『復讐鬼』

 

 

注意

ある意味ダークで、ある意味壊れルリです(笑)

 

 


第1部 出会い

 

彼女は木星からやってきた。

 

 

 

「ちょっと、あんた! 私この艦よく解らないんだから、案内してよ!」

 

彼女は私に、居丈高にそう言った。

 

「・・・・・・なんで、私が?」

 

気乗りしない私は、拒絶の意志を込めてそう言った。
しかし彼女はめげなかった。より高圧的な態度で、私にこう詰め寄った。

 

「あんた、私より年下なんだから、私の言うこと聞くの当たり前でしょう!」

 

その論理を彼女は頭から信じているらしい。 私は諦めて、彼女の言うようにすることにした。

 

 

 

本当に。
本当に、あちこち案内させられた。

実にくだらないことに、彼女は興味を持つ。
内装の壁の色、廊下の広さ、大浴場の牛乳の賞味期限。
過去に何も問題が無かったのだから、といくら言っても彼女は聞き入れない。

そして。

ナデシコ食堂で値切った人を見たのは初めてだった。
休憩室の自動販売機にケリを入れた人も初めて見た。
格納庫で整備班にチヤホヤされ、真に受けてにこにこしているのを見たときは馬鹿かと思った。

 

とにかくそうやって、結局1日中案内させられた。

 

 

 

「ああ、楽しかった!」

 

彼女は実に、ご満悦の様子だった。

 

「あ、そうだ。ルリ!」

 

彼女は私の名前を知るや否や、私を呼び捨てにした。自分の方が年上(と言っても1歳違いだが)だから、それが彼女にとって当然らしい。

 

「汗かいちゃったから、お風呂いこっ、お風呂っ♪」

 

「私は自分の部屋でシャワーを浴びますから、どうぞご自由に。」

 

これ以上付き合う義理はないと思う。
でも彼女は、以前オモイカネのデータバンクで見た『ジャ○アン』とかいう人のように、傍若無人だった。

 

「いいから行くよ!」

 

そう言って、私の手を取って邁進していく。

 

 

大浴場には誰もいなかった。

 

「うわあ、貸し切り〜♪」

 

彼女は酷くそのことが嬉しかったらしい。
でも私はもう、ウンザリと疲れていた。
確かに、ここまで疲れたら、大きな湯船でゆっくりと身体を伸ばすのも良いかも。

今日は、本当に大変だった。

 

 

 

・・・・・・でもこの時、そんな疲れを吹き飛ばす発見があった。

お互いに、籠を用意して衣服を脱ぐ。
その時、ふと彼女・・・・・・ユキナさんの身体が目に入った。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・フッ

 

 

勝った、そう思った。
私の初勝利だった。
ああ、今日は良い1日だった、心からそう思えた。

 

 

私の視線に気が付いたユキナさんが、まず私の胸を見、そして真っ赤になって怒り出したが、それすら心地よかった。

 

湯船の中、私は思う存分に身体を伸ばした。

 


第2部 誓い

 

「がって〜〜〜むっ!!!」

 

あてがわれた部屋に戻り、ユキナは血の涙を流した。
確かに自分は成長が悪い。
木連で、それは既に自覚していた。

 

しかし。

しかし、あんな年下のチビにまで負けるなんて!

 

 

悔しさを、枕にぶつける。

何より腹が立ったのは、あのルリの勝ち誇ったような表情。
鼻で笑ったあの態度。
そして。

「木星は重力が大きいんですから、大きいと大変なんですよね?」

と哀れみを込めて言ったあの一言!!

 

「おのれ・・・・・・
覚えてなさいよ、ルリ〜〜〜っ!」

 

 

それからの彼女は、鬼だった。

まずは牛乳のがぶ飲み。
お腹を壊し、一時は体重が落ち結果としてサイズも小さくなって死のうかと思った。
それでも毎日1リットル飲み続けた。
気のせいか胸よりも身長が伸びたようだった。

マッサージ。
お風呂に入ったとき、女性誌で読んだ豊胸マッサージを欠かさず行った。
なけなしの脂肪を胸に寄せ集めるよう、頑張った。

運動。
これは特に努力したと言うほどの物ではない。
元から彼女は体を動かすのが好きで、じっとしていられない性分だったからだ。

それでも、最初の1年は努力の甲斐なく、泊まりに来たルリにせせら笑われた。

 

 

「がってえええぇぇぇええええむっ!!」

 

 

自分は駄目なのだ、神様に見放されているのだ。
そう諦め、こうなったら得意のスポーツで一花咲かせよう!
そう割り切ったユキナ。

 

運命とは皮肉な物で、そう思った途端に道が開けた。

 

人、それを成長期という。

 

スポーツに汗を流し、栄養状態も良いユキナは、健康的に成長した。
女性らしい丸みが有りつつも、健康的な活力が満ちあふれた肉体。
もうどうでも良いと諦めた途端にそう言う成長をはじめるのだから、神様というのは余程意地悪らしい。

 


第3部 因果応報

 

久々にハルカ宅に泊まりに来たルリは、目を疑った。

あの、唯一の自分の希望であった彼女が、変わってしまったから。

 

 

ここ3年間、ルリの『B』サイズは一向に変化がなかった。
そう、既に高度成長期が過ぎ去った後の日本経済のように。
サイズが増えるどころか、最近は減少の心配すらしなくてはならない程に。

 

それでも、ルリはまだ平静でいられた。

 私には、ユキナさんが居てくれる!

そう思うことは、ルリにとっての救いだった。

 

 

しかし、マラソン大会で一緒にゴールを誓ったはずの友人がゴール50m手前でいきなりスパートをかけるがごとく、ユキナはルリを裏切った。

 

『いえ、まだ解りません。
人がそんなに変わるはずがないんです。』

 

半ば祈るような気持ちで、その夜のお風呂を待つルリだった。


お風呂にはいるとき。
ルリは自分の脱衣もそこそこに、ユキナを盗み見た。

 

『ああ!!』

 

思わず嫉妬の炎が燃え上がる。
自分には夢のまた夢であったアイテム・・・・・

 

『ブ、ブラなんかどうしてあなたに必要なんです!』

 

そう叫びたいのをぐっと堪えるルリ。

 

『お、落ち着きましょう。
最近は良いパッドもありますから・・・・・・』

 

 ・・・・・・そういえば通販のあのパッド、やっぱり買っておきましょうか・・・・・・。

などと思いつつ、それでも視線は疑り深くユキナを注視するルリ。

 

『い、今にポトポトっとパッドが落ちて・・・・・・』

 

そう期待したが、何も落ちない。
念のためブラをよく見たが、なにも細工はない。

やや絶望的な期待を胸に、目線を上に上げると・・・・・

 

 

 

 

ぷりんぷりんっ

 

 

 

たわわに実った大きな果実が、その存在を誇示していた。

 

 

 

 

 

 

「う、裏切り者〜っ」

 

 

 

ルリの叫び声などこれまで誰も聞いたことがない。
腰を抜かすユキナ。
そして何事かとミナトが駆け寄り見たのは・・・・・・

これまた初めて見る、泣き崩れたルリだった。


何とか落ち着き、湯船の中で。

 

「ど・・・・・どうしてそんなに成長したんですか?」

 

震える声でユキナに尋ねるルリ。

 

「ああ、これ?
牛乳飲んだり、マッサージしたり、色々頑張ったからな〜・・・・・・」

 

懐かしく(余裕を持って)過去を振り返るユキナを、眩しそうにルリは見た。

 

「でも、全然成長しなかったんだけどね〜。
去年くらいから、成長期に入ったのかも。」

 

 そうですか。
 去年からなら、私もそろそろ成長が始まるのかも・・・・・・
 ユキナさんは何と言っても私より1歳年上なんですから・・・・・・。

 

話を聞いてる内に、自分の未来に対してやや明るい展望を見つけたルリだった。

 

 

 

 

 

 

と、ここで終われば良い話だったのだが・・・・・

 

 

髪を洗うルリ。
ユキナはそんなルリを見ながら、うらやましそうに言った。

 

「いいなあ。
ルリって、本当、髪が綺麗だよねぇ。」

 

「そうですか?」

 

自分ではそんなことは思ってなかったルリは、少し頬を染めて照れる。

 

「うん、凄く綺麗だよ。
そんな綺麗な髪なら、やっぱり伸ばしたくなるよね。」

 

自分の短めの髪を弄びながら、ユキナは言う。
そして、

 

「やっぱり、そんなに綺麗な髪っていうのは、相当栄養を吸い取ってるのかもね〜」

 

 

 

 

ぴきっ

 

 

 

ルリの手が止まった。
言ったユキナにしたら軽い冗談。
しかし・・・・・・

ルリはおもむろに立ち上がり、お風呂場を出ていく。

 

「ちょ、ちょっと、ルリ!」

 

何か剣呑な物を感じたユキナは慌てて追いかける。

 

 

ルリは思い詰めた顔でハサミを手に取り、そして震える手で自分の髪を・・・・・・・

 

 

「ストーーープッ!
ルリ、冗談、冗談だってば!
ミナトさん、ミナトさん、早く来て〜〜っ!」

 

 

ルリを羽交い締めにするユキナ、駆けつけて何とかハサミを取り上げるミナト。
そして。
泣き崩れるルリがそこにいた。

また翌日。
空になった数本の1リットル牛乳パックと、なかなかトイレから出てこないルリに、ミナトとユキナはため息を付いたという。

合掌。


<あとがき>

なんか、読み直すとルリというよりも月姫の秋葉っぽい気もしますね(笑)

個人的にちょっとラブラブ話には食傷気味なので、なんとなく思いついた話でした。


b83yrの感想

感想不用宣言しているやりたかさんですが・・・・やっぱ立場上、感想書くべきなんでしょうねえ(苦笑)
あっ、立場って言うのは、HRATの狂祖と『誤解』されているって事ですからね(笑)
私はあんな組織の狂祖様なんかじゃないです、断じて違います
本当だってば!!

さて、珍しく・・本当に珍しく、ルリの勝利・・と思ったらそれは一時的なモノに過ぎなかった・・
人生なにが起こるか解らないものです
なんて、教訓に満ちた話なんでしょう
えっ、そういう話じゃないんですか?(笑)

しかし、ルリが負けてるのにちっとも悔しくないのは何故なんでしょうねえ
というか、むしろ、負けて嬉しい・・・
そう、あのまま勝っているようじゃいけない
この手の勝負では、敗者こそが真の勝利者
つまり、ルリは本当の勝利をその手に掴んだんだっ!!(力説)
・・・・・・・・・・・・はっ、私は何をいっている(汗)

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