ナデシコBでのお仕事も一区切り
これでやっと、帰れます
瑠璃とルリ
第16話
「瑠璃っ」
人目も憚らず、帰って来た瑠璃を嬉しそうに抱きしめるアキト
「あっ、あのアキトさん、こんな所で恥ずかしいんですけど(赤)」
「あっ、ごめんっ(赤)」
あっけにとられてしまうサブロウタとハーリー
「あっ、タカスギさん、お久しぶりです、この子は?」
そして、今更二人に気づくアキト
「アキトさんに紹介しておきます、この子はハーリー君、女性にだらしのないサブロウタさんの隠し子です」
「ちょ、ちょっと艦長(汗っ)」
「あはは、解ってますって瑠璃から聞いてます、ナデシコのオペレーターのマキビハリ君ですね、なんでも、兄弟のように仲が良いとか」
「いえ、そんなに仲良い訳じゃないんですけど」
ハーリーは笑いながら答えるアキトに不満そう、故に
「でも、サブロウタさんなら、本当に隠し子の一人や二人居てもおかしく無いですね」
ここぞとばかり、普段からかわれている仕返しをする
「馬鹿いえ、俺は真面目なお付き合いしてるぞ」
「何人もの女性と一度に付き合う事を、真面目なお付き合いとは言いません」
「だからなあ・・・」
・・・なるほど、瑠璃の話通り見てて飽きない二人だな・・・
気楽にそんな事を考えているアキト
「それで、今日は何のご用件で?」
「え、ああ、こいつが瑠璃さんの旦那さんのラーメンを食べてみたいって言うもんだから」
ムッとしているハーリー、今度は『こいつ』呼ばわりに不満
「じゃあ、アキトさん、私は荷物置いてすぐ戻ってきますから」
「大丈夫?、疲れてない?、今日ぐらいは休んでも」
「いえ、大丈夫ですよ、それに、私はこっちの仕事の方が好きですから」
瑠璃の身体を気遣うアキトに笑顔で答える瑠璃
・・・艦長って、この人の前だとこんな顔で笑うんだ・・・
ナデシコではクルーには見せてくれない笑顔、なんだか羨ましい、瑠璃は、ナデシコ艦内でも笑わないと言う訳ではないが、やはり、『笑顔の質』が違う
「じゃあ、アキトさん、二人をお願いします」
「解った、じゃあ、気をつけて」
今日のアキトは、昨日までのアキトとは違う
なにせ、瑠璃が戻って来たのだ、当然仕事への気合の入り方も違う
「はい、ラーメン二つお待たせしました」
差し出されたラーメンをすするサブロウタとハーリー
「・・美味しい・・・」
「おっ、また腕を上げましたね」
アキトのラーメンの味を誉めるハーリーとサブロウタ、だが
「昨日までは、ちと味が落ちてたけどな(にやり)」
横から、口を挟む屋台の常連客
「いっ、いや、だから、それは言いっこなし、瑠璃にばれたら怒られちゃうし(汗)」
「奥さん居なくて、落ち込んでるこいつは見物だったぞ〜、てっきり、本当は仕事で居ないんじゃなくて、逃げられたのかと思ったぐらいだ、どうせなら、そっちを見にくれば良かったのに」
「だ〜〜か〜〜〜ら〜〜〜〜〜、それは言いっこナシだって(汗)」
「奥さん、そういう所には厳しいからな、『私が居ないからって、お客さんを疎かにしてどうするんです(怒)』ぐらいの事は、言いそうだ、うん」
「か・・あの、瑠璃さんってそんなに厳しいんですか?」
つい、訊ねてしまうハーリー
「ん〜、厳しいって言えば厳しいな、見事に尻に引かれてるし、でも尻に引かれても、まんざらでもなさそうだぞ、なにせ、奥さん居ないと落ち込んでラーメンの味が落ちるぐらいだ」
そして、豪快に笑い出す常連客
「ほんと、からかいがいがあるからな、この屋台の夫婦は」
・・・それは、あんまりありがたくなんでですけど(苦笑)・・・
内心では、一寸だけ不満
「本当の事言うとな、実は他の客と賭けてたんだ、瑠璃さん仕事で一時的に居なくなったんじゃなくて、愛想つかして逃げちゃったんだって」
「そっ、そんな事ある訳無いじゃ、あははははは(汗)」
自分に自信のないアキトにとっては、今一笑えない常連客のジョーク
なにせ、 『屋台のラーメン屋』と『試験戦艦とはいえ艦長』では差が有り過ぎる
「で、あなたはどっちに賭けたんです?」
横から質問をするサブロウタ
「ん?、この二人見てりゃ解るだろ(にやり)」
常連客的には、『仕事で一時的には居ない方に賭けた』と言う意味なのだが、ナデシコでの凛とした瑠璃を見ているサブロウタ的には迷ってしまう
正直、「逃げられた」に賭けていても少しも不思議には思えないのだ
とはいえ、この質問へは答えにくい、故に
「なるほど(にやり)」
にやり笑で誤魔化す事にしておく
これが、アキト的には、『瑠璃に逃げられた』方に同意されてしまったように見えてしまうから、人と人とのコミュニケーションという物は、難しい
さて、場面は変わり、更にもう少し昔の話になる
「アキトさんは瑠璃とくっ付いたんだから、遠慮する事なんて無いでしょ」
何時までも優柔不断なジュンに怒るユキナ
「いっ、いや、だって(汗)」
「だってじゃないっ、思い切ってユリカさんに告白するのっ、あ〜〜〜〜〜、もうイライラするっ」
「ぼっ、僕だって告白した事はあるんだっ、『ユリカ、僕は君が好きだっ』って」
「へ?、ジュンちゃんが?、嘘っ」
あまりに意外な事に困惑、正直ユキナには、そんな事は想像すら出来なかった
「でも・・・・・・ユリカは・・・・・・」
しばらく沈黙が続き
「『うん、ユリカのジュンちゃんの事大好きだよ、最高のお友達だよ』って、全然悪気の無い、最高の笑顔で答えられたんだよ・・・・・(涙)」
「・・・・・・・それは・・・また・・・・・・ユリカさんらしいというか・・・(汗)」
「僕だって、ただユリカの側に居ただけじゃない、チャンスをみて気持ちを伝えようとした事なんて、何回もある、でも、ユリカって人の話を聞かないし・・・・」
「違うんだ、そういう意味じゃないんだユリカ、『え〜、だって、ジュン君はユリカの最高のお友達でしょ〜(にっこり)』」
「・・・・・・・この調子で、何時までたっても堂々巡り・・・・ユリカって、一度頭の中で『こうだ』と決めてしまうと、人の話を聞かなくなるし(涙)」
「それは・・・・・・・・また・・・・ジュンちゃんもとんでもない人好きになっちゃったんだ・・・・」
流石にジュンへの同情心が芽生えて来てしまうユキナ
今はまだ『同情』しかし、その後・・・
「僕は・・・・・・テンカワ君が羨ましいよ、ちゃんと話を聞いてくれる女性と結ばれたんだから・・・(涙)」
「ジュンちゃんも、大変なんだねえ(しみじみ)」
「それゃ、僕だった聖人君子じゃない、テンカワ君に振られて落ち込んでるユリカに付け込んで・・なんか考えた事だってあるさ・・・・・・・・」
「でも、『実行』はしなかったんだよね、ジュンちゃんは」
「・・うん」
コクリと頷く
「ほんと、人が良過ぎるよ、ジュンちゃんは、今に悪い女に騙されたりしそうで心配になってくる、全く・・・・・・・」
そして、なんだかユリカに対して腹が立って来る・・・
昔のこんな状態から、今では、『ジュンちゃんは私の恋人』と公言するようになっているユキナ
「ジュンちゃんは、まだユリカさんに未練あるの〜?」
ジュンは、ピクピクと顔面を痙攣させながらの笑顔で話しかけて来るユキナに
「いっ、いえありません(汗)」
としか答えられない
・・・・・なんで、僕の周りの女性っていうのは、こう、押しの強い人ばっかりなんだ・・・・・・ユリカが僕に対して、こんなに押しが強くてくれれば・・まずい、こんな事考えてたら、ユキナちゃん、ますます不機嫌になる(汗)・・・・・・・・
等と考えつつも、満更でもないジュン
どうも、アオイジュンという男は、女性の尻に引かれる事がなんだかんだと似合ってしまうタイプらしい(苦笑)
ただ、それでもユリカの事は気になってはいるのだ、今更自分に気持ちを向けてくれないにしても、友達として
そんな所が、ユキナから見れば未練に見えていらついてしまう
実際に未練が無いと言い切る事は出来ないだろう、故に、ユキナはユリカを敵視している
さて、ユリカはと言うと・・・・
今のユリカは随分と変わった、余程、アキトに振られた事がショックだったらしい
ユリカは瑠璃とアキトの結婚式の夜の事、リョーコと二人で飲み明かした
「まっ、振られた女同士自棄酒であおって慰めあうか」
「リョーコさん・・・・」
「強引過ぎたんだよなあ、俺たち・・・・・積極的なのが悪いんじゃなくて、アキトの気持ちを無視し過ぎてた・・・・・」
「・・・・・・・・恋人だと思ってたのに・・・」
「それが不味かったんだよ・・・・瑠璃と二人で屋台を切り盛りしているアキトを見た事あるかい?」
「ううん、辛いから見た事無い・・・・辛いから・・・」
「瑠璃って、結構アキトの事叱るんだ、でも、そこに愛情を感じる、あんたはアキトに怒った事はあっても叱った事あったか?」
「・・・・無い・・」
「『艦長』なんて立場なら、尚更、たとえ恋人相手だろうと叱る時には叱っておくべきだったんだ、アキトの性格じゃ、自分が馬鹿やってしまったのに、その艦の最高責任者が叱ってくれないんじゃ、エコヒイキされてるみたいで、かえっていたたまれなくなる」
「そっか・・・・・・・・・」
ユリカは今までなら、そんな話は聞かなかったかもしれない、が、今ははっきりとアキトが瑠璃を選んだという結果が出てしまっている
「ユリカがちゃんと、『艦長らしい艦長』をしてればアキトはユリカの事好きになってくれたのかもしれないんだ・・・・」
「瑠璃は、ちゃんとオペレーターらしいオペレーターをしてたからな」
それ以降、ユリカは『艦長らしい艦長』を目指すようになり、人の話も聞くようになった
それに先に気づいたのは、身近にいたジュンよりも、むしろユキナの方
『今の』ユリカならば、ジュンの言う事もちゃんと聞いてくれるだろう
だが、その時には既にユキナとジュンは付き合い始め・・・・
ユキナにとってユリカは、恐ろしい恋敵へと変わっていた
次回へ続きます
後書きというか、雑談
カップリング絡みのSS見てると、どうも、『この作者さんはカップリングという物への好き嫌いの激しさ』を甘く見てるなあ思える時が
凄く面白いSSがあって、100点満点あげたい所だけど、たった一点気に食わない所がルリ×アキト以外、という作品があったとします
私みたいな、極端なカップリング属性持ちの、その作品の点数の付け方はどうなると思います?
『一点気に食わないだけだから99点』
じゃないです
『いや、カップリング属性持ちの人なら、ルリをアキト以外とくっ付けたってだけで読まないから、0点だろ』
これですら、違います
100に『−1』を『かけて』100×−1=−100点
作品の出来に関係なく、ルリ×アキト以外、を嫌うんじゃありません
作品としての出来が良ければ良いほど、ますます、ルリ×アキト以外、が嫌いになっちゃうんですよ、これが・・・・・・・・・
ちなみに、0点以下になってしまうのは、ルリ×アキト以外だけが嫌いになる訳じゃないから
ルリ以外×アキトでルリ×アキト以外にされると、ルリ以外×アキトまで嫌になってしまうという・・・・
ちなみにコレ、『ルリ×アキト以外』を『ユリカ×アキト以外』とか『ラピス×アキト以外』とかに変えても、そういう人は居るだろうなあと
だから、カップリングネタというのは、『読者を切り捨てる覚悟』でやるべきだと思ってるんですよ私は
『テンカワルリのファンサイト』で、ユリカ派の人が読んでるとも思えないんだけど、もし、『ユリカ×アキト以外』が駄目だって人は、覚悟しておいた方が良いです
ユリカ×アキト以外に確実になるって訳ではないですが、『絡んで』は来ますから
それと、趣味に合わないカップリングを嫌う人達にたいして、『いや、そこまで嫌わなくても』って言う人が居るかもしれないけど、私、考えが逆なんですよ
ヒロインクラスの女性キャラに、どんな形であろうが『主人公以外の相手役』を出した場合、あっさりと受け入れて貰えるようじゃ、かえってヒロインクラスのキャラとして失格だろうと
メグミファンには悪いけど、メグミ辺りがアキト以外とくっ付いても、『どうでもいい』って人、多いんじゃないですか?
好きの反対は嫌いではなく無関心って言います
ヒロインクラスのキャラのカップリングというのは、それだけ思い入れや関心を持っている人が多ければこそ、好き嫌いが激しくなるんです
そういう、『思い入れ』を持って貰えないカップリングなんて、実は、やってもやらなくてもたいして変わらないのでは?
逆説的になるけど、ヒロインクラス×主人公以外が、『どれだけ嫌がってもらえるか?』も、ヒロインクラスのキャラには大切なんじゃないですね?
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