アキトさんに銃を向けてしまった私・・・
何時か、アキトさんの心は、私から離れていってしまうのかもしれません・・・・
酷い人間ですから、私は・・・・
天秤
第6話
「たとえアキトさんに嫌われても、ナデシコを取ります・・・」
ルリにそう言われて、流石にショックなアキト、と同時に『嬉しさ』を感じる
ルリの不安とは裏腹に、自分が好きになったルリが自分に溺れたりせず、あくまでも自分の責任を果たそうとしている女性である事が
それだけに、余計に自分はルリの足手まといになる訳にいかない
正直な事を言えば、そんなルリとの付き合いは、アキトにとって重荷でもある
だが、たとえ重荷であったとしても、けっして失いたくない荷物もある
そして、それを失いたくないのならば、自分自身が重さに耐えられるだけの人間になるしかない
「しばらく、コックは諦めるしかないか・・・」
苦汁の選択ではあったが、二足のわらじで乗り切れる程、これから先の戦いが甘いとも思えない
「テンカワ君も、昔の勘を取り戻して来たみたいだね」
必死に訓練を積み重ねて行くアキト、ネルガル会長室で、その成果の報告を聞きながらアカツキ
「まったく、昔のナデシコの頃は、あんなに必死に訓練してる所なんて見た事無かったのに・・・」
エリナはなんだか、面白くない
「なに、妬けるかい、エリナ君?」
アカツキは、にやりと笑いながらエリナにをからかう
「なっ、何を言っているんですかっ(赤)」
赤くなって否定するエリナ
「もし、今のテンカワ君の姿を見たら、ユリカ君は、思いっきり悔しがるだろうね、テンカワ君は、ユリカ君の為にはあんなに必死になんてなってくれなかったんだから」
相変わらず、ニヤニヤとしているアカツキ
「会長、何か良からぬ事を考えていませんか?」
「別に、僕が何かをする訳じゃない、ただ今のルリ君とテンカワ君の関係を知ったら、ユリカ君がどうするか見て見たいだけさ」
「だから、そういうのを、良からぬ考えって言うんです」
呆れ口調のエリナ
「でもまあ、それも、ユリカ君が救出されなければ意味が無い、僕は是非見てみたいんだから、エリナ君も頑張ってくれたまえ」
「・・・・・」
エリナは無言になってしまう、救出するもなにも、さらわれたユリカが生きているかどうかすら、未だに解らない
いや、むしろ、生きている可能性は低いとすら見ている、ラピスラズリが救出された研究所の事を考えれば、敵がさらったジャンパーをどう扱っているか・・・
アカツキも、それは十分に承知している、承知していればこそ、あえてふざけたような態度をとる
それでもなお、アキトの力を必要とするのは、少しでも敵の力を削いでおく為
むろん、ユリカを助けられる事が出来るのならば、その方が良いに決まっている
今までネルガルが調べあげた、敵の報告書を読んでいるルリ
「・・・・・・・・ユリカさん・・・これじゃあ・・・」
・・・もう、殺されているかもしれない・・・
後半の言葉を、飲み込む
ユリカが、もうこの世には居ない・・・
ルリは、アキトに対して「私はユリカさんが嫌い」だと言ったが、殺してやりたい程憎んでいる訳でも無い
なによりも、敵の「実験対象とされた人間」の扱いには、吐き気すら覚える
そして、もしかしたら、アキトもまた、「実験対象とされた人間達」と同じような扱いを受けたのかもしれないと思うと、背筋がぞっとする
「るり・・・・」
コミュニケでルリと通信を繋いでくるラピス
「どうしたんですか?、ラピスさん」
ラピスに見られないように書類をしまい、優しい笑顔でラピスに返事をするルリ
「何か、仕事ある?」
「いえ、」
「そう・・」
あっさりとコミュニケを閉じるラピス
ネルガルからルリとアキトの元に預けられたラピス
ラピスは、それに意味がある事だとは思っていない、それは、何時ものように、『ラピスラズリという道具の持主が代わっただけ』という認識としてしか、今のラピスは物事を見る事が出来ない
今のラピスでも、『戦艦のオペレーターとしての、機械的な性能』としてなら、問題は無いのかしれない、だが・・・・
「昔の私より酷い・・・か・・・・」
いざ戦争ともなれば、場合によっては『兵』は、非人道的な事を行う事も要求される
とはいえ、『人としての感情』があり、それが故にかえって非人道的な行為に走ってしまう事と、『まったく無感情、無感覚』で、非人道的な行為を冷静に実行出来る人間は、違う
前者は、誰でもなってしまう事があり得るが、後者は・・・ルリは、自分自身の事を、どちらかと言えば後者よりだと思っている
もっとも、多くの戦場での虐殺等は、『人に感情が有るが故』ではあるが
『まったく無感情、無感覚』で機械的に人を殺せる人間は、必要が無ければ人を殺したりしないというメリットもある、故に『結果的には』被害を最小限に止める事もある
だが、必要となれば、どれだけ多くの人間を殺す事になろうと躊躇などしない、故に最大の被害をもたらしてしまう事もあるのだ
木連の『無人』艦隊が、火星を壊滅させたように
もっとも、『人としての感情が有るが故に』であろうと、『まったく無感情、無感覚』であろうと、殺される方からしてみれば、たまった物では無い事に変わりは無い
結局、どちら方が被害を少しでも少なくする事が出来るかと言えば、『時と場合による』としか言い様が無い
「今のままのラピスのような人間も、居てくれた方が良いのかも・・・・嫌な事を考えていますね、私は・・・・」
『艦長』としてなら・・・『命令を出す立場』としてなら、確かに今のままのラピスの方が都合が良いのかもしれない、しかし・・・
『ホシノルリという一個人』としてならば、今のラピスは・・・
「汚いですね・・・私は・・・・」
こんな事を考えている姿は、アキトにだけは見られたくないとも思う、見せてしまえば、いつかアキトの心は自分から離れていってしまうかもしれないから
実際に、アキトは昔のナデシコの頃、フクベを殴った事すらあるのだ
「でも、アカツキさん、一体何を考えてるんでしょう・・・私みたいな人間にラピスを預けても、かえってあの娘に悪い影響を与えてしまうそうな気がするんですけど・・・」
ルリは本気でそう思う
「大体・・・私はアキトさんに銃を突きつけたような人間だし・・・」
さすがにアレは、やりすぎたかもしれないと思っている
「でも・・・私は、『艦長』なんだから・・・」
ブリッジでは、サブロウタがハーリーをからかっている
「で、艦長の恋人の訓練の様子はどうだい?、ハーリー」
失恋の後遺症で、やや元気が無いハーリー
『恋人』という言葉にやや不愉快そうだ
「必死です、艦長、ああいう所に惹かれたんでしょうか?」
「どういう所に惹かれたかって言っても、、男と女の仲なんて、解らんぞ、この人の何処が良いのか解らないって言ってるのに、別れないカップルなんて、いくらでもいるしな」
「さすがに、あれだけ沢山の女の人と遊びまくってるだけはありますね」
「おお、解らないからこそ、色んな相手と付き合って相性を見てるんだよ」
なんとなく腹がたったハーリーは、嫌みの一つも言ってるみるが、悪びれる様子もない
「まったく今のサブロウタさんを、昔のお仲間が見たら泣きますよ」
「泣いたって良いさ、大体木連の軍人は堅苦し過ぎるんだ、もう少しいい加減になれれば、最初から地球との戦争だって起こらずに済んだかもしれないだろ」
「俺だって・・・昔は・・・・・・・・尊敬すらしていたんだぞ・・・木連の実質ナンバー1、草壁春樹の事を・・・」
やはり、自分は多くの地球人を殺してしまった木連の軍人だという事を気にはしているのだろう
「サプロウタさん・・・・・」
ハーリーも、重苦しい表情・・・・が
「だから、もっと地球の女性と付き合いを広げるべきなんだよ、愛こそ全て、俺が沢山の女と付き合ってるのは、平和の為さ♪」
いきなり軽くなるサブロウタに、カクッとしてしまうハーリー、これでは、アキトのサブロウタへの敵対意識も杞憂とは言えなかったかもしれない(苦笑)
さて、プロスペクターにはプロスペクターで、仕事があった、その仕事の為に尋ねていった相手は
「お久しぶりですな、ミスマル提督」
そう、ユリカの父、コウイチロウ
「久しぶりだね、プロスペクター君、いつ以来だったか」
「まだ、一週間も経っていませんが・・・」
コウイチロウは、さらわれたユリカが心配でたまらないのだろう、
「それで・・・奴らから接触は?」
「・・・・・・・・・無い・・・」
もしかしたら、さらったユリカを、コウイチロウとの交渉、もっと実も蓋もない事を言えば、『脅迫』の為に利用するかもしれけないと踏んだネルガル
だが、敵からの接触は一切無い
「提督、本当に無いのですか?、娘さんの安全の為に、本当は合ったのに無いと言い張っているような事は?」
「・・・・・・・・それだったら、どれだけ良いか・・・」
沈んでいるコウイチロウ
危険かもしれないが、少なくとも敵との接触があれば、手がかりの一つぐらいは掴める事もある、だが、接触すら一切無いのでは
「ネルガルの方では、何か情報は?」
「いえ、なにも・・・」
すがるような思いのコウイチロウ、プロスペクターもそれは解るが、何の情報も得られていない今の時点では、そう答えるしかない
「もし、なにか情報があったら、知らせてくれたまえ、こちらも出来る限りの事はするつもりだ」
「では、頼みがあります、ミスマル提督」
「じゃあ、テンカワ君、初仕事だ、よろしく頼むよ」
「解った・・・」
緊張した面持ちで、アカツキに答える、とうとうアキトの戦いが始まる
後書き
相変わらず、いきあたりばったり、先の事なんて考えてないっす、さて、この後どうなるんでしょ?(苦笑)
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