『…大切な人だから……………』

 

 


「帰ってきますよ…」
飛び去って行く白亜の戦艦を寂しげに見送りながら、青みのある銀髪を風になびかせ少女は呟く。

「ルリルリ…」
そんな少女を心配げにハルカ・ミナトは呼びかける。

「帰ってこなければ、追いかける迄です。」
仲間達が静かに見守る中、少女、ホシノ・ルリは続ける。

「あの人は……あの人は………私の……」

そう言って振り返る。その顔は微笑み……仲間達もこの数年、見ること適わなかった彼女の『本当の』微笑み…
その笑みに皆、魅了されて行く様であった。


そして、ルリはその小さな口で最後の一言を綴る。その口から…

 

 

 

 

 

 

「初めての人だからっ!」

……とんでもない事を口走ってます。

 

 

「「「「「「「「「「なぁにぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」」」」」」」」」」

当然大騒ぎである。


「るるるるるるるるるる、ルリちゃん!?どどどどどど、どういうこと!いいいいい、何時、何時なの!」
救出されたばかりで、ろくに動きを取れないはずのミスマル・ユリカ(テンカワです!)が突然立ち上がると、勢い込んで掴み掛かる。

「えっあのう…動いて良いんですか?ユリカさん。」
何処かボケボケとした様子でルリは尋ねる。
「はうぅっ!?脚が!腰が!背中が〜〜〜(泣)」
「そんな事よりもルリルリ!本当なのっ!、アキト君とだなんて!?」

ミナトも少々錯乱ぎみの御様子である。

「そんな事よりもって…(汗)。私が嘘言ってもしょうがないじゃ無いですか、ミナトさん?」

飽くまでも、マイペースに語るルリ。

「ルリルリ!何時なの!まさか?!ナデシコに乗ってる頃からじゃ…」
「ええ、そうですね。あの頃からもう、私はアキ」
「「「「あの頃からだと〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」」」」
ルリの言葉を最後まで聞かずにかつてのクルー達は暴走して行く。

「ヤローどもっ!相転移エンジン火〜入れろ!核パルスもとッとと臨界もってくぞ!!」「「「「おぉーーーー!」」」」
ウリバタケを筆頭に整備班が燃えていた。

「いいかっ!アキトのヤローは多対一の戦いに慣れてやがる!如何にフォーメーションの隙を付かせずにたたみ掛けて行けるかに掛かってる!」
「りょ〜かい了解、とにかく連続攻撃ってことだね?」
「半径二百海里…………二百海里…………領海………りょうかい………了解……くっくっくっくっくっ(べんべべんっべん♪)」

……………………………………………………なぜに三味線?

「と、とりあえず、俺と中尉でまずは切り込んで行くことにして…」
パイロット達も打ち合わせを始めている。…サブロウタは引き攣っているが。

「ねぇねぇ、ルリ。やっぱり初めてって痛かった?」
「ええ、痛かったですね。こう、む」
「やっぱり本当に痛いんだ〜〜〜!?ジュンちゃ〜ん!私ど〜しよ〜(泣)」
「うわぁっ、な、な、なんでボクに飛びつくんだ?!(焦)」
ユキナもルリの言葉の途中で暴走開始である。……ジュン…ユキナ…何時の間に其処までの仲になってたんだお前ら?

「あの〜、ミナトさん。初めてって何がですか?」「ハーリー君…、もう直ぐ知る年頃になるのかも知れないけど、貴方はまだ知らない方がいいわ…」「???」
こちらでは、ハーリーが気遣われていた。


「とにかく!あの戦艦を追っかけましょー!」
かつての『ナデシコ』時代を彷彿とさせる姿でミスマル・ユリカがその腕を振り上げ、声を上げる。
「「「「「「「「「「おぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」」」」」」」」」」
ユリカの宣言にクルー達は一斉に声を上げ、ナデシコCの昇降口に向かう。  「はうぅっ!?腕が!肩が!首が〜〜〜〜(大泣)」

「えっ?今からですか?」
そんな中、ルリだけはのんびりとした声を上げていた。

「「「「「「「「「そーだよ、今から追っかけるん(だよ)(のよ)(ですよ)!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「アキト(君)(の野郎)(の奴)を、とっ捕まえんだよ!!」」」」」」」」」」

「皆さん……」

ルリはその言葉に、皆、それほどまでにしてアキトに会いたいのだと思い涙ぐむ。
(皆さん、そんなにもアキトさんの事を…………届いてますか?アキトさん……皆のこの、想いが……)
胸に暖かい想いを溢れさせながらルリは、クルー達と共に『ナデシコC』に乗り込む……

(ひどいよアキトっ!私には何にもしてくれなかったくせにっ!ルリちゃんとだなんてっ!!(泣)
(アキト君…きっちり話し、聞かせて貰うわよ…(呆)
(アキトの野郎〜……………取り合えずぶん殴る!(怒)
(あんのヤロ〜、艦長やメグミちゃんに隠れて何時ルリルリに手ぇ〜出してやがった?!(羨)

まぁ、その想いは随分と隔たりのある様だが。


「ナデシコ発進!目的はアキトの乗った戦艦の拿捕!さぁ、皆さん、行きましょ〜!!」
「「「「「「「「「「おぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」」」」」」」」」」

                    「サブロウタさん、何であの人が仕切ってるんですか?」「まっ気にするな、ハーリー。」

      「はうぅ!?喉が!お腹が!脳みそが〜〜〜〜(マジ泣き)」
「……た、単なる頭痛だよねっ?ねっ?(汗)」「なんか流石にやばくね〜か、これ?(汗)」「じっとしててくれ無いのよ〜(泣)」

ユリカの号令の元、ゆっくりとナデシコCは浮上していく。………て、艦長命令がまだだろーがアンタら。

「アキトさん……今、行きますからね………」
………………どうやら気になんぞしとらんよーです、肝心なこの人は。

まぁ、取り合えずは順調に出発である。…………宇宙軍総司令、ミスマル・コウイチロウに報告をしないままに。

 

 

             お・ま・け♪

 

「はぁ、ですから『初めて好きになった人』ですよ?」
「ええ〜と、痛かったって言うのは……(汗)」
「ナデシコAの頃から、胸の奥が痛くなる事がよくあったんですよ……」
「…そ、そうなの(汗)」
「はい。それはあの『事故』の時に一段と強くなって、私は押し潰されそうでした……」
「………そ、それは大変だったわね〜(汗)」
「その気持ちが何なのか…それが分かったのは、お墓で再会した時です。…あぁ、私はこの人が好きなんだと…………」
「………………………(滝汗)」
「墓地に居ると言うのに、この人と初めて手を繋いだときの、暖かい気持ちを思い出していましたね……」
ナデシコCのブリッジで、ルリは自らの心境を語って行く。ルリに内容の確認『を』させられているミナト以外は口を開かない。
………と、言うよりもルリが怖くて誰も口を挟めないだけである。

「で?どうしてこうなっているんですか?皆さん?(怒)」

ルリの膝の上にボロボロの姿でアキトが頭を乗せている。…時折全身を痙攣せさながら。
「アキトぉ〜、アキトぉ〜(泣)」「……………(ぴくっ、ぴくっ)」
そんなアキトに薄桃色の髪をした少女が、涙を浮かべすがり付いている。

「えぇ〜とね、あの頃アキト、ユリカにキスも何もしてくれ無かったのにって、思ったら、つい…」
「ユリカさん…あの頃の状況で、アキトさんが手を出す筈無いでしょう?そもそもこの人が、結婚前の女性に手を出す様な度胸があると思いますか?」
話をしながらもその手は休む事無く、アキトの髪を撫でている。
「あうあうあう〜(泣)」
ルリに指摘され、ユリカは反論できずに涙を流す。何気にアキトの評価がひどい気もするが。

 


ほとんどのクルーに話を聞き終えた後、優しくアキトを見つめながらオモイカネに記録の整理を続けさせている。
「はぁ、まったく皆さんにも困った物ですね………」
溜息を吐きながらルリは呆れた声をだす。

((いやっそりゃあんたが紛らわしい事ゆーから…))
………思ってはいても口には出来ないクルー達であった。

「ふぅ〜。取り合えずもう直ぐ月に到着しますし、ココまでにしときましょう。ハーリー君、各ブロックのチェックを」
「は、はははは、はい!分かりました!!」
「?、どうしたんですか?ハーリー君?」
「な、ななな、何でもっ!そ、そう、何でもありません!!」
「そうですか?なら良いですけど…」

良かった…この人が鈍くて本当に良かった…。ハーリーは普段、自分が涙する原因の一つに安堵の想いを浮かべる。
何しろ自分はあの白い戦艦目掛けて迷う事無く、グラビィティ・ブラストのトリガーを引いていたのだから!!
その事を指摘される事無く話しの終わった事に、涙を流さんばかりの想いが胸を満たす。

「あっ、そうそう、タカスギ大尉」
ハーリーの事はさほど気にする事無くサブロウタに話しかける。
「は、はいっ!な、何でありますかっ、艦長!」
思いっきりガチガチである。

「?、月に着いたら、私、休暇を申請します。アキトさんの看病の為に」
「は?」
その言葉に間の抜けた声を上げてしまう。
「ですから私の居ない間の艦長代理を命じます。しっかりとお願いしますね?」
「は、はい!誠心誠意、勤めさせて頂きます!!」
余程恐ろしかったらしく、ルリの命礼に最敬礼で応じている。

「あっじゃあ、わたしもいっしょにアキトの看病を……」
当然の様にユリカが声を上げる。
「駄目です。ユリカさんは地球の病院に入院が決まってます。そこでしっかりと治して来てください。」
「はうはうはう〜〜〜(滝涙)」
「ろくに動けない筈なのに動き回って悪化させたんです!大人しく地球に降りて下さいね!?」
ルリの言葉に誰も反論など出来る訳も無い。
「ルリ、ワタシは?」
それまで泣きながらアキトの顔を覗き込んでいた薄桃色の髪の少女、ラピス・ラズリが心配げに尋ねる。

「勿論私と一緒ですよ?ラピスと私、そしてイネスさんも一緒に看病すれば、アキトさんもすぐに良くなりますよ、きっと。」
「うんっ!アリガトウ!ルリ!」「んぐっ?!む〜〜〜、む〜〜(ガク)」
そう言ってラピスはルリの胸に飛びつく。…ラピスの胸がアキトの顔を押さえつけている様に見えるが気にしてはいけない。


誰も何も言えぬままに船は進み行く。………例え、アキトの顔が紫色に見えたとしても。


「では、以後の事はよろしく。」
月面基地に着き、ルリとラピスが手を繋ぎながら、カートに乗せたアキトを連れてブリッジを出て行こうとする。
やっと開放される…ほとんどのクルーの胸にそんな想いがよぎる…だが……


「あ、そうそう皆さん。」

 

ブリッジに緊張が走る。

 


「私、怒ってますからね?」

 


…………………………その日最大級のブリザードが、ブリッジ内を駆け巡った。

 

 

さらにおまけ。

……数年後、ある一家の自宅の庭で、蒼銀の髪と薄桃色の髪をした仲のいい異母姉妹が見られる事と成るが、それは別のお話である。

…………やっちゃったのね……アキト君……。

 


あとがきかも知れない物。

初めての方は初めまして。某所でお馴染みの方はこんにちは。
ノリと勢いとボケとを身上に生きる、ADZと申します。<マテ

突然に血迷い、このような代物を書いてしまい、お恥ずかしい限りです。ですが、僅か也とも楽しんで頂ければ幸いです。

このような稚作をお受け入れ下さった、b83yr様には大変に感謝の想いでおります。

ちなみにこのお話、今迄に無い物であると思っております。今まで多くのナデシコSS読んできましたが………

火星の後継者を鎮圧した直ぐ後に、しかも!袋叩きの上で連れ戻されるアキト君なんか見たこと在りません!!
もし他にご存知の方はぜひ御教え下さい。色々と参考にさせて頂きます。


では、在るかどうかは判らない次回作でお会いできる事を願いつつ、失礼させて頂きます。(ぺこり)

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b83yrの感想

いや、良いですなあ、勘違いと暴走が(笑)

アキト君、外道(にやり)

 

 

ちなみに、この話がなんで、「ばーじょん・つぅ〜」なのかと言えば、

大塚りゅういちの隠れ家のコミュニケーション広場の企画

一番星キャラクタートーナメント
明日のナンバー1は君だ
2003年  4/28(月)〜5/5(月)

の小説掲示板の方にばーじょん・わん〜に当る作品があるから(笑)

 

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