「う〜ん・・・」
「どうしたんです?、ホシノさん、難しい顔をして?」
「あっ、瑠璃さん、あのっ、なんでもないです(赤っ)」
「?」
慌てて何かを隠すルリ
ルリが何をみていたかというと
瑠璃とルリ番外編
一枚の写真
「やっぱり、上手く笑えてない・・・」
アキトに撮ってもらった写真をみて、呟くルリ
なんとか笑顔を作ろうと思ってはみたが、どうして良いか解らず、今の表情になってしまった
逆に、瑠璃のほうは自然で自信すら感じさせる笑顔
なんというか・・・・『負けた』と思わされる写真なのだ、ルリにとっては
ルリとて、出来ればアキトの前で笑顔で居たいのだが、なにせ、慣れない
「・・・嫌な娘だな、私、瑠璃さんには色々と良くしてもらってるのに」
ルリの心の中にある瑠璃への対抗意識や嫉妬心、それが解っていればこそ、写真を瑠璃から隠さざる得なかった
鏡に向かい、笑顔を作ってみるルリ、なんだかぎこちない
「駄目だな、やっぱり上手く笑えない・・・」
実は、瑠璃も以前同じような事で悩んだ事が有る事をルリは知らない
瑠璃がアキトと付き合い始めた頃
というよりも、『付き合っているのかいないのか微妙な頃』と言うべきか
瑠璃は悩んでいた
アキトにアプローチをかけてくるミスマルユリカ
アキトはその事を嫌がっているようには見えないし、『ユリカの笑顔』に対して照れているようにも見える
対して自分は?といえば、アキトに対してかなり厳しい事も言って来ているし、ああいう笑顔も出来ない
「ルリルリは何時もつまらなそう」
ミナトにそう言われた事もある
もっとも、それはアキトとの事の以前の話であって、今は微妙に嬉しそうな表情をする事も多くなり、それがアキトの心を捕らえていたのだが、本人だけはその事に気づいていない
その頃になれば、ミナトも、「ルリルリも、良い表情をするようになったわね」と思っていたのだが瑠璃の心の中では、未だに『自分は笑えない女』のままなのだ
鏡に向かい、笑顔を作ってみる瑠璃
「駄目だな、やっぱり上手く笑えない・・・」
台詞まで、ルリと一緒である
はっきりと、『付き合っている』と言える状態なら、瑠璃も自信を持てたのかもしれないが、『付き合っているのかいないのか微妙』では、アキトに何も言えない
と、思いつつも、嫉妬心からついアキトに厳しい事をいってしまうのだが
そんな自分に対して瑠璃はよく思うのだ、『これじゃあ駄目なんじゃ?』と
アキトは?といえば、そんな瑠璃を自分だけの物にしたかった
厳しく言われるのも、瑠璃が自分の為を思っていてくれればこそ、嫉妬してくれるのだと思えば、嬉しい・・とまでは行かなくても仕方ない事だと思っていた
いや、むしろ、嫉妬心を抑えようとしながらも膨れている瑠璃の姿が、かえって可愛く愛しく思えた事すらあった
とはいえ、アキトには自信が無い
ナデシコでは、変にもてていたアキトではあるが、当の本人からしてみれば、『何故?』である
なんで、自分の事を好きになってくれる女性達があんなにいたのか、アキトにはさっぱり解らない
容姿・・・精々、『普通』である
パイロットとしての腕・・・ナデシコではアキトよりも上の人間ばかり
コックとしての腕・・・まだまだ半人前
自分の事を考えれば考えるほど、ナデシコでの変にもてていた状態は、『異常』にしか思えない
正直、『俺のような情けない男の何処が良いんだ?』としか思えず、『自分に好意を向けてくれる女性達は、本当に俺自身を見てくれているのか?』としか思えなかった、アキトにとってナデシコでの事は当事者であるにもかかわらず、現実味が無かったのだ
だから、瑠璃が自分に好意を持っていてくれると言う事も、何処か信じられない
信じられないのだが、それでもアキトには瑠璃が愛しくてたまらない
確かに、アキトはユリカの笑顔に照れる事もある、だが、それは、『女性に笑いかけられて照れている』のであって、ユリカ以外でも同じ事
『好きな女性に笑いかけられて』とは別なのだ
瑠璃が、『これじゃあ駄目なんじゃ?』と思っている部分がかえって、アキトの気持ちを瑠璃に惹き付けているのだから、男女の関係というものは難しく、ややこしくもなる
もっとも、瑠璃が、『これじゃあ駄目なんじゃ?』と『思わない』ような女性ならアキトの気持ちが惹き付けられる事も無かったのだろう
さて、話は現在に戻る
「う〜ん、やっぱり良いな、二人とも」アキトはと言えば、同じ写真を見て、昔の事を思い出しながら、「瑠璃(ルリ)の良さ」を再認識していた
今のアキトからみれば、昔の瑠璃=ルリの、無表情さも悪くない
出会ったばかりの頃は、『人形のような無表情な子供』という印象しか持っていなかったのだが
そんな瑠璃が少しずつ変わっていき・・・今は天河瑠璃
今にして思えば、アキトは瑠璃の『成長』に惹かれたのだろう
胸の成長だけは・・・まあ・・・アレだが・・・・(苦笑)
アキトにとって、そんな事はどうでも良い事である
それに、アキトには解る、ルリの無表情は無表情であっても無感情では無い事を
心の中まで人形で、表情が『無い』のとは違うという事を
元々、笑うことも料理を作る事も苦手だった瑠璃
そんな瑠璃が、『アキトの為に』笑顔を作ろうとしたり料理を練習したりしてくれる
アキトはそれが嬉しかった、だからこそ、瑠璃に相応しいだけの男になりたいと心底思ったのだ、たとえ、『王子様』や『騎士』にはなれないのだとしても
瑠璃が、笑顔を作るのではなく自然と笑えるようになり、料理の腕もそれなりになっていった頃には、アキトの心は完全に瑠璃に捕らえられていた、最早、別の女性のことなど入り込む余地など無いほどに
いや、捕らえられていたのはもっと前だったのかもしれない、アキトはただ自覚しただけなのかもしれない
自分の料理も、『テンカワアキトの味』というよりも、『アキトと瑠璃で二人で作り上げた味』だと思っている
などど、真面目な話をしているが、瑠璃とルリ写真を見るアキトの表情を擬音で示せば
にへら〜〜〜〜
である(苦笑)
何を考えているのか知らないが、緩みきった表情で、にへら〜〜〜、もし、これがSSではなく漫画でなら、表情だけで全てぶち壊しである(苦笑)
テンカワアキトは、今幸せであった
もっとも、幸せだからこそ、そして、瑠璃を愛していればこそ、いずれ、瑠璃とルリの事で本気で苦悩する事になるのである・・・
後書き
ヨグさんから以前投稿していただいた、瑠璃とルリの絵に、ミニSSをつけてみました
このSSはヨグさんのHP『幻想遊技施設』にも投稿しています
ちなみに、向こうとこちらでは
向こうは別バージョンの絵
背景色、その他細かい所等
後書きがこちらとは違っていて、ヨグさんのコメントが付いている
等の違いがありますので、それらのことで同じ内容のSSのイメージがどのように変わる物か、見比べてみるのも面白いかもしれません
ヨグさんのHPは、ヨグさんの部屋にあるURLから跳んでみてください
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