機動戦艦ナデシコ

へっぽこ日本昔話




 





昔々、あるところに一組の夫婦が住んでいました
夫の名はアキト、妻の名はユリカ
二人の間には子供ができませんでしたが、大変仲が良かったそうです

ある晴れた日、いつものようにアキトは山へ芝刈りに、ユリカは川へ洗濯に出かけました

アキトが山へ入ると竹藪の奥に黄金色に光る一本の竹が生えていました
不思議に思った彼がその竹に近寄ると、光が透けて見え、中に何か入っているようでした
思い切ってその竹を切ると、中には赤ん坊がいたのです
「なんて可愛らしい赤ん坊なんだろう……。この子は子供の居ない俺達夫婦に神様が授けてくれたに違いない」
そう言って、アキトは大喜びで赤ん坊を家へと連れて帰りました

同じ頃、川で洗濯をしていたユリカは川の上流から大きな桃が流れてくるのを見つけました
「あら、なんて大きな桃でしょう。あんなに大きな桃ならば、あの人も喜ぶでしょうね」
しかし桃は、彼女の居る岸から離れたところを流れていたため、彼女は桃を取ることが出来ませんでした
「ああ、行ってしまった。誰が拾うか分からないが何とも悔しいわねぇ…」
ユリカは下流に流れていく桃を見ながら、そう言いながらため息を吐いて、洗濯に戻りました
暫くして、洗濯も終わる頃、また大きな桃が流れてきました
今度の桃は、彼女の近くに流れてきました
「あ、今度の桃も大きいわねぇ。こちらに来たと言うことは、私に拾って欲しいのかな?」
そう言いながらも、ユリカは河原に引っ掛かっていた桃を拾いました
「なんと重い桃だこと。これは中身がしっかりしてるに違いない」
ユリカは桃を持ち帰り、アキトと一緒に桃を食べようと考えていました
桃を担ぎ洗濯物を持ってユリカは、そのまま家へと帰りました


ユリカが家に帰ると、既にアキトが帰ってきていました
「あら、アキト。もう帰ってきてたんですか?」
「ああ、ユリカ、ちょうどいい所に帰ってきた。ちょっと見せたい物があるんだ」
「丁度良いわね、私も見せたいものがあったんですよ」
そう言ってユリカはアキトに川で拾った大きな桃を見せたのでした
「なんて大きな桃なんだ!」
アキトはその桃の大きさに驚きました
しかしアキトにはもっと驚く物があったのです
「ユリカ、俺が見せたいのはこの子だよ」
そう言ってアキトは竹から出てきた女の子をユリカに見せたのでした
「なんとまあ、可愛らしい」
「この子は、子供のいない俺たちに天が授けてくれたに違いない」
「そうですね、この子は今日から私たちの子供です」
「ユリカが拾った桃もきっと天からの贈り物に違いないよ」
「そうですね、この子が私たちの子供になったお祝いに神様が川に流してくれたんですよ、きっと。ありがたく頂きましょうよ、アキト♪」
「うん、そうね。どれ、俺が切ってやるよ」
そう言ってアキトが桃に包丁を入れると、桃は真っ二つに割れ、中から赤ん坊が出てきたのです
「うわっ、桃から赤ん坊が出てきたじゃないか」
「あらあら、なんて可愛い女の子だこと」
「ううむ、桃の中に赤ん坊とは不思議な……。しかし、この桃も天からの恵み。この子もきっと天が授けたに違いない」
「そうですね、アキト。この子もあの子もきっと天からの授けに違いありませんよ」
そして、アキトとユリカは赤ん坊の名前を考え始めました
「どんな名前にしたらいいでしょうねぇ」
ユリカは未だ考え倦ねているようですが、アキトはもう決まったようです
「良い名前が浮かんだよ、ユリカ」
「どんな名前ですか、アキト?」
アキトは竹から出てきた女の子を抱き上げ、
「この子の名前は『ルリ』だ。『那世竹のルリ』が良い」
「伽具夜ですか、それは良い名前ですね。ではこの子は?」
ユリカは桃から出てきた子を抱き上げ、アキトに訊いた
「うん、ちゃんと考えたよ。この子は『ラピス』、『胡貴川のラピス』さ」
「ラピスも良い名前ですねぇ、きっとこの子達も喜んでくれるに違いありません」
こうして二人の赤ん坊は『ルリ』と『ラピス』と名付けられ、夫婦の子として育てられることになりました
ルリとラピスはぐんぐん成長し、一年が過ぎるころには赤ん坊から少女へと成長したのです

 

二人を拾ってからというもの、夫婦に次々と不思議な事が起こりました
山に入ると、竹の中から金銀財宝が
川に行くと桃が流れてきて、やはり中からは瑠璃紅玉が出てきたのです
やがて、土地の者でも知らぬと言われるほどの冠者となったのです
冠者となったアキトは朝廷に働きかけ、その地方の領主に納まりました
領主となり名を『竹桃院テンカワアキト』と名を改めたアキトは、善政を敷いたのです

三年の月日が経ってもルリとラピスの成長速度は変わらず、年の頃は15となっていました
そんな時、平和だったその地方に、病が流行り始めたのです
しかし、アキトの善政のお陰で病に倒れる人は少なく、領内の病も治まりかけた時、不幸にもユリカが病に罹り倒れてしまいました
アキトと共に領内の病の対応で疲れきっていた身体に病が入り込んだのです
ユリカは三日三晩高熱を出し、生死の境を彷徨いました
四日目の夜になって、熱も引き、峠を越したと思われたそのとき、ユリカが目を覚まし、そばで看病していたアキトと娘二人に向かってこう言いました
「ごめんなさいね、アキト。私はもう駄目みたい……」
「そんな事言うな、きっと良くなる!だからそんな弱気なこと言うな!!」
「いいんですよ。自分のことは自分が一番分かりますもの。ルリ、ラピス、この人の支えになってあげてね……。この人は私が居ないと何も出来ないんだから……私が居なくなっても変わらないこの人で居させてね……」
「はい、お義母様。お義父様の事は任せてください」
「お義母様、お義母様の変わりは出来ないけど、一生懸命やるよ!」
「ありがとう、二人とも……」
「アキト、あまり悲しまないで……。人は何時かは果てるもの、私はそれが早かっただけ……。アキトが悲しんでいると私も浮かばれないわ……」
「だが!」
「お願い、アキト……」
「……分かった、安心しろ。決して思い残させはしない」
「ありがとう……愛していたわ、アキト……」
皆の言葉に安心したのか、ユリカはまた眠りにつきました
そして明け方、静かに、眠ったまま息を引き取ったのです

ユリカが亡くなり、アキトは大層嘆きました
何事にも手が着かず、ただただ嘆き続けたのです
そんなアキトの姿を娘達は見ていられませんでした
ユリカが亡くなって初七日が過ぎたある日、鬱ぎ込んでいるアキトの元にルリがやってきました
「お義父様、何時までもお嘆きにならないで下さい。お義母様とも約束なさったでしょう?」
ルリがアキトと話していると、ラピスもアキトの元にやってきました
「早くいつものお義父様に戻ってください。お義母様の変わりにはなれないかも知れないけど、一生懸命頑張るから!」
「…………ありがとう、二人とも。そうだな、あいつとの約束だもんな……。だけど今日だけはこのままで居させてくれ。明日からはまた以前の俺に戻るから……」
二人の心からの言葉に、アキトは立ち直ったのです
ユリカとの最後の約束を胸に刻み込んで……

 

それからというもの、アキトは今まで以上に仕事に励んだのです
領民に自分のような人を二度と出したくないために……
ルリとラピスもそんなアキトを支えたのでした。

 

そんなある日のこと、アキトの領内を通りすがった都の貴族アララギが、偶々城下に来ていたルリとラピスを見かけたのです
二人のあまりの美しさに見惚れたアララギは近くを通りすがった領民に声を掛けました
「そこの者、あれに見えるは何処ぞの娘じゃ?」
その領民はアララギがルリ達を指したのを見て、
「お公家様、あれは竹桃院様のお姫様でございますよ」と答えた
「ほう、竹桃院殿にあの様な娘が居ったとは……」
アキトはこの地を栄えさせた領主として、また当代一の大家として、その名は都にまで届いていたのです
また、アララギはアキトとも面識があり、若干の援助をしてもらったこともあったのでした
世話になった者の娘の事を知ったアララギは、アキトの元を訪ね、娘のことを尋ねました
「竹桃院殿、近くを通ったもので挨拶をと思いましてな」
「これはアララギ殿、良く来てくれました。家内がいなくなったせいであまり持てなせませんが寄っていってください」
「忝ない。……そういえば街で見かけましたが、なかなか良い器量を持った娘さん達ですね」
「あの子達は本当によくしてくれますよ。私が婿を取ったらどうかと問うと揃いも揃って断るんだから。訳を聞いたら、やらなければならないことがあると答えてきましたよ」
「なるほど、残念ですな。良い者を紹介しようと思いましたが……」
「それは残念ですね。だけど、私はあの子達の考えを優先したいと思っているんです」

 

アキトに歓待された貴族は都に帰り、ある宴でふとルリとラピスのことを口にしました
その話は瞬く間に都中に広がったのです
話を聞きつけた若い貴族達は挙ってアキトの元へ向かいましたが、アキトの元を離れる気がない二人は全て断っていきました
しかし、断っても断っても諦めない五人の貴族に困り果てた二人は、しかたなく条件を付け、それを満たせたものと結婚するとしたのです

同じ頃、都では鬼が現れ、猛威をふるっていました
鬼は本拠である鬼ヶ島から侵略する地域を拡大していき、都から財宝などを略奪していったのです
都中は恐怖に戦いていました
その為、ラピスは鬼ヶ島に巣くう鬼を全て退治し、証拠としてその首と鬼の持つ財宝を
ルリは龍の首元にある宝玉、燕の持つ子安貝、火鼠の皮、蓬莱山に生えているという瑠璃色の花、と言ったどれも不可能に近いものを所望したのです
それを聞いた五人は勇んで都に戻り二人が望んだ物を得ようと旅立ちました
だが、それを果たせた者は無く、ある者は旅先で倒れ、またある者は偽物を拵えそれを見抜かれてしまったのです
帝アカツキも二人の姫がこの上ない美しさであることを聞き、姫を差し出すようにアキトに命じたが、二人に拒否され泣く泣く諦めました

 

やがて、春の初めからルリは月を眺めては悩んでいる様子で、8月15日の夜が近づくと、人目も憚らず泣くばかり
心配したアキトが優しく尋ねると
「実は私は月の都の者で、前世の約束があったので人間世界にやってきたのです。8月15日の夜、満月の日に月からの使者が迎えに来ます」とうち明けたのです
アキトはこれをとどめさせようとしたが、どうすることもできないので、アカツキに頼んで月からの使いを迎え撃ってもらおうとしました
アカツキは近衛の兵2000人をアキトの屋敷に派遣したのです

 

その頃、二人の姫が帝すらも断ったと言う噂は都中に広がり、さらには鬼の耳にも届いたのです
鬼達を統率するのは草壁と北辰と言う二匹の強大な鬼でした
「北辰よ」
「なんだ、草壁」
「竹桃院テンカワアキトという男を知っているか?」
「うむ、当代一の大家だと都でも有名な男だな」
「その竹桃院の娘のことは知っているか?」
「奴には二人の娘がいて、共に絶世の佳人だという話だったな」
「我らが物にしたいとは思わぬか?」
「行くか?」
「当然の事よ」
こうして草壁と北辰に率いられた鬼は、ルリとラピスを攫うべく鬼ヶ島を出撃しました
鬼達がアキトの屋敷に到着するのは8月15日の夜
こうしてアカツキの軍勢と鬼の集団、月の使者の三つ巴の闘いが始まろうとしているのです

運命の日の朝、ルリはアキトそっと自分の想いを打ち明けたのです
義母であるユリカが亡くなってから、アキトを支えていく内に、いつの間にか芽生えた想いを
アキトは突然のことに驚き、何も言えませんでしたが、ギュッとルリを抱きしめたのです
そこへラピスもやってきて、やはり自分の想いを告げたのです

 

やがて、時が来て月の使者が現れると、2000の兵は全く身動きが出来なくなったのです
しかし、そこに鬼が現れると、状況は一気に変わりました
兵達が突然動けるようになったのです
兵は月の使者と、鬼は兵と、月の使者は鬼と、それぞれ闘い始めたのです
三つ巴になり、やがて屋敷にいたアキトとルリ、ラピス以外は全滅してしまいました

夜が明け、月の使者がもう来ないと知ったアキトは、鬼が再び来ないかどうかを鬼ヶ島へ確認に向かいました
鬼ヶ島には鬼が居らず、あの時来た鬼が全てであったと分かり安心したアキトは鬼が貯め込んだ財宝を回収し、屋敷へと戻りました
鬼が全て倒され、その財宝もアキトが回収し、自分の結婚相手はアキトだと言うラピス
使者が全滅し、帰らなくても良くなったルリも、鬼の財宝の中に自分が所望した宝物があるのを見て、やはり自分と結ばれるのはアキトだといってラピスに対抗する
そんな二人を笑いながら見るアキト

 

やがて三人は幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし







 

番外編 ハーリーの冒険

 

物語の始めの方でユリカが取り損ねた桃は、下流の方でやはり洗濯をしていたお婆さんに拾われました
お婆さんは桃を持ち帰り、お爺さんと一緒に食べようと思いました
お爺さんが桃を割ると中から可愛らしい男の子が出てきました
男の子はハーリーと名付けられ、すくすくと成長していきました

数年後、立派に成長したハーリーは鬼ヶ島へ鬼を退治するために旅立ちました。腰にはお婆さんが作ってくれた黍団子とお爺さんから渡された刀を下げたその姿は、かなり様になっていました

 

旅を始めたハーリーですが、一人で鬼退治をするのは無理だと分かっていたため、旅の供をまず探すことにしたのです
始めに出会った物と行こうと決めたハーリーでしたが、最初に出会ったのはガイという犬でした
ハーリーは犬も良しとして、ガイに話しかけたのです
「そこの犬、私はハーリーというのだが共に鬼を退治する旅に出かけないか?」
ハーリーに尋ねられたガイはこう答えました
「共に行きたいのはやまやまですが、空腹で一歩も歩けません。どうかその腰にある黍団子を頂ければ……」
「しかし、これは大切な物故そう簡単にくれて良いものか……」
「お願いいたします。それを頂けるのなら、一生何処へでも付いていきます!」
「しょうがない、ではお食べなさい」
こうしてハーリーはガイを旅の仲間に迎え入れたのです

ハーリーは次に遭遇した者も供にしようと思いましたが、次に遭遇したのはサブロウタという猿でした
ハーリーは猿もまた良しとして、サブロウタに話しかけたのです
「そこの猿、私はハーリーというのだが共に鬼を退治する旅に出かけようじゃないか」
ハーリーに声を掛けられたサブロウタはこう答えました
「私も行きたいのですが、腹を空かせた母がおりますので……残念です」
「ならばこの黍団子を一つ分けてやろう。これで母を喜ばせてやってくれ」
そう言って立ち去ろうとしたハーリーに、サブロウタは声を掛けました
「なんて慈悲深いお方だ。私をぜひとも旅の供にしてください」
「しかし、腹を空かせた母がいるのだろう?無理をすることはない」
「いえ、母には訳を話して納得して貰います。少々ここでお待ち下さい」
そう言ってサブロウタは山へと入り、半刻後再びハーリーの元へと戻ってきた
「ではハーリー様、参りましょう」

その後、傷ついたリョーコという雉を黍パワーで直し、仲間に加えたハーリー一行は艱難辛苦の末に鬼ヶ島が望める岬へとやってきました
「あれが鬼ヶ島か……。待っていろ、鬼共!」
鬼ヶ島に向かう船を勝手に借りたハーリーは海を渡り、とうとう鬼ヶ島に上陸したのです
しかし、鬼ヶ島には誰も居らず、鬼が貯め込んでいるという財宝もありませんでした
ハーリーは知らないことですが、ハーリーがこの鬼ヶ島に来る一週間ほど前に鬼は全滅し、財宝も全て持ち去られていたのです
「僕がここに来た意味ってなんだったんだろう?」
「ハーリー様、ここに来るまでが冒険なのです」
「そうです、例え何もしていなくても社会勉強となるのですよ」
「さて、帰りはどうしましょう?勝手に拝借した船は潮で流れちゃったし……」
「僕っていったい何だったわけーーー?!」

 

ちゃんちゃん

メフィストさんの部屋// 投稿作品の部屋// トップ2


b83yrの感想

アキト、美味しい役割や、何にもしとらんのに(笑)

まあ、苦労の割には報われないのがアキトの普段の姿だから、たまにはこう言うのもいいですか

ハーリー?、ハーリーはまあ、どうでもいいって事で(苦笑)



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送