゃんがユリカさんの何処に惹かれたのかとか」

「いっ、今は止めた方が?(汗)」

ユリカへの気遣いから、そんな事をいうアキト

「そっ、そうです、そんなことで喧嘩にでもなったら(汗)」

ユキナはそれには答えず、話をいきなり変えてくる

「あ〜あ、アキトさんがユリカさんを選んでくれれば、ユキナちゃんは楽にジュンちゃんゲットできたのに、今からでもそうする?、アキトさん?」

「だっ、駄目ですっ!!」

慌てて、叫ぶルリ

「大丈夫、アキトさんより良い男なんて沢山いるし、ルリが振られてももっと良い男捜せば良いだけだから」

「だっ、駄目っ、ルリは俺のっ!!」

今度は、アキトが焦り思わずルリを抱きしめる

「いっ、痛いですアキトさん(赤)」

「あっ、ごっごめん、俺(赤)」

「あ〜あ、熱い熱い、これじゃユキナちゃんの計画は実行不可能か」

とにやにやとしているユキナ

「ユキナさん、からかわないでください(赤)」

「大体ねえ、深刻ぶったってあんた達が別れる訳が無いでしょ、あっでも」

とアキトの方を向き、

「アキトさんがルリに振られるコトならあるかも、アキトさんより良い男なんて沢山いるし、大体、前から思ってたけど、アキトさんとルリって不釣合いでしょ」

と言いにくい事をずばりと突いてくる

「うっ(汗)」

はっきりと言って・・・・・・・・アキトには一番言われたくない言葉である

・・・・・・・・・・・・だって、アキト自身が一番その事をわかってるし(苦笑)

そして、『自分の魅力』が一番よく解っていないルリ

「ユキナさん・・・・・・・・・・」

怒りのオーラを纏ながら、ユキナの名を口にする

「おお怖っ、じゃユキナちゃんはユリカさんのお見舞いにいってくるから、それと」

くるりとルリ達に背を向け

「もし・・・・・・・・あたしがジュンちゃんに振られたりしたら・・・・・・・その時は慰めてね・・・ジュンちゃん今でもユリカさんの事好きだから」

唐突に気がつくルリ

ユリカが救出されたと言う事は・・・・・・・・

ユキナもまた、自分の気持ちに決着をつけに来たのかもしれない・・・・・

「・・・・強いんですね・・・・ユキナさん・・・・・」

「だって・・・・・強くならないとユリカさんに勝てないもん・・まだ、ジュン君の事諦めた訳じゃないから」








そして、ユキナを見送る二人

「強いんだな・・・・・みんな・・・」

と呟くアキト

「ええ、強いです、でも、それが一番良いような気もします、ユリカさんの為にもユキナさんの為にもアオイさんの為にも・・・」

「俺も・・・・・強くならないと・・・・・・・・・ルリちゃんに相応しい男になる為にも・・」

最後の言葉は、ルリに聞こえないように小声で呟くアキト

「はい?、なにか言いました?」

聞こえたのかからあえて言っているのか、それても本当に聞こえなかったのか解らないが、聞き返して来るルリ

「いっいや、なんでも無いんだ(赤)」

「私も強くなります、アキトさんに相応しい女って思って貰いたいですから」

笑顔でそんな事を言うルリ

アキトには中々のプレッシャーだ(笑)

ここ数年で、ルリは本当に良い女になった

だからルリを狙っている男は、多いのだ

アキトの『ルリに相応しい男になる為』の戦い、『ルリを他の男に取られない為』の戦いは、これからが本番なのかもしれない

そう、アキトにとって本当に大変なのはこれからなのだ(笑)

 


b83yrの後書き

これが私なりの、TVから劇場版へと続く、『ナデシコ』への解答の一つでもあります

別に、『ユリカ×アキト自体』は良いんですけどね、でも、『くっ付ける過程』は納得してないです、私

ユリカ×アキトなのは良い、でも、『TVのラストの時点ではくっ付けるべきではなかった』って考えなんで

納得出来ていないのに、本編でそうだったからなんて理由では、ユリカ×アキトを書く気にはなれないんですよ

TVのラストの時点では、誰ともくっ付けずに漫才でもやらせたままで終わらせた方が良かったんじゃないか?、って思うんですよねえ、私

このまま、次の短編へ進む

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