帰ってきますよ。

帰ってこなかったら、追っかけるまでです。

だってあの人は・・・・・・あの人は、大切な人だから。





想いを言葉にして、そう言って微笑んだのは、かつてはからっぽだった少女。
 
人が人を思い慕うなら、それはもう恋といえるのだろう。

少女は微笑む。
華がほころぶような笑顔を浮かべて。

少女は気付く。
己の胸のうちに秘めたるその思いを。
 
けれど、やがて少女は知る。
彼の2年の戦いを、彼の傍ら立つ自分とよく似た少女のことを。
そして、自分の知らなかったことを、いろいろと。

無邪気に『帰ってきますよ』と口にした自分。
その言葉を口にした自分はどれ程に無知であったか、そして残酷であったか。
そのときなって、少女は初めて知る。


あの人が私たちと向き合えるとき、その結果、二度と私たちと合い間見える
ことがなくなってしまうとしても・・・・・・。



『待っている』

それは少女の出した答え。


『みんな待っている。そして、ユリカさんも』

けれど、それは少女の願望。



彼は妻を助ける為だけに戦った。
彼を知る人は、あのナデシコと言う船のクルーだったみんなは、皆が皆そう口にする。
でもそれは、誰かにとっての都合の良い解釈でしかない。

けれど、皆は気が付かない。
気が付こうともしない。
だからある筈の無い、そして、けして許されない美談を口にする。

彼は囚われの妻を助け出す為に戦ったのだ、と。
そのために、彼は変わったのだと。
皆が皆、そう口にする。

彼の妻も口にする。
お姫様は満面の笑顔を浮かべて、嬉しげに答える。



『もちろんだよ。彼は私を助けてくれる為に戦ってくれてたんだよ』

『だって、みんなそう言ってくれてるよ』



何の疑いも、憂いも持たず、ただお姫様はそれが唯一の真実であるかのように笑顔を浮かべる。

昔と変わらぬその満面の笑顔のはずなのに、それすらも、少女にはひどく愚かしく、
そしてひどく狡猾なものにしか映らなかった。

だから、自然と耐えられなくなっていく。
その女性と家族と呼ばれることが、いつしか少女にとっては、苦痛となってしまった。

それらは真実から程遠い虚像。
なのに彼の妻も、昔の仲間も自分の望むように捉えて受け取ってしまった。
歪めて捕らえてしまった。
ただ、それだけの事。


けれど、少女だけは・・・・・・。


あの火星の地ですべてを掌握したとき、現れた7つのボゾン反応に対して少女は言った。

「あの人に・・・・・・任せます」

その言葉に答えるかのように出現する剣にも似た戦艦。
その舳先に鎮座するは彼の駆る漆黒の機動兵器”Typ.A-2”。

2年越しの再会、わずかに交わしたのは彼からの一方的な別れの言葉のみ。
その言葉に少女は感情を露わに声を荒げる。
それはあの時以来の少女が見せる感情の発露。

けれど、視覚補正ツールを外して微笑んだ彼の顔は、少女の記憶の中の彼のまま。
共に暮らしていたあの頃の、多分あの頃よりも、ずっと優しい微笑み。

彼の2年間を知る女性たちを除けば、今この時、彼を理解していたのはきっと、かつて家族であったこの少女だけ。

だから少女は否定する。
彼は何も変わってはいないと。

だからこそ少女は否定する。
彼の行為を、けして許されぬ美談で飾り立てないでほしいと。
 
何よりも誰かが死ねば、誰かが悲しむ。
それは酷く当たり前の連鎖。
その連鎖を誰よりも知っていたのは彼のはず。

両親を企業の独善的な利益確保のために殺害され、故郷を軍人のエゴのために滅ぼされ、
自らも、望まずと戦いの場に駆り出されたとき、怒りと憎しみに任せ、敵に向けトリガーを引き絞る。

けれど彼はやがて知る、銃口を向けたその敵すらもまた・・・・・・。

そんな彼がなぜ、ただ一人を救う為だけに数多くの人々を殺める事ができるのか、と。
少女はかつての仲間に問いかける。

けれど決まって答えは同じ。

『彼は囚われの妻を助ける為に戦った』

異口同音に、かつての仲間はそう答える。


かつての仲間は少女を誘う。
少女の船で彼を探しに行こうと、彼を連れ戻して、あの幸せな頃からやり直させようと。

けれど少女は気付いてしまう。
それは彼ら彼女らが、自分たちの満足を得るためのやり直しを求めている行為でしかないことを。

幾百幾千の言葉をかさねても、信じないものの耳には、どんな言葉も入らない。

だから少女は、いつしか沈黙する。
頑ななまでに沈黙し、いつしかかつての仲間から少女は距離を置いていく。







月には二人の淑女が住まう。
その一人は、かつては彼の情人であったひと。
けれど彼女は其の事をやんわりと否定する。

寂しげに自嘲的な笑みを浮かべ、月の淑女は言葉少なに語る。
戦い始めた頃の彼は、己の死すら厭わなかった、と。
だから彼女は彼に縋って、体を重ねてでも彼をつなぎ止めようとした。

「軽蔑する?私は彼に抱かれたわ。それとも、私が彼を抱いたのかしらね?
そのことで蔑んでも、軽蔑してくれてもかまわないけど」

それは少女に印象的なまでに焼きつく、女としての微笑み。
胸に覚えたのは、嫉妬。
そう、間違いなく嫉妬だった。
 

月に住まう淑女の一人。
彼と縁深く数奇な人生を歩んでいる深遠なる知識を持つ女史。
初めて彼と出会った頃は年下で、いまでは彼より年上の、ひどく数奇な運命を歩むひと。
博識なるかな説明『おねえさん』。
 
女史が紡ぐは、記録。
間違っても、説明では、ない。

彼の身に起きた事、彼の背負った物、様々な事。
このとき少女は改めて知る。

その内容は九月の頃、ネルガルの会長に聞かされた客観的な事象とは異なり、科学者として、そして医師として、
常に彼に関わった女史だからこその冷徹な視点から語られる生々しい程の、記録。

彼が、いや、囚われていた初期の試験体に施されていた実験の内容の数々を、少女はこのとき初めて知った。

回収したデータに記入されていたのは、便宜上付けられたナンバー、氏名、年齢、性別、身長の、ただそれだけ。
けれど、それら一人一人に生きた時間が、育んだであろう思い出が存在する。
命など消えてしまえば後には何も残らない、それは嘘だと少女は知っている。
 
だから・・・・・・。
だからこそ、少女は忘れない。

その内容に、五分と経たずに席を立ち、洗面所で嘔吐しようとも、それでも逃げることなく、
再び戻って記録を記憶する。

何度も嘔吐を繰り返しても、逃げる事無く、決して目を逸らす事も無く。

もし、もっと早く気が付いていたら。
時間が巻き戻せない事と知っていても、少女はそう思わずにはいられない。

だから、これは罰、これは業。
自分の中の止めてしまった、思い出にしてしまった事を、再び動かす為の儀式。

それでも彼らの経験した苛烈な二年間には、到底及ばないと理解していても。


嘔吐を繰り返して焼けた喉を潤すように、二杯目のみかんジュースを飲み干す少女。
幾分、疲れてやつれた少女を、女史は共感にも似た感情を含んだ優しい瞳で見つめる。
彼の傍に立つ資格、それらをいま、間違いなく少女は得たのだから。


彼の妻が、かつての仲間が、望むのならば診せる為だけに作成した資料。
けれど、望んだのは少女だけ。
だからこのコンパクトにまとめられた資料は、後にも先にも少女の為に作成した資料となった。


彼の船は補給時以外は、この月に滅多に立ち寄ることはなく、いまも何処にいるのかは不明のまま。
いつものことよ、と、彼女たちは苦笑する。

積み重ねられた時間を共有するからこその、その余裕。
その姿に少女は妬みと痛みと寂しさを覚える。

もう解っていた。
自覚してしまっていた。
自分が彼に求めるものは、兄でも、父でもなく、女として彼を求めているその事実に。

気付いてしまえば、いつしか、世界のすべてが色あせていく。
艦長と言う職務も、宇宙軍少佐という肩書きも、別段少女が望んだ訳ではないのだから。
昔と同じように流されて、結果ここに存在するだけ。




会いたかった。

彼にもう一度だけ会いたかった。

会ったからといって、どうなるものでもないと解っていても。

それでも、彼にもう一度だけ会いたかった。

 



 
その晩、壮年の男は彼を待っていた。
自分の義息子である彼が尋ねて来る事は、事前に知らされていた。
だから連合宇宙軍本部ではなく、人払いを済ませた思い出深い私邸での会合を、壮年の男は希望した。

壮年の男の視線は、思いを馳せるような、昔を懐かしむような、そんな眼差しで邸宅の広い庭に向けられていた。

どれ程の時間を、そうして佇んでいたのだろうか。
いつしか、約束の時間が近づいていたことに壮年の男は気が付く。
昨日と今日の境目が交わり合うその頃が、約束の時間。


視界の中に、光が生まれた。
青白い幻想的な時空粒子の輝き。
そんな光の中に現れる、人影。
光は残光となり、そして儚く消えた。
残るのは、漆黒の外套をまとった彼。


壮年の男は、彼を部屋に招く。
けれど交わす言葉すらなくて、ただ互いのグラスに注がれた酒精に浮かぶ氷塊の揺れる音だけが、
部屋で唯一の音色を奏でる。

そんな沈黙を破って、義父は義息子に問いかけた。

「恨んではいないのかね」
 
宇宙軍総司令という要職に就く義父は、動乱が事後となった今、多くを知っている。
義息子が試験体とされながら、実娘は人質とされていたことを。

宇宙軍が、かつて程とはとは言えないまでも、いまだに軍備を有していた為に、決起の際にはその総司令たる
義父に対する牽制の意を込め実娘を生かし人質としていたという事実を。

実娘に対する義父の親馬鹿ぶりは、仲間内はもとより組織内外にも知られていたのだから。
 
眠らされ、仮死状態のまま実娘は二年という時間だけを失っていた。
けれど、失ったものはそれだけ。
義息子と違い、彼の妻が失ったものは二年間という主観的な時間だけ。
 

けれどその夫たる義息子は、違っていた。
生き続けて、非人道的なまでの実験に対する試験体として無理やりに従事されられ、五感のいくつかが
欠けてしまった。

その一つは味覚。
かつては料理人を志していた義息子の希望を奪うには十分過ぎる事実。

けれど実娘はその事実を知らず、知ろうともせず。
義父もまた、その事実を実娘に語れずにいたそのことを。

だから聞かずにはいられなかった。
恨んでは、憎んではいないのか。と。

わずかな沈黙の後、彼は言う。

「知っている」

義父の少ない言葉から彼が何を問いたいのかを察して、そう彼は口にする。

「憎んだことも恨んだことも一度や二度じゃない」

彼は続ける。

「それでも一度は妻と、一度は義父と呼んだのだ。かつて妻と呼んだ女性を今も好きでいられる。
嫌いにはなれない」

けれど、それだけ。
彼は語る。

もう、かつては妻と呼んだ女性に対して、恋することも愛することもできないと。

いや、違う。
初めから恋していた訳でも、愛していた訳でもなかったのだ、と。

彼は彼女を好きなまま、彼女は彼に恋していたままだったと言う事実を、分かたれた後に気付かされる。
お互いがお互いを愛するには到ってはいなかった事を、いつからか彼は自覚してしまっていた。

 

逆に、彼は義父に問う。

いかなる理由があろうとも、屍山血河を築いてしまった男を、まだ義息子と呼べるのかと。
そんな男が、再び実娘と添い遂げようとすることを許せるのか、と。

逆に、彼は義父に問う。
 
一人の男としては胸を打ち、共感すら懐くその行為も、宇宙軍総司令という要職に就く人間から見れば
それは決して許されざる行為。

ましてや、ひとりの父親としては娘を守れなかった男なぞに再び娘を嫁がせる事など出来るはずもない。

それが、義父の答えだった。

そしてそれは、彼にとっても望む答え。
口元に満足げな微笑を浮かべ、礼を言う。
 
そして彼は、彼の生み出した青白い時空粒子と共に立ち去った。

時計の長針がわずかに歩を進める程度の、ほんのわずかの会合。
まるで初めから誰も存在しなかったかのよう。

けれど残されたグラスが、彼がそこに存在した事実を残していた。

それは義父として義息子として初めて酒を酌み交わす最初で、そして最後となった、忘れ難き出来事。

彼が去った後、義父は庭に目を向ける。

二年前、そこで在った勝負事に自然と思いを馳せる。
それは、彼を義息子と呼ぶきっかけであった出来事。
それすらも、もう今は昔のこと。

ただ、数多い思い出の一つとなってしまったその事実が、口に含んだ酒精をひどく苦く感じさせる。

そして不甲斐無く思う。
義父として、もう彼に何もしてやれない事に。
それでも・・・・・・。


 


少女個人宛てに、月の淑女たちから私信が来た。

その伝言はひどく簡潔で、彼が、彼のかつての妻の下に赴く日取りと時間の、ただそれだけ。
二度と会う気はなかったけれど、かつての家族の面会に仕方なくも少女は赴く。
 

鍵の開いた籠の中のお姫様は、いまも、ただ待ち続けているだけ。 

そうしていれば、何時かは王子様が迎えにきてくれると疑わずに。
そうしていればお姫様の部屋にはいつも昔の仲間が集い、昔話に花を咲かせてくれるから。
そうしていれば、耳障りの良いおとぎ話がお姫様を潤してくれるから。

そうしてお姫様は、いまも、ただ待ち続けているだけ。

 
恋に恋して夢見るお姫様が語るのは在りもしない王子様の物語。

少女はかつては家族であった彼女の言葉を腹立たしく思う。
だから幾分、険を含んだ口調になってしまう。

少女は問う。

「今でも、あの人があなたを助ける為だけに戦ったと信じているんですか?」

けれど、時を経てもお姫様とみんなの答えはあいも変わらずに。


クリムゾン・スキャンダルに埋もれてしまっても、四つのコロニーが落とされたのは変わらない事実。

いかなる理由であれ、彼の行為が少なからぬ死傷者を作り、新たな憎しみと悲しみを生み出していても、
昔の仲間はありえぬ美談にいまだ溺れる。

少女にとって、それが思い出からの決別の時。
少女はそっと、左手首に日常的に付けている軍用コミュニケを起動させる。
その行為は、彼女の上司であり、お姫様の実父に頼まれての事。

此処での映像音声がライブで送られる。
ネルガル重工グループの会長職に付く人の元へ。
連合宇宙軍の総司令の元へ。

そしてなによりも、彼の元へと。
 

それが合図であるかのようにその部屋に青白い時空粒子が生まれ、そして、一呼吸の間に彼は現れる。
鋭角的な視覚補正ツールで目元を被い、漆黒の外套を羽織った、少女と再会した時と同じその姿。
 
もう一度会いたかった。
でも、会うことが怖かった。
会ってしまったら彼を責めてしまうかもしれないと、そう思っていた。

けれど今、少女の胸のうちに在るのは、安堵と慕わしさだけ。


血の繋がらない者同士が一つ屋根の下で暮らし、家族を演じていた頃の甘やかな記憶が、ふと過ぎる。
貧しいけれど、楽しくて、ずっとこんな日々が続くと思っていたあの頃。
あんなことがなければ、今も続いていたであろう日々。
そして、何時かは壊れてしまったかもしれない日々。
けれどそれは、今は戻れないもう過去のことなのだ。



その姿を見つけ、まるで子供のような笑顔を浮かべてお姫様はベッドの上から跳び降りる。
飛ぶように彼の元へと駆け寄って、お姫様は躊躇すらなく当たり前のようにその胸へと飛び込む。

昔の仲間はその光景に目を細め、喚起の声を上げる。

彼ら彼女らは気付かない。
自分にとっての幸せを他の誰かに重ねて押し付けていることを。
真実相手を思いやっている風に見えるからこその性質の悪さを。

気付くべきだった。
受け止めて、支えてはあげても、彼のその両の手がお姫様の背に回される事がないことに。

わずかに手を伸ばせば触れることが叶う程近くで、変わらぬ昔の笑顔のままで笑う。
それでも彼には何の感慨もない。

故に感情の高ぶりも無く、唯一露出した顔にも淡い光の軌跡が走ることすらなく。

かつて妻と呼んだその女性を前にしても、心の内に憎しみは沸かなかった。

けれど同時に狂おしい程の衝動もまた無く、ただ乾いた感情が彼の心を支配するそのことにも戸惑いは無かった。
その確認と、そして別れを言葉で告げる為に、今、彼は此処に来たのだから。



昔の仲間ははやしたてる。
幸せな時間のやり直しを、お姫様の王子様の帰還を、そして夢の続きを。
けれどそれは誰にとっての夢なのだろう?

彼は言葉を紡ぐ。
別れの言葉と、彼のかつての妻と、かつての仲間たちの溺れる幻想を断ち切るために。
彼は、彼自身の言葉で否定する。



「俺はお前の為だけに戦った事なんて一度もない」

始まりはその一言。




満面のお姫様の笑顔が固まる。
そして、昔の仲間からも笑顔が消える。

夢は覚める。
彼ら彼女らにとっては在ってはならない現実が姿を現す。

お姫様は笑顔を引きつらせたまま、そのこと言葉を否定する。
否定して、否定して、否定して、また否定する事を繰り返す。

かつての仲間も騒ぎ出す。
彼は彼女を助け出すために戦った筈だと、声を荒げて口にして。
 

彼は問う。

「なら、人を救う為に人を犠牲にしていいのか?」

彼は問う。

「誰かの幸せを奪って得たものの何が正しい?」


多数の死者と負傷者を出してまで、彼が何を求めたのか。
それは結局、彼にしか解らない事。
いや、彼自身にも、もう解らないだろう。

初めは自分の為の復讐だったのかも知れない。
たしかに、復讐は自己満足を生んでくれた。
けれど、人の感情は炎のようなもの。
燃えるものならば何時かは冷めていく。


流される血が後悔と怨嗟の螺旋を生み続け、想いが、苦しみが、ただ膨らむばかりだった日々。

それでも彼が戦えたのは、自分と同じ境遇だった試験体と呼ばれた人々を、助け出すことが出来てしまったから。

たとえその数はわずかであっても、自分の為に始めたはずの戦いで、何処かの誰かを救うことが出来てしまったから。


夢や希望を奪われたことは、もう変えようのない事実。

それでも灰の中に残った火種が再び灯ろうとあがくように、取り戻せない代償を費やして、引き返せない戦いの場に
立ったのは紛れもない己の意思。

振りかざしたこの手が、潰える筈だった命の火々を救うことが出来たから。

だからこそ。

代償として等価値の命の火々を踏み潰し消し去ってでも尚、

誰かを殺せば誰かが悲しむ、その連鎖を思い出してもな尚、

彼はその行為が許されざる行為と理解していても尚、

行き着く先に屍山血河を築くとしても、尚。


彼は知ってしまった。
気付いてしまった。
暴力に対する手段は、同じ暴力でしかないその事に。


なら、戦うしかなかった。
それこそがあの頃の自分の出来た、唯一の事だったから。

その業を生き続ける限り背負い続けることになると理解していても、彼にはもう戦うしかなかった。
それしか道はなかったのだ。


知らなければいけなかった、悟らなければいけなかった。
なによりも、彼の妻を名乗るのなら。

一方的に凭れ掛かっていられた時間は、もうとっくに終わってしまっていたことを。



けれど彼の妻は、彼女の良く知る人とよく似た別人から怯えたように後ずさりをして、へたりこむ。

両手で耳を塞ぎ、両目を硬く閉じたまま、頑ななまでにすべてを拒む。
そうしていれば、歪んだ幻想が真実になるかのように。
何も知ろうともせず、何も考えずに彼の妻は甘い言葉にすがり続ける。

 
結局は、少女以外のみんなが求めていたものは、みんなの思い出の中の彼だったのかもしれない。


誰一人として口を開かず、言葉を発せず、沈黙が部屋を包み込む。

窓から差し込む暮れなずむ黄昏色の残光が、漆黒の深淵よりもなお暗い世界に住まう彼にかかる。
目元を被う視覚補正ツールに手をかけ、彼はそっとそれを外す。

現れたのは、像を結ばなくなって久しい、けれど優しい光を湛えたままのとび色の瞳。
その顔に浮かぶのはあの頃の、多分あの頃よりも、ずっと優しい微笑み。

途端に、少女の胸に熱いものがこみ上げてくる。
 
優しい眼差しは、かつての仲間を見回した後、座り込みすべてを拒絶する彼のかつての妻に向けられた。

「たとえ昔のように戻れなくても、お前を好きだった気持ちは嘘じゃないから。
それだけは、嘘じゃないから」

それは彼の口から紡がれた真実の言葉。
偽りのない本心からの言葉。

けれどその言葉が、もう、かつての妻には届くことはなく。

黄昏のときの終わりと共に、夜の帳の訪れと共に、彼は、彼の生み出した青白い時空粒子と共に立ち去った。
それは彼が、かつての妻と、かつての仲間と最後に会った時。
そして、後にしてみれば永遠の別れとなった時。

けれど少女にとっては、この会合こそが始まりだった。








ネルガル重工グループの会長職に付く青年は展開されたスクリーンを閉じる。
 
彼と青年は知人あるいは戦友であって、友人でも親友でもない。
青年が彼に協力したのは、ただ両者の利害が一致しただけだからだ。

もっとも、青年も幾ばくかの保険は賭けておいた。

二年前の当時は会長秘書でしかなかった彼女に宇宙開発部の部長職を与えたのは、事が露呈した場合、
彼女の独断行為として詰め腹を切らせる為でもあった。

そして彼女もそれを理解したうえで、その要職に付いていた。
彼女にとっては、彼女なりの彼への愛の形なのだろう。

そのことを知って、いつからか彼の戦いの質は目に見えて変化していく。
かつてのような無茶と無謀は鳴りを潜め、その戦術はより繊細に、より狡猾にと変化していく。



火星の後継者の決起プランには『甲』と『乙』と言うものが存在した
八月九日のアマテラスからの決起に発動されたのは不完全なプラン『乙』。

この二年間、蠢動する火星の後継者を掻き回し、その存在を引きずり出して、白日の下に曝したのは間違いなく彼。
そして二年前、最後に彼と言葉を交わしたとき彼は言った。

『お前は俺を利用することだけを考えればいい』と。

以来二年間、青年はその通りにして、その結果が今に至る。



動乱を鎮圧し首謀者を逮捕したと言っても、各コロニーを占拠していた幾分かの戦力は逮捕の手を逃れ、
何処かへと潜伏したままなのだ。

飽きもせずクリムゾンと残党勢力も不穏な動きを見せ始めている。
火星の後継者の再決起の気配、再び始まる動乱の予兆。

正義を語れば世界の半分を怒らせる。
しょせん争いを起こす都合など、見据えてしまえば自分たちの利益を追求するが故、だ。

何よりも正義を語るなど、おこがましい事甚だしい。


『お前は俺を利用することだけを考えればいい』


青年は皮肉げな笑みを浮かべる。
武力を伴う戦いは彼の専門分野だが、政治を伴う戦いは青年の領分だ。

先のクーデターでは新地球連合にも主流派各国にも恩を売ることが出来た。

ネルガルと宇宙軍との今後のパートナーシップの為にも、統合軍と火星の後継者の残党諸君にはせいぜい噛ませ犬に
なってもらわなければならない。

そして、そこに武を伴う戦いがあるのなら、存分に利用させてもらう。
唯一、戦いに特化したA級ジャンパーの彼を。

青年は知略をめぐらせる。
ネルガル会長がここ数年表舞台に出なかった理由も、情報戦の陣頭指揮を執っていたためだ。
青年は本質的にこういった戦いを好む。

この度のクーデターの戦いの本質は、『火星の後継者』と宇宙軍の背後にいたネルガルとの
新技術開発競争であり同時に情報戦でもあった。

『火星の後継者』はボソンジャンプに関する技術こそ先んじていたものの、情報収集とそれを使った
戦略に長けたネルガルに敗北を喫したのだ。

その思考はやがて形作られて結論へと至る。

企業家としては確実な損得を計らなければいけない。
それでも、その過程にはどこかにゆとりを加えるべきだろう。
そう、たとえば・・・・・・。
 
青年はどこか楽しげに顔を歪める。
傍目には、その顔はまるで悪巧みをしている子供のようではあったが。









少女は、鍵の開いた籠の中から退出した。
その背を引き止める声もあったけれど、少女には、もう留まる意思もなかった。
 
その晩、官舎の自室に帰宅したときに、こらえていたものが、張り詰めていたものが
堰を切ったようにあふれ出す。 

二年前、悲しかったはずの出来事でも泣かなかったのに。


だから少女は自分の頬を濡らすモノの熱さに驚く。

それは涙。

堰を切ったようにあふれ出す涙。

それはずっと偽り続けていた心の奥底からの、きっと真実の涙。
 

あふれ出す感情を抑制することも出来ず、ただただ少女は涙する。

意地っ張りな生き方しかできなかった少女は、ほんの少しだけれど素直になれた。
だから今はただ、涙に漏らす。
彼のために、そして自分のために。

けれどそれは、ひどく悲しい泣き方だった。

声を上げて泣けるのが、この年頃の特権なのに。
なのに、少女は声を殺して嗚咽する。
だからそれは、ひどく悲しい泣き方だった。

彼の過去、少女の知らない二年間を、少女自身『知りたくありません』といった。
本当は何よりも知りたかったのに。

甘えることに下手で、意地を張った生き方しか出来なくて。

けれどこれからは、少なくとも彼に対しては、ほんの少しでも素直になりたかったから。
だからもしも今度出会う事ができたなら、自分の思うままに、望むままに行動しようと決めた。

胸の奥にある、この感情。

あのまま、何事もなく月日を重ねていけば、きっと埋もれてしまった、この想い。
 
言うべきときに言わないのは嘘吐きと同じだ。
なにしろ思いは言葉にしなければ相手には伝わらないのだから。
 
「仕返しは女の当然の権利です。・・・今度会ったら覚悟してください」

涙をぬぐいながら、誰に聞かせるでもなく、幾分、物騒な言葉を吐く少女だった。












連合宇宙軍ホシノルリ少佐。
それが少女の今の立場。

宇宙軍第四艦隊所属試験戦艦”ナデシコb”艦長。
それが今現在の少女の役職。

ナデシコ級第二世代試験型機動戦艦、登録艦名”ナデシコb”。

純粋に実験データ収拾を目的として開発されたこの船は、今年度中に試験戦艦の役目を終えて宇宙軍より
退役することが正式に決定された。

変わって、宇宙軍第四艦隊には先の火星のクーデター事変にて実戦投入されたナデシコ級第二世代型
最新鋭艦、開発コード”ナデシコc”が編入されその役目を引き継ぐ形となる。

艦長は引き続きホシノ少佐が引き継ぐことが決定されており、宇宙軍に導入後は正式な艦名を
”エリンギウム”と呼称されることに到って、ナデシコ級というクラスは後発艦にも引き継がれるものの、
艦命にナデシコの名を持つ艦艇は事実上、今年度内で消滅することとなった。

未来がいつか今になるように、積み重ねられた現在が、いつか思い出に変わって過去となるように、
あのナデシコと言う船は本当に思い出となった。


”エリンギウム”自体は統合情報統括システム艦として、つまり艦隊運用時における中枢指揮艦としての
役割を負う事となっており、次世代の戦術、戦略を構築するための運用試案の構築が今後の主任務となる。

つまるところ任務自体は”ナデシコb”時代とさしては変わらない。
引き続き”ナデシコb”同様に、クルーはネルガルからの出向者が多数乗船する事も同じだった。
 
来年度初頭には”ナデシコb”や彼、ルリの思い人の戦艦からのフィードバックを基にして、
最低50人程度で運用可能なセミ・オートマティック方式を採用したネルガル重工久々の新造艦も
宇宙軍にて就航することになっている。

宇宙軍、ネルガル共に、ここ数年の鬱憤を晴らすかのように活動を再開していた。

これらの艦艇を統括運用したものはナデシコ・フリート構想と呼称されており、次世代戦略の要となるもの
として連合宇宙軍において随時運用が開始されていく。

これにより宇宙軍はその先見性を、ネルガルはその先進性を内外に如実に指し示したこととなるが
それはまあ、もう少し後の話。


ま、どのみち、そんな事は今のルリにはどうでも良いこと。

ルリの目下の関心事は、近日着任する予定の艦長候補生のことだった。

来年度からの就航予定の新造艦もナデシコ級であるため現状では数少ないIFSオペレータ資格を有した者に
艦長としての適正を見るために、試験的ながら適格者選抜試験を実施する事となったそうだ。
 
・・・・・・建前上は。
まあ、それは彼をルリの船”ナデシコb”ないし”エリンギウム”に乗せる為の方便でしかない。

別段、そんな面倒な事をしなくても、もし本人が艦長職を希望するなら連合大学などの士官編入コース等に
編入し学んだ方が手っ取り早い。

もっとも、ルリ自身も地球連合大学などの士官学校には通ったことはないのだが。


ルリの場合、ネルガル重工が2190年度にスキャパレリ・プロジェクトを開始した際に『S機関搭載戦艦』
のオペレータとして選出された際に、宇宙軍航行訓練、その他専門訓練が彼女のカリキュラムに組み込まれたためだ。

『馬鹿ばっか』は”ナデシコa”当時の彼女の口癖。

けれど素人同然のクルーや、たかだか連合大学のシュミレーション実習のみを主席で卒業した程度で艦長になった
ミスマルユリカなどは、たしかに当時の少女から見れば『馬鹿ばっか』だろう。

以降の2196年、『S機関』は仮称コードを外され『相転移エンジン』と呼称されると同時に
『S機関搭載戦艦』もまた同時に登録船名を『ナデシコ』と命名された。

同時にホシノルリも正規クルーとして採用されるのだが、ま、以降は諸兄方の方が詳しいだろう。

また2199年の12月に、ルリが宇宙軍に復帰した後、少佐の官位を拝命した理由も、連合大学の士官課程と
同等のカリキュラムを消化し終えていた事と、蜥蜴大戦当時若干12歳で軍務に付いていたためだ。

最年少美少女艦長とはルリに付けられた二つ名の内の一つだが、思い出していただきたい。
宇宙軍は設立以来、様々なタイプの艦長を艦長職に据えて来た。
美少女艦長という物もその一つに存在する。

幾分は珍しい事かもしれないが、つまりはそう言う事であり、言い換えればその程度の事でしかないのだ。
 



ナデシコ・フリード構想において優先されるのはセミ・オートマティック方式を採用して数を揃える
新造艦と、それを運用する経験を積んだ各技能保持者のクルーの方だ。

単純に通常艦を運用出来るだけの人数を分割することができれば、それだけで戦力の増強が可能となり、
現状でのスタンダード艦を”リアトリス級”と仮定すれば、新造艦との戦力比率は実質1:4となる。

もっとも大戦以前の就航艦からの改装艦でしかない”リアトリス級”と過去の”ナデシコ級”及び
”ゆうがお級”からの技術的なスピンオフをふんだんに盛り込んだ新造艦とでは基礎的なスペックから
比較した時点で、すでに比べ物にならないのだが。


統合軍は現在整備計画に則り、双胴型戦闘母艦という大型艦のモジュールを利用しての駆逐艦の設計に着手している。

だが、ネルガルの新造艦は基本ユニット自体が共通化されており、その目的にあわせてバリエーションを
広げる事が可能という木蓮型宇宙船、そしてその派生型たるナデシコ級の設計思想を色濃く受け継いでいた。

そのため、現状でも無人兵器の母艦、グラビティ・ブラスト艦、強行偵察艦、Yユニット艦など数種の設計が
完了しているが、今後は宇宙軍の要求希望に副える形でのユニットの開発も可能という発展性を有してもいた。

むろん基本ユニットの性能の底上げも十二分に可能なこのクラスを、ネルガル重工は”ユーチャリス”級と
呼称し、同ネルガル重工の生み出した名機”エステバリス”と同等のコンセプトを有していることを
内外にアピールすることは忘れなかった。
 




さて、ネルガルが当初の計画たるワンマン・オペレーション・シップ・システム構想から
ナデシコ・フリード構想に切り替えた理由の一つに、ワンマン・オペレーション・シップ・システム自体が
IFS処理したオペレータが艦長を兼任すれば便利程度の試験的技術構築の域を出ていない上、
火星で見せた『掌握』自体がオペレータと艦中枢コンピュータとの親和性に左右されてしまう為に
兵器としてみた場合、酷く使い勝手が悪いためだ。

同時にIFSオペレータ技能者が艦長としての資質を有しているかどうか、と言った問題も存在する。
適材は適所で運用すべきであり、ルリのようなマルチタクスな人材は酷く稀有だ。

当たり前だがネルガルは既に『掌握』に対する封じ手を技術的に構築済みであり、この辺りは
『盾と矛』の関係と言えるだろう。

ネルガルは統合軍を除く、新地球連合議会と宇宙軍に対して『掌握』の対処法を伝授している。 

大盤振る舞いのようだが、切り札は伏せていてこその切り札だ。
情報戦に特化していたネルガルの手元には、いまだ数多い切り札が伏せられている。
これこそが、現状のネルガルの力を如実に表していた。

このため、一時その存在を危険視されていたホシノルリ少佐についても現状では問題視はされていない。

ネルガルの会長曰く、

「ルリくんに下手なちょっかい出すと、彼を怒らせるよ」

とのこと。
この彼が誰を指し示すのかの『説明』は、聡明な諸兄方にはもちろん不要だろう。

ネルガル会長の大盤振る舞いのわけには、彼のルリへの心配事に対する返答とかそんな理由もあったのだが、
まあそれは別の話。

『イイモノなんですか、悪者なんですか?』とはルリの言葉だが、まこと、頷ける質問だろう。

少なくとも味方としている側からは敵視はされなくなったが、依然として外敵は存在する。
現状では『火星の後継者残党』などがその際たるものだろう。

根性の捻じ曲がったネルガル会長は、それらからルリを守る為に彼を利用する。
彼が何を言おうが、難色を示そうが、自身『利用すればいい』と言った手前、彼には拒む術もなく、
大盤振る舞いを引き合いに出されて、本当に、本当にしぶしぶと了承した。


むしろこの提案を喜んだのは二人の淑女。
二人はルリの気持ちを察しているから。
そして難色を示したのは、とき色の髪の彼のパートナーの少女。


彼女の抑圧されていた一つ一つの感情が、緩やかにだけれど開放され始めていることは彼にとっても
僥倖なのだけれど、さすがにこういったときは困る。

こんな時ばかりは、昔と変わらぬ彼の姿が垣間見れるその事が、二人の淑女には嬉しかった。
 

ともかく、ルリが自分の船に彼が乗船することになった事を知らされたのは、ほんの数日前のこと。

宇宙軍の司令室に出頭したときにミスマル総司令から手渡された書類に明記されていた書面と、添付されていた
写真を閲覧というか、金瞳を見開いて、食い入るように書類を凝視し続けるルリに、コウイチロウは
総司令としてではなく養父としての苦笑を浮かべる。

幾分収まりの悪い茶色の髪に櫛を入れて撫でつけ、薄い色の入った眼鏡(おそらくこれも視覚補正ツールだろう)
を掛けて、連合宇宙軍佐官の制服を着た彼はとこか不貞腐れた顔をして写真に写っていた。

このとき彼に関する事で、お互いがたくさんの言葉を交わしたけれど、それはあくまで、かつての共通の
家族を持つ者同士のプライベートな会話。

だから、今回は割愛しよう。

以来、自分の執務室での書類作成の合い間に、件の艦長候補生の書類を読みふけるルリがいた。
もちろん、その行為は職務に差し障りの無い範囲でのことだが。

それでも、彼の名乗る偽名『イツキ・カザマ』と彼の過去の経歴たるカヴァー・ストーリー、
つまりでっち上げ話は暗記するほどに読み返し、そして写真は肌身離さずに持ち歩いて
暇をみては写真を眺めるという行為が、日々日課のように繰り返された。

その姿は軍人というよりも、何処にでもいる、ごく普通な年相応の少女の姿だった。

 




月日は巡る。

最後の出航に先駆けて、カワサキドックに係留中の"ナデシコb"食堂にて『さよならナデシコb』パーティと、
『こんにちはエリンギウム』パーティがクルーの意向で行われた。

”ナデシコa”とは違って専属クルーは職業軍人やある程度良識ある社会人なので、常識をともなった範囲での
パーティとなったが。

司会は乗り気な副長が務め、ルリもビンゴ企画にいくつかの私物を提供した。

もっともルリは開催の挨拶にちょっと顔を出した位で、さっさと退席したが。

作成しなければいけない書類があるからという理由と、上司の目が在っては楽しめないだろうからと
配慮したのは、もちろん建前。

誰にも邪魔されずに、自室にて日課となった彼の写真を愛でるためだ。
これ以上に重要な仕事など現在のルリには存在しない。


余談だが、ルリの私物をゲッチュせんとした副長補佐にして”ナデシコb”のシステムサポータの少年が
何度もリーチをかけながらもすんでの所でことごとくにビンゴを逃し、失意の末に艦内を泣きながら
走り回ったりしたが、ま、それは予定調和の一つ。





その翌日、カワサキドックから出航したナデシコbは最後の航海を終えた。

といっても、ネルガルの月基地までの片道四時間程度の航海だったが、最後には変わりない。
ネルガルが”NS955b”の船体を今後どのように扱うのか、ルリは知らない。

退役すると言っても、それは宇宙軍からであって、別に廃艦となるわけではない。
”ナデシコb”の艦齢自体が二年程度しか経ってはいないのだ。

改装され、別の中枢コンピュータ『scv2027』を搭載して今後も試験艦として運用されるのだろうが、
もうルリと”オモイカネscv2027”が乗る事は無いだろう。

そう考えると、いくぶん寂しさを覚える。
 

ネルガル月基地ドック内のナデシコ級専用ドックへの入港の際には、航行システムをコネクトせずに
ルリ自身が操艦を行い、車庫入れを行った。

理由なんて無い。
ただ、そうしたかっただけ。
間違っても、いまも彼の傍らに立つとき色の髪の少女への嫉妬心からでは、ない。
そう自分に言い聞かせる。


ドック直上ゲートの大型ハッチが展開されると、ゲートに対して軽やかに船体姿勢を水平へと正し、
そのままの姿勢で、緩やかに300メートル程の施設最下部まで降下。

”ナデシコb”の姿勢制御用の重力波スラスターから重力波をわずかに放射。
姿勢制御に神経を使う。
 
降下に連動してドックに備え付けられている多数の支持アームが”ナデシコb”を受け止める為に展開される。
船体、船底へとアームが触れると、接地面が固定マグネットにてロック。

係留された事を確認すると、推進機関の出力をニュートラルに戻し、相転移エンジンの出力もアイドリング・モードに
移行させる。

全工程を終了して、それからルリは小さく吐息をはいた。
 

管制官やナデシコbの操舵士の賛美に、ルリは短く礼を述べる。

コミュニケを通してクルー各員に向け、今後の予定を述べた後、ルリは艦長として礼を告げた。
次いで、コンソールから、ねじ巻きに似たマスターキーを抜いて、艦の大多数の機能を停止させる。

こうして”NS955b”は”ナデシコb”としての最後の航海を終了した。



着陸した隣のドックには次なる乗艦”NS966c"が係留されている。
統括システムの最終調整は何ヶ月も前から月に赴く度にルリによって施されており、オモイカネの中枢部を
乗せ換えさえすれば、今すぐにでも飛び立つ事が可能だった。

クルーは即時”NS966c"へと移り、各自の分担工程の確認作業と慣熟訓練に移行する。
ルリもまた引渡しの為の書類捺印と”NS955b”のマスターキーの返却を済ます為、宇宙開発部の部長執務室へとおもむいた。
 
いくつかの書類に目を通して署名捺印をし、”NS966c "のマスターキーを受け取ると、
"エリンギウム”の受領はつつがなく終了。



実に味気なく、実に簡単だったが様々な必要書類の作成および調整は専門の部署で作成、執行される為、
現場では得てしてこんなものだ。

公務が済んだ後、ルリは艦長候補生関係の書類で疑問に思ったことを質問してみた。
やたらと凝りに凝った偽経歴、カヴァーストーリーの事でだ。

その文章を軽く一読して、部長は頭を抱えた。
宇宙開発部の部長殿は元会長秘書であった女性だけあって、作成者を即座に言い当てる事が可能だった。
 

つまり作成者はネルガルの会長と言う事か。
勤める企業のトップがこれだと、たしかに頭を抱えたくもなるだろう。

艶やかなルージュの引かれた唇から怨念じみた呪いの言葉が不気味に漏れている。
その姿に慰めの言葉をかけようかどうか、ほんの少し躊躇するルリだった。
 

気を取り直し次いでルリは、彼の名乗る偽名『イツキ・カザマ』の意味を聞いてみた。

ルリの記憶が確かならこの名は、まだ戦争中だった2198年12月下旬ナデシコaが正式に宇宙軍に編入されると
同時に下船した彼の代わりにパイロットとして配属されて、同日殉職した女性の名だ。
 
その名を聞き、その瞳がほんの少しだけ揺れ、過去へと思いを馳せる、幾分憂いをおびた表情。
それは部長としてではなく、女としての顔。
 



過去に戻っての歴史の改ざん。

けれど、どれほど願っても、人には時間を止めることも、巻き戻すことも出来はしない。
普通の人にとって、それはごく当たり前の事。

けれど、その理を捻じ曲げる事が出来るかもしれないのが、A級と呼ばれるジャンパー。
実際に彼は二週間前という過去へと戻った事実が存在する。

けれど、ただ戻っただけ。

歴史は定められた決定論のように同じ事を繰り返す。
そしてパイロットのイツキ・カザマを救う事も出来ず彼女は死亡した。

助ける機会は、救う手立ては存在したはずなのに、結局、彼はさしたる行動を起こさなかった。
それでは彼は何もしなかったと同じこと。

もしも、あの時の彼が、如何なる手段を使ってでも、あのクリスマスの戦場に戻っていたら?

なにも代わらなかったかもしれない。
けれど、何かが変わっていたかもしれない。
ひょっとしたら、今とは違う何処かにたどり着いていたかのも知れない。

心は冷め、生み出され流され続ける血に溺れ、後悔と怨嗟の螺旋に潰されそうになっていた日々が
すべてであり現実だった頃、彼は自殺にも似たボソンジャンプを幾度となく繰り返した。
 
望みは唯一つ、過去への帰還。
もしも、過去に戻れるのなら現在を捨ててでも変えたい事があった。

いつでも良かった。

火星に住んでいた時代でも、”ナデシコa”への乗船前でも、遺跡を飛ばす前でも、幸せを掴みかけていた、
貧しくても三人で屋台を引いていた、今でもすり切れてしまいそうなほどに夢見るあの時代でも。
 
いつでも良かった。

そうすれば、この苦しみと悲しみに満ちた世界とは違う世界へと行き着けると信じて。

けれど、その願いは叶う事は無かった。
彼には逃げる事すら許されなかった。

体に受けた傷、心に刻まれた傷、それらが癒えようと昔と同じ状態に戻れるわけではない。
それはどう足掻いても変わらない事実。
 
けれど彼は、己の力ではどうしようもない頚木に捉われた者達の手を取る事が出来た。
出来なかった事を見詰め直し、選べなかった選択肢に迷い、守り助けだせなかった試験体と呼ばれた
人々の屍の前に立ったとき、いつしか彼は思い知る。


己の傲慢と、己の自惚れを。
 

あの時、過去に帰還できていたとしても自分の過去は変わらない。
今を無かった事にして此処とは違う世界の誰かを助けても、今いる世界の誰かを助けたわけではないのだから。


自分が生き残った事に、特別な理由や、まして意味などありはしない。
それはただの偶然だ。
けれど、どう生きるか次第で意味を持たせる事はできた。

迷っていても誰一人救えないのなら、戦った方がずっと良い。
戦いの重さや辛さ、業は、自分が背負えばいい事だから。

その思いを忘れない為に”エリンギウム”への乗船が不本意にも決められてしまったときに、
彼は忘れえぬ戒めの為に、使用する偽名として『イツキ・カザマ』を望んだ。





金瞳から雫が零れ落ちる。
素直に彼をいとおしく思い、そして彼を想って泣けた。
彼の為になら、いくらでも素直に泣けた。

頬をつたって雫が落ちる。
それはひどくきれいな涙だった。

月の淑女は席を立ち、ルリの横に座りなおして、そっと少女を抱きしめる。
自分の事には泣けなくても、他の誰かのために泣く事が出来るようになった少女を。
彼とよく似た少女の事を、月の淑女はただ抱きしめる。

いつか彼が涙を流すときがあれば、この少女がその悲しみを受け止めてくれる事を願って。
だから、今はそっと少女を抱きしめる。
いつか、同じように彼を支えてくれる事を祈って。










案内された先は、やたらとセキュリティが堅いくせに人の姿のまったく無い区画。
すれ違う人間がいても、警備部の人間ぐらいの区画だった。

いくつかのゲートとチェックを抜けて、たどり着いた先は広大な、
それこそ戦艦クラスの船が丸々収納できる程の物理的に封鎖されたドックだった。

位置的にすれば多分ナデシコ級ドックの真下に、彼の船専用の秘匿ドックは存在した。

ひょっとしたら月基地の壁越しにすれ違った事があるのかもしれない。
そう思って聞いてみても、月の淑女は肩をすくめて笑うばかり。
その仕種に、ルリは何となく腹が立つ。


ルリは視線を空のドック内に戻す。
今はまだ、此処に船は存在しないけれど、明日までには、ここに彼の剣にも似た船が現れる。
そう、きっとだ。

こんなにも明日が待ちどうしいなんて初めてかもしれない。
だからルリは明日へと思いを馳せた。
彼との再会の時を夢見て。











目覚まし時計のアナログなベル音を、きっちりと2コールで停止させる。
二度寝などもなく、ルリの目覚めは日々こうして始まる。

さて、別段ルリは低血圧と言うわけではないし、低血圧は寝起きが悪いと言うのも頭の悪い俗説に過ぎない。
嘘だと思うなら麗しい説明『お姉さん』に聞いてみればいい良い。
きっと嬉々として、端的な説明を披露してくれるから。
 
本日の起床時間はいつもより50分ほど早い。

そこは乙女、本日の一大イベントに彼との再会が控えている為、今日ばかりはいつもと違って気合が違う。
豪勢に朝風呂から始まり、身体を隅々まで洗って、入浴後のスキンケアも念入りに。
銀糸の髪もしっかりと梳る。

日頃は朝風呂こそないが、べつに普段は手を抜いているわけではない。
だけれども、やはり今日は気合が違う。


おろしたての新しい制服を身体に当ててみる。

別段デザインや階級が変わったわけでもない。
しいて言えば二の腕あたりにあったナデシコのワッペンがエリンギウム用にと
新しいデザインに変わったぐらいだ。


軍規に反しない程度の薄化粧をして唇に淡い色のリップを引く。
これだけでも日頃のルリにしてみれば、晴天の霹靂ものだ。


支度を終えるとルリはコミュニケを使って、オモイカネから本日の予定表を受け取った。

あらゆる意味での試験艦であった”ナデシコb”と比べるとワンマンオペレーションシステムの完成形である
”エリンギウム”ではブリッジ勤務の人数は激減している。

ブリッジレイアウト自体がかつての”ナデシコa"のように上中下と三段構造になっていた。

うち実質使用するのは中央と上段のみで、中段には操舵士、オペレータ、通信士の三名が詰め、上段には
指揮系統を持つ者が配置される。

副長は役職はそのままに戦闘班へと移行し、機動兵器小隊の隊長を兼任するためブリッジ外が常勤の場所となった。
 

必然的に上段にはルリと彼のみの配置となるわけで、その事実に、何となく頬が赤く染まり、
ぺちぺちと頬をたたくルリであった。

一大イベントたる彼、艦長候補生の着任時間を確認してルリはその時間まで、精力的に予定を消化していった。

日頃おめかしをしないルリが本日に限って淡い薄化粧姿で出勤した事について、クルーの間で話題となったが、
さすがに面と向かってたずねた者はいなかった。


いや、一人だけいた。


昨日、正規オペレータに就任した少年は面と向かって聞いた。

計らずとも、その話題が出た事に操舵士と通信士は姿勢をそのままに、さりげなく耳をダンボにして
一言も聞き逃すまいとする。

けれど返答は言葉ではなく、華がほころぶような笑顔だった。





かくして時間は過ぎ、展開されたスクリーンに彼の着任予定時刻が表示される。
ルリは操舵士、オペレータ、通信士に指示を出した後ブリッジを後にした。

本来なら艦長自らすべき用事ではなく、手すきのクルーに頼むべき用事だが、今日この日のこの用事だけは、
他の誰にも頼む気はなかった。

途中、洗面所に寄っての身だしなみの確認も忘れない。

何となく鏡の前で念入りにチェックしてから、艦内エレベータをいくつか経由して下船した後、
”エリンギウムと”基地施設をつなぐ入り口にて彼を待つ。

若干、いやかなり早く着きすぎたかもしれない。

けれど、待つ時間は苦痛ではなく、なぜか心躍った。
あの夏以来、新しい発見のいっぱいだった。
なによりも、自分がこんなにも彼のことを・・・・・・。


思考を断ち切られるように、ふと、何か足音と共に床を突く音が聞こえ、顔を上げる。
その人の姿を見つけたときにルリの胸はトクンと高鳴った。

目の前の通路の端、そこには彼が立っていた。
飽く事無く眺め続けた写真に写る姿のままの彼が。

宇宙連合軍佐官の制服を身にまとい、左手で杖を突き、右手にブリーフケースを携えた彼。
杖は、変に設定にこだわった偽経歴の為に持たされたものだ。
ネルガルの会長の創作設定上、彼は傷痍軍人・・・らしい。


一瞬、ルリの姿を見つけた彼は足を止める。

けれど、躊躇はその一瞬だけ。

彼は再びしっかりと歩き出した。

そう、ルリの元へと。


まるで、周囲の世界は消失し、自分と向こうから歩いてくる彼だけになったような気がする。
震えそうになる身体を励まして、ルリもまた自分から足を踏み出して、彼へと近ずく。

一歩、また一歩と、足を踏み出す。

やがて、互いが互いに触れ合えそうなほど近くに、手を伸ばせば抱き合えるほど近くに、二人の距離は近まった。

語りたい事、伝えたい事は沢山あった。
それは言葉にしなければ伝わらないのに、うまく言葉にできそうにもない。
そのことが、ひどくもどかしい。

それはきっと、彼も同じこと。
お互いが見詰め合って、それから、お互いに苦笑しあって。

彼は近くに居てくれる。
それは、手を伸ばせば届く距離。
だから、いまはそれで十分。

拙くても、たくさんの言葉を重ねて、その言葉に自分の、彼への思いを込めて伝えればいい。
彼が近くに居てくれるだけで、その時間はたくさんあるのだから。

どれ程の月日を必要としたとしても、どれ程のすれ違いと、回り道をどれ程に積み重ねたのだとしても、
それでも今この場所にたどり着けた。
その事実が、いまはただ嬉しくて。
 
それでも、あの船に乗ってしまえば、彼は『イツキ・カザマ』となってしまう。
いつも、その名で呼ばなければいけなくなってしまうから。
その前に一度だけ、彼の本当の名を、淡い色のリップを引いた唇に乗せて呼ぶ。
 
あのターミナルコロニー・アマテラスで乱舞する『OTIKA』の意味に気が付き、一時、
過去に思いを馳せたあの時と同じように、ただ一度、万感の思いを込めてささやく。


「アキト」


あの頃の、子供だった頃とは、ほんの少しだけ、彼への呼び方を変えてみた。

昔、その呼び方にひどく憧れを持っていたことは、自分だけの秘密。
そしていま、彼をそう呼ぶ事が、彼に対する色々な事への、ルリのささやかな仕返し。

案の定、彼は驚いたような表情を見せる。
けれど、どこか嬉しげに見えるのは少女のうぬぼれだろうか。
そうであってほしいと、とこかで願う自分がいる事を自覚する。

そのことに気付いた途端、何かに急き立てられるようにルリは後一歩を踏み出して、彼の、
いやアキトの胸の中に飛び込んでいた。
 
やってしまった。
自分の大胆さに自分自身が驚きをかくせない。
どうしよう、困った、何よりも恥ずかしい。
 

羞恥に頬が熱く火照り、焦りと気恥ずかしさで金瞳に涙が浮かぶ。
胸の鼓動は早鐘を打ち続け、冷静沈着が売り物のはずの思考もうまく働かない。
 

それでも、伝えたい言葉だけは頭から焼きついたように消える事はなかった。

写真に向かって、日々、幾百幾千回と練習に練習を重ねた言葉。
今度アキトと再会したら、伝えたいと願った言葉。
さあ、今こそ練習の成果を見せるときです、と思考のどこかが叱咤する。

けれど実際にはアキトの胸の中で俯いたまま、顔を上げる事すら出来なくて。

それでも俯いたままで、切ないほどにかすれそうな声で、精一杯の勇気を振り絞って、
ただ一言の言葉を紡ぐ。

思いは言葉にしなければ相手には伝わらない。
伝えなければ相手に気付いてはもらえない。
だから、ルリは伝える。


「あなたが・・・好きです」

 
それは少女の口から紡がれた真実の言葉。
偽りのない本心からの、ようやくに伝えられた言葉。





躊躇は、確かにあった。
それは、一呼吸だけの沈黙。
けれど答えはとっくに出ていたのかもしれない。

かつての仲間にとって、かつての妻にとって、テンカワアキトと言う人物が虚像に変わっていく中で、
ただ一人ルリだけは・・・。

だから、その手から杖が離れ、その手からケースが離れた。
解き放たれ、自由となった手がルリの華奢な背に回される。
触れたその背は温かく、そして小刻みに震えていた。

その華奢な身体を優しく抱き寄せながらアキトはルリの耳元に唇を寄せて、ただ一言の言葉をそっとささやく。
 
お互い、気の利いた言い回しが出来る人間ではないから伝える言葉自体が端的になってしまう。
けれど、そんな二人だからこそ、お互いが相手に向けて紡いだ言葉の響きは純粋な意味を持つ。
それは、飾らない言葉だけが持ち得て失わぬ意思。


そのささやきが運ぶは、ルリの怯えを打ち払う清浄なる言霊。


一瞬、身体が強張って、すぐに弛緩したようにアキトの胸に顔を埋め頬擦りする。
鼻腔の奥がつんっとして、二度と離さぬように、ルリもまたアキトの背に手を回す。
 
嬉しくても泣けるのだと、ルリは初めて知った。
包まれる心地よいぬくもりに、涙があふれて止まらない。
想いが堰を切ったようにあふれ出す。

驚きの連続だ。
自分がこんなにも泣き虫だったのかと、改めて気付かされる。
彼が、アキトが傍にいてくれるだけで自分は・・・・。

彼に抱かれ、彼に甘え、子供のように、幼子のように、ただただ声を上げて。
ルリはただアキトの名を呼びながら、すがり付き、慟哭する。

 
それは二年越しの再会と、真夏の動乱の終結から数ヶ月程後の出来事。

それは季節が晩秋へと移り始めた頃の話。

それは不器用なところまでよく似た二人が、互いの気持ちを伝え合い、互いの気持ちを携えあった最初のとき。


ずっと後に思い返せば、このときから二人の物語は始まった。
それは唯一つ確かな事だ。
 


舞鶴の栗原さんの部屋// 投稿作品の部屋// トップ2


この作品は、らいるさんとぴんきいさんのHP、『そこはかとなく存在してみたり』内の企画、festa-sokohakaの参加作品です

festa-sokohakaは残念ながら2005年の3月いっぱいで閉鎖ということになりました


b83yrの感想

何が良いって、アキトが良いです

何時までもうだうだしている訳でもなく、かといって開き直っているわけでもなく

自分のやった事を真っ向から受け止めて、認めた上で乗り越えてる所が

これ以上感想つけてもかえって野暮な物になりそうなので、これくらいで


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送