今回はナナフシ攻略の話
でも、以前の世界とは何か違うようです
頑張れ、ユリカさん
第11-2話
「まったく、厄介な物押し付けてくれたものね、木星トカゲも」
イネス・フレサンジュが、ナデシコのクルー達に説明をしている
マイクロブラックホールを打ち出すナナフシ、今回は以前の世界とは違う
「はっきり言って、ナナフシその物を撃破するのはたいして難しくない、あんなロクロク機動性のない代物なんて、数で攻めればどうってこと無い、周りで守ってる大量のバッタ達の方がよっぽど怖い」
「ただ、あのナナフシは、『12時間に一度撃てる砲』ではなくて、『12時間に一回は、撃たなくてはならない砲』なのよ」
「あの、イネスさん、どういう事なんですか?」
ユリカが質問の手を挙げる
「ナナフシが撃ち出すのが、マイクロブラックホール・・・正確には、擬似マイクロブラックホールだって事が問題なのよ」
「あっ・・」
ルリが何かに気づく
「あなたには私が何を言いたいか解ったようね」
「はい、つまり『ストップ!!』」
気づいた事を話だそうとするルリを止めるイネス
「『説明』は、私の仕事、」
そしてイネスは、有無を言わさぬ迫力の笑顔で、プレッシャーをかける
「いい、よく考えてちょうだい、撃てると言う事は、もうナナフシの中にマイクロブラックホールが存在しているって事なのよ」
「さて、ここで問題、そんな状態でナナフシを壊したら、どうなると思う?」
「何らかの形が制御されているブラックホールが暴走を始める・・・・」
ぽつりと呟くルリ、ざわめくナデシコのクルー達
「正解、もっとも100%そうなるって事じゃなくて、そうなる可能性もあるって事だけど」
「そうなる確率はどのくらいなんですか?」
今度はユリカ
「とりあえず、30%ぐらいって所ね、でも、70%は安全だなんて、安心していられる?、もし、暴発すれば最低でも半径数百km、下手すれば地球その物が消滅するわよ」
「それ・・は・・・」
顔面蒼白になるクルー達
「いま、『安全な』対処方を必死に探してる所、それまで迂闊に手は出せないわね」
「あの、だったら、敵が撃った直後に攻撃すれば良いのでは?」
ルリが疑問を挟む
「ええ、おそらくそれで大丈夫な筈、ただ、それでも「おそらく」としか言えない、わずかな可能性だとしても、失敗した時の被害の甚大さを考えれば、慎重にならざるえないのよ」
イネスの説明を聞いて、待機するナデシコ
ちなみに、『囮』としての役割も引き受ける事になっている
『12時間に一度は撃たなければならない』ナナフシの砲撃が、おかしな所に向かわないように、時間を見計らってナナフシに攻撃する『ふり』をして自らを狙わせ囮になる
ちなみに、ナナフシの周辺には軍の戦艦数隻がぐるりと配置されている
とはいえ
「やっぱり、撃たれるのを待つっていうのは気分の良いものじゃないわねえ」
あまり、良い顔をしていないミナト
「大丈夫、ミナトさんの腕なら来ると解っている単発の攻撃なら避けられます」
「そうは言っても、やっぱりあんまり気分の良い物じゃないわよ、艦長」
それはそうだろう
「これって、何時まで続けるんです?」
メグミが訊ねてくるが
「う〜ん、他の艦とローテーションを組んで5日に一度囮役を務める事になってるけど・・・」
その先は解らないというのが現実
「軍の方も、早くなんとかして欲しいですね」
「ミナトさん、そろそろナナフシの攻撃が来ます」
「了解、ルリルリ」
ミナトの顔が真剣な物へと変る
撃ち出されるマイクロブラックホール砲、それを避けるナデシコ
標的に避けられた弾は、そのまま大気圏外へと突き抜け宇宙にでて蒸発
「ふぅ・・」
ほっとするミナト、避ける事自体が難しい訳では無いが、やはり、「人の命」がかかっていると思えば、緊張もする
「さて、今回のノルマは果たしたって事で、直ぐに戻りましょうか」
「艦長、そんな事言わずに、どうせならもう少しナナフシの様子を見ていきませんか?」
とルリ
「ルリちゃん、何か考えがあるの?」
「ええ、護衛のバッタ達が全く出て来ないのが気になるんです、やっぱり、木星トカゲ側は、ナナフシを攻撃してもらいたいのかと」
「なるほど、では、このままナデシコは警戒を怠らずにこの空域を偵察します」
そして30分程つ、今だバッタ達は現れない
「やっぱり、攻撃して貰いたいみたいね、トカゲさん達は」
「ナナフシを守ろうとする護衛が皆無・・・・ミエミエです」
ユリカに返答するルリ
「でも、だとすると、かえって不味いんじゃ?」
とメグミ
このままでは、地球側には打つ手が無く、膠着状態が続く事になる
ナナフシのマイクロブラック砲も、戦艦等の移動目標相手には効果が薄いが、軍事基地や都市などの固定目標を狙われてしまえば、打つ手が無い
出来れば、そうなる前に破壊してしまいたいのだが、その破壊が迂闊には出来ない
正直、ルリ達には腑に落ちない事があった
以前の世界のナナフシ相手の時には、ナナフシがマイクロブラック砲の発射寸前に撃破している、なぜ、前回は平気だったのか
『歴史が変っている』為に、今回のナナフシと以前のナナフシが違うと言うのは解る、だからこそ、『マイクロブラックホール』の危険も直ぐに思いついた、しかし、『どのような』違いあるのか
その事を内密にイネスを艦長室に呼び出し話すと、顔面蒼白になる
「それ、滅茶苦茶危なかったわよ(汗)」 と
おそらく、ナナフシには何らかの形でマイクロブラックホールの暴走を制御する安全装置のような機能がある、攻撃を受けた時に、前回はその機能がたまたま上手く働いてくれた
しかし、それが常に上手く機能してくれるとは限らない、もし、無差別に攻撃して安全装置の方が『先に』壊れていれば・・・
「私たちは、ブラックホールに飲み込まれて『消滅』していたって事ですか・・・」
「ええ、そうね、最低でも半径数百キロも道連れにして」
「それは(汗)・・・」
今更ながら、自分達のして来た事に冷や汗をかくルリとユリカ
ちなみに、今、ラピスはブリッジ、アキトは食堂勤務中
「たまたま、砲戦フレーム程度の火力がナナフシを破壊するのに丁度良かったのね、もし、グラビティブラストで一気に撃破なんてしてれば」
何が幸いするか、解らない物である
「でも、そうなると地球側には打つ手が無いんじゃ?」
「だから、言ったでしょ、厄介な物を押し付けてくれたって、今はまだ様子を見るしかない、おそらく、撃った直後に攻撃すれば平気だとは思うけど・・・・貴方たち、今の話を聞いた後に、絶対に大丈夫だなんて言える?」
5日後、2回目のノルマ
今回も、無事に終わる
とはいえ、何も出来ない膠着状態の緊張感が少しずつクルー達にのしかかっていく
「あ〜あ、こんな事あと何回繰り返すんだろ・・・」
少々うんざりしたようなミナト
「まあまあ、ミナトさん、軍もきっとなにか考えてくれてますから」
とユリカ
10日後、3回目
「また、同じ事の繰り返し・・・」
かなりうんざりしているミナト
3回程度繰り返す事に疲れて居る訳ではなく、もし、失敗してしまった場合の想定される被害の甚大さがミナトを苦しめている
『恐怖心』は人を萎縮させる、一メートルの幅の道なら平気で歩けるが、吊り橋を渡る事には恐怖を感じる人も多いもの
ユリカもなんとかしたいとは思っているのだが
だが、状況を打破出来るかもしれない人物が現れる、しかし、それは
「初めまして、山本美咲といいます」
「あな・・・たは・・・」
ナナフシの調査の為にネルガルが送って来た人材の一人、それは皮肉にも・・・
「どうしたんです?」
怪訝そうな美咲
「いっ、いえ、なんでもないんです」
ユリカにとっては、おそらく最も会いたくない、会ってもどうしたらよいか解らない相手、こちら側の世界の美咲
「私、ずっとお礼を言いたかったんです、正人さんを助けてくれてありがとうございました」
深々と頭を下げる美咲
ユリカは、たまらない気持ちになる、確かにこちら側の世界の兵藤正人は救えたかもしれないが
「あっ、正人さんって言っても、誰か解らないですよね、ユートピアコロニーの地下に居たんです、ユリカさんには本当に感謝してます、私の夫の命の恩人ですから」
心底嬉しそうな笑顔を、ユリカに向ける美咲
「・・・・私は・・・そんな立派な人間じゃない・・・」
何を言って良いのか解らないユリカ、そんなユリカの言葉も、「謙虚さ」に感じてかえってユリカに好感を持ってしまう美咲、そんな態度が何よりも辛いユリカ
「艦長、一寸良いかしら?」
そんなユリカに助け舟、イネスからの呼び出し
「すいません、用件があるんで」
「はい、解りました」
素直に引く美咲
心底ほっとして、美咲が居なくなった後イネスと話始めるユリカ
「ナナフシの調査の為に送られてきた人員の名簿は見た?」
だが、タイミングが悪くというか、良くというかイネスの話は
「まだみてません・・・でも美咲さんが入っている・・・今までお礼言われてましたから・・・」
自虐的な表情で答えるユリカ
「そう・・それでどうするの?、山本美咲は自分からナデシコに来たがってたって話よ、貴方に恩返しがしたいからって」
次回に続きます
後書き
どうも、ナナフシって本編のままだと今一盛り上らない気がしたんで、一捻りしてみました
それに、マイクロブラックホールなんて物を内部に抱えた状態のナナフシを攻撃するなんて、火薬庫に至近距離からミサイルぶち込むようなもんで危ないんじゃないか?って疑問も、ずっと持ってたんで
ちなみに、今回一番悩んだのは美咲をまた出すべきかどうか
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