コロニーアマテラス、クリムゾングループのボソンジャンプ研究の為の施設
『表向き』は
これから、私とアキトさんは・・・
天秤
第7話
「まず、テンカワ君に気をつけて貰いたいのは、出来る限り敵に見つからないで欲しいって事、戦いは避けて欲しいんだ、今の段階では」
敵地に進入する直前にアキトはアカツキの指示を思い出している
「今の時点ではやりたい事は、『敵の内部情報を出来る限り詳しく知る』って事なんだ、まあ、実際には色んな想定外の事態は起こって来るだろうから、臨機応変にやらなきゃならない事も増えてくるだろうけど、基本はそうなんだって事は、忘れないないで欲しい」
「解った」
「それと・・・・・・おそらく、テンカワ君にとっては一番難しいかもしれない事を言っておく、もし・・・・・・・さらわれた人達を見つけたとしても・・・今回は助けないで欲しい」
「なっ、なんだとっさらわれた人達を見捨てろっていうのかっ」
怒り出すアキト
「やっぱり、怒りだしたか、ルリ君説明してあげて」
「アキトさん・・・・・・言いにくい事ですが・・・・・・」
ルリがアカツキに変わって話し出す
「今の時点で下手にさらわれた火星出身者の人達を助け出しても、かえって、多くの犠牲者を出しかねないんです・・・・」
「敵の勢力は、地球側のかなり深い部分にまで及んでいます、仮に私達が救出に成功したとしても・・・・・・今のままでは、また、さらわれて・・・なんて事にもなりかねない」
「それに、今助けてしまえば、敵も警戒を増す、最初は良くても次からは難しくなる」
「私達は、単に助け出す事だけじゃなくて、火星出身者が平和に暮らせる『環境』を整えないとならない・・・でないと、一時的な平和を手に入れたとしても、また・・・・」
「・・・・・・・・」
不機嫌そうに、ルリの話を聞いているアキト
「アキトさんが目の前で、苦しんでいる人を見捨てられない・・・・・・それは解ります、でも・・・・」
「目の前の10人の人を助ける為に、その後100人の人が犠牲になるなら・・・それでも、目の前の10人を助けるべきなんですか?」
拳を握り締め、ルリを睨み付けるアキト
ルリは悲しげな、それでいてしっかりとした眼差しで、アキトの視線に耐える
・・・・10人を見殺しにする事で、私は、あなたに嫌われても構わない・・・・100人の人を助けられるのなら・・・・
ルリの瞳は、そう訴えていた
アキトにとって、それは・・・・
最も惹かれている所でもあり、もっとも重荷に感じている所でもある
「もし・・・・・・・10人も100人も両方助けられる方法があるなら・・・・・・・私だってそうしたい・・・・・でも・・・・・・そんな方法があるんですか?」
「・・・・・・・・・無い・・・・」
そして、重荷だからこそ、そんなものをルリだけに背負わせたくは無い
「惚れた弱みっていうのは、凄いもんだねえ、テンカワ君がこんな作戦に協力してくれるなんて」
「会長、こうなるって見越してホシノルリとテンカワアキトを組ませたんですか?」
「そうだよ、エリナ君、テンカワ君の性格なら、僕から何を言おうと素直に聞くのは難しいだろうからね、まして、人の命がかかっているとなれば、尚更だ」
「相変わらず、悪巧みが得意ですね、あなたは」
呆れたようよ呟くエリナ
「でもまあ、ルリ君には僕のたくらみなんて見抜かれてるようだよ、でも、彼女なら解った上で、『結果』が良くなると判断するなら、協力してくれるから」
「あの2人・・・・・・・上手く行くんでしょうか・・・・・・・」
なんだか、心配になってくるエリナ、直情的なアキトと比べて冷静に物事を考え行動するルリ、なんだか、合わない気がする
「上手く行かないかもしれないし、上手く行くかもしれない、人と人との関係なんて、解らないもんさ、大体、あの2人が付き合うことになるなんて、昔のエリナ君に想像出来たかい?」
「いえ」
ゆっくりと、首を横にふるエリナ
「だろ、僕だって始めに聞いた時は、驚いた、でももし、こうなるって最初から解っていれば、もっと、上手くやる事だって出来たんだよなあ」
「会長は、ミスマルユリカ絡みでテンカワアキトを動かそうとしてましたね」
「今にして思えば、あれが失敗だったよ・・・・まったく・・・テンカワ君の好みを読み違えた」
「半分は合ってたんじゃないですか、彼は彼女の事を嫌ってた訳でもありませんし」
「でも、半分だけじゃ、彼を動かす事は出来なかったからね」
エリナは、ルリを抜いたアカツキとアキトの二人の会話を盗み聞きしていた時の事を思い出す
「どうやら、クリムゾングループは、大戦中から木連と繋がりがあったようなんだ」
「地球の企業が?、なんで?」
アカツキの説明に驚くアキト
地球側の企業が、当時は『敵』であった木連と繋がって、なんのメリットがあるのか?
地球の軍需産業ならば、地球の軍に兵器を売れば良いのだ、敵と繋がらなくても
ましてや、『自分達を攻撃してくる相手』と、手を組むなど、自殺行為としか思えない
「そこら辺りが、僕にも良く解らない、『離れた位置』に居る企業が、紛争中の2カ国の両方に武器を売って儲けるって話なら、別に珍しくも無いが・・・・『地球側』の中には、当然、クリムゾン関係の企業も含まれていて、彼らにも相当の犠牲者が出ているんだ、なのに・・・それも含めて、調べないとならない事が沢山あるんだよ、今回の事には」
アカツキの説明の通り、今回の事件には不可解な事が多過ぎる
クリムゾングループが、『大戦後に』木連と手を結んだというのならば、まだ解らないでもない
『昨日の敵は今日の友』『今日の友は明日の敵』利害の一致や対立で、そんな事になる事など、国家にしろ企業にしろ、日常茶飯事の事なのだから
「想像出来る範囲の話をすると、一番単純な理由は、『味方が形勢不利と見た連中が、敵と手を結ぶ事で自分達だけの保身を図ろうとした』って所かな」
「物事を大きな目で判断せず、目先の敵・・・・・この場合はネルガルかな・・・への対抗意識から、敵と手を結ぶ事だってあるだろうし」
「・・・・・・・そんなくだらない理由で・・・・」
「ある物事の原因を調べていけば、何一つ手の打ちようも無いほど深刻な物もあれば、どうしようもないほどくだらないシロモノもあるさ」
「それに、君だって経験あるだろ?、目先の敵にばかりとらわれた人達に迷惑かけられた事が」
「?」
アキトにはアカツキが何を言いたいのか解らない
「ユリカ君やメグミ君、彼女たちは、僕の目からは君の事などそっちのけで、お互いの「目の前の敵」に勝つ事ばかりに拘ってたように見えるんだけどねえ」
「結果、君はうんざりしてしまって、どっちも選ぶ気になれなくなった」
「それは・・・(汗)」
アキトとしては、あまり触れて欲しく無い過去
「そもそも、彼女たちは君の気持ちを自分に振り向かせようとしてたんだろ、『勝利』というのは、『君と結ばれる』事だった筈だが、そういう意味では、『どっちも負けた』訳だ」
段々と不機嫌になってくるアキト、確かに迷惑をかけられたが・・・・それでも、彼女達の事をあまり悪く言ってもらいたくは無い
「不満そうだねテンカワ君、一応、彼女たちの名誉の為に言っておく、ああなってしまったのは、彼女たちだからって訳じゃない、あれは『争いごとの渦中にある人間が陥り易い心理』なんだ」
「争いごとの渦中にある人間は、目の前の敵憎しの感情から、『そもそも、なんの目的で争っているのか?』を見えなくなってしまう事が多々有る、本来なら、「目的」を果たした方が勝者なんだが・・・・・」
「もし、ユリカ君でもメグミ君でもどっちでもいい、争いを避けてちゃんと君の気持ちを考えてくれれていれば・・・・そっちの人と付き合っていただろ?」
「ああ、確かに・・・・」
「外から見てれば、そんな事は簡単に解る、でも、「自分が当事者」となってしまえば、簡単な事すら気付く事が難しい」
「・・・・・・・・」
「そして、だからこそ、ルリ君は君との事で悩んでいる、自分もそうなってしまわないか?ってね、そうやって気を使ってくれる事で、君は随分救われてるんじゃない?、ほんと、君には勿体無いぐらいだよ、彼女は」
「そうだな・・・・」
ごく自然と、アカツキの言葉を肯定してしまうアキト
アキトには、ルリを支える自信が無い、とはいえ、自信を失いっぱなしでは、アカツキの計画に支障をきたす
「しっかりしてくれよ、ルリ君がどうなるかは、『君次第』だって事、解ってるかい?」
「俺・・・次第?」
「以前のように優柔不断なら、ルリ君だって不安になる、そうなれば、良い方向に進むか悪い方向に進むか、考えるまでもないだろ?」
「そう・・・だな・・・」
「もし、ユリカ君を助け出す事が出来たら、今度こそはっきりと決着をつけるんだ、ルリ君の為にも、ユリカ君の為にも、君自身の為にも」
「たとえ、ユリカ君が泣く事になったとしても・・・・・・・・」
「しかし、『元大関スケコマシ』とまで言われた人が、よくもまあ、あんな立派な事を」
皮肉げな笑みを浮かべるエリナ
「おや、エリナ君盗み聞きしてたのかい?、あんまりいい趣味じゃないよ、それは」
アカツキは言葉とは裏腹に、すこしも気にしていない
「で、会長ご自身はどうなんです?、女性関係の清算は、ちゃんと済んでいるんですか?」
「あっはっはっ、痛い所突くねえエリナ君は」
そうは言うが、アカツキは少しも痛そうには見えない
「僕は、テンカワ君みたいに優柔不断じゃないぞ」
「信念を持った『大関スケコマシ』なんて、女の敵です」
「そうそう、そんな、『大関スケコマシ』なんて、テンカワ君が嫌うタイプの筈さ、でも、それが、ルリ君絡みとなると・・・・・・・・・・・」
「まったく皮肉なもんだ、「嫌われる覚悟」があるルリ君が一番テンカワ君の心をがっちり掴んだんだから」
そして、少し真剣な顔になるアカツキ
「確かに、ルリ君が絡むとテンカワ君は必死になるさ、でも、それが吉と出るか凶と出るか・・・・」
後書き
シリアス書く時、やっぱユリカの扱いって困るんですよ
こういうルリ、と言うか、ルリに限らず
『それなりの立場に立った人間が、その地位に相応しいだけの責任に応じた行動を取ろうしている』
話にした場合、その『責任に応じた行動』をしているキャラとユリカって、比べられるのと比べられないのと、どっちが自然に感じます?
私には比べられてしまう方が自然に感じます、でも、比べられてしまうと、『ユリカヘイトみたいなSS』になってしまう、といって、比べないと『違和感を感じる』
なんか、浮いちゃうんですよ、元々ギャグ要素の強いキャラのユリカって
キャラのイメージっていうのは、『そのキャラだけ』では決まらないんです
その話の『世界観』や、『他のキャラ』との『対比』によっても変わる
他のキャラの動かし方次第で、相対的にイメージが変わってしまう訳で
前から悩んでいる事がありまして、それは、、『比べられるべき時に比べられない、嫌われるべき時に嫌われない』事への『違和感』は、かえってユリカを嫌わせる事になってるんじゃないか?
嫌わせるべき時には、ちゃんと嫌わせておいた方が良いんじゃないか?
じゃあ、どうやって? となる
好かれるにしろ、嫌われるにしろ、好かれ『方』の問題、嫌われ『方』の問題って物が出てくる
この話のルリは、『10人を見殺しにする』っていってます、当然、そんなルリを嫌う人も出て来るでしょう、当たり前です
でも、この後ルリを嫌う人達、憎む人達が出て来たとしても、それは、ヘイト物とは言われます?
『嫌われる事その物』に問題があるんじゃなくて、『嫌われ方の質、内容』に問題があるんですよ、ユリカの場合
ユリカが嫌われる場合に、一番自然に感じる嫌われ方はどんな物になる?・・・・と考えていくと、『ありゃ、これじゃあ、ユリカヘイトモノみたいだ・・・』になってしまうから、困るんです
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