洒落です。社会的正義や道徳に煩い人は読まないでください。
ああ、あとユリカスキーも・・・どうだろ?






















2201年、シラヒメ。

「わ、我々がいなくては研究のデータが!」
「口封じだ……滅」



「念仏のひとつも唱えてやれ」
「は!」





同、試験戦艦ユーチャリス。

「く・・・先を越されたか。仕方ない、行くぞ、ラピス」
「いつもの場所でいいの?」
「そうだ、あそこへ遣ってくれ」
「……わかった」
(……嫌なのか?ラピス……)





2199年8月、某所研究所。

「対象を捕捉。これより確保!」
「了解!」



「これは……本当にテンカワなのか?」
「リーダー、どうしますか?」
「むぅ……テンカワかどうかはドクターが答えを出すだろう。誰であろうとこのままにはしておけん、確保だ」
「はっ!」



同、ネルガル月面工廠・C-8特別区域。

『そうか。やはりテンカワ君は……』
「ええ、会長の予測通りでしたわ。彼の……は、もう……」
『で、彼は今?ドクター』
「ナノマシンは可能な限り除去したわ。命には別状ないけれど、後は彼自身の問題ね」
「自らに刻み込まれた烙印をどう受け止めるのか。それ次第ってことね」
『そうか。後のことはエリナ君に任せるよ。資金面は気にしなくていい、ネルガルのためにもなるからね』
「わかりました、会長」





2201年、某所。

(アキトさんが生きていた……)
ルリは風呂上りの湯気を立てたまま、鏡を覗く。
ナデシコA時代に比べれば、(まだ)マシになったような気がする。
それでもミナトやイネスとは比較する気もおきないほどの、ささやかなものではあるが。

「後は、アレをどうにかしないといけませんね」
雪のように白い肌に上気した淡いピンクが浮かぶ。
成熟しきっていない体は置いておき、少しは表情の出てきた顔、流れる蒼銀の髪、しなやかな肢体。
どれをとっても、今ならばアキトの前に、堂々と立てると思う。
けれど、不安材料もある。

もちろん、当の本人テンカワ・アキトの気持ちがどうなのか、それもあるが、最大の障害となり得るのはアキトの生存が確認された以上、雨後の筍のように湧き出してくる有象無象だ。
それらを排除しない限り、ルリの本当の幸せはない。
(今度こそ、邪魔はさせませんよ・・・)
もう一度自分を見つめる。
鏡に映る金の瞳には、決意が溢れていた。





「また、来なさったか」
「いや、和尚、今日は別の用事で来た」
アキトはバイザーを外す。
師に対するに、礼を失するわけにはいかない。
「そうか。まあええ、好きなだけおったらな」
「感謝する……ラピス、ここで和尚と待ってなさい」
微妙に嫌そうな表情をするが、今日ばかりはアキトも折れない。
「ラピス」
優しく言うと、頭を撫でる。
「いい子だから、な?」
それでもラピスは納得している様子ではない。
「……ソフトクリームでどうだ」
「いい子で待ってる」
はあ、と大きく溜息をつくと、アキトは和尚に軽く頭を下げる。
そのままマントを翻らせると、夏の陽光に消えていった。



喪服が陽射しを吸収していく。
暑い、夏。
2人のいない3度目の夏。

石段を眩しく染める陽射しの中を、ルリは花束を抱えて上っていった。
ふ、と振り返って宙を仰ぐ。
「どうしたの、ルリルリ?」
上からミナトが声をかける。
「いえ、そろそろ時間かと思いまして」
「なら、見送りに逝ってあげれば良かったのに」
「ミナトさん、字が違います」
似たようなもんじゃない、どうせルリルリは振るつもりでしょ、そう思ったが口には出さずにおく。

蝉時雨の中、境内というだけで何故か涼しく感じる。
鬱蒼と覆い被さる木々の下を抜け、広い墓地に出る。
数多くの墓標が立ち並ぶ中を歩いているとルリは、ふ、とこの人たちの人生に思いを馳せることがある。
崩れかけた墓石。
傾いた卒塔婆。
旧世紀からあり、今は誰もお参りに来なくなった墓。
ここに埋まっているのは、魂のない抜け殻。
いや、それですらない、ただの灰。

自分も死んだらこうなるのだろうか。
それとも、魂だけは高次で存在し続けるのだろうか。
そして生まれ変わり、またこの世で生を受けることができるのだろうか。

できれば生まれ変わりたい、ルリはそう思う。
(私にはまだ……心残りがある)
この世に執着することなど、ないはずだった。
そう作られ、そう育てられたはずだった。
ナデシコで思い出を勝ち取り、ユリカとアキトとの生活が始まり。
大切な、失いたくないものができた矢先の事故。

再び、執着を失いかけたルリの前に現れた、この世で最も大切な人。

(アキトさん……責任、とってくださいね)





かたーん


ミナトの落とした桶が、乾いた音を立てて夏の空に吸い込まれていく。
「アキトさん……」
ルリの金の目に映ったのは、己の墓標に向かうテンカワ・アキト、その人だった。


「アキトさんに何が起こったのか、私は知りません」
「知らないほうがいい」
「私も知りたくありません」
ルリの心はここになかった。
どうでもいい、そう、どうでもいいのだ。
自分と一緒でなかった時のことは。
ルリにとって大事なのは、アキトが一緒にいてくれること。
傍にアキトがいさえすれば、後のことはどうでもよかった。

「でも……どうして教えてくれなかったんですか、生きてるって」
「教える必要がなかったから」

ぱしーん


振り返ったルリは、アキトの頬が赤く染まっているのを見た。

「何てこと言うの!
アキトは微動だにしない。
外見が変っただけでなく、動揺するということもなくなっている。
それだけの修行を積んできた。

「謝りなさい!ルリルリはね、ほんとはアキト君のことが好きで……いえ、愛していたのよっ!」
「ミナトさん」
「ルリルリは黙ってて!あなたがいなくなって、この子がどれだけ悲しい想いをしたか、わかる?!アキト君がいなければ、ルリルリは……?!」
不意に黙ったミナトの目の前に突きつけられる銃口。

「あ、アキト、君?」

驚いて冷汗を流すミナトの目先から、ゆっくりと照準は動いていく。


「……久しいな、遅かりし復讐人よ」
慌てて声の方を見る2人。
アキトの銃口の先には、編み笠を被った7人の男がいた。
その先頭にたった男が、ゆっくりと口を開く。
かなりの距離があるにも関わらず、この空間だけが蝉の鳴声すらも失って、彼らの声だけを漂わせているように聞こえた。
「その愚かな武器を下げよ、テンカワ・アキト」
低い声が、地を這う。
彼らはその場を少しも動かず、真っ直ぐにアキトを見ている。

アキトもまた、バイザーでよく見えないが、彼らを睨みつけているのだろう。

「愚かなりテンカワ・アキト……いや、撫子院黒百合よ」
「えっ?!」
驚いてアキトを見る2人。
アキトの表情は変らない。
だが、その名前で何かを決意したのだろう、銃口を下げ、そのままホルスターに収める。
「お前たちは関係ない、さっさと逃げろ」
「こういう場合、逃げられません」
「そ、そうよねぇ……」
ルリはもう、何が起ころうとアキトの傍を離れるつもりはなかった。

「ちっ」
軽く口の中で呟くと、アキトは懐に手を入れながら、身構えた。





時間が止まる。





先頭の男が、小さく口篭もる。

「はっ」
答えた男が凄まじい勢いで駆け寄ってくる。
そして次の瞬間、ルリは信じられない光景を見た。



































「南無っ!」





「はい??」





驚く2人を尻目に、アキトは懐から数珠を取り出すと、とても見えないくらいの早業で身を翻し、突進してきた男の首にかける。

「ぐぇぇぇぇ……」
男の顔が苦痛に歪む。

「梵天締めっ!!」
もがいていた手が止まり、男は地面に沈む。
その時には次の男が目前に迫っていた。
アキトは頭に手をかけると、




「ほえっ??」
間抜けな声を上げる2人。




がばっ、と髪を投げ捨てる。
反射する夏の陽光が目に眩しかった。

と、呑気な感想を抱くルリの目の前で、次々とアキトは敵をなぎ倒していく。




「経文アタック!!」

「妙法蓮華縛り!!」

「浄土三舞!!」

「必殺産子責任転嫁!!」

「戒名料金徴収!!」




いまいちよくわからない攻撃もあったが、それでもばたばたと倒れていく。
そして最後に残ったのは、先ほどから命令を下している男だけとなった。

「さあ、決着をつけよう、北辰……いや、木連北居僧正」

「は?」
もはやミナトはこれしか出てこない。

「ふふふ……よくもここまで極めたものだ。人の執念、見せてもらった」
北辰と呼ばれた男は編み笠を取ると、その頭を煌かせて、
「望み通り、決着をつけてやろう……ここまでは6戦3勝3敗、今度こそそこの女共を殺し、その供養は我等がする」
「……シラヒメで先んじられた読経、ここでは俺が祈る!」
もはや展開に着いていけないミナトは、口を開けて眺めるだけだ。

「滅!」
「南無!」

2人が交錯する。
常人の目にはとまらない速さで次々と経文を繰り出し、やがて、





「成仏せいやあっ!!」

アキトの声が、勝敗を決した。





「如是我聞……」
アキトが経を唱え始める。
ぴくりとも動かない北辰を前に、なんとなくルリには掴めてきた。





「……つまり、どちらがより多くのお弔いをできるか、檀家取得合戦みたいなもんですね」
「そうだよ、ルリちゃん」
アキトは黒いマントを脱ぎ捨て、袈裟姿でルリの前に立っていた。

「ユリカ(の料理で)頭の中かき回されちゃってね……こうなったんだ」
きらり、頭が光る。
「特に額がね……駄目なんだよ、興奮すると浮き上がってくる」
確かに、彼の額には『肉』という文字が浮かび上がっていた。
「漫画みたいだろ」
自嘲する。
「確かに……そんな漫画がありましたね。でも、何で『肉』なんですか?」
「覚えてないかい、ルリちゃん。一時期あいつが太ったって言うから、肉類一切抜いた食事だった頃があったろう」
「……あぁ」
何となく得心した。
「つまり、その時のことを根に持っていたんですね」
「そうだ」
それだけ言うと、彼はバイザーを掛け直した。
袈裟姿に黒いバイザーは、かなりの違和感で周りを圧倒する。

「奴らはユリカを堕とした……それには感謝している」
「……そうでしょうね」
「だが、まだ勝負は着いていない。ユリカの額に同じような屈辱の文字を刻むまでは」
「ユリカさんは、今どこに?」
「……鹿児島だ」
「は?」
「黒豚を食べたいと、草壁にごねたらしい。北辰が採ってきたそうだが鮮度に納得いかないらしくてね、自分で捕獲しにいったそうだ」
「はあ」
もはや、あまりのばからしさにこれしか言えないルリ。
そんなルリを置いて、アキトはくるり、と向きを変える。
その先には、桃色の髪をした少女、ラピスがいた。

とてとてと駆け寄ってくると、アキトにしがみ付く。
「私のアキト」
その様子を見て、怒髪天なルリが、
「……アキト、さん」
ぎぎ、と音を立ててアキトの首がこちらに向く。
「い、いや、そのこれは……」
「問答無用」
「ちょ、ルリちゃん違うんだって、ラピスはお小姓としてつけられたんだよ!」
「はい?」
ふぅ、と溜息を吐いてラピスを引き剥がすと、
「ラピスは線香の匂いが駄目でね、これじゃあ、尼さんになる修行にならないんだけど、仕方ないから少しずつ慣れるように、普段は寺にいない俺に預けられたんだ」
「そうですか」
「違う。私はアキトのもの」
「ら、ラピス……」
困った様子のアキトに、ルリは決意した。

「アキトさん、私も一緒に行きますからねっ!」
「へ?でも、軍は……」
「軍が何ですかっ!そんなもの、直ぐにでも退官します!」
「……邪魔」
「……ラピス、あなたとは一度勝負をつけなければなりませんね」
「望むところ」





そうして、困った様子の『光の皇子様』と『妖精小姓ズ』は。
今日も白亜の戦艦で、念仏の練習に励むのだった。





数年後、同じ寺で。

「僧正様にお子さんが」
「ほう。ア奴もやるのう」
「何でも、2人のお子さんらしいですが、双子ではないとか」
「……破門、じゃな」
「さすがは復讐人、見直したぞ」
「こりゃ!北辰!貴様はまだ座禅の途中じゃろう。そんなことではいつまでも追いつけんぞ」











機動戦艦ナデシコ
after the movie

the prince of brightness








≪らいる的あとがき≫
……もちろん洒落ですよ?
間違っても剃刀メールなんて送らないでくださいね。
それに、悪いのはび〜さんとしっぽ♪さんなんだからぁ(泣


b83yrの感想

らいるさん、変な責任転嫁しないでください
確かに、ネタ振ったのは私かもしれないけど、執筆したのはらいるさんじゃないですか(笑)
ちなみに、b83yrがネタ振り、しっぽさんが補強、らいるさんが執筆です
ほとんどネタ振っただけの私の名前が、合作作品の作者名として付いているのは気が引けるんですが(苦笑)
でも、私の名前入れないと、それはそれで、び〜さんは一人だけ罪を逃れようとしてるって、らいるさんやしっぽさんに言われそうなんで(笑)
ちなみに、私が振った元のネタは
『アキトって、女難のストレスで禿げたりして』
程度のモノだったのに、チャットで盛りあがってしまって何故かこんな話になってしまったという(苦笑)


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